魔剣編は短めに終わるかも。それと、今回は日常回です。
追記:タイトルミスしてたので、変えました。
「そういや、ツナはアドシアードはどうすんだ?」
「アドシアード?」
キンジ経由で友人となった武藤君と不知火君の二人と昼食をとっていた。本来、キンジも含めた四人で食べることが多いのだが、偶々、彼が教務課へと呼び出された為に、キンジの不運と無事についてを呑気に喋っていた。
「ああ、そうだった。武偵以外だとあんまり知らない人も多いからね」
少し思案してから、不知火君は簡単な説明をした。
「うん、例えるなら……武偵たちが自分の腕前を競うオリンピックみたいなものかな。競技に参加しなくてもかなり楽しいイベントだと思うよ」
「で、どうなんだ?」
「まさか。俺は参加しないよ。そもそも、ひよっこ武偵の俺じゃあ話にならないさ!」
「ま、そりゃそうか」
武藤くんは残りのカレーライスをかき込む。
「ごちそうさまでしたっと。俺ぁちょっとやる事あるから先行くわ」
「分かったよ」
「うん」
トレイをさっと持った彼はあっという間に食堂から出て行った。
「なんか、騒がしくなってきたね」
「大体この時期はこんなモノだけどね。まあ、最も忙しくなるし、三年生は忙しいどころじゃあなくなるみたいだからねえ……」
「そ、そうなんだ……」
ツナ自身も武偵高校に入ってから聞かされたある文言は印象に残っていた。『奴隷の一年、鬼の二年、閻魔の三年』現代の高校とは思えない強烈な文言だが、これは武偵高内のパワーバランスを表している。
こんな物騒な高校だからか、三年生ともなれば相当な実力者が残る。そして、人によるがかなり大きい依頼を受けられるようになり、指名されることもあるのだとか。まあ、総じて三年は繁忙期だということだ。
「それじゃ、僕もそろそろ行くよ。またね、綱吉くん」
「ああ、うん。またね」
ツナは不知火君が外に出たのを見送り、少し伸びをした。
「確か……猫探しの依頼かぁ……」
あまり得意ではないが、珍しく単位の美味しい依頼に向けてツナは立ち上がった。
# # # # #
「あ、白雪さん」
「こんにちは、これから暫くここに居ることになったの。よろしくね」
「あ、ああ、そ、そそそうなんだね」
「?」
ツナは表情を努めて変えないようにしたが、心の中の動揺は口から溢れてしまった。彼女ーー星伽白雪は大変に美人で、正真正銘の大和撫子だが、キンジの幼馴染みにして、やや……いや、かなり愛が重いという欠点が存在した。部屋で初めて会った時のことは思い出したくもないし、問題児ことアリアとの邂逅の際はもっと酷かった。部屋中の家具が穴だらけ、傷だらけになり、ベランダの物置に隠れる羽目になった。
だが、欠点以外は素晴らしい。勉学や諸々の事だけでなく料理も上手なので大変に美味な料理を頂くという恩恵も受けたことがある。そう、欠点以外は。
「ツナ、ちょうど良かった。私から説明するわ」
「はぁ……」
何でも星伽さんは超能力を扱う武偵ーー超偵を専門に誘拐する犯罪者、
らしい、と曖昧に言われる理由は実在しているのか疑われているからだ。ツナはゲーム内で登場する強い武器としてデュランダルを知っていて、剣の名前を通り名にするなんて珍しいなぁ、と呑気な事を思った。
「さて、色々設置するけど……ツナも手伝って」
「うん。あんまりよく分からないけど、指示してもらえばその通りに動くよ」
「じゃあーー」
アリアは色々と指示をする。だが、それはかなり細かく、分かりづらいアリアの自己流が入り混じったものであった。本来、キンジのようなある程度の能力のある武偵ならあっさりと指示を成し遂げただろう。
しかし、今それを実行しているのは
「げ」
「うわ」
「しまった……」
ちょうど三連続、見事に失敗をした。そして、キンジは急いでツナを出来るだけ遠くに引っ張っていった。
「なあ沢田……取り敢えず部屋からしばらく離れた方がいい……」
「うん……そうする」
ツナがミスを重ねる毎にアリアの口数が少なくなり、米神の青筋が増えていった。我慢強くアリアは必死に抑えているようだったが、これはもうヤバいかもしれない。
ツナは「少し、何かを買ってくるよ……」と断ってから逃げるようにして部屋から出て行った。
「はぁ……ももまんでも買って帰るか……」
自転車で遠くまで行っていたが、途中にキンジからお使いを頼まれたので石鹸やらの必需品を買って帰ってきた。そして、近くのコンビニでももまんを購入しようとしたが、運悪く売り切れていた。
「仕方ないかあ……」
ご機嫌取りくらいはしないとな、とツナはもう一漕ぎしてももまんを探す。
「ふう、やっと見つかった」
中々ももまんは見つからず、何件か周ることでようやく一つだけ購入できた。そして、自転車に乗って帰ろうとすると、トントンと背中を叩かれた。
「これ、落としてますよ」
「あ……ありがとうございます」
いつのまにか換えの歯ブラシが落ちていたらしい。拾ってくれた人物は金髪で、眉目秀麗な西洋人だった。剣道かフェンシングの系統を嗜んでいるのか、竹刀袋を下げているのが印象に残る。一瞬、山本みたいだとツナは思ったが、どちらかと言えば獄寺君のような雰囲気がするなぁと感じとった。
「それでは、また今度」
「あ、どうも」
また今度?と訝しむが、丁度ポケットが振動した。
「はい、沢田です」
『取り敢えず、大丈夫そうだ。そろそろ帰ってこいよ』
「ああ、うん。もう着くよ」
『それじゃ』
キンジから掛かってきた通知で一先ずは安心して自室へ入れそうだ。カゴから重いレジ袋を引っ張って、階段を登って行った。
「あら、遅かったじゃない」
「うん、まあね。はい、お土産」
「ももまんじゃない!」
「一応、白雪さんにはあんまん。キンジには肉まんだよ」
「ありがとう、沢田君」
「おっ、サンキューな沢田」
レジ袋に入ったあんまんと肉まんを渡す。アリアはぺろりと食べてしまっていた。
「は、はや……」
これには目を丸くした。本当についさっきももまんをあげたはずなのに、胃袋へと消えている。
「あ、ツナ。設置した物の説明するからちょっと来なさい」
「うん。買ったものをしまったら行くよ」
レジ袋に詰まっている日用品の数々を棚や箱に収納していく。以前のツナであれば適当にしまったかもしれないが、綺麗に仕舞おうと考えるくらい彼は成長をしていた。
「今度こそ説明するわ」
「うん」
そうして説明が始まったが、ツナは話の五割も理解していなかった。いくら武偵としての知識がある程度は身についても、Sランク武偵で多くの経験と知識を身につけているアリアにはついて行けそうにない。さわりの部分は必死に覚えたので、ツナからすれば十分及第点だった。
「ツナ、アリア晩飯出来たってさ」
「お、よっしゃ」
ツナは小さくガッツポーズをした。本当に彼女の料理は美味しいので、是非とも食べたかった。キッチンから漂ってくる香りに思わずごくりと唾を飲み込むが、「なんだよ、大袈裟だな」とキンジはちょっと呆れていた。
「へぇ、意外。作ってもらう方だと思ってたわ」
(まあ、大抵の料理はアリアの料理よりも美味しいけどね……)
以前、朝食をアリアが作ろうとした際の悲劇を思い出した。真っ黒の料理で美味いのはイカ墨パスタくらいだろう。
「……ツナ、アンタ失礼な事考えてない?」
「いっ、いや、何も……」
そう言えば、変な所で超直感並みに鋭いのをツナは忘れていた。ゾゾゾと背中に冷たいものが走る。
「ま、まあさ、ご飯を食べようよ。美味しいからさ」
「ふうん、そうね」
今度から気をつけようとツナは思った。
次回はgw中に出したい、と思ってますが……鋭意努力はします。
守護者いる?
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いる
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いらない
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偶に出すくらい