転生したら殺人鬼ポジだった件   作:クリーニング黒兎

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一回投稿したのですが続きが書けなくなってしまったので、改めて書き直しました。もし一度見てくださった方がおりましたら、申し訳ないです。

続くか未定ですが続けられたら続けたいです。にしても4部ってヒロイン枠が少ない。


一章
1話 息を吹き返した芽


 享年16歳、死亡理由は生まれつきの持病が悪化し、容態が急変したことによる病死。

 一生をほぼベッドの上で過ごし、そのまま最期は両親の顔を見ることもできずに死亡した。

 

 そんな人生だったからか、インドア派がやっていそうな物事は一通り行った。

 

 特に好きになったのは漫画やアニメなどのオタク文化。少しはしゃぎ過ぎて、サイリウム両手に生ライブを観戦してた時は死にかけた。

 親の号泣からの事実を知ったリアルドン引き顔は忘れられない。

 

 

(でも、もう死ぬのか…)

 

 

 両親にはまともに恩返しもできず、不出来なひとり息子だったと思う。

 自分も同年代の子供のように、学校に通い遊びたかったものだ。

 

「普通」ではない自分が恨めしく、「普通」な周囲が妬ましくて、そんな感情を抱いてしまう自分が嫌いだった。

 

 せめて他人の前では明るく振る舞ったものの、いつも心の奥底には鬱暗い闇を抱えていた。

 

 だから二次元には何度も心を救われた。

 王道や邪道もの等のジャンルを問わず漫画を読んでいた時は、その主人公に自己を投影して心の(よすが)を作った。

 

 しかし、それももう叶わない。

 

 ただ心の底ではもう苦しまなくていいと、ホッとしている自分もいる。

 薬の投与によって生じる全身の激しい痛みも、倦怠感も感じなくていい。一定のリズムを知らせる機械の音も、点滴や呼吸器をつけた感触にもおさらばだ。

 

 

 

(けれどもし()があるのなら、その時はただ「普通」に暮らさせてよ、神様)

 

 

 

 知ってるんだ、神なんているわけがないってことは。でも、それでも、救いが欲しかった。

 本当、最後に馬鹿みたいだ。

 

 ──────さようなら、平等に不平等な、このクソッタレな世界。

 

 そのまま意識は闇に呑まれるように消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◻︎◻︎◻︎

 

 

 ぼくは所謂、“幽霊”や“悪魔”といった非科学的なものを信じていない。

 

 そりゃあ古きから神道を重んじている国家に生まれたのだから、お盆や彼岸は毎年行うし、正月に叶うとは微塵も思っちゃいないが一年の健康を祈ったりする。

 

 ただ誰かに入れ知恵されたわけでもなく、小さい時から「普通」というものを求めていた。

 もはや取り憑かれているといってもいいかもしれない。

 

 日本人は「空気を読む」国民性だとかどこかの本で書いてあったが、ぼくもその輪に漏れず目立たないよう生きてきた。

 

 保育園や幼稚園の時から先生の手伝いをしたり、子供っぽくおもちゃで遊んで、子供に「かして」と言われたら快く貸した。

 

 最近は教育熱心な母親の気持ちに応えられるように習い事をしつつ、「普通」の枠から出ないよう調整している。

 

 

 そんなぼくは齢6歳にして、人生に疲れていた。

 

 

 元々赤ん坊の頃の記憶があり、「自我」が強かったのが影響しているのかもしれない。

 

 毎日毎日気を遣い続けるばかりで、ふと帰り道の青空を見たら「もうどうでもいいや」と思ってしまった。

 この精神は帰宅帰りに電車で自殺(GO)する人の「もういいや」に、似ていると思う。

 

 今は通学路にある公園のブランコに座り、リストラされたおっさんのように黄昏ている。

 

 公園に住み着いているサングラスをかけたリアルマダオもいるが、彼は現在、酢昆布をむしゃぶるチャイナっ娘に現実を突きつけられ死にそうだ。平和である。

 

『────♪』

 

 ちょうど夕方の5時を知らせるチャイムが鳴る。

 

 いつもだったら1時間前には家に帰っている。

 5分帰るのが遅いだけでも迎えに来る母親だから、今頃警察沙汰になっているかもしれない。そう考えるだけで自然とため息が出た。

 

 

 ぼくが疲れているのは、親の愛情が重すぎるせいもある。

 

 食事はともかく風呂も就寝もすべて一緒(流石にトイレまではついて来ないが)。

 

 自由があるのはそれこそ学校にいる時と習い事がある時のみ。それ以外の時間はずっと親の目があるというのは、ぼくにとって精神がすり減るものでしかない。

 

 娯楽に関してもゲームやテレビは教育云々を理由に禁止で、唯一楽しめる本も「娯楽性」のあるものはダメだ。仮に選んでも親が確認するので意味がない。

 

 日本の純文学は一通り読み尽くしたし、この間の誕生日プレゼントなんて「漢字・用語辞典」だった。

 ちなみにサンタさんは死亡扱いになっている。とんだ被害者だ。

 

「普通」を目指すぼくらしくもないが、もうこのままどこかへ行ってしまいたい。

 手の届かぬ青い空がひどく憎ましく感じられた。

 

 

「パパみてっ、らんどせる!」

 

 

 少し舌ったらずな声が聞こえたと思ったら、ぼくのすぐ側にピンクのワンピースを着た少女がいた。

 髪はややピンクがかった茶髪のショートヘアで、天真爛漫さを宿した目が輝いている。

 

「鈴美、走ったら危ないだろ」

 

「ごめんなさい……でも、れいみもあとふたつおおきくなったら、らんどせる、かってもらえるんだよねっ!」

 

「まぁな…。ごめんね、うちの子が急に」

 

「いえ」

 

 恐らくこの子供は幼稚園か保育園の帰りなのだろう。走った拍子に頭から落ちた黄色い帽子が、首の後ろに下がっている。

 尚も少女は少し引き気味のぼくにグイグイくる。

 

「ねぇねぇ、おにーちゃん。れいみがね、しょってもいい?」

 

「こら、迷惑をかけちゃあダメだろ!」

 

「……別に、いいよ」

 

 断ったらこれがいずれ波となって、ぼくに返ってくるかもしれない。

 内心は疲れていても、変わらない「普通」への気持ちに苦笑いが溢れる。

 

「ちょっと重いけど、大丈夫?」

 

「ゔっ、うう………ぜんぜんおもくない……も、ん……」

 

「………」

 

 仕方がないから、後ろから留め金の部分を持ち上げるように支えた。

 

 その後、親子と少しだけ会話した。そして少女のブランコを押してあげて、遊びに付き合ってから少しして、二人は帰っていった。

 父親の方には心配されたけど、家はすぐ近くだ──と嘘を言った。

 

 

「…もう帰るか」

 

 少し少女と遊んだおかげか、気持ちが軽くなった。

 それか純粋なあの笑顔と比べて、自分の鬱屈とした感情がちっぽけに見えたせいかもしれない。

 

 ともあれ帰ろう、まだ春先だけど夜になってくると少し冷え込むし。

 

 

 

 帰ったら案の定、警察沙汰になっていた。母は怒らず号泣してぼくを抱きしめ、帰ってきた父も怒ることはなく、息子を心配するばかり。

 

 何となく父親に叱られていたあの少女が、羨ましく思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◻︎◻︎◻︎

 

 

 ぼくの家は旧家でそれなりに裕福な家庭である。

 ただ疑問に思うのは両親が純粋な日本人なのに、自分の顔が異様に日本人離れしていることだ。

 

 何故黒髪の両親(父は既に白髪になってしまったが)から金髪が生まれるのか、何故黒目じゃなく紫目(しめ)なのか。

 

 本当に何でなんだ……?

 

 

 それからのこと、両親は染料材の悪影響がどうたらと言っていたものの、ぼくがごねにごねて、最終的に子供にも殆ど影響のない染料材で黒髪デビューした。

 これが8歳の時で、今は9歳である。

 

 今まで目立つ容姿のせいで遠巻きにされていたけれど、ようやく心の平穏が訪れる。

 周囲も最初こそぼくの変わりように驚くだろうが、すぐに慣れるだろう。というか慣れてもらわなきゃ困る。

 

 今までいじめの対象にならないよう上手く回ってきたが、その気苦労ともお別れだ。

 

 ぼくは完全な陰キャデビューを果たしたんだ!

 

 

 _______と子供らしく思っていた時期が、ぼくにもあった。

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ……何故なんだ……一ヶ月も経てば目立たなくなると思っていたのに、一年経ってもほぼまったく変わらないじゃないか……」

 

「きゅ、急にどうしたの…?」

 

 現在ぼくは2つ下の女子と共に図書室で宿題をしている。

 この学校は放課後5時までなら生徒に自学目的で部屋を貸し出している。ただし日の入りが早い時期は4時半まで。

 

 親には友人と勉強をするといつも言っている。流石に男友達までに口出しすることはない。

 ただこれが女となると母の目が厳しくなる。故に「()()()」と言っている。

 

 

 学校側から情報が漏れる可能性は殆どない。何度か学校には警察沙汰になって迷惑をかけたこともあり、ぼくの母がどういった人物なのか向こうは理解している。

 

 それに息子のことになるとヒステリックにもなる親御に、望んで関わりたくはないだろう。その姿勢がいじめを容認してるんだろうが。

 

 ぼくからも担任に怯えた風を装い言ってあるので、問題ないだろう。ただ過信する気はない。

 

 また生徒から親づてに知られることもあるまい。

 

 男女が一緒にいるということで色めき立つ奴もいるかもしれないが、この学校は人数も多い。その中の一人と一人が一緒にいたからといって、騒ぎ立ててもすぐに他の話題が出る。親にわざわざ言うこともないだろうし、母はぼくにつきっきりで親同士の付き合いも悪い。

 

 

「もしかして()()()()()、まだクラスの子から遠目にされてるの?」

 

「「お兄ちゃん」はやめてくれ、目立つ。……そうなんだ、自分で言うのも変だけど、前よりかなり地味になってるだろ?」

 

「あ、ごめん。……えっと、それ本気で言ってるの?」

 

「本気だけど?」

 

 

 この少女────鈴美と知り合ったのは、彼女がまだ4歳の時だった。

 

 それから二年経って彼女がこの学校に入学し放課後に図書室(ここ)で再会してから、たまに勉強会を開くようになった。軽い雑談ぐらいなら周囲もしているから、さほど目立たない。

 

 以前のいかにも子供な彼女だったら断固拒否していたが、今の鈴美はかなり女子らしくなり、話していてもストレスにはならない。

 むしろ楽しいと思えるのは、ぼくが普段人に避けられてばかりで、同年代の子供と話す機会が少ないからだろう。

 

「えーとさ、いつもはクラスの女の子からどういう風に見られてる?」

 

「どうって……たまにチラチラ見られている時はあるかな?そんなに金髪から黒髪に変えたのがヘンだったのかは、知らないけど」

 

「じゃあ男の子は?」

 

「こっちも睨んでくる奴がたまに。目立つのは嫌だから基本避けるけど、絡んできたらまぁそれなりに、隠れて仕返ししてるよ」

 

「うわぁ……私聞いちゃいけないこと、聞いちゃった?」

 

「ふん、君はどうせ誰にも言わないだろ」

 

「えへへ、まぁね」

 

 普段は子供らしく上部を取り繕っているけど、鈴美は長めの付き合いだから素になることが多い。

 彼女は唸るようにして目を閉じてから、ぼくを見る。

 

「一つわかったことがあります」

 

「うん」

 

「あなたはとても鈍ちんです」

 

 

 妙に仰々しく彼女は言った。ぼくが鈍感クソ野郎だって?

 

 

「そこまでは言ってないじゃん!」

 

「じゃあトロい方の意味で、クソ運動音痴野郎だと?そう言いたいんだな君は、なんてひどい奴だ」

 

「だから言ってないって!さては話聞いてないでしょ!」

 

 話は聞いてる。運動音痴は生まれ持ってのものだ。どうやっても高跳びは人間魚雷になるし、球技系は全て魔球となって明後日の方向へホームランする。運動会では毎回気をつけているのにやらかして伝説を作ってしまい、影では「ぶどうヶ丘小の悪魔」と呼ばれているのも知っている。非常に解せない。

 

 余談だが同じ「ぶどうヶ丘」でも、小学校は市立で、中高一貫は私立だ。

 

「…オホン、つまり私が言いたいのはね、吉良くんが自分がカッコイイことに、気づいてないってこと」

 

「………?」

 

「「何言ってんだコイツ…?」みたいな顔しないでよ……」

 

「ごめん、言ってることがわからなかったから、つい」

 

「えー……ほら、おてがみもらったりしない?まぁどこか怖いところとか、あの運動会の事件を見て、「うわぁ……」ってなってるのかもしれないけど」

 

「事件言うな」

 

 ラブレターは時折もらうことがあるが、別に靴箱いっぱいに…みたいなことはない。

 

 それくらい今じゃ誰にでもあるものじゃないのか?ぼくの知識は純文学による所が多いから、どうしても現代の話題に疎いところがある。

 文通なんて今の時代の若者がやってないと気付いた時は、驚いたくらいだ。

 

 というか、さり気なく歳下に貶された。

 

「ぼくの顔の偏差値については知らないけど、君がかわいいのはわかるよ」

 

「ふぇ!?」

 

「すごくかわいいと思う、鈴美はモテたりしないの?ぼくだったらすぐアタックするのに」

 

「………ゼッタイからかってる」

 

「うん。かわいいと思ってるのは本当だけど」

 

「〜〜〜ッ!そういうとこが鈍ちんなの!!」

 

 

 鈴美は顔を真っ赤にして、丸めた算数の教科書で殴ってきた。そんなに怒らなくても……イタッ!

 

「ちょ、やめっ……予想以上に改訂版の教科書が厚くて痛い…!!」

 

「バカアホバカ!」

 

 そのまま可愛らしい効果音(意訳)でポカポカ殴られること数分。5時を告げるチャイムが鳴り、勉強会はお開きとなった。

 

 

 その後ぼくは顔の見目が目立つ理由の一つになっているならと、少しサイズの大きい丸渕メガネと上げ気味だった長めの前髪を下ろした。

 すると前よりクラスメートに距離を置かれることは少なくなった。

 

 依然流行の話についていけないので、友人らしい友人はできず本を読んでいる毎日だが、「普通」らしく過ごせている。

 

 これこそぼくの望んでいる平穏たる毎日だ。

 

 

 しかし学校でのストレスは軽減されたものの、家でのストレスはなくならない。

 

 未だに「目」が終始ある生活と、成長するにつれ増えていく母の愛情とそれに伴うスキンシップ。

 父はそんな母に注意をすることもなく、それなりの点数を取ったり習い事の成績が良ければ母と一緒に褒める。

 

 別に嫌じゃない、嫌じゃないんだ。

 

 

 ただ無性に吐き気のない気持ち悪さが、夜中にふと腹の底から湧き起こってくる。肌が意図せず立ち、親から躾られているのに爪を噛んでしまう。

 

 重い頭の中では同時に、鬱暗い感情が全身に痺れていく。

 思考はその時、真っ黒になるのだ。ただ瞳が異様に熱くなり、脂汗と共にしきりに喉が渇く。

 

 水を飲んでしばらく座っていれば落ち着くが、年々この症状はひどくなっている気がした。

 何かの病気と思い調べれども、該当しそうな病名はない。親に相談しても面倒になるだけなので、言えずにいる。

 

 

 今日も家族3人で川の字になって寝ていれば、いつもの症状が出た。

 

 フラつきながら台所へ行って、渇いた喉を麦茶で潤した。

 頭を抱えて椅子に座っていること10分ほど、気持ち悪さは収まり呼吸も普通にできるようになった。

 

 

「…寝よ………あれ?」

 

 

 ふと頭から手を離して爪を見た時、妙に伸びていた。朝切ったばかりのはずなのに、何故だろう。

 

「まぁいいか、明日切れば」

 

 しかし訪れた眠気には勝てず、そのまま布団に潜り込み眠った。

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