転生したら殺人鬼ポジだった件 作:クリーニング黒兎
駅の窓口で自分の財布を渡してもらったホリィは安堵した。
駅員曰く、高校生の青年が届けてくれたらしい。
「お礼をしたいんだけど、どうしたらいいかしら…」
「それなら高校生の電話番号をうかがっているので、お伝えしますね」
駅員は紙に書いた電話番号を渡してくれた。
ホリィは今すぐかけたかったがあいにくと携帯する電話を持っていなかったため、旅館に帰ってからかけることにした。
それから遅めのお昼を食べて杜王町をぶらりとし、宿に帰ってから早速電話をした。
「私、空条聖子と申します。このたびは財布を拾ってくださりありがとうございました」
『いっ、いえいえ! ……え、空条さんスか?』
「ええ、そうですが…」
『あ…いや、何でもないです。知り合いに同じ苗字の人がいるんで、ちょっと気になっただけで…。俺の名前は東方仗助って言います』
「仗助くん…仗助くんね!」
電話越しでもいい子そうな雰囲気が感じ取れる青年だった。
「お礼はどうやって渡したらいいかしら? 私ここへは旅行で来ているから、明後日には帰っちゃうのよね」
『あ、
仗助は億泰と康一の三人で遊びに行く予定だった。
相談の末、二人が会うのは明後日の午前中、杜王駅の前ということで話がついた。
仗助と電話を終えたホリィは温泉にのんびりと浸かり、寝る前に母に電話した。
『楽しそうね、ホリィ。私もあと10歳は若かったら、一緒に行ってあげられたのに』
「いやね、ママはまだまだ若いじゃない」
『んもう〜この子ってば! ……ああ、そういえばあなたは温泉旅行に行くとは言ってたけど、どこの温泉に行っているの?』
「××って温泉よ! 近くには観光客で賑わっている街があってね、明日ビーチに行くつもりなの!」
『還暦も近いっていうのに、すっかりはしゃいじゃってるわね』
「ムー、だって私はママに似たんだんだもん!」
『ウフフ』
親子の楽しげな会話は、地雷の上でタップダンスをしながら過ぎていった。
母との電話を終えたホリィは、ついでに息子にも連絡をかける。今日は幼いころの息子の姿を思い出すことが多かった。だからつい声を聞きたくなったのだ。
「元気にしてる、承太郎? ちゃんとご飯は食べてる?」
『……かあさんか』
母親を「この
ただホリィが幼い頃の息子の話ばかり語り、さらに「かわいい、かわいい」と連呼していると、「このババア……!」が出てきたのでホリィはきゃっと笑った。
『ったく……うっかりケガでもするんじゃねぇぞ』
「ママの心配してくれてるの? 承太郎は本当に優しい子ね…」
ケガはしていない。あったとしても迷子になったり、財布を落としてしまったくらいで。
その話を聞いた承太郎は深いため息を吐いた。
「そうだ! 承太郎に聞いておきたかったんだけど、確か海には指輪を付けていかない方がいいのよね?」
『無くしたり、海水の塩分で劣化するリスクがあるからな』
「うーん…やっぱり明日、指輪は宿に置いていこうかしら」
『どこの海に行く気なんだ?』
「えっとねぇ……もり………そう、杜王町ってところの海よ!」
ホリィがそう言った後、急に向こう側が静かになった。
「承太郎? どうしたの、承太郎?」
『……杜王町と言ったのか?』
「そうよ、杜王ちょ………ハッ!!」
ホリィの中で電流が走る。私ったらどうして気づかなかったのぉ!? ──と。
承太郎が新種のヒトデを見つけた場所というのがまさしく、「モリオウチョウ」という場所だった。
彼女は息子が来ていた場所に足を運んでいたのだ。間違いなくこれが『運命』というやつだ。
「離れて暮らしていても、私たちは親子の絆で結ばれているのね…!」
『明日杜王町に行くのか?』
「えぇ、せっかくの一人旅行なんですもの。めいいっぱい楽しむつもりよ」
『………そうか』
承太郎はまた長い間をつくって、「楽しめよ」と言った。
ホリィはその言葉に、心の底から「ありがとう」を返す。
息子はすでに家庭を持ち、博士としてその分野で活躍している。
(本当に、立派になったわ…)
小さな手で母に向かって一所懸命にボールを投げていた息子。
運動会で必死に腕を振って、一位を取っていた息子。
母の料理が大好きだった息子。
檻の中で「やかましい!」と彼女に吠えた息子────。
「愛してるわ、承太郎」
一番長い間を置いて、承太郎は「体には気をつけろよ」と呟いた。
○
「えぇ!? 億泰くん、綺麗な女の人に気を取られてたら、お父さんがいなくなっちゃったんだ……無事に見つかったのならよかったけど…。
…あっ、そうだ! いきなりで悪いんだけど、僕今日ちょっと急用ができちゃってさ。それで……うん、うん…ごめんね仗助くん! また今度三人で遊びに行こう!!」
電話を切った後、青年──広瀬康一はフーッと息を吐いた。
話は遡ること昨日の夜。さあ僕も明日に備えて早めに寝るか、と思っていたタイミングで電話が来た。
相手の名前は『空条承太郎』。この時点で何かあるとは思った。
内容は母親が杜王町に来るので、危険な目に遭わないか見守ってほしい──とのことだった。
ついでに、異母違いの弟にも接触しないよう、根回しを頼まれた。必要ならば仗助にホリィが来ていることも伝えていいと。ただし承太郎としては、これ以上家のゴタゴタに仗助を巻き込みたくないようである。康一はこの意思を汲み取ることにした。
ちなみに、ホリィは異母弟の名前や住んでいる場所までは知らないらしい。
両方やらなくっちゃあならないのが、あの空条承太郎に見込まれた男の大変なところだ。
「承太郎さんのお母さんか。きっとすっごい美人なんだろうなぁ…」
ジョースターの血はみな美形だ。仗助や承太郎がそれを物語っているし、80近かったジョセフも皺がある上で端正な顔立ちだとわかる。
ならば間違いなく空条ホリィも美形だ。これは沈んだ太陽が朝になったらまた昇ってくるってくらいに分かりきったことだ。
いったいホリィはどんな人物なのか。ドキドキした気持ちと、重大なミッションの裏でその日の彼の寝つきは悪かった。
翌朝になると承太郎からもらった情報を頼りに、康一は海に向かった。
(金髪で、髪はミディアムロング……耳にはイヤリングを付けてて…身長は約170…………高いなぁ)
あとは還暦間近であり、生来の明るい女性で、目は承太郎やジョセフに似たブルー系の瞳であると。
情報が詳細なのと、海外の旅行客が日本の客よりも圧倒的に少ないため、探せばすぐに見つかりそうだった。
(僕のエコーズを使いつつ、ホリィさんの身を守るぞ!)
ところで──と、康一は思った。
「承太郎さんってあの雰囲気だと想像できないけど、結構母親思いなんだなぁ…」
○
友人とマイアミのビーチに行ったあの頃は、数多の異性がホリィに声をかけようとする前にボディーガードに捕まり、海へ投げ捨てられていた。
(もう私もおばちゃんだもの、声をかけてくる人はいないわよねぇ)
なんて思いつつ、声をかけられたらかけられたで嬉しくなってしまう。彼女の心は永遠の乙女であるから。
本日のホリィの格好はショートパンツに色白の脚がスラリと出た格好だった。上はパーカーに、サングラスとサンバイザーである。
海に来たのも久しぶりで、潮の風が気持ちよかった。
人はサマーシーズンも相まって多い。彼女は砂浜の上に寝転がり、波の音を楽しんだ。
「ねえお姉さん、もしかして一人?」
そんな折、彼女に声をかけてきた若者がいた。
「あっ、日本語じゃまずったか…。ハロー、そこのナイスなウーマン!」
「…………えっ、もしかしてあたしのこと?」
「おっ、なんだ! 日本語わかるんすね」
どうやらこの男はホリィをナンパしているらしい。彼女はまさかと思ったが、相手は「私おばちゃんよ?」と話しても食らいついてくる。年上なのが逆にいいんすよ! とのことである。
「つか、え……本当に還暦近いの? 40代ぐらいにしか見えないすけど…」
「いやだぁ、日本人はお世辞が上手いって私知ってるんですからね」
「………還暦ィ…??」
しばし呆然としていた若者は首を振り、ホリィに一緒に遊ばないか提案する。
ただホリィはそれを断った。誘いは嬉しいが人妻の身だ。愛している男がいるのにほかの男性と遊ぶのは褒められた行動ではない。
「……わかりました。海を、楽しんでください…」
「でも、誘ってくれて嬉しかったわ!」
聖子のホーリースマイルを食らった青年は心臓を押さえ、ふらつきながら去っていった。
そこからまた彼女が寝の体勢になった10数分後。今度は別の男性が声をかけてきたが、先ほどと同様に断りを入れた。
そんなことを繰り返すこと数度。複数の男性に絡まれた際、彼女はとうとう困ってしまった。
「その、だからね……」
「いいじゃん。お姉さん一人なら、俺たちと一緒に海を楽しもうよ!」
何度断っても相手が引き下がらない。
(僕が間に入らないとまずそうだ…)
この様子を見ていた康一もその場から立ち上がり、ホリィの元へ駆けていく。
不穏な空気が漂い始めた中、男の伸ばした手が彼女の腕をつかもうとした。
「えっ?」
男の腕が空中でピタリと止まる。まるで
その拍子にたたらを踏んだ男は地面に尻もちをついた。
「嫌がっている女性を無理やり誘うのは感心しないね」
ホリィと男たちの間を縫うように現れた壮年の男は、口元に笑みを浮かべて転んだ男を見下ろす。
「砂浜に足を取られて転んでしまったようだが、ケガはないかい?」
壮年の男は手を伸ばし、男の手を引っ張り立ち上がらせる。しかし助けてもらった方の男の顔はどんどん青白くなっていく。
その変化に気づいた男の仲間の一人が「大丈夫か?」と声をかけた。
「もっ……もう行こうぜ」
「ハァ? マジで急にどうしたんだよ、お前…」
「いいから…!!」
男は仲間の襟首をつかみ、足早に立ち去る。
この男のみが感じた恐怖。それは自分が壮年の男に手を引っ張られて立ち上がったのではなく──、何者かに
男は後ろを振り返り、女性と壮年の男がいる場所を見る。
「ッ……!!」
その男の後ろに何かがいる気がして、背筋がブルリと震えた。
○
壮年の男に助けてもらったホリィは、その流れでビーチの近くにあるカフェでお茶をすることになった。水着でも上着を着ていれば入店が可能な店で、海から寄ったと思しき客がチラホラと見受けられる。
(見た感じ、30代くらいって感じかしら? 承太郎と歳が近そうね…)
壮年の男はクロップドパンツに、半袖のラッシュガードの上にパーカーを羽織った格好である。
髪を後ろに撫でつけている顔立ちには気品があり、タレ目がちの目元がそこに甘いスパイスを加える。
承太郎や若き日のジョセフを知るホリィからすると、彼らとはまた違った種類の美男子だった。
「この海へはお一人でいらしたのですか?」
「そうなのよ! 実は偶然ペア温泉旅行券が当たったんだけど、いっしょに行ける人がいなくてねぇ…」
話していると、ホリィが頼んだクリームソーダが届く。男の方はアイスコーヒーを頼んでいた。
彼女はストローに口をつけ、エメラルドの味を楽しむ。父親だったらこんな時、迷うことなくコーラを頼むんだろうなと考えながら。
男はそんなカノジョの様子を見つめて、ゆるりと目に弧を描く。
「お綺麗だとは思っていましたが、愛らしい姿もなさるんですね」
「あらっ! お世辞はもうお腹いっぱいよ、あたし」
「おや…ぼくはこれでも本気なんですがね」
男は肩をすくめてみせる。
「日本へ来られてからは長いのですか?」
「ええ、帰化してもう30年くらい。私が『聖子』になってから…ねぇ」
「『聖なる子』と書いて、聖子さん?」
「そう、その聖子。『松田聖子』の聖子よ」
「良い響きの名前ですね」
「スイートなお兄さんのお名前は?」
「………スイート? わたしが?」
「だって、甘い感じのお兄さんだから」
男は苦笑した後、「吉影です」と名乗った。
おみくじの小吉の『吉』に、『影』でヨシカゲ。
「吉影くんは、海へは一人で遊びに来ていたの?」
「恥ずかしながら、友人もいない独り身なものでして。そのような身でも、たまには海の風に当たりたくなるものです」
「そうだったのねぇ…」
「聖子さんはお一人で、寂しくありませんか?」
「………そうねぇ。寂しく感じる時間も、多くなったわ」
子育てが終わってから、胸にぽっかりと穴が空いてしまった気がする。
ただ、その穴は息子の顔を見るとたちまち埋まって、また時間が経つと空いていく。
それがきっと、『寂しい』という感情だった。
「…吉影くん?」
ふいに、ホリイの手に男の手が重ねられる。
甘い目元はより甘さを滲ませていた。彼女は思わず目を丸くする。
「本当はぼくも、貴女に近づいた男たちのように、声をかけようと思っていたんです」
「あら、そうだったの…?」
「聖子さんはお気づきでないようですが、貴女にはおとなの女性の魅力がある」
「ふふっ、照れちゃうわ」
でもダメよ、とホリィは続けて、やんわりと吉影の手を握る。甘さを含んでいた瞳が一瞬、猫のように細まった。
「私には愛する夫と、愛する息子がいるんですもの。…ごめんなさいね?」
「貴女に寂しさを感じさせるなんて、罪深いと思いますがね」
「あたしが独身だったら、きっと簡単にコロッと落ちちゃったわ」
「……本当に残念です」
吉影はホリィの手を取り、指先に軽く口づけを落とす。あらまぁ、とホリィはうっすら顔を赤くした。まるで王子様のような行動だった。
「海を楽しむのも結構ですが、お綺麗な貴女は指輪をなさった方がいいですよ」
ホリィの左手の薬指は普段指輪をつけているため、そこの部分にへこみができている。触れていた手から指を離した吉影は、残っていたコーヒーを飲み干した。
「わたしはこれで失礼します」
彼はそう言うと、お代を置き去っていった。
二人分にしては余剰な金が出てしまう金額だったが、行ってしまったことには仕方ないと、彼女はそれで会計をする。
「…もうちょっと海で遊ぼうと思ったけど、帰りましょうか」
サマーシーズン。
杜王町の夏は観光客の熱気で白熱していた。
○
旅行の最終日、杜王町へ向かおうと駅に着いたホリィの前に、学生服姿の高校生が現れた。
「学生服……! もしかして、あなたが仗助くん?」
「えっと…僕は仗助くんの友だちの、広瀬康一って言います」
ホリィ曰く、仗助は髪型がバチッと決まらず洗面台の前からかれこれ数時間動けなくなっているらしい。
「そうなの? 若者のファッション意識って高いのねぇ。承太郎も学ランを着続けるこだわりがあるみたいだけど…」
「グフッ……そ、それで、僕が代わりに受け取りに来たんです!」
「あら…じゃあ一応、仗助くんに連絡してお──」
「じょ、仗助くんは昨日友だちと遊んでた時に、携帯電話が壊れちゃったんですよ!!」
「そうなの?」
「そ、そうなんです…」
「ふ〜ん…?」
承太郎とよく似た色の瞳にじっと見つめられた康一は、自分がさばかれる前の生簀の魚になった気分になり、顔からだらだらと汗を流した。
しばらく彼の顔を見つめていたホリィはニコッと笑う。
「ならしょうがないわね! わざわざ受け取りに来てくれたんだから、康一くんもよければこれ、仗助くんと一緒に食べて!」
「これは……」
康一は受け取った紙袋の中身をチラリと見た。包装紙にシンプルなロゴが印刷されており、逆にそのシンプルさが高級さを際立たせている。
「チョコよ。お礼を何にしようか迷ったんだけど、子どもならチョコレートが一番いいんじゃないかと思って」
「(お金じゃなくてよかった…)あ、ありがとうございます! しっかり仗助くんに届けますね!!」
「えぇ、お願いね、康一くん」
ホリィは康一に元気よく手を降り、その場を後にした。
(……やっぱり、すごく綺麗な人だよなぁ。外見もそうだけど、あの綺麗さって心の清らかさが滲み出ているからこそのビジンさっていうか…)
もう一度紙袋の中を見た康一はそこで、中に手紙が入っていることに気づいた。
ホリィや仗助に悪いと思いつつ一応検閲官としてチェックしたが、特に問題はなかったので、この紙は仗助に届けることにした。
その後チョコは、学生たち三人で美味しくいただくことになった。
2泊3日の奇妙な因果が働いた旅。
家に帰ったホリィは、早速息子に旅行の感想を連絡した。
●
時は流れ、21世紀が始まり出した。
世間と関わりの薄い吉良は、静かなる正月を送っていた。
午前中は少し積もった雪をかき、その後はこたつにもぐってゆっくりと読書をする。そのすぐ側──天板の上で大きな図体を窮屈に丸めているのはキラークイーン。見慣れてしまった光景に、吉良自身もう注意することはない。
一方で猫草の方はストーブの近くでうとうととし、写真の幽霊の方は正月番組を見ていた。
────ピンポーン。
「……ん?」
そんな折、インターフォンが鳴った。
「…誰だ?」
回るべき親戚連中のところには昨日のうちに向かったし、学生連中にも乞食に来る前にお年玉を渡した。
あとは彼の自宅に来る予定のある者はいないはずだ。
吉良は内心訝しみつつ、玄関へと向かう。外には子どもと思しき人影がある。
(………まさか、川尻早人?)
早人はすでに中学生の年齢になっているはずだが、若人のお年玉への執着が凄まじいことを、彼は昨年に不良高校生二名が襲来したことで重々と理解した。
早人はその手のタイプに見えなかったが、お年玉の魔の手に堕ちてしまったのかもしれない。
吉良はまだポチ袋があったか思い出しつつ、サンダルを履いた。
「Take this!!」
「うぐっ!」
戸を開けた瞬間、吉良の顔面に雪玉が命中した。雪玉の死骸が落ち、のぞいた彼のこめかみがピクピクと震える。
「I got it!!」
ガッツポーズを決めた少女は、ウサギのように飛び跳ね白い服に抱きついた。
「……!!」
その、白い服の正体に気づいた吉良の顔から血の気が失せていく。その拍子に、少しの貧血も相まってぶっ倒れそうになったところを、背後からキラークイーンが支えた。
「空条、承太郎………」
悪夢なんだろうかコレは? 初夢が悪夢? いや、そうであったらどんなによかっただろう。これは現実だ。夢なんかじゃあない。
「一応、あけましておめでとう──と言っておこうか」
「Happy New Year!! KIRA-san!!!」
徐倫は相変わらず元気いっぱいで、父から離れた後は雪だるまを作りはじめた。
何とか貧血から立て直した吉良は、承太郎とは別サイドにいる老人へ視線を向ける。
当の老人、ジョセフ・ジョースターはニコニコと笑い、吉良にお年玉を差し出した。吉良は断ったが、老人の妙な笑顔の迫力に押され、渋々と受け取る。
「ッ!」
落とし玉を受け取ろうとしたその瞬間、彼の手にイバラが巻きついた。
吉良は困惑を浮かべながらジョセフへ視線を向ける。
「……ジョースターさん?」
「何じゃね? 吉良くん」
「………」
白い悪魔の登場に意識のすべてを持っていかれたが、よくよく見ればジョセフの様子がこう、吉良の知った好々爺の雰囲気とまったく違う。
笑顔の裏にある、まるでサバンナでライオンとか、ジャングルでゴリラに出会ってしまったような威圧感。吉良はそんな圧をジョセフ・ジョースターから感じている。
「やれやれだぜ……今は俺の家族そろっておふくろの家に帰省していてな。じいさんはそのオマケだ」
「フン…家族との仲は良好そうで何よりだよ、空条承太郎」
「それで、だ」
承太郎がなぜか自分の背後へ視線を向ける。不可思議な態度に吉良が眉を顰めた瞬間、大きな背の後ろから明るい声が響いた。
「ジャ〜〜ン! ビックリサプラ〜〜〜イズ!!」
ピースを作りながら承太郎の背後から飛び出たのは、金髪の女性。その女性を見た直後、吉良の表情が固まる。
「まさか吉影くんが承太郎の知り合いだったなんてね! ママビックリしちゃったわ!」
「…………聖、子さん」
「聖子より、わしが名づけた「ホリィ」と呼んでほしいのう」
「もう、パパったら今だにあたしのこと『聖子』って呼ばないんだから!」
「Grandma, let's build a snowman together!」
「オーケーよ、オーケー! ジョリーンちゃん!」
ジョセフ・ジョースターを「パパ」と呼ぶこの女性。
そして承太郎の娘、空条徐倫に「
「………来ていただいたところ大変申し訳ないが、頭痛がするし吐き気もしていてね…」
「そりゃあ大変だな。こんな寒いところに突っ立ってねぇで、中に入った方がいい」
「そうじゃな。中に入って、茶でも飲みながらわしらとゆっくり
「徐倫はかあさんとしばらく遊んでな」
「Yeah!!!」
新年早々、吉良は星になった。
キラッ☆だけに。