転生したら殺人鬼ポジだった件 作:クリーニング黒兎
彼が『トクベツ』になるには、この幽霊の力が必要だった。
まず最初にやったことといえば、この幽霊を閉じ込めることだ。
デッドマンなどの幽霊はファミリーレストランなど不特定多数の人間が出入りするところは自由に出入りできるが、個人の家となると話は変わってくる。そういった個々人のテリトリーに入るには、家主の『許可』が必要になる。
怪談とかで幽霊がドアをコンコンとノックしてくるのもこれが理由だ。
だが逆に、幽霊が入っている状態で出入りの『不許可』を取ったらどうなるだろうか?
────そう。その幽霊は家の外に出ることができず、閉じ込められる。
そこにさらに特定の部屋から出られないよう条件を足してしまえば尚良し。
だがそれだけではまだ不十分だ。相手は中を自由に動くことができてしまう。
だったら────そう。
なんて残忍な考え方なのだろう。しかし相手は死んでいる人間。幽霊に残酷もクソもなかろう。
手足は触れてしまえば地面に落下した豆腐のようにあっけなくちぎれる。
幽霊の利き手は右手らしかったので、その手以外の四肢を彼は奪った。逃げようとしてもすでに『不許可』を取った。幽霊はトムに追い込まれたジェリーのようだった。
それでも幽霊は怯えるどころか、彼を眼光だけで射殺さんばかりに睨めつけた。
その視線にデッドマンがモンスターハウスを掃除したことも相まって、自分が内側から破裂するのではないかと、彼は臆した。
だが彼の身には何も起こらなかった。
幽霊はひと言、こう言っていた。
「お前を殺せなくて、残念だよ」
────と。
●
それから、奪った四肢は今後幽霊の交渉の材料に使えるよう保管した。この手足の運び方は少々コツがいる。犬が幽霊の体を噛みちぎって持っていく様子を見たことがあったため、自分でも同様のことができるという確信はあった。
触れた瞬間崩れないように手に意識を集中させ、箸で豆をつかむように慎重に運ぶ。
その結果幽霊の手足を運ぶことができた。
(俺は優しいからさあ、お前の名前を残してやることにするよ、デッドマン)
幽霊の名前は『デッドマンQ』。その、忘れがちなQの方から『九十九』という苗字を選び、そこに『乱』を足して『九十九乱』のペンネームを作った。
これで幽霊が書いた小説が落選すれば腹を抱えて笑い死ぬところだったが、その小説は賞を取った。
その時彼の心の温度はさらに下がって、彼自身が幽霊になった。
それから、それから……。
懐かしい男と出会った。同じ江戸川乱歩好きの、吸うたばこの銘柄も同じな男。ただ向こうは江戸川乱歩のミステリーではなく、
この編集の男と出会ったのはさながら、かつての戦友に出会ったような気持ちだった。ただ、彼が褒めるその作品は、『乱太郎』が書いたものではなかった。
自分のものではない作品を彼が褒めるたびに、腹の中で重たい感情が積もった。それはきっと罪悪感である。相手を騙していることへの罪悪感。自分の作品が売れると信じてくれた男を裏切ってしまったことに対する罪悪感。
幽霊への罪悪感はないのかって? 幽霊に抱くものは「はよ成仏しろ」だけで十分だろう。
幽霊への執筆依頼は、四肢を脅──交渉材料に使うことで、無事に書かせることができた。
この幽霊は五体満足であったことからも察せるように、自分の
幽霊は執筆する上で注文が多かったが、作家の『こだわり』を理解していた彼は、その部分は惜しみなく手を貸した。
そうしてできあがった新作は面白かった。自分が書くよりもよっぽど。
自分にミステリー小説を書く才能はないのだと、改めて実感させられる。
ただ、彼はトクベツな人間なので、ミステリー小説を書く才能がないとかは、もうどうでもよかった。
『トクベツ』になることに過程や方法などどうでもよいのだ。『トクベツ』になれればそれでいい。
『トクベツ』ってそもそも何だろうか?
彼は分からなかったが、彼は自分が『トクベツ』な人間であると確信しているので、彼はトクベツな人間になることにした。
そして………あの日、あの編集の男から連絡があった。
会って、どうしても確認したいことがあると。
待ち合わせはどこにしようかと話をして、編集の男は彼が住んでいたオンボロアパートにしよう、と提案した。
会う前から嫌な予感はしていた。当たってほしくはないと祈っていた。
アパートの前で落ち合った編集の男は、白い息を吐きながらアパートを見上げる。
「実はさ……この間お前と飲んでから、幽霊アパートが気になって仕事の帰りに来てみたんだよ」
どの部屋も明かりは一切なく、真っ暗だった。
「誰もいないはずなんだ。いないはずなんだよ。でも……ふいにお前が住んでいた部屋の郵便受けに、何かの請求書が挟まっているのに気づいてさ。ああ、住所の変更し忘れてんだなと思って、それで……」
ドアの前に立った彼はその時、中からかすかな物音を聞いた。
気になりドアに耳をそば立てると、ズル…ズル…と、何かを引きずるような音が聞こえた。
幽霊かと思った彼は、悲鳴をあげて一目散に逃げた。
「……ハハッ! もしかして話ってのは、その幽霊を確かめようって魂胆なのか?」
「そうだ。お前にさ、一緒に確かめて欲しい」
「………いや、だとしても中には入れないだろ」
「なあ、前の鍵とか持ってないのか? どうしても開けて欲しいんだ。頼む。頼むよ………一生のお願いだッッ!!!」
「ッ……きゅ、急になんだよ!!」
編集の男に肩を揺さぶられていた彼は、自分をつかんでいた手を振り払う。
荒々しい息を吐きながら相手を見ると、自分のよく知ったはずの男は、よく知らない表情を浮かべていた。口元は笑っているのに目は一切笑っておらず、そのアンバランスさが不気味だった。
「なあ、お前本当にどうしちまったんだ? 何かヤバいものでもやってるのか?」
「先生……お分かりですか? あの日、世界が終わってからもう7年の歳月が経とうとしています」
「………お、お前ッ、マジでヤバいものを…」
「僕は世界の終わりが信じられませんでした。何らかの陰謀が働き、世界は虚構の色で塗り固められてしまったのではないかと思うのです」
「………」
「僕は信じません。先生には謝らなければなりませんね。あなたに嘘をついていたことを」
「嘘……?」
「僕はあなたに、作家の夢を諦めて出版の業界に入ったと言いましたが、あれは嘘なのです」
「………ハ、ァ?」
「先生は僕の境遇に心から同情してくださった。でも、嘘なのです。だから申し訳ありません」
「お前………お前さ、本当にどうしちゃったんだ?」
あの真面目でどんな時でも情熱を注いでいた男は、どこに行ってしまったのだろう?
夢を諦めたと聞いて同情と嘲る気持ちを同時に抱え、自分のこころの醜さに苦しんでいたあの日々の意味は?
「乱太郎先生の原稿を……ああいえ、その時は乱太郎先生の原稿だと気づかなかったわけですが、僕は思ったんです。神の死が信じられず、隠された陰謀を暴こうとKO談社に入り調べていく中で、ついぞ神の死を覆せなかった僕の前に、先生の原稿が現れた。『運命』だと思った。
文体から感じられる息づかいや、ささやかな美しさを奏でる文字の言葉選び。僕以外の人間が気づかなくとも、僕は気づきます。────いや、僕だけが気づきます。なぜならこれは僕のために向けられた、神のメッセージだったからです!! 『神は死んだ』? ────否ッ!! 神は生きていた!! 僕は信じていました。僕だけが信じていました。この世界の陰謀によって亡きものとされてしまったあなたは、僕に生きていることを伝えようとしてくださったのだと。
だから、ドアを開けろ」
ヒヤリとした感覚が、彼の首元に当たる。
編集の男が持つそれが、街頭の明かりを浴びて鈍い光を反射した。
彼の呼吸が引きつる。幸か不幸か、一応このアパートのドアを開ける鍵は持ってきていた。現状、首の皮一枚繋がったところだろうか?
開ける最中も首に刃物の感触が伝わり、手が震えるせいで上手く開けることができない。
それでもどうにかノブを回し、中を開いた。
「
編集の男は靴を脱ぎもせず、一目散に中に入っていく。未だ捕まっている彼もその勢いに押され、ドタバタと廊下に大きな音を鳴らした。
「ここに………ここに神が…!! ああ、神ィ!!!」
そして書斎兼、寝室に使っていたその場所に、男の手が触れた。ドアを開けた編集の男は一歩、中に踏み出す。
「神……?」
部屋の周囲を探し回るが、そこには誰もいない。あるのは机の上にあるパソコンや、本棚にベッドがあるのみ。
「ど……うして? パソコンはあるが………神の姿がない? 神……神!!!」
編集の男は彼をその場に残し、キッチンやトイレなど、人が入れそうな場所を探し回る。押入れだったり、浴槽の中だったり、キッチンの戸棚だったり、カーテンの後ろだったり、ベッドの下だったり。
だが、神はいない。いなかった。
「お………お前、がッ、神を殺したのか??」
「そもそも、アンタがさっきから言ってる神って誰なんだ」
「お前神のことも知らないのかァーッ!!!? 神はな、『神』だ!!! しかしヒトの名前で神の名を表すとしたなら、神はこう呼ばれていた」
────星ノ、桜花と。
「星ノ桜花……」
「世界の陰謀により、亡き者にされてしまった我らが神の星ノ大先生である。僕は大先生を殺したこの者を、今地獄に葬ります」
「えっ?」
「死ね」
その後は散々で、刃物を振り回す頭のネジが一本どころか、すべて外れている狂人から逃げた彼は、手元にあった灰皿で頭を殴りつけ、男を殺してしまった。
昨日までは友人だと感じていた男が、今や別の生き物にしか見えない。嘘を吐かれていたことへの怒りや、逆に自分が彼を騙していたことの罪悪感があったはずなのに。
驚くほどそれらが消え去って、全部お前のせいだという感情と、死体のグロテスクさに吐き気が込み上げていく。
耐えきれず一度トイレに駆け込み嘔吐した彼は、フラつきながら廊下の床に座り込んだ。
『どうだい? 「トクベツ」な人間になれた感想は』
自分の部屋から、そんな声が聞こえた。
彼はもう一度死体を見つめ、頭を壁に預けて天井を見上げる。
これが、『トクベツ』になるということ?
だったら──なんと
これまで凡人であった彼はようやく、『トクベツ』な人間になれた。
いや、元から自分は『トクベツ』な人間だった?
わからない。もう何も考えたくないが、自分が捕まらないようにすぐにでも証拠を隠滅しなければならない。
こんな狂人のせいで自分が捕まるなどごめんだった。
「ハハッ…………ハハハ!!!」
彼はひとしきり笑い、遺体の処理に移ったのだった。
そしてこの事件の発生から数週間後、メディアに数多く露出していた『九十九乱』の逮捕により、世間は騒然とすることになる。
◯
時は『九十九乱』の逮捕騒動から遡ること、数日前。
アパートに放置されたままの幽霊は、ベッドに寝転がった状態で本を読んでいた。
すでに部屋にある本は何周もしており、飽き飽きしている。
『逃げたいのは山々なんだが、コイツが家を爆破させた後で、自分の手足がきちんと帰ってくる保証がないからな……』
幽霊の男────デッドマンが「コイツ」と呼んだのは、現在体が不自由な己の代わりにベッドに乗せたり、本を取ったりと甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる獣人の姿をした存在だ。
幽霊の男に取り憑くという、非常に奇妙な生態も持っている。デッドマンはこの背後霊のようにまとわりつく猫を鬱陶しく思っていたが、今回の一件でその認識を改めた。コイツは猫の手も借りたい時に、しっかりと借してくれる猫だ。
『…ニャ?』
『なんだ、誰か来たのか?』
ネコはネコらしく、耳を動……かすことはできず、ただそれっぽい動作を取り外を見つめる。
一度、ここに訪れる家主以外で人がやってきたことがあったが、そいつは悲鳴をあげて逃げてしまった。
『人数は一人か? その数の分だけ鳴いてみろ』
『ニャーニャー』
『二人か……』
そうこうしている間に、玄関のドアが開く音がした。そのすぐ後に女のものと思しき声で、「いったいどうやって開けたんですか!? っていうか不法侵入ですよ!!!」と聞こえてくる。
『足音的にもう一人は男かな……一応潜んでおくか』
ネコはデッドマンをベッドの下に引きずり、自分も(理屈は知らないが)小さくなってその下に隠れる。
足音は一旦奥へ遠ざかっていき、それから間もなくして部屋のドアが開いた。
「ろ、ろろっ、露伴先生!! 本当に早く出ましょうって!!」
「君はゴーストライターの正体を知りたくはないのか? 僕は知りたいねッ!! それに行方不明の編集の男と関わりがあった『九十九乱』──改めて『乱太郎』の部屋は、「
「でもぉ〜〜」
「それに見ろ、この部屋。テーブルにはパソコンがあるし、この床に置かれた本なんか今まさに読んでいる最中で投げ出したようじゃないか。……! ベッドもついさっきまで人が寝っ転がってたって感じだ!! しかも………温かくないッ!! こりゃあマジに『ゴーストライター』が
「そんな
「この世には幽霊どころか吸血鬼だっているんだ。
だからこそ、と露伴は膝をつき、ベッドの下を覗き込んだ。
「ベッドの下に幽霊がいるのはベターな話だが……………」
「露伴先生?」
「……………」
「もう一度覗き直されましたけど……だ、大丈夫ですか? 顔が青白いですよ!!」
「……ちょっと待ってくれ」
一旦脳の処理に頭を回すことにした露伴。その間泉もベッドの下を覗き込もうとしたが、露伴が首根っこをつかんで止めたことで、「ぐえっ」とかわいらしい声が上がる。
「君、霊感ってあるのか?」
「無いですけど…」
「手足がない奴がベッドの下にいるって言ったら──」
露伴の説明の途中で、泉はバッと立ち上がり廊下の方へ逃げた。それから恐る恐るドアから顔を覗かす。
「ろ、ろろっ、露伴先生が蒼白になるぐらいなんですよね…??」
「……ああ」
「私絶対見ません!!」
「嫌なら外に出てろ」
「分かりました……露伴先生もすぐに出てきてくださいよ!! 不法侵入してるってことも、忘れないでくださいね!!!」
泉が出て行き、部屋に残されたのは露伴一人。
彼は脳裏によぎった
「………」
『……ドーモ』
ベッドの下に潜んでいた幽霊は、右手以外の四肢がなかった。
服は模様の如き部分に穴が空いているスーツ姿で、その下にワイシャツは着ておらず胸元が大きく開いている。首に巻きついているのはネクタイで、時代錯誤の三高帽がこの男の顔の大半を覆っていた。
のぞく髪の色は金髪で、短くスポーツ狩りにされている。
『話から察するに、アンタはオレが出した『
「何者なんだ、貴様…?」
『君がご存知のとおり、
◯
デッドマンはこの現状から脱する上で、他者の介入が必要だと考えた。
あの男のメンタルからすると、自分の嘘がバレれば精神的に追い込まれ、破滅の道を歩むことは容易に想像がつく。
そうすれば自分が付け入る隙も出て、手足を取り返せる可能性があった。男が約束を破り、手足をどこかへ捨てていたらどうしようもなかったが。
しかし感覚がフィードバックする『ネコ』の手足が健在だったこともあり、おそらく無事だろうとは思っていた。
SOSを謎解きにしたのは、男に気づかれないようにする意図があったのと、ちょっとした遊び心が働いた結果である。
この謎に一番に気づいたらしいイかれた男はしかして死んでしまい、あの男が必死こいて掃除をしている時に「おお神!!!」とこちらに突っ走ってきたので即爆破した。幽霊も鳥肌が立つことがあるのだと、デッドマンはこの時はじめて知った。
今回の二人の訪問者のうち、片方は
『オレはこの家の家主に、このとおりな体にされてしまってね。オレが『視』えるなら、手足を探す手伝いをしてもらいたいんだが……おい、待て! 触るんじゃあないッ!!』
「うおっ」
露伴が幽霊の腹に触れた瞬間、デッドマンの胴体が触れられた部分から亀裂が走り、バラバラになる。
胸部から上の状態になったデッドマンは、深いため息をついた。
「体が、バラバラになった…!?」
『あのなあ、幽霊の「魂」は生者の「魂」の力に耐えられないんだよ』
ネコがいるデッドマンは魂の強度が高く、生者が意図的に攻撃してこなければちぎれることは早々ない。
ただしこの男の場合、あきらかに魂──いや、「精神」のエネルギーが高い。そんな体で気安く触られたら堪ったものではない。
(クソッ、一難去ってまた一難か…)
デッドマンは右手を伸ばし、ちぎれた胴体をつかんで自分の体にくっつける。その様子を男は観察するように見つめていた。
「素晴らしいな……。これが幽霊のリアリティか」
『………』
「ナァ、いつまでもニートのようにベッドの下に引きこもってないでさ、出てきたらどうなんだ?」
『君は相手が幽霊だろうが、人を傷つけたら謝罪するって当たり前のことを親から教わらなかったのか?』
「すまなかった。ほら謝ったぞ? 出てこいよ」
『……チッ』
幽霊は右手を使い、どうにかベッドの下から這い出る。三肢がない肉体は少し移動するのも苦労する。ネコがいなければ彼はストレスで気がどうにかなっていたに違いない。
『……は?』
顔を上げた彼の前に、シルクハットを被った子どもが浮かんでいる。
直後デッドマンは意識を失い、パラッと本のめくれる音が響いた。
「幽霊の記憶を読めるなんて、こんな経験滅多なことじゃできないぞ…!!」
一方でデッドマンにヘブンズ・ドアーを使った岸辺露伴は、興奮冷めやらぬ表情で紙に手をつける。
クリスマスのプレゼントを開ける子どものような気持ちでページに目を通した彼は、はじめの文字を読んだ。
「なになに? 『わたしの名前はデッドマンQ。本名は────』」
露伴の手が止まる。目に入ったその文字に彼の思考が止まったことも原因だが、同時に彼の視界に入るその存在に意識が向いている。
獣人型のソイツが、本になった幽霊の中から体を覗かせ、ジッと露伴を見つめている。
露伴はこの存在を────否、このスタンドを目の当たりにしたことがある。
「キラー、クイーン……」
その言葉に応えるように、ネコは『ニャー』と鳴いた。
◯
自分の『幽霊の体験』を語ることを条件に、漫画家──岸辺露伴の協力を得られたデッドマンは、無事に己の四肢を取り返すことができた。
九十九乱は彼の手足をボロアパートとは別で契約した自分の住まいに隠していたようだ。
経緯としてはまず露伴がその男からデッドマンがボロアパートから出る『許可』を取らせ、その後四肢を合体させた。
ついでに九十九乱の記憶を読んだ岸辺露伴は、手足の具合を確かめるデッドマンをチラリと見て、猫がフレーメン反応を起こしたような妙な顔をした。
それから露伴の住む杜王町に移動し、長々と幽霊生活を語ることになった。
デッドマンの『死に方』を興味深そうに聞いていた漫画家は、彼の目的を知ったところで瞳を伏せる。
「………お前は、探しているのか」
純粋な憐憫よりももっと、深い感情が露伴の顔には浮かんでいた。
この漫画家がなぜそんな表情をしたのか、デッドマンにはわからない。彼には生前の記憶がないのだから。
ただこの青年と接していると、やけに腹立たしく思うことが多かった。
長話を終えた後は、岸部邸を後にした。
デッドマンは「自分だけの家に住みたい」と言った時に、「ならおすすめの場所がある」と教えられた場所に足を運んでみることにした。
『幽霊屋敷、か…』
この町で
向かってみるとそこは静観とした場所に建っており、古き良き日本家屋が目に入った。
表札を見た彼は目を丸くしてから、少し逡巡しつつも玄関に足を運ぶ。
自分が幽霊として一番最初に目覚めたのは、この杜王町という場所だった。
なら、その可能性はある。この家が、
恐る恐る手を入れれば、遮られることなく中に入り込んだ。
彼は手を戻し深呼吸をして、一歩踏み出す。
不思議と、言うべき言葉は分かっていた。
『ただいま』
◯
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ーーーー太陽が地平線の彼方から。
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ーーーー潮風が彼女の髪を撫でる。
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ーーーー世界は微笑み、
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ーーーーお互いの冷たさを感じ合って、
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ーーーー額をくっつけ、笑い合う。
-・・ ・・ ・・・- ・-・・ ・・ -・-・・ ・・-・- -・-・ ・-・・・ ・・・- -・--・ ---- ・・-・・ -・・・ ・・
ーーーーぼくが君に送る言葉。
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ーーーー「遅くなってすまない、鈴美」
--・・ -・ --・ -・・・ ・・-・・ -・-- --・-- ・--・ ・-・--
ーーーー二人は溶け合って、
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ーーーーそこには最初から何もなかったように。
--・-・ ・-・・・ ・-・・ ・---・ ・・ ・-・・ ・・ --・・ ・・・-
ーーーー潮風が吹く。
--・-- -・-・- ・-・・ ・・ ・・・- -・--・
ーーーー朝が来る。