転生したら殺人鬼ポジだった件 作:クリーニング黒兎
あとオリキャラ出ます。後書きにPicrewの[きゃらめで遊ぼう]でなんとなくはりきっちゃって作成したオリキャラのイメージ載せてます。イメージのご参考にしたい方はよければどぞ。
受験も終わり、ぼくは無事特待で「ぶどうヶ丘高校」の中等部に入学した。
ここは私立だから、殊更に小学校の同級生は少ない。
問題の体育は、「普通」にやろうとしても混沌を呼び起こしてしまうだけなので、極端に手を抜くようになった。
おかげで小学校の頃のような異名は付けられずにいる。周りの認識は「運動音痴な陰キャ」くらいだろう。成績は【C】だが、目立つよりはマシだ。
まぁ、身体のコントロールが成長するに連れ_____否、大人になるに連れて、上手くできるようになったのも影響しているのだろう。
元々子供の頃から隠していただけで、思考は大人と大差なかったのだし。
そして入学してから一年経ち、二年生になった。
勉強熱心だが人との付き合いはあまりない、地味な少年_____というのがぼくのイメージとして定着している。
ちなみに部活は書道部。委員会は図書委員だ。
自分で言うのもなんだが、完璧に目立っていない。
小学校の時の(主に運動面だが)経験を生かし、平穏な一般生徒A…いやこの場合はKとして過ごせている。
だがしかし、相変わらず異様な喉の渇きを伴う不調は治っていない。
むしろ頻度が上がり、週に1〜2回は起こるようになった。それも時を選ばず起こるのだから、迷惑である。
親にも隠しきれなくなり病院に連れて行かれたが、身体に異常はなく原因は不明。
ひとまず発症した時用に吐き気止めだけ処方されている。
「ハァ…」
今日も3時限目の授業中体調が悪くなり、保健室に向かった。新学期早々無様である。
保健医はいなかったが担当授業の先生には言ったので大丈夫だろうと判断し、薬を飲んでからベッドに潜る。
寝る前に上履きを揃えて、脱いだ上着を皺にならないよう丁寧に畳んでまくらの横に置き、メガネも外した。
「……きもちわる…」
症状は時々によるが、今は吐き気と耳鳴りがひどい。
とっくの前に薬が効かないことはわかっている。
ぼくのこの症状は精神的なものだ。
ストレスの波が一定以上超えてしまった時に現れる。
好みの女性の手を見ていると少し発散されるが、見続けていると「あの手で慰めたい」だとか、「舐めたい」だとか、思考がヤバい方向にいく。
解決方法としてはストレスを発散させるべきなんだろう。
だがろくに趣味も作れない家庭事情な挙句、多少はストレスが軽減されていた鈴美との勉強会もない。
男友だちと遊ぶか?…いや、部活があるし門限もある。
母親の束縛も強くなったせいで、遊ぶのも
自分の部屋のモナリザはいいとして、集めてる爪など、その他見られるとドン引きされるものが色々ある。
勉強も6時半までなら図書室兼自習室を使えるが、誘うにしても男はおつむが弱いヤツばかり。
女も「陰キャがイキってキモ」と思われたら死ぬ。剰えその噂が広まったら面倒だ。
というか何故この学校は私立のくせに、やたらと長ラン・ボンタンを着てる輩が多いんだ?もっと厳しく風紀を取り締まるべきだろう。
「あら、誰かいるの?」
ふいに保健室の扉が開き、柔和な声が室内に響いた。不思議と耳に残る声だ。
借りている旨を話す前に、ベッドを仕切っていたカーテンが開く。
「ふふ、なんてね、職員室を出る時に連絡きたから知ってるよん」
「…そうですか」
前の保健医とは違う、亜麻色の少しハネた長い髪が特徴的な女の保険医。
赤いフレームのメガネをかけているが、ずいぶん眠たげな印象を受ける。
ふと視界に白衣の裾から覗く白い手が見えた。
少し肉付きは薄いものの、長い指が美しい_______そこまできてハッとして、咄嗟に視線を逸らす。
先ほど水を飲んだばかりだというのに、喉が渇いた。
「新しく赴任してきたんだ。まぁ新任紹介の時には呼ばれてないから、行ってないけど」
「…いえ、プリントに名前だけ載っていたので覚えてますよ。確か佐藤_____」
ぼくが言い終わる前に、保健医はメガネを少し上げると、笑いながら言った。
「「佐藤
なんだか間延びした語尾の、ほわほわとした先生だ。
◻︎◻︎◻︎
それから週に1回ほどは、佐藤保健医の元にお世話になっている。
後からわかったことだがこの保健医、かなりドジである。よくプラスティック瓶に入ったガーゼを落としたり、何もないところで転倒している。おまけに天然ときた。
しかし巨乳で美人の部類に入るからか、男子の人気は高いようだ。ぼくとしては脂肪の塊よりも手の方が魅力的だと思う。
時季は6月半ばにもなり、じめっとした天気が続いている。
午後に体調を崩し保健室で横になっていると、用事から戻った佐藤保健医が襲来した。
「あらら、吉良くんまた体調崩してるんだってね」
「まぁ…はい」
回数を重ねていけば、いくら気が合わなくても雑談くらいはするようになる。
彼女は保健医であり生徒の相談を聞く機会が多いからこそ、聞き上手だった。
ぼくも例外ではなく、他愛もない話から全てとまではいかないが、自身の悩みを話すようになった。
この何気ない会話がぼくのストレス緩和剤になると気づいたら、やめる理由もないだろう。
「吉良くんは親御さんにストレスを感じちゃうんだよねぇ、反抗期なら仕方ないとも思うけど」
「反抗期で済んだらいいんですけどね」
「うーん…ストレスの抱え方が尋常じゃないっていうか、普通そこまで溜められる?っていうくらい溜まってるんだろうね」
「おかげさまで身体がしょっちゅう不調ですね」
「いやいや、身体はまだしも心にまで影響が出たら大変だよ?」
彼女は茶を二人分入れ、こちらに持ってきた。
冷房が効いていなかったら絶対に飲むのを避けただろう。しきりに緑の水面に息を吹きかけている相手を見る。
「猫舌なら何でお茶にしたんですか」
「間違えちゃったのー。もう………
やはりこういう何気ない会話は楽しいものだ。
「ねぇねぇ、そう言えば吉良くんの小学校の先輩から聞いたんだけど、君が「ぶどうヶ丘小の悪魔」って呼ばれてたって本当?」
「ゴフッッ」
飲もうとした茶が見事にシーツにかかった。急に何を言い出すんだ、この女…?
渡されたティッシュで口元やシーツを拭きつつ、相手をジト目で見る。
「…周囲が勝手に呼んでただけです。小学生なんて、変なあだ名を付けたがる年頃でしょう」
「ふーん、本当に呼ばれてたんだぁ…なんか意外だな。吉良くんは「ジミー」って感じなのに、「悪魔」なんて似合わなさそうじゃない」
「ぼくも同感ですね。平凡なぼくなら正しく「ジミー」がお似合いですよ」
「え!じゃあ私が「ジミーくん」って呼んでも…」
「先生、帰り道には気をつけてくださいね」
「しゅみましぇん」
ついでに小声で「ほんとに悪魔や…」とも言ってきた。ノリがいい先生で何よりだ。脅す際に使う30cm定規の出番はなくなった。
『────♩』
話していれば、チャイムの音が鳴った。
これが6時限目の終了の合図なので、もうすぐ部活時間になる。
今日は同じクラスの部員に休むことを伝えて帰ろう。
しかし立とうとして、一瞬フラついた。
「……っと」
前にあった別のベッドにつんのめるよりも先に、伸びてきた手に腕を引っ張られる。
佐藤保健医がぼくを助けようとしたのだと思った束の間、彼女の「あっ」という間抜けな声が聞こえた。例の如く転んだらしい。
彼女はそのままこちらに覆い被さる形で、ダイレクトアタック(攻撃150)を繰り出す。
LPの殆どないぼくは大ダメージを受けた。この
「いやだ、ごめんまた私ったら…」
「ハハ…大丈夫で──、」
彼女のしなやかな右手が、ぼくの腕を掴んでいる。対し左手はバランスを取ろうと思ったのか、視界のすぐ右にあった。
ゾクリとしたものが背筋をかけ、自分でも無意識に彼女の手首を掴んでいた。
思ったよりも冷たいその手は、きめ細やかで肌に吸い付く。
同年代の女子の手もいいと思う時があるが、大人の美しい手には劣る。しかも今触れているのは、成熟した綺麗な手。
保健医に視線を向ければ、一瞬彼女は肩を震わせた。
その様は肉食獣にターゲットにされた草食動物のようである。
「………!」
「きゃっ」
そこで我に返り、相手を突き飛ばしてしまった。彼女はその勢いのまま向かい側のベッドに尻もちをついた。
冷静を取り戻した脳が、今の状況を処理していく。
このまま逃げるべきか?…いや、これからも保健室は使う羽目になる。だったら何かしら理由をつけて謝るべきだろう。
そもそもこの女が転けてきたのであって、言うなればぼくは被害者。むしろ謝るべきは向こうだ。
しかし女性を突き飛ばしたのは、いくらなんでもまずい。
やはりぼくが謝るべきかと、彼女の腕を掴み引っ張る。その瞳はメガネが反射しているせいで、窺うことができなかった。
「あの…すみません、急だったから驚いてしまって」
「……ねぇ」
「はい?」
淡い色とは対照的な黒い瞳が、じっとぼくを見つめる。
「吉良くんさっき…すごく怖い目してたよ」
「そりゃあぼくも思春期の男の子ですから、先生みたいな美人と急に至近距離になったら、おっかなくもなります」
「えっ、そう?私美人かなぁ…」
「男子の間ではよくかわいいとか、美人な先生として話題になってますよ」
「え?えへへ〜そーお?えへ、やだぁ、照れちゃうじゃない〜!」
人のことを打楽器だと思ってるのかと思うほど、照れ隠しに背中を叩かれる。
昇った熱よりも次第に苛立ちが増し、ため息をついて帰ろうとした。
「あ、そうだ吉良くん」
「ハァ……何ですか、さっきのこと報告する気なら先生だって…」
「いやいや、それはもういいよ」
彼女はそう言って、ぼくの手を握った。
「私の手、もっとさわりたい?」
いつもの柔和そうな表情は一転して、蠱惑的な色を含めうっとりとぼくを見つめていた。
否、ぼくの「