転生したら殺人鬼ポジだった件 作:クリーニング黒兎
後書きにPicrewの[きゃらめで遊ぼう]で作ったイメージ載せてるので、参考にしたい方はよければドゾ。
また投票の方もありがとうございました!
承太郎圧倒的ですね、知ってた。個人的にその他27名の念使いがいたことが嬉しいです。
最初
33話 サタディヌーンフィーバー
広瀬康一はぶどうヶ丘高校に通う一年生である。
友人には東方仗助や虹村億泰がいる。
そんな彼は、虹村兄弟が起こした矢の事件でスタンド使いとなった。ヤンデレ気質の女、山岸由花子との一件で能力はさらに進化している。
「何で僕は変な人に好かれやすいのかなぁ…」
見事な快晴日和の休日。
康一は母に頼まれ買い物に来ていた。
メモを見て頼まれた品物をカゴに入れながら、ふと思い出したのは岸辺露伴という漫画家について。
彼の能力、「エコーズ」が発現して以来、康一は様々なスタンド使いと遭遇してきた。
仗助の甥である空条承太郎曰く、「スタンド使いとは引かれ合う」ものらしい。
とにかく散々な目にあってきた康一としては、丁重にお断りしたい性質だった。
しかしそれでも仲間が窮地に陥った時身を挺して駆けつけるのは、流石主人公の素質を兼ね備えた男である。
「まぁ、露伴先生の描く漫画が面白いことは本当だしなぁ…。仗助くんがプッツンしたせいで、今は休載してるけど」
作者のヘンジン具合はともかく、康一が『ピンクダークの少年』のファンであることに変わりはない。
一読者として先生の休載は悲しいものだ。見舞いには行かないが。
康一は自宅に帰ると、次に愛犬の散歩を始めた。普段の散歩コースを通り線路に臨した道へ出ると、Uターンして家へと戻る。
その時、異変は起こった。康一の腹に緊張が走る。
「……ごめんポリス、僕ちょっとお腹痛くなってきた…」
「アウ?」
途中にある公園に立ち寄った彼は犬の手綱をフェンスに繋ぐと、駆け足気味で奥にある公衆トイレへ向かう。
飼い主の後ろ姿を見つめていたポリスは欠伸を一つ零すと、のっそりとした動作で地面に伏せて眠り出した。
「…んん?こんなところに大っきな犬がいるど!」
そこに偶然通りかかったのは、
彼はぶどうヶ丘高校附属の中学に通う2年生である。
「フムフム……見たところ周りに飼い主はいない。……つまりこれは、捨てられたんだど!?」
誰もいない公園に一匹寂しく(?)いる犬。
顔を伏せて目を閉じている様に、きっと腹が減っているのだろうと、重ちーの中で勘違いが加速していく。
彼は少々ケチな一面を持つが、根は純粋で平穏な少年である。
ポリスの頭がひと撫でされた時、公園の茂みや道路の排水溝から
「ママに怒られちゃうから飼ってやれないけど、そのかわりオラの“ハーヴェスト”で逃してやるから安心するど!」
二、三匹のハーヴェストがポリスの繋がれたロープに噛みつくと、容易くちぎった。
ポリスは不思議そうに首を傾げていたが、自由に動けることがわかると草むらの臭いを嗅ぎ出した。
「ししっ!やっぱり
重機関車とまで謳われたジョナサンよりもウェイトがある重ちーは、軽やかな足取りで公園を去って行った。
対し呑気にマーキングをしていたポリスは、猛スピードで走ってきた車に驚き走り出した。
虚しくも公園に残されたのは腹痛と戦う主人のみ。
「はぁ、死ぬかと思っ……あれ、ポリス!?」
康一がスッキリとした面持ちでトイレから出てきた時には、既に愛犬の姿はなかった。
⚪︎⚪︎⚪︎
場所は変わり、杜王駅の東口駅前広場にあるカフェ・ドゥ・マゴ。
ここのチョコレートパフェはカップルたちに人気であるが、学校帰りの学生たちの憩いの場所でもある。
オープンカフェも併設されていて、洒落た雰囲気から若者が多い。しかし仕事の帰りのサラリーマンや奥様方など客層はかなり広く、時間帯によって変わる。
そして今は休日の、夕方にはまだ早い時間帯。
世間話に花を咲かせる女性や静かにコーヒーを飲む老人など、客は少なめである。
「………」
そこに一人、冷めたココアを口に運びつつ、一番隅の席で読書にふける影の薄い男がいた。
この男は一時間ほど前からここにいる。
肩にかかる黒髪と、サイズの大きめな丸渕眼鏡。前髪は「それで読めてるのか?」と思わず疑いたくなるほど長い。
六月の暑さゆえか、サスペンダーの下の白いワイシャツは肘まで捲られている。本紫のスラックスから覗く革靴は、コツコツと一定のリズムを刻む。男は腕時計を見て、眉間に皺を寄せた。
「待ち人来ず…か。いい度胸をしている」
あと数分は待ってやるが、来ないなら帰ってやろう(ついでにカフェ代も領収書で向こうにつける気でいる)と意思を固め、残り少ないココアに口をつけた。
時折女店員が視線を寄越してくるが、恐らく内心は「アイツどんだけココア一杯で粘ってるのよ…」と思っているに違いない。
彼としても実際はコーヒー派なのだが、今日はココアの気分だったのだ。
甘ったるい飲料は苦手で量も飲めない。それでも胃に収めるのは、かつての余韻を思い出したいからだ。彼女が入れていたココアはもう少し、甘かった気がするが。
「……帰るか」
神経質の気がある男としてはよく保った方だ。領収書を受け取り勘定を済ませると、先程男を見ていた女性の熱っぽいスマイルを無視し店を出る。
今日はツイていない日だ。一度歯車が狂うと、不幸スパイラルは立て続けに起こる。────彼の経験則だ。
「ワンッ!」
だが導火線はすでに着火していた。見知らぬ大型犬が彼の横腹へと勢いよく突っ込んでくる。動物は基本的に「畜生」としか思っていない男だが、妙に大型犬にモテる。
内心キレつつ彼が睨め付けたところで、不意に犬の首輪に目が行った。
「『ポリス』…貴様の名前か」
「アフウッ」
「随分とマヌケな返事をする犬だな…」
首輪には迷子になった時用だろう、飼い主の自宅と思われる住所が書かれている。ここからそう遠くない場所にあるようだ。
また切れているリードを見るに、何かアクシデントがあり散歩中に脱走してきたと考えられる。
となると飼い主の監督不行き届きか。大型犬なら尚更気をつけなければいけないだろうに。
「この苛立ちの腹いせをしたいところだが…わたしも優しいのでね、普通に送り届けてやろう」
「アォン」
肉の塊にしてもいいのだが、彼も鬼ではない。ただ問題はどうやってこの犬を連れて行くかだ。
現在地から彼の自宅までは15分ほどあり、飼い主の自宅まではそれより早く着く。
だが駅近くのパーキングに停めている車に畜生を乗せたくはない。かといって歩けば30分ほどは掛かりそうだ。着く前に彼の体力が尽きる。
「犬に聞くことでもないが、「忠犬ハチ公」って知ってるかい?」
「ワフン?」
「「ハチ」って名前の犬が渋谷駅まで飼い主を出迎えに行き、主人の死後も10年にわたってそれを続けたという話だ」
「ワフワフッ」
「まぁ話の方は前置きだ。そのハチ公をモデルとして作られた忠犬ハチ公像がある。稀代の忠犬も今では待ち合わせ場所として使われるのだから、皮肉なものだ。ついでお前の名前は「ポリス」ときた。ここから交番は近くてね」
要するに、交番に預けてしまおう、ということである。警官なら住所から家電も直ぐにわかる。男が送り届けるよりもよっぽどマシだ。
だがマイペースな犬は首を振り、街路樹の横に座り込む。切れたリードの端を掴んでいる男もまた、犬に視線を合わせた。
犬に喋りかける姿は不気味であるが、人通りは少なく、ただの散歩と思い男と犬に視線を向ける者はいない。
「きっと飼い主も心配していると思うよ。だからほら、立て」
「アウン…」
「まさか名前が「ポリス」だからって、英語で躾けられてるわけじゃあないだろ?」
というかそもそも何故ポリスなんだ?もっとマシな名前はなかったのか。
「仕方ない…」
多少無理やりではあるが、リードを強く引っ張り犬を立たせた男。気道が狭まったポリスは苦しげな声を上げる。
そうしてどうにか裏路地へと来たはいいが、ポリスは地面に伏せてしまった。
「あんた…僕の犬に何してんの?」
「?」
男が振り返った先にいたのは、銀髪とも金髪とも取れる色素の薄い髪を持った少年。
男に向くその眼光は鋭い。
もしかしなくとも、これは何か勘違いされていないだろうか────。
「公園の近くにいた男の子から、大きな犬が駅の方に行ったって聞いたんだ。それに、
“公園の近くにいた男の子”とは、お察しのとおり重ちーのことである。
重ちーは康一の話を聞いて、自分がやらかしたことを察した。
謝ればそれで済んだ。しかし小銭を集めていい気分になっていた彼は、その気分を壊されたくないあまり嘘をついてしまった。
そもそも飼い主が犬を放って行かなければオラは勘違いしなかったんだど!──ーと、内心逆上した。
そしてこっそりハーヴェストで犬を探させたところ、駅前近くにいた男とポリスを発見した。
重ちーはここで「逆に考えるんだ、罪をなすりつけちゃえばいいさと」と画策したのである。
少し挙動不審な少年に康一は怪しさを覚えたが、それでも愛犬のため駆けつけた。距離が駅まで遠くなかったのは幸いだった。
逆に犬の首輪を強めに引っ張っていたところを見られた男としては、不運そのものだ。
その様子は側から見れば、無理やり犬を連れて行こうとしているようにしか見えない。奇しくも重ちーの嘘は、康一の中で「真実」として確立されてしまったのである。
「…何か勘違いしているようですが、ぼくはただ迷子の犬を交番に届けようとしていただけですよ」
「その話を信じろって?現にポリスが嫌がってたじゃないか」
「人の親切を無碍にする気かい?全く、今の小学生ってやつは…」
高一ながら157cm(何故かそれ以上小さく見えるが)しかない背丈の康一は、男には小学生に見えた。
これには流石に少年の気分も良くない。
「男は身長だけが全てじゃない」
少年の背後に一見して蝉に似た、羽と長い尾を持つ小型のスタンドが現れる。これこそ以前の由花子との一件で進化した広瀬康一のスタンド、「エコーズACT2」である。
スタンドとは、基本同じスタンド使いにしか見れないという性質を持つ。
「!」
表情にこそ出ないが、前髪と眼鏡に隠された男の瞳が一瞬驚愕に染まった。
ACT2から放たれた【バチィ】という効果音は、空中を飛び男が握っているリードに張り付く。
「…ッ!」
瞬間、まるで
対しポリスの方はというと、首輪がゴム製だったので無事だった。それを計算した上での康一の攻撃である。
「人を傷つけたわけじゃないし、これくらいにしとくけど……。次悪さしてるのを見つけたら、もっと痛い目を見るからね」
「ぼくは何もしてないん、だが……痛ッ」
やはり不運な日はとことん不運な目に遭う。
だが
随分前に追跡を諦めた「矢」について、少年が何か知っている可能性もある。…が、概ねスタンド使いが引かれ合う性質を心得ている男は、深入りすることをやめた。
今更掘り返す気もない上、巻き込まれれば絶対に面倒事になる。
彼は「普通」に生きたいだけなのだ。そう、普通に。
「ワフッ!!」
「え、ちょ……ポリス!?」
リードを取り返した康一だったが、ポリスは主人の意思を無視して走り出す。向かう先は左手を押さえ蹲っている男の元だ。
そして二度目の「わん!ダフルアタック(推定:35kg)」が、男の背中に直撃した。
「う、ぐふっ……!」
────いいハンターってやつは、動物に好かれちまうんだ。
少年の脳裏にそんな言葉が過った。
「いや、そんなこと考えてる場合じゃないか!」
恐らく男は本当にポリスを警察署へ連れて行こうとしていたのだろう。ただの悪人ならば、愛犬がここまで懐くわけがない。
ならば必然的に嘘を言っていたのが誰か、見当がついてくる。犯人は恐らくドラえもん体型だったあの少年だ。
自分の軽率な行動を恥じつつ、康一は全身を使ってポリスを引き剥がす。
救い出された男はフラつきながら立ち上がると、肩から落ちたサスペンダーを直した。
「あ、あのっ……本当にすみませんでした!!」
「いや、いいんだよ。怒ってないから……怒ってないから」
「二回も言ったってことはやっぱり怒ってますよね!?」
「これで怒らなかったらぼくは相当な仏だろうね」
「うっ……ごめんなさい」
再度深く頭を下げた少年に少しは溜飲が下がった男は、「もういいよ」と告げ、先程の攻撃で落ちたバッグを拾い直す。
「一応ぼくにここまでの非道をなした君の名前を聞いておきたいんだが、いいかな?」
「非道をなしたって……あ、僕は広瀬康一です。言っておきますけど、これでも高一ですから!」
「……?」
「そんな「嘘だろ…!?」みたいな顔しないでください。本当ですから」
「
「………ヒェ」
「おや、六月なのに随分と寒いようだ」
「…は、ははっ……」
康一の背中にじっとりとした汗が流れる。
もしかして、この男も由花子や岸辺露伴とご同類の人間なのだろうか。
大寒波も裸足で逃げる親父ギャグをかまし、笑みを浮かべているのが恐ろしい。なぜ高校生にウケると思ったのか、その思考回路も恐ろしい。
吸引力の変わらない、ただ一つの対変人奇人用掃除機コウイチ──とは彼のことだ。
「ぼ、僕っ、これで失礼しますね…!!」
「え?あ、君……」
たとえスタンド使いでなくても変人に関わったら最後、今度はどんな目に遭うかわからない。
ゆえに康一は愛犬にスタンドでバフをかけながら、脱兎の勢いで逃げて行った。
「……少しキャラを作り過ぎたか?」
少年との関わりを避けるためあえて引くような行動を取った男は、ため息をこぼす。
ちなみに親父ギャグは、父親が彼の子供時代に笑わそうとして言ってきたものである。その時の少年の目は限りなく濁っていた。
「…まぁいいか」
一先ず作戦は成功したのだ。
もう帰ろうと裏路地から表通りに出たところでしかし、今度は別の人物に捕まる。
「あっ、
カフェのテーブルに座っていた女が、彼を見るなり駆けてくる。
明るめの茶髪のボブヘアは内側に緩く巻いており、女性にしては濃ゆめの眉が中央に寄っている。
服装は上が白シャツに紺のジャケットで、下はタイトなデニムにヒールだ。そんな状態であれば、次の展開の想像がつく。
「あっ」
見事に女は地面の小さな段差につまずき、転んだ。男はとっさに手を伸ばす。
見つめ合う両者。それをガン見するのは男に熱視線を送っていた若い女店員。
先に口を開いたのは女の方だ。
「先生、あの────、
────原稿ください」
男は微笑むと、カバンから取り出した封筒を丸めて思いきり女の頭をしばく。
そして悲鳴を上げ地面に転がった女に、冷ややかな視線を向けた。
「一時間以上遅刻したのはどこの誰でしたっけ?」
「えっ?もぉ……何言ってるんですか!予定は二時って言ってたじゃないですか。ほら、私の時計見てくださいよ」
「遅れてますよ、この時計。店の時刻を確認して来たらどうですか」
「えぇー…先生ったら遅刻したの誤魔化すからって……………三時ですねぇ!!」
「………」
「てへっ………痛ァ!!」
再度「スパァン」と、気持ちの良い音が鳴る。
頭を押さえた女────
彼女はKO談社に勤める編集者で、入社三年目ながらその腕を買われ、KO談社お抱えの人気作家の担当をつい最近充てがわれたのである。
彼女としても一ファンであったため光栄なのだが、どうも彼女とこの作家の気が合わないようで、相手を一方的にイラつかせることが多い。
間違えてシャツのボタンをかけ間違い来た時は、舌打ちをされたこともある。
「女性に手を出すなんてサイテーですよ!」
「どうぞぼくとの契約を切りたいのであればご自由に」
「……そんなことになったら私のクビが飛びますって…はは…」
この作家のやり口は純文学の美しい言葉遊びを残しつつ、今風に上手くアレンジした文体である。
幅広い層で人気なのは「純愛」ものだが、時折出す谷崎や乱歩を想起させる痴情にまみれ、人間の奥深い「愛」の薄気味悪さをヨイショしてくる作品も、一部の層でカルト的な人気を誇る。10年以上前に出されたデビュー作は、後者の狭い層向けの内容だ。
「これくらいの量だったらすぐに読めるので、待っててくださいね!」
「帰ります」
「さぁ先生、どうぞどうぞ。腰掛けておくつろぎください」
「帰ります」
「わぁ、一行目から面白いですねー!!」
「タイトルだけで作品の是非がわかるなんて流石優秀ですね帰ります」
「ちょ、ちょっ、本当に帰らないでくださいよ!!」
無情にも男は駐車場の方角へ足を運んでしまう。
「なら打ち合わせの場所をここじゃなくて、先生のお宅にすればよかったじゃないですか。そうすれば私の遅刻も少しは目を瞑ってもらえたでしょうし…あ、もしかして神経質そうに見えて、意外に部屋が汚くて見せたくないとか?」
「社会人として、遅刻どうこうの話はどうかと思うが…部屋が荒れてそうなのは君の方だと思うけどね」
「失礼な!妹が綺麗にしてくれてますよ!んー……でも、先生のお宅行ってみたかったなぁ」
「まぁぼくも人気作家ゆえに色々ありますし、まだ完全に貴女を信用できてませんので」
原稿に目を向けながら、紅茶を口に運んでいた泉の手が止まる。
視線を移した先で見えたのは、二重に秘された男の瞳。
口角を上げ笑んでいる様は柔らかく見えるが、奥の妖しく覗く紫目を目にした瞬間、心臓を掴まれる。
「泉さんはお綺麗ですね」
「…そ、そうですか?」
「えぇ、とても」