転生したら殺人鬼ポジだった件   作:クリーニング黒兎

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(まだ承太郎の登場回じゃ)ないです。
投票の方は次話投稿前に集計して終了させていただきます。


34話 ガッツだぜ!オラァ!!

 岸辺露伴は弱冠16歳という若さでデビューした天才漫画家である。代表作はジャンプで連載中の『ピンクダークの少年』であり、週刊連載をアシスタントなしで描き上げるという驚異の執筆速度を誇る。

 

 そんな彼はワガママでエゴイストな人格から、他者に一歩引かれがちである。

 

 また、ネタ集めのためならばどんな手段も選ばない一面も持つ。友人である広瀬康一は彼に散々な目に遭わされた。

 

 そしてその康一との一件に介入した仗助によってフルボッコにされ、つい最近まで病院にお世話になっていた。

 入院期間中も医者の制止を無視し、体験した出来事を漫画のネタに生かそうとしていたのだから、もはや敬意すら感じる。

 

 二週間ほどして退院した彼は現在、途中で出会った自転車乗りの康一を「ゲットだぜ!」し、カフェ・ドゥ・マゴへと向かっていた。

 

 

「ハハ…その、退院おめでとうございます」

 

「君の気持ちはありがたく受け取っておくよ、康一くん。見舞いに来てくれてもよかったんだがね」

 

「いやぁ…僕も学校とかで忙しかったので……」

 

「おっと、今の時期は中間テストに近かったかな。学生の本分を心得ていて感心するよ、流石僕の友人だ」

 

「ハハ………友人……そういえば、露伴先生はどこに行くんですか?僕は商店街に向かう予定なんですけど…」

 

「カフェ・ドゥ・マゴへ向かうつもりさ。今日は休日で君も空いてるだろう?一緒に向かおうじゃないか」

 

「あ、いや、だから僕は商店街の方に用事が…」

 

「安心したまえ。誘っておきながら、奢らないなんてケチくさいマネはしないからね」

 

「………」

 

 康一に拒否権はなかった。

 

 まぁ予定が押しているわけでもない。少年は仕方なしと、ゆっくり自転車を押しながら漫画家の後に続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 ⚪︎⚪︎⚪︎

 

 

 かくしてカフェ・ドゥ・マゴへに着いた漫画家と少年。

 

 露伴はコーヒーを頼み、康一は新作メニューのバニラ&抹茶ラテを頼んだ。

 

 春の名残を感じさせつつ暑すぎない天気だ。外の席はそれなりに人が多く、二人は空いていた席の奥側に腰掛けている。

 店内に置かれた時計が示す時間は一時半。

 

「先生もこういった場所に来るんですね。ちょっと意外だったな」

 

「打ち合わせやネタをまとめる時に利用しているよ」

 

「へぇー、僕は学校帰りに仗助くんや億泰くんとよく来ますよ」

 

「…今の僕に東方仗助の話をするな」

 

「一応根に持ってるんですね」

 

 殴られた経験はいいネタになったが、怪我のせいで一ヶ月ほど休載せざるを得なくなったのは露伴としても痛いらしい。

 自業自得だ、と康一は思わずにいられないが。

 

 

「それに康一くん、ここはちょうど駅の近くだろう?」

 

「え?あぁ、確かに」

 

「つまり人通りが多いってことだ。人間を観察するにはうってつけの場所だと思わないかい?」

 

「あー…なるほど。漫画に活かせるってことですか」

 

「そういうことだ」

 

「えっと…じゃあ先生は打ち合わせか、ネタ作りか、人間観察が目的でここに来たんですね」

 

「いや、違う」

 

「え、違うんですか?」

 

「あぁ、僕が今日ここに、この時間帯に来たのには訳がある。話は少し変わるが康一くん、君は「星ノ桜花(ほしのおうか)」という人物を知っているかい?」

 

「星ノ桜花?…うーん、どこかで聞いたことがあるよーな気もするけど…歌手の名前ですか?」

 

「オイオイ、まさか君、星ノ桜花のことを知らないのか?」

 

「ちょ、食い気味に来ないでください」

 

 身を乗り出してくる漫画家に、康一は露骨に嫌な顔をする。

 周囲にカップルが多いことも踏まえて、せめて一緒に来るなら可愛い彼女がよかった。まぁいないので、ないものねだりなのだが。

 

「今「彼女と来れたら…」とでも考えたね」

 

「えっ、いや、考えてませんよ!?」

 

「安心しろよ。君に彼女ができた時は二人の時間を邪魔しようなんて考えないからサ(ネタにはさせてもらうが)」

 

「そうですか…?(勝手にネタにされるんだろうな)」

 

 本人たちの知らず知らずのうちに、心の会話が成立された。

 

 

 

 まぁそれはさておき、露伴の目的は今日このカフェ・ドゥ・マゴに来るであろう「星ノ桜花」という人物に会うことである。

 

 

「星ノ桜花は結構有名な作家だぜ。知らないってことは康一くん、君あんまり本を読まないだろ」

 

「漫画はよく読むんですけどね…」

 

「星ノ桜花は今日、二時からここで編集と打ち合わせがあるんだ。裏も取れてる。人が多いせいで判断しにくいが……ここで君の能力が役に立つ」

 

「僕のACT2で盗聴まがいのことをしろ……ってことですか?」

 

「ガッツリ聞けってわけじゃあないさ。少し会話を聞いて、星ノ桜花に該当しうる人物を割り出してくれればいいんだ」

 

 エコーズACT2は些細な音を聞き分けることができる。

 当然その音は本体の康一にもフィードバックされる。

 

 この漫画家としてはまだ穏健な手段かと、康一は思った。

 

 最悪その星ノなんたらを探すために、片っ端からヘブンズ・ドアーを使いかねない。

 

 

「まぁ…見つけるくらいならいいですよ」

 

「さすがだ康一くん!君ならそう言ってくれると信じていたよ!!」

 

「ハァ………っと、その前に一ついいですか?」

 

「なんだい?」

 

「露伴先生はどうやってその星ノ先生がここに来るって情報を得たんですか?」

 

「うん?実に簡単なことだよ、僕のヘブンズ・ドアーを使って──」

 

「ダウト」

 

 

 やはり薄々…薄々わかっていたことだが、露伴は自分のスタンドを使い星ノ桜花の情報を得ていた。

 

 曰く、退院した後に取材の都合でKO談社と関わることがあったらしい。

 

「星ノ桜花」という作家はメディアに顔を出したことがなく、本名や性別、出身地さえ不明の謎多き人物である。

 

 だが文章の雰囲気や名前から、女性と考えられることが多い。

 

 KO談社お抱えの人気作家であることは間違いなく、様々な媒体で星ノについて尋ねられてもKO談社側は「それについてはお答えできません」と情報を秘匿してきた。

 

 KO談社に訪れた露伴は隙をつき、彼を個室に案内した編集者を本にした。

 

 そして調べたのだが、星ノについてのめぼしい情報は得られなかった。

 

 同様にトイレだなんだと部屋を抜け出し複数の編集者を読んだが、これも不発。

 

 どうやら社でも厳しく情報を規制しているらしいことが、そこでわかった。

 

 

 ならば、と個室で挨拶を交わした編集長をヘブンズ・ドアーして、ようやく情報が手に入ったのである。

 

 性別が女ではなく男であることや、担当の名前などはわかった。しかし本名や素性についてはわからなかった。

 

 先に言っておくと、ここの編集長は数年前に代わっている。

 些か信じられないが、前の編集長が今の編集長に星ノの情報を意図的に伝えなかったとしか考えられない。

 

 はたしてそんなことがあり得るだろうか。

 

 

 ────いや、それこそ作家本人が契約で伏せるよう命じなければあり得ない。

 

 

 人気なのは確かであり、その無茶振りを通すことぐらいは可能であると、露伴は判断した。

 

 作家とのやり取りで直接会うのは担当だけだ。現編集長でさえその容貌を知らないときた。

 

 都合悪くその日星ノを担当する女性はおらず、スタンドを使って聞き出すことは叶わなかった………が、担当の女性が次の打ち合わせについて編集に告げていたため、場所はわかった。

 

 まさか自身の住む杜王町と聞いて、驚かないはずがない。

 星ノ桜花は杜王町にいる。打ち合わせ場所をここにするくらいならば、住まいもこの町の可能性が高い。

 

 正しく()()()巡り合わせだ。

 

 

「僕は絶対に星ノ桜花に会ってみせるんだ…絶対に、ね」

 

「そ、そうですか………」

 

 謎多き作家。その正体を暴くべく露伴は燃えているのだろうと思いつつ、康一は抹茶のみになったラテを啜る。

 この漫画家はネタのためなら何でもする。何でもネタにしてしまう。

 

「あ、もう二時ですね」

 

 カフェの中に設置された時計が洒落たジャズを流しながら二時を伝える。

 

「どうだい康一くん、星ノ桜花はいるかい?」

 

「ちょっと待ってくださいね…」

 

 エコーズを飛ばしながら、周囲の音を聞き分けていく康一。

 

 この時間帯は割と空いてくるのだが、今日に限って人が多い。

 談笑するカップルや、一緒に頼んだパフェを頬張るカップル、それに来たばかりの彼氏に手を振る彼女────。

 

「カップルばっかりだな!!」

 

「そういうのは今いいから」

 

「……すみません」

 

 何が悲しゅうてこんな変人漫画家と一緒にカップル御用達のカフェにいるのか、彼女のいない少年は涙ぐんだ。

 

 

 ────あっ、()()

 

 

 その時ACT2を通し、康一は「先生」と呼ぶ女性の声を捉えた。場所は彼らとは正反対の場所の、人目がつきにくい席だ。

 

「露伴先生、見つけました!」

 

「ナイスだ康一くん!向かうぞ!!」

 

 何気に康一も“素性の知れない作家”の正体を暴くという行為に、楽しさを感じ始めている。

 彼が漫画家の方に目をやると、露伴は少し頬を赤くし笑っていた。

 

 

「あのっ!!」

 

 

 昼下がりのカフェにて。

 

 それなりに客がいる中、岸辺露伴は編集の女の前に座る男の横に立った。

 手にはいつの間にかバッグから取り出された、少し紙の色が変わった本が握られている。

 

「ろ、露伴先生ッ…!?」

 

 後ろから追いついた康一がツチノコでも見つけたような、驚愕の表情に変わる。

 あの漫画家が、神様が色々と配合を間違えて生まれてしまったような我が道を行くあの岸辺露伴が、見ず知らずの男を前に本を突き出し、頭を下げている。

 

 スタンド使いの仕業か?でなければ自分は夢を見ているのだ。

 康一は頬をつねった。しかし痛い。

 

 

「サインください!!!」

 

 

 時が、止まった。

 止まったと言っても、承太郎がスタープラチナを使って時を止めたわけではない。

 

 厳密にいうと編集の女とココアを飲もうとしていた星ノらしき男と、康一の時間が止まった。

 それぞれが突然の奇行を起こした漫画家に「??」状態の中、顔を上げた露伴と眼鏡の奥で目を丸くしている男の瞳がかちあう。

 

「岸辺、露伴……」

 

「僕をご存知で?実は漫画を描いておりまし………」

 

 眼鏡の奥の()()を見た途端、露伴の浮かべていた笑みが消えていく。

 

 突如雰囲気の変わった漫画家に康一が精神状態を疑う中、「東方仗助」の名を語る時の比にならないような、底冷えた声が響いた。

 

 

「吉良、吉影ェ……ッ!!!」

 

 

 振りかぶった露伴の拳は男の左頬にぶち当たり、見事に丸眼鏡を吹っ飛ばした。




・星ノ桜花のペンネーム

「キラッ」→「☆」→「星」

「“吉”と凶」(表現を変えてみるんだゾォ)→「良いと悪い」(この対義語関係よさそうだゾ)→「はい・いいえ」(もう一捻りするんだゾ。「はい」は了承の意になるから……そうだゾォ!)→「OK」→「おうけぃ」→「桜花」

ペンネームは吉良が作ったものではない。
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