転生したら殺人鬼ポジだった件 作:クリーニング黒兎
「名前は『吉良吉影』、1966年1月30日杜王町生まれ。身長は175cm、体重は56kg、血液型はA型。
両親が年をとってから生まれた子供で父親の吉良吉廣は息子が21歳の時にガンで死亡。その一ヶ月後に母親も夫の後を追うように亡くなっている。両親の死因に不審な点はない。
家族関係は一見良好だったそうだが、息子を溺愛する母親の行動が時折暴走することがあった。
小学時代は良くも悪くも目立つ生徒だった。だが中高時代は書道部で、あまり目立たない生徒だった。
高三の夏に佐藤容疑者の誘拐事件に巻き込まれている。
大学はD学院文学部で、文科系のサークルに所属。当初は1988年卒業予定でカメユーデパートの内定も決まっていたが、彼女のストーカーに刺されたのち入退院した。
同年8月に片桐安十郎が起こした『S一家殺人事件』に巻き込まれ、重傷を負い入院した。
その後大学を休学し、復帰。無事に卒業している。
職業は自由業の“作家”とあったが、「星ノ桜花」という名前で活動しており、KO談社お抱えの作家である。
前科はなし、結婚歴もなし。
友人は必要最低限作っていた。恋人は……今はいない。
女関係は裏で調べたが、作家になってからあまり褒められたものではないらしいな。
手術経験は過去に数回。精神疾患持ちで、月に一回ほど通院している。
目立たないように生きているが、厄介ごとに巻き込まれ目立ってしまうことが多い。
学生時代は賞を取ったことが何度もある。基本は「3〜5位」を取り、入賞程度に収めることもあった。
「1、2位」は頑なとして取っていないが、唯一小学生作文コンクールの一回のみ、「1位」を取っている。この場合
幼い頃は全般的に運動音痴であったが、成長に連れて大きく改善している。特技はわからない。
地味な生徒で人一倍努力して成績は優秀の部類に入っていた。
トラブルに出くわさないよう、なるべく静かに、平穏に生きようとしている。
しかし事件に巻き込まれた経歴を見ても、常に不幸が傍らに潜んでいる。
随分と
「もしもしポリスメン?」
突如家に来た空条承太郎という海洋学者を仕方なく客間に案内し、茶を出したところまではよかった。話を聞こうと思ったらまさかの個人情報マシンガンだ。
自分の生年月日やら身長体重を聞いた時点で家電の子機に手が伸びていた。
「ストーカーだ、殺される。
なぜ人の情報を事細かにコイツは知ってるんだ。
作家名はまだしもわたしが保健医や片桐の事件に巻き込まれたことまで知っているとなると、警察に圧をかけられる人間ということになる。一般の海洋学者にそんなことができるのか?
────否、できるわけがない。すると、この男のバックには相当デカい組織が絡んでいる。
下手な真似はできない。こちとら殺人衝動があるだけの、しがない一般人だぞ。
子機を戻してきたわたしを、テーブル越しの男は奇妙なものを見る目で見てくる。
「学者ってのは口下手なイメージがあるんですが、貴方の先ほどの話を聞いた後だとイメージが変わりますね。実に不愉快だ」
「……いや、情報確認のつもりだったんだが」
「ぼくの情報?何の面白みもない情報を?そもそも何故空条さんがぼくのことを調べているんだ?ただの一般人を調べ尽くして、目的は何でしょうか?やはりストーカーなんだなそうだな」
「落ちつけ。薬を飲んでいないのか?」
「飲んでるさ。飲んでるがその上で混乱して、この上なく不快な思いになっているんですよ」
個人情報は大体バレているが、殺人欲求や手フェチついて知られていないはずだ。幼少期に動物で
そもそもなぜわたしの情報を調べたんだ?理由はまぁ、恐らく事件関連だとは思うが。
その場合なぜ海洋学者のこの男が調べているのか。
わたしが犯人と疑われているか……。どの道、真相を知る人物として訪ねて来たのは確かだろう。
仕事に消費するはずだった糖分が、急速に思考に奪われていくこの感覚。
冷静になれ、落ち着いて活路を見出すのだ。
「ハァ…」
空条は茶を飲むこちらの様子を見て、自分に出された茶を見た。毒なんぞ入れるわけないだろ。だったら爆殺してやる。
「いやぁ…少々仕事の疲れもありましてね。お見苦しいところをお見せしてすみません」
「それが素の喋り方か?」
「………あぁ、なるほど。さっきの校長の式辞のような長ったるしい話は、わたしの反応を窺うための罠というわけか。趣味が悪いな」
「罠?俺は情報確認のつもり、と言ったはずだが」
「
「いや、話はむしろここからが本題だ」
やはりストーカーとしてポリスメンを呼んでやろうと、子機を取ろうとした。その直後、わたしの背後から現れた屈強な肉体を持つソレが本体のコードを手刀で切り、子機を握りつぶした。
「…っ!?」
「やれやれ…面倒なことは勘弁だぜ」
あくまで
驚愕の表情を浮かべるこちらに、空条は観察の姿勢を崩さない。
駄目だ。恐らくわたしが能力持ちである可能性を考え、剰えその可能性を捨てていない。というか弁償してくれるよな?
「「東方仗助」という少年をあんたは知っているな」
「…あぁ、知っているよ。彼が小学校低学年くらいまでは、時折遊んであげたからね」
「俺は奴の“甥”だ」
「………お宅は随分と複雑な家庭環境なんだね?」
「クソジジイのせいでな。俺は奴の尻拭いでこの町に来ている」
確かにややグリーンの瞳や顔立ちに似通った部分がある。
「奴からあんたが
「単純な話だ。わたしには所謂「霊感」があるらしくてね。見えなくてもいいものまで見えてしまう。だから仗助の“相棒”についても信じているんだ」
「………そうか」
嘘は言っていない。見えなくてもいい
幽霊は信じちゃいないが、キラークイーンのようなその人間の
「俺も仗助と同じように特殊な能力が使える。超能力という概念に像を与えたような存在であり、背後霊と考えてくれていい。俺たちはそれを「スタンド」と呼んでいる」
「スタンド……。それってどんな姿をしてるんだい?人によって違うのか?」
「人型のものもいれば、無機物に姿を与えたようなものもいる」
その他説明を受けたが、概ねわたしが今まで推測していた内容と同じだった。スタンドはスタンド使いにしか見えない、など。
ただスタンドはスタンドの攻撃しか受け付けず、スタンドが負傷した場合本体にもフィードバックされるというのは初めて知った。
「それでここからが重要な話なんだが………お前は「矢」を見たことがあるか?」
「矢?」
「普通の人間をスタンド使いにすることができる代物だ」
「ホォー…それを使えば、わたしもスタンド使いになれるのか」
「いや、そういう単純な話じゃない。一部の人間しかスタンド使いにはなれない。目覚めなかった人間は少し傷付いただけでも即死する」
「…ハハッ、そりゃあ……物騒な物だな」
「あぁ、だから俺はその行方を探しているんだ。本当に知らないか?」
「知らないよ。父が骨董好きだったから或いはあった可能性もあるが、亡くなった後に売りに出されてしまってね。力にはなれないと思うよ」
「そうか…残念だ」
そう、売りに出されたのだ。出したのはわたしだが。
スペースを取るだけのゴミを残しておく意味なんぞないだろう。今、親父の泣き面が浮かんできて実に不愉快になった。
空条は緑茶の水面を見つめ、少し息を吹きかけてから飲んだ。刺さる視線がうっとおしいのか、眉を寄せてこちらを見る。
「…何だ」
「いや………飲むんだと、思ってね」
「少し猫舌なだけだ」
「猫…舌……」
一気にどっと、疲れが出た。毒を警戒して飲もうとしなかったわけじゃあないのか。
まさか「情報確認」と言ったがわたしの反応を見るためではなく、本当にただ確認しただけだったのか…?だったらわたしの考え過ぎというわ……
「
「どうした?腹がイテェなら遠慮せずに行けよ」
「違う…少し胃が、痛いだけだ………」
「…作家ってのも大変だな」
馬鹿を言うな、貴様のせいで急速に胃にダメージが入ったんだ。
この男、頭が切れそうだが思った以上にマイペースか?というか何でその頭は帽子と髪が融合してるんだ?
医者行けよ、と呑気に言う目の前の男に猛烈な殺意を抱きつつ、襖に寄りかかりながら立ち上がった。
「すまない、忙しい中邪魔したな」
ようやく帰ってくれるらしい。二度と来るな。そしてとっととこの杜王町から出て行け。
主にわたしの平穏な人生のために。願わくばこの死神体質のわたしに関わった延長戦上で死んでくれ。
「あぁ、最後に一ついいか?」
「何だ…」
振り向いた先にあったのは、拳。
それが人間の拳ではなく奴のスタンドのものだと思う間もなく、わたしの身を庇うようにキラークイーンが出現し、仲良く揃って吹っ飛ばされた。
「ぐうっ……!!」
バァン、と派手な音を立てて襖をぶち破り、隣の部屋に転がった。キラークイーンがとっさに防御した腕と同じ場所が痛む。幸い折れてはいない。
「調べた時点から怪しくは思っていた。だが実際に「吉良吉影」という男と会話して感じたぜ。貴様は高い知能と能力を隠しながら、
一瞬見ただけだが、奴のスタンドの速さにキラークイーンでは勝てそうにない。
爆弾で殺す隙は────クソッ!だから殺すのはダメなんだ。
「人を人とも思ってねェ、クソみてぇな眼をする奴を知っている。正しくテメーの目はそれだ。だが何故だ?
「…人を殺人犯呼ばわりか、急に殴ったことも含めて非常識な人間だな、貴様は」
「いや、殺人犯じゃない、
「…ッハ!あれで軽めか、そうかそうか……で、最後の一つが済んだんだ。帰ってくれるよな、勿論?わたしの態度が気に食わなかったのなら悪かったが、そちらも似たようなものだろ。最初の話といい、茶の件といい。化かし合いは終わりだ」
「何言ってるんだ、最後の一つは終わってないぜ。あの一発は気に食わないテメーへの礼だ」
「ハハ…君、昔は絶対不良だったろ」
空条の要求としては誤魔化すような真似はするなということ、その上で改めて話を聞かせろとのことだった。
奴のバックがあの世界有数のSPW財団とも知れれば、下手な真似を起こす気も失せる。なぜ一介の学者と繋がりがあるか疑問だが、男の祖父の名を聞き納得した。
「ジョセフ・ジョースター」と言えば、あのアメリカの不動産王だ。財団と繋がりがあるのだろう。
つまり東方仗助はかの有名な不動産王の妾の子ということか…。
「ハァー……」
どの道、これ以上隠すのはわたしの不利にしかならない。だが全部素直に語ってやる気もない。
「わかった、いいだろう。とりあえず「矢」の件だが、これについては知っていると言っておこう」
「スタンドを持った経緯は何だ?」
「それについてだが、父の骨董集めの話はしただろう?わたしが大学生の頃、親父は母をよく旅行に連れて行ってね。その中で二人がエジプト旅行に行った時、偶然見つけて買ってきたのが「矢」だったんだ。その後土産を見ていたらうっかり怪我をして、それでコイツ…スタンドを手に入れた」
キラークイーンを出現させると、距離を置いて物影から空条に鋭い眼光を向ける。おい、万が一の時その距離じゃわたしを守れんだろうが。
空条はこちらが「スタンド」について知らなかったことを含め、一応は信じた。
「矢の詳しい入手場所はわからないか?知っていれば聞いておきたい」
「詳しくは知らない。わたしは行っていないからね。知りたいならどうぞ、親父に聞いてくれ」
仏壇の遺影を指すと、空条の眉間が少し寄った。表情の読めない男だ。
「矢は今どこにある?俺の推測では、矢は片桐が持っていたと考えているが…」
「……恐ろしいな、そこまで見抜いているのか。ならば奴がわたしと杉本鈴美を恨んでいたことまで、予測済みだろう?矢はわたしが彼女のストーカーに刺されて入院していた時、片桐に侵入されて盗まれたよ。大方こちらの情報を得る算段だったんだろうがね」
「警察に連絡をしなかったのか?」
「
「一応聞くが、矢を使ったのはお前ではないな?」
「わたしじゃない、それは確かだ。あんな曰く付きの物持っていたくなかったが、他の手に渡った方が恐ろしかったから、捨てるに捨てられなかった。盗まれて以降は知らない、これは本当だぞ」
「…わかった」
わたしが休学期間中、頻繁に出かけていたことを照らし合わせれば、矢を探していたことはバレる。
しかし悪用していないのは、この家で保管していた時期と照合すればわかる。ゆえに探していたことに関してはそこまで問題にならないはずだ。
仮に親父やわたしが使っていれば、我が家で保管していた時期にスタンド使いになった人間の起こした事件が発生している。
「矢については振り出しか……」
小さく呟いた男は、ふいに学ランの裏ポケットから何かを取り出す。
カチッという音が鳴った瞬間、側にあった棚の本を取りそのおキレイな顔に投げつけた。が、奴のスタンドが取る。
「…テメェ、何しやがる」
「わたしの前で煙草を吸うんじゃあない」
「………あぁ、すまない。わざとじゃないんだ」
喫煙者ってのはどうして場所や人に構わず吸うんだ。
どうやら、以前嗅いだ煙草の匂いが若い時に吸っていた銘柄と同じで懐かしさを覚え、久し振りに吸ったら癖になったらしい。
やめていた理由を聞いたら、「娘がな」と一言。
「杜王町に来ているということは、妻子は別の場所に残しているのか。帰ってきた時に娘に嫌われても知らんぞ」
「口寂しさはどうにも紛らわせなくてな」
「だったら早くこの家からもこの町からも出て帰るといい」
「だが「矢」の捜索の方が今は重要なんだ」
「家族よりも仕事かい?いずれ痛い目をみるよ、君」
家族を想う時の空条の表情には幸福があった。それを捨ててまで矢を探す理由があるのか?
なぜ自分の幸福をこの男は犠牲にできるのか。
……単純な話だ。この男も仗助のように、「正義」があるからだ。
「吉良吉影」
耳に届いたのはタバコを懐にしまった男の声。
暗闇へ進みかけていた思考が止まり、意識が奴に向く。
「これは「矢」の件についてある程度信憑性を持てた俺の憶測に過ぎない」
「何だい?」
「貴様が片桐安十郎を殺したのか?」
ゆっくりと、顔を上げた。射抜くような視線がこちらに向かう。
人を「殺人鬼」と謳いながら、しかし奴の言う(恐らく勘に基づくものだろう)“血の匂い”をわたしから感じていない。
人を殺した人間であるか否か、決めかねている。
判断材料になるスタンドの能力について聞いてこないのは、わたしが絶対に話さないと分かっているからだ。
「スタンド同士の戦闘があったことは確実であり、能力を使えば、自分から飛び降りたように見せかけることも可能だ。だが人殺しの目をする割に、
「……知らないよ、奴は飛び降りたんだ、わたしは知らない」
「露骨に表情に変化が出た、か。……いや、そもそもなぜ現場に凶器のナイフがなかった?片桐の指紋が残っていたならば消す必要もなかったはずだ。ということは、貴様の指紋が……となると────」
やはり学者の性質か、空条の思考はさらに深まっていく。
もうこれ以上事件のことについては触れて欲しくない。
ただ頭の切れる男は現場の状況を再度脳内で洗っていく。そして彼女の足跡に行き着き、目を少し大きく開けた。
「空条承太郎」
お前の口が何かを言う前に、黙らせなくちゃあいけなくなる。
「それ以上思考を巡らしてみろ、殺す」
ぼくの本性に行き着いたならまだ許してやる。だが
片桐安十郎は警察から逃げるため海へ身を投げた、それが真実だ。
爪が急速に伸びていく感覚。背後のキラークイーンが人の首に両腕を絡めた。
「貴様にも大事な者がいるならわかるだろう。熱の冷えたわたしでも、心の在処とする存在はいるのだよ。────もう一度言う。それ以上思考を巡らせるな。事件に深入りするな。ぼくと……彼女のために」
もう、帰ってくれ。そう呟いた言葉は酷く掠れていた。
空条は帽子の鍔を片手で下げ、小さく謝罪の言葉を口にし帰っていった。
ようやく静寂と共に訪れた平穏はしかし、身を貫くトゲとして心臓に刺さった。
(補足的なもの)
・おてての性癖
承太郎は切り落とされていた手について、吉良の手フェチを疑う材料ではなく、指輪を付けるためのものとして判断。イコールで、彼女を攫ったことを伝える+彼女に指輪をプレゼントした主人公に対する、片桐の究極な煽りと考えた。
・体重56kg
少年時代からの嘔吐を伴う体調不良→今に影響