転生したら殺人鬼ポジだった件   作:クリーニング黒兎

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今更ながら主人公イメ描いたので、興味がある方はどうぞ。(イメージ崩したくない方はオススメし)ないです。


58話 犬骨折って鷹の餌食

 最終日の夜。

 

 翌朝には船に乗り、本島に戻ることになる。

 

 露伴が吉良の居場所を探ろうにも、相変わらず付きまとう視線に行動できず就寝時間となってしまった。

 

 むしろ初日より二日目の方がその数が増えた。警戒されているのだろう。

 その理由は恐らく、いなくなった男の仕業だ。

 

 しかして片方がいなくなったことで一極集中した女に、「うっとおしいぞこのアマッ!」と叫んだ彼はまるでどこぞの海洋学者であった。

 

 

 女たちから得た情報によると、明日が島の祭りの最終日らしい。

 

 世話役の女に吉良について聞けども、「病気がうつっては大変ですから」の一点張りだった。

 

 露伴は改めて村の情報を整理することにした。

 幸いにも部屋には灯油製のランプがある。

 

 

 ──かまわず特攻するか?

 

 

 いや、夜は月明かりしか頼りにならない村で、一人で森に入るのはまずい。

 

 いくらスタンドがあっても、隠れた複数人に襲われれば堪ったものではない。

 向こうはしかも彼と違って土地の理解がある。

 

 流石にこの部屋にはないが、一度外に出ると監視される。なおさら下手に動けない。

 

 

 吉良の荷物があれば何か手がかりを得られたかもしれない。

 

 しかし女が今朝持っていってしまったため、見ることができなかった。

 

 

「……待て、ヤツが本当に何も残していないのか?」

 

 

 露伴は再度、メモ帳に書いた情報を眺めた。

 

 似た顔に、年齢の若い女たち。

 それは『入神島』の慣習が影響していると考えていた。 

 

 

 ──“神が()ってくる”

 

 

 そのため女たちは島から()ることを望まない。

 

 

 

 実際に「北センチネル島」のように、外部との接触を拒絶する部族もいる。

 

 ただ「入神島」の人間は、外部の人間に友好的である。

 

 その理由は何故か。

 

 

「……そうか。同族交配が多いからこそ本能的に、あるいは外の「知識」を得て、外部の男と交配するようになったのか」

 

 

 確かにそう考えれば、やたら女たちがベタベタしていた理由も納得がいく。

 

 ここに来た男が美しい女たちにまるで気があるように触られ、その後……例えば夜に厠に行った時に()()出会ったとしよう。

 女の方が本当に気があると知りベッドに誘われたら、EDとか、余程のことがない限りは話に乗るだろう。

 

 

 それこそ今部屋に女が来て、「もう少し岸辺様とお話ししたくて…」と愛らしく言われたとしたら、いくら露伴でも────、

 

 

 否、彼は全く興味を示さないだろう。

 もちろん童貞ではないし、女にウブだからというわけでもない。

 

 彼の思考回路は常にネタと康一くんである。いや、流石に康一くんは脳内の5分の1くらいかもしれない。

 

 対し吉良の場合はどうだろうか。──正直言って半々だ。

 鈴美のことを今でも好いているとは思う。それこそ同じ女を好きだった者同士、直感で。

 

 だがその上で吉良吉影は他の女を抱いているだろう。あのドラッグな作品を書く男が、綺麗なまま生きているわけがない。

 

 欲に乱れ、欲に溺れる。

 

 その上に理性で作ったレールを強いるような内容が、星ノ桜花のダークサイドな作品だ。

 人間の皮を全て丁寧に剥がし、その裏を眺めているような気色悪さが常につきまとう。そんな中で、時折繊細な感情と、人間の美しさが覗く。

 

 

『あなたは綺麗なままでいられるか?』

 

 

 ある作品にも、帯のキャッチコピーにこの言葉があった。

 

 この作品は主人公がとことん人間の尊厳を奪われるド鬼畜生な内容で、先生(あんた)は鬼だよ、とファンでさえ思った。

 

 

吉良(あの男)ならば、女たちが馴れ馴れしかった理由もわかったはずだ。その上で厠に立ち接触を図ったのか?…だが単純に寝ただけの可能性もある」

 

 

 女を引っかけ慣れているのは、ここ数日行動を共にしてよくわかった。

 

 ならば避妊具は常に持ち歩いているか。

 まぁ万が一があっても、露伴には関係ない。

 

 

「仮に村の裏事情を探るために向かったなら、何かヒントを残してそうなものだが……」

 

 露伴はもう一度、なるべく音を立てないように部屋を探る。

 途中でスタンドを使った方が早いと気づいてからは、ヘブンス・ドアーを使った。

 

 押し入れや棚、布団など隅々を探らせたものの、何も見つからない。

 はて、と彼は考え、まだ一つ探していないものに思い至った。

 

「もしかして……」

 

 露伴は己の荷物を探った。

 

 昨日部屋に戻った後、荷物の中身の配置が少し変わっていた。

 

 露伴がいない間、女の誰かが探ったのだろう。怪しいものはないだろうかと。

 

 そして今、露伴の荷物の中に、()()()()()()があった。

 

 女たちも流石に二回も調べることはない。そう考えた上で、吉良がこっそりと忍ばせたのだ。

 

 して、その物とは。

 

 

「ピル、ケース……?」

 

 

 吉良が普段持ち歩いている薬入れが、何故か露伴の鞄にある。

 意図して向こうが入れたのは間違いないが、その理由がわからない。

 

 吉良に精神疾患があることは露伴も知っている。当時鈴美が少年だった彼と遊んでいる際、()()()()()について語っていた。

 彼としては耳に入れたくない内容で、ほぼ聞いていなかったが。

 

 

 ────吉影くんにはね、()()()()()が見えるんだって。

 

 

「……ハハッ!」

 

 

 そうだ、ピンクの猫。それが追いかけてくるからと、吉良は過呼吸になりながら彼女の家に来た。

 

 時期は今から10年以上前。そして康一から耳に挟んだもう一つの「矢」についても、10年以上前に杜王町にあったらしいと聞いている。

 

 ここまで揃っては、「吉良=スタンド使い」と考えるのは当然だろう。

 露伴もまた康一や仗助、億泰などスタンド使いに出会ってきた身だ。

 

 そして、()()()()()()()()()()()()()()()であるからこそ、確信を持って言える。

 

 吉良がスタンドを手に入れた時期はわからないが、もしそれが鈴美との事件以前に手に入れたものだとしたら、岸辺露伴の逆鱗に触れるだろう。

 

 

 それは「杉本鈴美を救えたかもしれない」可能性が強まったことへの怒りでもあり。

 

 そして、()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことによる怒りでもある。

 

 この場合露伴もスタンド使いであることを黙っていたわけだが、向こうが「普通の人間」と考えて言わなかったに過ぎない。

 

 仮に知っていたならば、自分がスタンド使いだと話しただろう。

 何せ露伴はあの時、()()()会話に臨みたかったからだ。

 

 

「杉本鈴美」とは、心の扉を開く『天国への扉(ヘブンズ・ドアー)』を持った彼が、()()()()()()()()()()存在なのだ。

 

 

 露伴は吉良のことが嫌いだった。“お姉ちゃん”に向こうも好意を抱いていたからだ。

 

 しかし同時に、一定の敬意を持っていた。杉本鈴美の幸せを誰よりも願っていたのが、あの男だったから。

 

 だからこそ奇妙な出会いを果たした時、露伴は対等な立場になった上で、己の感情をさらけ出した。

 受け身にしか回らない男は、非常に不愉快だったが。

 

 それでも長らく燻っていた心のわだかまりは、多少は解れたように感じたのだ。

 

 

「それを、あの男は黙っていたのだ…!!許せん……僕の決意が貶されたんだ」

 

 

 吉良が露伴をスタンド使いだと知らなかった、というのは考えにくい。

 

 なぜならスタンド使いは引かれ合うもので。

 

 露伴が康一と運命的な出会い(ネタゲットだぜ!)をしたように、吉良が仗助や空条承太郎に出会していてもおかしくない。

 それならば、そこから露伴の情報が漏れたと考えてもいいだろう。

 

 実際は()()()()()()()()()()()、吉良はヘブンズ・ドアーの存在を知らなかったのだが、それを知る術は彼にはない。

 

 むしろあの時、吉良吉影という男が取るにしては塩らしすぎた態度が、勘違いを加速させる。

 だが知らなかったという可能性も考え、再度真っ向から話す必要がある、という結論に至った。

 

 露伴がスタンド使いであることを知った上で対面し、向こうが話し合っていた場合。

 彼は吉良に使うだろう、ヘブンズ・ドアーを。

 

 そして触れてはならない、最後のトリガーを引く。

 

 

「だがひとまずは、この村の秘密からだ」

 

 しかしそこは岸辺露伴。

 私情より目先のネタを優先させる男である。

 

 そこからまた彼が思考に耽り始めたところで、廊下に人の気配がした。

 

 薬入れとメモ帳を咄嗟に隠し、修学旅行の夜見回りに来た先生に気づいて一瞬で布団に潜る男子生徒の如く、華麗なフォーメーションでおやすみ世界の体勢になった。

 

「あの、岸辺様。少しよろしいでしょうか…」

 

「……ん、なんだい?もうぼかぁ眠いんだが」

 

 見事な演技で、今まさに寝そうだったのに、感を出す男。

 

 許可を出すと、入ってきたのは初日に見かけた少女だ。吉良にばかり視線を送っていたのを覚えている。

 今日は姿を見かけなかったが、その首を見れば納得もいく。

 

「その首、どうしたんだ?」

 

「こ、これは少し……そのっ…」

 

 少女は包帯が巻かれた自分の首元に触れ、視線を右往左往させる。

 それでも真っ直ぐに露伴を見て、口を開いた。

 

 

「き…吉良様を、助けてほしいんです」

 

 

 聞けば昨晩、この少女は情事中に吉良に首を絞められたらしい。

 そこを()()通った女に助けられた、と。

 

 女はちょうど翌日の祭事用に準備していた酒瓶を持っていて、それで殴って気絶させたそうだ。その後吉良は祠の裏にある地下牢に連れて行かれた。

 

 何故首を絞めた男を助けたいのか、露伴は問うた。

 

 

「…い、言われたのです」

 

「言われた?助けないと本当に殺すとでも言われたのか?」

 

「い、いえ!…その」

 

 

 

 ────かわいいね。

 

 

 

 少女の耳には、そのドロドロと溶けた甘い言葉が残り続けている。

 男はその言葉を口にした時、紫根染めを何度も繰り返された、濃色(こきいろ)のごとき瞳を浮かべていた。




(主人公イメージ)

吉良吉影、33歳独身。着ているスーツはブランド「ルビアム」の上下約10万。
好きなブランドは「ジャンフランコ・フェレ」なんだとかなんとか。ちなみに奴の友人こと俺は、A○KIで買った普通のスーツを着ている。


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