転生したら殺人鬼ポジだった件   作:クリーニング黒兎

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あえて直接的表現避けてボカしましたが、人によって今までの中で一番胸糞なので、ご注意ください。
きちんと知りたい人は、後書きに軽い説明入れてるのでそれを見てくれ。ただしエグい。
覚悟はいいか?俺はできてない(来るかもしれない批判に対して)


59話 犬

 入神島の女たちは村ができた経緯もあり、人々の繋がりが強い。

 しかしそれは女のみに限られる。

 

 生まれた子がもし男だった場合、その赤子は“災いをもたらす存在”として、牢に送られる。

 たとえ我が子であれど、女たちは躊躇いなく差し出した。

 

 彼女らの心中を例えるなら、可愛い子が生まれると思ったら、宇宙人が生まれてきた──といった感覚であろうか。

 

 狭い空間の中で歪に育った彼女らに、人としての真っ当な倫理観を求めたところで無駄なのだ。

 

 そんな家畜同然の扱いを受ける(ソレ)は、一部の女たちに交代で管理される。

 

 ()()はイリガミ様の供物。女たちの認識はその程度である。

 

 

 だが、「外の人間」は少し違う。

 

 

 (ソレ)に似ている。

 なのに彼女たちと同じように会話し、動いている。

 

 彼女たちは心底不思議に思ったが、「お上」から外の人間は供物と()()()()()なのだ、と教えられた。

 

 

 

 

 

 そして「ヨル」と呼ばれる少女もまた、村を訪れた人間に近寄った。

 

 ヨルは年配の女から性行為のハウツーを教わるため、手解きを受けたことはある。

 

 しかし異性との行為はまだ経験したことがなかった。

 

 

 彼女が見てきた中で、大抵の男は鼻の下を伸ばしてベタベタと女たちに触っていた。

 ただ奇妙なことに、今回来た男二人の反応は露骨に違った。

 

 一人は彼女たちを本気で毛嫌いし、もう一人は拒まぬものの飢えた目で見ることがない。

 

 ヘンな生き物だね──。

 

 男二人がいない中、一人の女がそう言った。今回はダメかなぁ、と呟く女もいた。

 

 でもヨルは違った。

 学者を名乗る男は彼女にだけ、その妖しげな瞳を向けていた。

 

 

 ゆえに、ヨルは行動に移した。

 ちなみにこの村は他の女が抱かれている最中に監視する慣わしがある。それは女たちが暴力を受けた時、すぐに動けるようにするためだ。

 

 彼女も何度か情事を見たことがある。

 

 荒い息遣いや、水音。そんな生々しい一部始終を「こうやって赤ん坊をこさえるのかぁ」と、興味津々に観察した。狂ったように見目の良い女に腰を振る男は、面白くもあった。

 後でまぐわった女に感想を聞くと、大概不満が多い。ヨルはだから、行為に快楽を求めなかった。子供さえできればそれでいいと。子供を作るのがこの村の女たちの夢であり、幸せなのだ。

 

 

 しかし、しかしだ。想定外もいいところだった。学者の男はこそばゆい程に優しく、彼女を抱いた。しかも気持ちがいい。ふわふわと脳が溶けて、心臓がバクバクとフルエンジンをかける。何だこれ何だこれと、ヨルは大パニックである。相手は乱れに乱れた女遍歴のある男だ。分が悪かった。

 そうしてぼんやりとしながら触れた男の体温は、やけに冷たくて。

 

 その事実が彼女にひどく、焦燥感を抱かせた。

 そのまま体温を失い、亡骸のようになってしまいそうだったから。

 

 男は彼女のか細い手を握り、頬を擦り寄せた。蠱惑的な色の瞳はドロドロに溶けきり、少女の手にキスを落としていく。

 

 自分の、快楽とは別の感情を理解したヨルは、この村では禁じられている行為をした。

 

 

「わっちの名は、「ヨル」でありんす」

 

 

 親につけてもらった、名前。星が降って来そうな闇世の中で生まれたから、「(ヨル)」。

 

 言葉もあえて遊女の「廓詞(くるわことば)」を使った。

 

 年寄りたちが平素で使う廓詞は、女の品格を感じさせる。

 

 外の客が来た場合、老婆らはこの廓詞を意図的に崩し、言葉を意味不明にさせる。この村の過去をバレないようにし、また若い女へ男を逃げさせるためである。

 

「夜……?」

 

「今のお空じゃございませんよ。……どうか、わっちをヨルと呼んでください」

 

 外の人間に名を明かしてはならない。

 何故言ってはならないのか、その理由を女たちは知らない。

 

 名を知ってしまえば、より強く相手への「愛」が生まれてしまう。

 だからこそ、名を言ってはならないのだ。

 

 遊女(彼女)たちにとって「愛」とは、空に上るシャボンのように儚く、手の届かないものであるから。

 

「ヨル…」

 

 闇と混じった紫色が、ヨルを捉える。焦点の少し合わない目は隈を伴い、より危うさを滲ませる。

 骨ばった手がゆっくりと少女の顔に伸びた。頬に触れて、唇をかすめて、そして白い首元をつかむ。そのままギリギリと力が込められた。

 

「あ、えっ?」

 

 少なからず快楽に沈んでいたはずの男の顔は、無機質になっていた。

 でも瞳だけは相変わらず溶けている。欲望をたっぷりと含んでいる。

 

 息を求めて喘ぐ少女に、うっそりと吉良は笑った。

 

 

「かわいいね」

 

 

 直後、彼は押し入ってきた女に殴られ、気絶した。

 その拍子に勢いよくぶつけた鼻から血が流れる。

 

 畳に広がる赤い色はヨルの中に流れるものと同じで、それが妙に、彼女は()()()と感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 ⚪︎⚪︎⚪︎

 

 

 ヨルの事情を聞いた露伴はピルケースを見て、苦い顔をする。

 

 薬を飲み忘れたという話は、鈴美から聞いたことがあった。彼の鞄に薬入れが入っていることを含め、おそらく意図的に飲まなかったのだろう。

 

 それは何故か。

 

 異常行動を誘発させ、わざと捕まるためだ。

 なぜ捕まる必要があったのか、それはヨルの話を聞きわかった。

 

「吉良様は、供物がいる牢に捕らえられています。儀式は明日で……このままだと、きっとイリガミ様の贄にされてしまいます…!!」

 

「待て、供物って何だ?もしかしてそれって……奥に住んでる男のことか?昔ならまだしも現代で人身御供(ひとみごくう)って………ハハ!実は僕らはタイムスリップしてましたってか」

 

「あ、あの、吉良様を助けては…」

 

「僕が奴を助けるだって?何でそんなことしなくちゃいけないんだ、面倒臭い。君はどうやら奴にフォーリンラブしちまったみたいだが、僕には関係ないね」

 

「そ、そんな……」

 

 あの男が女をたらし込んだのも、露伴に助けるよう頼むことを織り込んでの行動だろう。

 

 薬を飲み忘れた結果が首絞めとは、サドもいいところだ。

 

 そもそもスタンド使いであれば、逃れることは簡単なはずだ。

 

「首絞め野郎ならば、その攻撃性を踏まえてパワー型が妥当だろうしな」

 

 まるで露伴が今回の話の主役であり、巻き込まれた仲間を助けにいく過程で謎も解く──というような、展開が想像できてしまい、ひどく吐き気がする。

 

 利用するならともかく、利用されるのは心底納得がいかない。

 

 吉良がスタンドを使えない演技を今も続けているのかと思うと、もうこのまま帰ってやろうとさえ露伴は考えている。

 

 

 

「だが行こう」

 

 

 

 結局第一目標は、『イリガミ』の存在究明────否、本当は『犬神』の調査であった。

 

 しかしここまで深入りした以上、『イリガミ』の件を暴くまで、岸辺露伴は止まらないだろう。

 

 岸辺露伴は動かない?いや、現に動かされている。忌々しき男によって。

 

 それでもその口車に乗ってやろうと、ヨルに場所を案内してもらい、露伴は吉良の捕まっている場所へと向かった。

 

 

 

 そして無事に首絞め男を助けた彼は、本にした女に『岸辺露伴、吉良吉影はこの村に害のない人間であり、船を予定通り来させる。首絞めについては()()()()プレイだった』と書き加えた。

 

 露伴は戻る前に、気になった地下へ足を踏み入れようとする。

 

「どこに行くんだい?もうイリガミの情報については、君が本にした女自ら語ってくれたよ」

 

「……驚いてないところを見るに、やはり僕がスタンド使いであることは知っていたのか」

 

「仗助くんから聞いてね。…あ、でも君とカフェで会った後の話だからな」

 

「クソッタレ仗助が貴様に……?」

 

「古い知り合いなんだよ。詳細についてはおいおい話す。イリガミの件もね。今は少し休ませてくれ……」

 

 

 吉良の顔色は救急車を呼んでいいレベルには悪い。

 

 殴られた頭はそこまで問題は無さそうだが、一応後で検査をしてもらった方がいいだろう。

 

 フラついた男を慌てて支えに入ったヨルは、倒れている女の懐から拝借したカギを使い、手枷を外した。

 

「早く寝………の前に、風呂だ………」

 

 吉良はヨルに助けられながら山を降り始める。

 もう一人の女については、完全に漫画家任せだ。

 

「フン、戻るなら勝手に先に戻ってろ」

 

 しかし露伴は構わず、奪ったヘッドライトを持って地下に入っていった。後ろから聞こえた「やめた方がいいよ」の制止を無視して。

 

 牢屋に閉じ込められている男の状態というのも気になる。

 本当は一生であるのだが、彼はそれを知らないため、祭りの一ヶ月のみと考えていた。

 

「本当にあの幼稚園児並みの突貫力はどうにかならんのか…?」

 

 好奇心旺盛岸辺露伴くん(20歳)に仕方なし、と吉良もついていき、ヨルもその後に続いた。

 

 

 露伴は入って奥に進むうちに、漂ってきた異臭に眉を寄せた。そして、その男たちの姿を見た。

 その瞬間、口を押さえて全力ダッシュで外に出る。

 

「ほら、言わんこっちゃない」

 

 階段を降り終えた手前で露伴とすれ違った吉良が、呆れた顔で言う。

 ヨルは吐いている青年を見て、不思議そうに首を傾げた。

 

「ゲホッ……お、お前ぇ、正気かァ……ッ!!!」

 

「何がだい?…あぁ、異臭がしてたのか。鼻が折れてて助かったな」

 

「わっちも家畜のようなあの臭いは苦手です」

 

「違う、違う違う、()()()()()()()!!!いや、そっちもだが、僕が言いたいのは………」

 

 露伴の反応の意味を理解した吉良は「あぁ」と呟き、空中に指で「入」の文字を書く。

 

 

「この村の慣習で、家の裏口に玄関があるだろ?」

 

「…それが、なんだと言うんだ」

 

 吉良がその慣習を知った時、緑の非常出口の看板を思い出した。

 そして仮に「入り口」が表にあったらと考え、それを指で「入」と書いた時に気づいた。

 

 イリガミが「入」ってくる場所。それを出口にいる()()の人間からしたらどう見えるか。

 

 

 答えは、「人」に見える。

 

 

 吉良の手前にいた露伴がその文字を見て、顔を青ざめさせた。

 中々面白い言葉遊びであると、作家の男は思ったものだ。

 

「イリガミに捧げる物は「人」であり、「犬」神の供物として相応しいものでなければならない。単純に女たちに危害を加えられないように、という意図もあるんだろうがね」

 

「う、ぐっ……」

 

 再度先程の光景を思い出した露伴は茂みに座り込み、嘔吐した。

 彼の視線の先では、落ちたライトに群がる羽虫が見える。

 

 

 

「これは倒れている女にも言ったがね、アレは『()』なんだよ」

 

 

 

 しかし実際に「わん」と犬の鳴き声がするはずもなく、洞窟の奥からは「うー」と人間の声が聞こえる。

 

 それが今の露伴にとっては、強烈な姿をリフレインさせるものにしかならない。

 

 まだ生まれつき()()を普通のものとして認識している女たちはともかく、人間の倫理を持ちながら平然としていられるこの男が、気色悪くて仕方なかった。

 

 

 どいつもこいつも、イかれてやがる────。

 

 

 呟こうとした言葉は、また訪れた強烈な吐き気によって遮られた。




(軽い説明)


「犬」について、乱歩の『芋虫』で察せる人は察して。


要は、徹底的なまでの「人豚」扱い。戚夫人の話でも出るけど、厠に投げ落とされた彼女がそう呼ばれる。
イケニエくんたちは一応残飯ももらえる。
四肢は順繰りに、時間をかけて斬られていく。麻酔はもちろんないよ。当然その過程で出血死する者もいる。
この工程には神に捧げる「神豬」の側面がある。神に相応しい姿へイケニエくんたちを変えていくんだ!

また捧げ物になる際は、祠の前で首だけ出す形で埋められて、首チョンパす(マミられ)る。「犬神」の作り方と大体同じ。

村の女たちはイケニエくんたちを人間ではなく、「家畜」と同様のものとして認識してる。
外の人間は、自分たちと同じ「人間」として認識。

「犬」扱いの裏には、遊女たちの男に対する恨みや、子を殺した恨み、その他中絶や赤子を作れなくなった等、深い深い私怨がある。我が子であれど、元を辿ればその子供は、自分を抱いた男=(遊女たちが死ぬことになったお上の人間ども)のタネであるからこそ、余計に憎しみを持ってる。
それでも外の男とまじわるのは「我が子が欲しい」という願望があるから。
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