転生したら殺人鬼ポジだった件 作:クリーニング黒兎
ラスサバで川尻浩作(吉良吉影)来ましたね。最高にハイってやつだ…!!
「先生、「呪いのビデオ」ってご存知ですか?」
ある日の打ち合わせ中、客間の一室でわたしの担当はそんな事を聞いてきた。
「ほら、前にKO談社の作家陣が集まって、短編のホラーを書く企画があったじゃないですか」
「君が無理に勧めてきた件だね」
「あはは…その節はすみませんでした。でもすごい好評だったじゃないですか!それで、今回もなんですけどぉ〜……」
つまりまたホラーものを書けと。そういうことらしい。所謂幽霊の類を信じていないわたしに何故書かせようとするんだ、君は。
「需要があるからこうしてお話をお持ちしてるんですよ。何だかんだ仕事だったら引き受けてくれるし」
「後半本音がダダ漏れだったぞ」
「おっと、うっかり口を滑らせてしまったみたいです。泉くんだけに」
「そうだね。君は尻も軽いが口も軽かったね」
「殴りあそばしますわよ?」
泉くんは茶を飲み、「はぁ゛ー……」と中年臭い声を出す。向こうが仕掛けてくるならわたしも返す。何方かが倒れるまで続くロシアンルーレットだ。勝率はもちろんこちらの方が高い。
「──で、最初の話に戻しますけど、「呪いのビデオ」はご存知なんですか?」
「あぁ。少し前に流行った映画のネタだろう?」
「そうです。井戸から女の霊が出てくる例のやつです。呪いから逃れるには、一週間以内にビデオを他人に見せなければならない。来てんですよ、ホラーのビッグウエーブが!この波に乗らなきゃ呪われますよ!」
「君が仕事を取ってこいと言われた編集長に?」
「………へっへっへ」
図星みたいだな。職場からここまでの移動だけでも大変だろうに。わたしは杜王町を出んがね。
「今日持って来たのは“ネタ”です。ただあくまで噂話でしかありませんけど」
最近本当に「呪いのビデオ」が出回っているという話を、この編集は聞きつけたらしい。若者を中心にその噂がまことしやかに囁かれているそうだ。
「実物が手に入ったらいいんですけどね…。例えばホラー特集の雑誌に『いわく付きのものを募集中!!』ってコーナーを設けるとか」
「ホラーが苦手な人間の発言とは思えないね」
「先生って確か霊感ありましたよね?」
「
「
「………へっくしゅ!」
「そんなに私のギャグ寒かったですか!?」
客間じゃ寒いな。早くこたつの恩恵に与りたい。
それから色々と話し合い、打ち合わせが終わった。仕事は仕事であるし、あまりにも無茶な話でもないのでホラーの件は受けた。
編集の勘と言うのだろうか。泉くんの持ってくる“ネタ”には時折
「探るなと言っても、君はまた突っ走るんだろうな…」
「モチのロンです!美味しいネタを持ってくるのも編集の仕事ですからね!」
「ハァ……」
わたしの目を盗んで調べ、やばいものを知らず知らずのうちに持ち込まれても困る。ならば協力し、ネタにしながら解決してしまった方が早い。
前に四国に行ったとかで、七つのよく分からんものを引き連れて家に入られそうになった時は本気で止めた。その時猫草が嵐を吹かせていたからな。
⚪︎⚪︎⚪︎
わたしの知り合いで若い連中と言えば、思いつくのはあの漫画家と高校生連中だ。
岸辺露伴は耳が早い。ゆえに「呪いのビデオ」についてすでに何らかの情報を得ている可能性がある。それどころか現物を入手していてもおかしくない。
しかしこいつとはあまり関わりたくない。理由は妙なものを“引きつけやすい”男だからだ。親交を深めた拍子にその流れ弾を食らうのは御免である。
そうすると残るのは学生連中。奴らの中には漫画家と親しい広瀬康一もいる。探りを入れるなら丁度いい。
というわけでだ。某日、仗助を釣ってカフェ・ドゥ・マゴに学校帰りの三人トリオを集めた。奢りと聞いた虹村億泰はこれ見よがしに高い物を頼んでいる。いや、仗助もだな。
「このデカ盛りのパフェ、一度は食ってみたかったんだよなぁ!ウンめェ〜〜!!」
「億泰くん、眉間にクリームがついてるよ…」
「吉良さんが俺たちに話って珍しいっスね」
「少し聞きたいことがあってね」
端的に、呪いのビデオが実際にあるらしい──という話をすると、反応が分かれた。露骨にビビったり、ビビっているのを顔に出さないようにしたり、パフェに夢中になって話を聞いていなかったり。
「俺はねぇかな。康一は?」
「僕もないよ」
「そうか…。実は仕事の延長線上で少し調べていてね。広瀬くん、君はこういった話に敏感そうなあの変人漫画家から何か聞いてないかい?」
「露伴先生ですか?ウーン……特には何も」
「スゲェ……スゲェぞ!食っても食っても底が見えねぇ…!!」
「…おい億泰、お前ちゃんと話聞いてんのか?」
「アァ?このいちごがブランド品かって話か?」
「ちげーよッ!!」
話を聞いていない奴は無視しようと思ったが、仗助が上手く対応した。概要を聞き、なるほどなァ、と呟いた億泰少年は一旦スプーンを器に戻す。
「呪いのビデオってアレかァ?映画のヤツ」
「中身が映画と同じかは分からないけど、実際に「呪いのビデオ」があるみたいなんだよ」
「それなら聞いたことあるぜ?」
「「えっ?」」
「その話はどこで聞いたんだい?」
億泰少年は授業をさぼって屋上で寝ていた時、偶然上級生の話を耳にしたらしい。しかも彼らの会話からして、現物を渡していたようだ。果たしてそれが本物なのかは分からないが、意外なところから収穫を得た。話を聞いたのは少し前のようだ。
「先輩を探ればすぐに見つかりそうだなァ…」
「うん、そうだね。ところで君たち、最近何か欲しいものはないかい?」
ココアを飲むわたしに、学生どもの視線が向く。初っ端からブランドの服を口にした仗助には呆れた。
「“物”で与えるとは言ってない。個人で差が生じるからな」
「……そう言う吉良サンはどうなんスか?学生を金で釣るなんて、イイ大人としてどうかと思いますけどぉ?」
「貸し借りを作るのが嫌だから報酬制にしただけだ。そもそもわたしが今調べている件は「仕事の延長線上」と言っただろ。つまりはまぁ、短期間のアルバイトだと思ってくれ」
少し考えていた康一少年も、そういう話なら、と納得したようだ。与える金額はかかった期間と奴らの働きぶりで決めることにした。最低額は先に掲示してある。
「現物を入手できたら連絡してくれ。わたしはそろそろ行くよ」
「ちょっと待ってくださいっす!!」
億泰少年は叫ぶと、パフェをかき込んだ。大声を出すな。せっかく目立たん席を選んだのに台無しだろうが。
会計のため財布を持ったこちらを見ると、奴は人差し指を出した。
「お代わりいいっすか!!」
がめつい少年のテーブルには、新たにもう一つパフェが運ばれた。
⚪︎⚪︎⚪︎
仗助から連絡があったのは一週間後のこと。例のビデオを見つけたと。
ただ貸し出しの順番があり、彼らに回ってくるにはしばらく時間がかかるらしい。持ち主は調べたが、わからなかったようだ。
「呪いのビデオなのに随分と人気だな」
『これもホラーブームってやつなんスかねぇ?』
報酬は現物と交換で渡すことにして、ビデオの中身は一度確認した方がいいだろう。わたしの気のせいならそれで良し。“本物”ならば、七つのよく分からんものの時のように爆破すればいい。
『吉良さん、見るんならせっかくだしみんなでどうスか?』
「断る。それに万が一本当に呪われたらどうする」
『大丈夫っスよ!どうせ本物じゃねぇだろーし』
そこなんだよな。嫌な感じがする割には目に見えた被害者がいない。仮に呪われて死んだ人間がいたなら、学校で噂が立つはずだ。
しかしビデオを見たという奴らは特に何ともなく、感想も「アレはスゲェせ、見りゃわかる…」と、大体こんなものらしい。だから仗助たちも中身が気になっているのだ。
『頼ンますよォー!』
「ならお前たちで先に見ればいいだろ」
『………』
「怖いんだな?」
『そ、そそ、そんなわけないっスよ〜』
まぁ、こちらから頼んだのだ。鑑賞を共にするくらいならいいだろう。
見る場所は奴らの都合を踏まえてわたしの家になった。
やはり了承するべきじゃあなかったと、後悔した。
***
休日。吉良邸に四人が訪れた。吉良の編集もここぞとばかりに参加している。
「君らの後ろに何か憑いてる気がするんだが、わたしの気のせいかい?」
「「「エッ」」」
高校生三人が固まる。吉良は頑なに認めないが、“視える”側の人間だと彼らはすでに知っている。
当の男の視線は康一の背後に向けられていた。
「なに、康一くんから興味深い話を聞いたものでね」
「帰れ」
「せんせーっ!私が客間をイイ感じに怖くしときましたよ──!!」
「勝手な真似をするな」
編集は何やらカシャカシャと音を鳴らしながら玄関に来た。音の正体は手の中にあるマッチの箱である。その中身が歩く振動で音が出ている。
「あれ、一人多くないですか?………あっ!あなた前に先生を殴った男ッ!!」
「岸辺露伴だ。君が先生の担当編集か……」
「………岸辺露伴って、あの『ピンクダークの少年』の岸辺露伴先生ですか!!?」
「騒がしくするなら全員帰れ、今すぐに」
漫画家にサインをねだっている編集を置き去りにし、吉良は呆然と立っている高校生トリオを中に案内する。
客間は縁側のカーテンが閉められていることで薄暗かった。テーブルに置かれたロウソクの火は受ける風圧でゆらゆらと揺れ、何とも頼りない。ついでに、部屋の隅には新聞紙の上に置かれた植木鉢もある。その中で猫草は眠っていた。
「仏壇から勝手に出したのか…」
ロウソクの火を消した吉良は正方形のペンダントライトに手を伸ばし、部屋の明かりを点けた。茶菓子を用意しようとした矢先、ノートにちょっと豪華なサインをもらえた編集がスキップでやって来る。
「家宝にしよ………あっ、先生!この有能泉くんがポップコーンを準備してますよ!!」
「やたら大荷物だったのはそのせいか」
キッチンには確かに紙包装の箱に入った大きめのポップコーンが五つある。道中で買ったのだろう。食べる気のなかった吉良はそれを漫画家に譲った。
そして客間にそろった六名。座る位置は長方形のテーブルを囲うように、奥が露伴、中央が右から順に康一、仗助、億泰。手前に泉で、彼女の後ろにあぶれた吉良が座った。
「ふーん、これが「呪いのビデオ」ね」
「あ、ちょっと取らないでくださいよ、露伴先生!」
康一がカバンから出したケースを見分する露伴。パッケージは白く、何も描かれていない。中を開けると一枚の紙が出てきた。
「勝手に触るな、岸辺露伴
「別に見るくらいいいだろう、ケチくさい中年だな」
「………」
吉良は胃を押さえた。朝からこの調子である。
畳に落ちた紙には血のようなミミズ文字で、いかにもな文面が書かれていた。
『部屋ォ暗クシマショオ。一人デ見マショオ。最後マデ見マショオ』
高校生組は顔を青白くした。対し大人組は興味深そうに見たり、眉間に皺を寄せたりする。
「これを一つでも破ったら呪われるんですかね?それとも全部守ったら呪われるのか…」
「それなりの人間が見ているなら、すでにどのパターンも該当済みなはずだろう」
吉良は泉から視線を外し、中身を手に取る。見た感じ、普通のビデオと変わらない。背の白いテープが貼られた部分には、『これは呪いのビデオ!!!!!』と書かれている。紙にあった筆跡とは異なるため、貸し借りされるうちに誰かが書いたのかもしれない。
「じゃあ見るぞ」
部屋が暗くなり、卓上に心許ない光源が点く。ゴクリと、誰かの喉が鳴った。
静寂の中にテープの巻き取られる音が響く。
そして、映像が始まった。
数十秒続いた暗闇から暗転したその中に、一人の男がいる。スーツ姿の、40代ほどの平凡な見た目の男だ。
部屋は自宅のようで、男はネクタイを緩めると、ベッドに寝転がる。ちょうどその時、ピンポーンと音が鳴った。
男の背後を追うように、その映像が続く。
またピンポーンと、音が鳴った。
床を歩くペタペタという足音。玄関の前に立った男は、その扉を開けた。
そこに、いたのは。
──────胸元が大きく強調された服を着た、えっちな感じのお姉さんだった。
「デリバリーヘルス*1やないかいっ!!!」
コンセントを引き抜いた泉が叫ぶ。言葉の意味を知らなかった高校生たちは恐怖と、困惑と、ちょっとよぎったモヤモヤした感情の中で首を傾げる。
「あの…デリバリーヘルスって何ですか?」
「お、オホホ……それは、えぇーと…」
「
「ケンコー配ってどうすんだよ。だったら普通医者行くだろ」
「………おい、仗助ェ、康一。もしかしてコレってよぉ…」
「あっー〜〜!!あそこに貞子がいるぞぉ!!!」
編集はチラッ、チラッと吉良に助けを求める。未成年が真実(18禁)にたどり着く前に、何が何でも話題を逸らしたいようだ。
ハァー…と、彼はため息を吐く。
「貴様ら食べカスを落としすぎだ。一旦掃除するから廊下に立ってろ」
元々食べこぼしにイラついていた男の剣幕は恐ろしい。渋々高校生三人は編集に背を押される形で部屋を出た。
箒とちりとりを取ってきた吉良はさっさと掃き始める。その間、漫画家は取り出したビデオテープをじっと見ていた。
「………」
「何だ、欲しいんだったらあげるよ。学生には不健全なものだしね」
「………」
露伴はビデオをテーブルに置き、今度はカバーをじろじろと眺める。
「……ん?」
カバーの貼られた保護フィルム。そこはポケットのようになっており、表面と裏面が一体となった一枚の紙が挟んである。
それを抜き取った露伴の目が丸くなった。
「ナァ、なぁオイ、星ノ先生……じゃなかった、吉良吉影」
吉良は胡乱な顔をしながら漫画家の手元を覗き込んだ。
『これぉみましたか?』
『うしろ』
『みましたね?』
『いまいきますね?』
『いきますよ?』
『死ね』
ピンポーンと、音が鳴った。
露伴は目を見開き、吉良を見る。男の顔は玄関の方に固定されていた。
「なぁなぁなぁ、コイツァ
「これだから貴様がいるのは嫌だったんだ……」
廊下の先にはちょうど玄関がある。廊下に出ている四人からはガラス越しに見えているだろう。その場所に、立っている人物が。
二人が客間を出ると、すぐ側に億泰たちがいた。全員玄関の方に視線が釘付けになっている。
ガラス越しにぼんやりと映るその姿は女のものだ。
「せんせーい!遅れてすみません!!」
声は泉のものだった。高校生三人と、漫画家の視線が中にいる彼女に向く。
「えっ……え!?何で外から私の声が!!?」
「先生すみません!新幹線が遅れちゃって……」
中の編集に向いていた視線が、今度は吉良に向けられる。半目だった男は、何かに気づいたように「ぁ」と声を漏らした。眼鏡の奥の紫目が捉えるのは、外────ではなく、中。
「君、わたしと二人の時は「吉影さん」と言うのに、今日はずっと「先生」呼びだったな……?」
「ッ………「ヘブンズ・ドアーッ」!!」
露伴が泉を本にした。気を失った女は倒れ、パラパラ、と本がめくれる。一方で仗助たちは「ギャァ──ッ!!」と絶叫し、奥のキッチンへ逃げた。
吉良は玄関へ歩を進める。彼の背後にはキラークイーンが現れた。
『フシャァ────!!!』
それと同時に、客間にいる猫草も騒ぎ始めた。
この女が“ヤバいもの”なのか、本をめくろうとした露伴の手が止まる。一瞬見えたその猫草の向いていた方角は玄関。つまり。
「貴様……!さっきのは嘘か!!」
「ちょっと脅かしてやろうと思っただけだ。彼女は元に戻してあげてく…」
「せんせぇ せんせぇい センセェェェ」
ピンポンピンポンと、何度もインターフォンが鳴る。ついで玄関の戸全体が揺れた。客間の明かりもチカチカと点滅する。
ぶわっと、漫画家の青年のこめかみに汗が伝う。生魚みたいな腐った臭いがして、急速に体全身が重くなる。ついに立っていられなくなった露伴は、耐えるように手を伸ばす。その拍子に爪が壁をガリッと削るように音を立てた。
「せんせいきましたよ きましたよせんせぇ せんせいせんせいあけて せんせいせんせいせ開けろ開けろ開けろ開けろ開けろ開けろ」
「ク、ソッ、意識が……」
岸辺露伴が遠のく意識で見たのは、ため息を吐く男の後ろ姿だった。
『ニャー』
猫の、声?
そう口にしようとした露伴の声が、音になることはなかった。
⚪︎⚪︎⚪︎
倒れた連中が起きたのは一時間後のことだった。泉くんが一番最初に起き、客間を出ようとしたその瞬間、廊下に並べられた男四人を見るなり悲鳴を上げた。奴らは置く場所がないから廊下に転がしておいたんだ。
玄関のよく分からんやつについてはキラークイーンで真っ二つにしたビデオテープを見せ、「消えた」と言った。
「………」
岸部青年だけ納得の行かない様子である。
「その……このテープどうするんスか?」
「お祓いに出しとくよ。完全にアレが消えたかは分からんからな」
仗助たちは自分たちもお祓いに行った方がいいか聞いてきたが、知らん、で一蹴する。
奴らは結局、神社に向かう泉くんについて行くことにしたようだ。情けない奴らだな…。
そうして四人が去った。
岸辺露伴が帰らない。
「……お前、アレをどうしたんだ?」
「さぁ?向こうが用事を思い出したんじゃないかな」
「………」
面倒くさい奴に捕まってしまった。貴様の好奇心を満たさせないとダメなのか?
「そもそもの話だ。「呪いのビデオ」はここ杜王町だけでなく、もっと広範囲に噂が広まっている」
ビデオの本体は成人指定のもので、学生らは「呪いのビデオ」と銘打って中身を暗号化していたんだろう。そこらの感性に共感することはわたしには難しい。まぁおそらく、本棚にミケランジェロの画集を他の画集に紛れ込ませるのと似たものではなかろうか。性的なコンテンツに隠したい心理が働くのは当然なはずだ。
わざわざ「呪いのビデオ」の名を使ったのも、映画の流行が関係しているのではなかろうか。
「だが何故康一くんが「被害がない」と言っていたにも関わらず、僕らに実害が起きたんだ?」
「カバーがあるだろ?もしかしてと思って裏側をわたしの編集に見せたが、
「………!!」
わたしやこの漫画家と彼女の相違点は、スタンドの有無だ。
スタンドで一括りにされるものかは分からないものの、“特別な力”を持つ者が裏側を見た時、条件がそろうのだろう。もしくはその条件さえ本当はもっと緩いもので、力を持つ人間がビデオを入手した時点でアウトなのかもしれない。
「ビデオもダビングすれば数はいくらでも増やせる。そうすれば広範囲に噂も広まる」
「…いったい誰が広めてるんだ?」
「知らないよ。まぁ、何者かがわたしたちと同じような、特別な力を持つ誰かを探しているのかもしれないね」
────相当な、恨みを持って。
そう続けると、岸部青年は息を飲んだ。
「単純に、探す対象が違うとわかったから消えたんだろ。あくまでここまで話したものはわたしの憶測でしかないがね」
「………」
「不安ならお祓いに行くことをオススメするよ」
沈黙のまま、岸辺露伴は帰宅した。これでようやく我が家の平穏が戻った。
「しかし、仮にわたしの考えが真実の核心をついているのだとしたら……」
爆破させる前に消えたアレは、いったい誰を探しているんだろうな。