ハアハア。目が覚めたと思ったら、神社の鳥居の前にいたんだが。てか、夜だからか暗くてほとんど周りが見えねぇ。鳥居が目の前にあるってのは分かるんだが。ここから先に進む勇気が湧いてこない。引き返そうとしても階段が暗闇の底に続いているだけだ。下に続く階段の横はただただ林が広がっているだけだ。ここは山の中の神社なのか。山…そうか、思い出した。俺達は山の中で土砂に巻き込まれて死んじまったんだ。そして、あの車に縛られて…それから白い光に包まれて…クソ、嫌なこと思い出しちまった。あれが成仏ってやつなんか。いやいや冗談じゃない。成仏したならどうしてまだ山の中にいるんだ。そしたらこの神社は山で死んだ奴らの幽霊が集まる神社だってのか。くそったれ、俺はまだまだ楽しい人生を送りたかったってのに。特に可愛い彼女を作ってゆくゆくはあんなことやこんなことをするつもりだったのに。高校の時の彼女は遠距離になって結局分かれちまったし、それにせいぜい膝枕くらいしかしてもらえなかった。まさか童貞のまま死ぬとは思わなかった…。ちきしょう、悲しくて泣けてくるぜ。鼻水も出てくる。てか、寒いな。山の上だからか。このままじゃ凍死しちまうかもしれなぇ。もう死んでるんだが…。
もう迷ってても仕方ないか。腹をくくってこの鳥居を潜るしかない。中には大量の幽霊がいるかもしれねぇけど。いや、てことはあいつらもいるのか。そうだ、あいつらも一緒にこの山で死んだんだ。幽霊になってもこうして人間の形を保っているんだ。あいつらもちゃんとした姿でいるはずだ。この神社に成仏できずに囚われるにしても一緒にいてくれた方がマシだ。くそ、どうせ一緒なら可愛い女の子が良かったぜ。いや、囚われている幽霊の中にもカワイ子ちゃんがいるかもしれない。例えば、山で死んでしまった山ガールとか。死後の世界で新たな出会い、なんかそれもいいかもしれねぇな。幽霊同士ならふれあえるかもしれないし。よし、そうと決まれば行くっきゃない。
「神奈子様…諏訪子様…申し訳ありません。私が不甲斐ないばっかりに…」
「いや、仕方が無いさ。」
「人間っていうのは残酷だねぇ。」
ここは守矢神社。標高4000メートル近くもある妖怪の山の頂上にある神社で、索道が通っており、博麗神社よりも参拝客が多く、安定した信仰を得ている。だがそれも半年ほど前までのこと。人里からの信仰がめっきり減った今では、祭神である八坂神奈子、洩矢諏訪子の二人の力は弱まり、すっかりしおらしくなってしまっている。
信仰を失い、人としての形が保てなくなった神が行き着く先は自然への回帰だ。天候の神である神奈子は風、土地の神である諏訪子は大地にいずれ還ってしまうだろう。例え人里で差別を受けようとも守矢神社の巫女である東風谷早苗はどうにかして信仰を得るために我武者羅に努力を続けた。だが、現実は残酷であった。これまで早苗達の容姿など気にもとめず熱心に信仰してくれた人々も里の権力者が定めた掟にすでに従い始めていた。やがて早苗は人里に立ち入ることすら許されなくなり、勧誘活動をすることすらできなくなった。
今となっては残された最期の時間を三人で静かに過ごすばかり。
鳥居を抜けたはいいけど、この神社、かなり広いんだな。神社の構造とか名称とかよく分からねぇけど、真正面から本堂に入るのは罰当たりか。神社っつっても人が寝泊まりする場所ぐらいあるはずだよな。まあ俺は幽霊なんだが。どっか、入れそうな場所はねぇかな。とりあえず周りをぐるっと一週してみっか。
夜の神社を探索ってなんか肝試しみたいだな。本当だったらこんなことしたくないってのに。明かりの一つでも着いてりゃいいのに…ってあそこに光が見える。もしかしたら誰かいるのかもしれん。明かりを見つけて安心したのか足取りが少し軽くなるぜ。
本堂の左側にどうやら住居スペースがあるらしいな。障子越しに明かりが漏れている。どうするかな。このまま縁の上に上がって入るか。いや、もし中に人もとい幽霊がいたら…。考えるとぞっとするな。入った瞬間、恐ろしい顔した化け物がうようよいたら…。畜生、明かりは見つけたが中に入る勇気がない。中から話し声すら聞こえねぇし。どうする、声でもかけてみるか…。
すこしの間、迷っていると、突然ガラガラと障子が開いた。びっくりして跳ね上がる。目を見張るとそこには、
この世の者とは思えない美少女が立っていた。
「気晴らしに外でも眺めましょうか。」
気分が晴れない時は星空を見上げる。外の世界にいたときから私はそうしてきた。広大で神秘的な宇宙を見上げると私と私を取り巻く日常がちっぽけなものに感じ、全てを忘れることができた。外の世界でも幻想郷でも星の輝きは変わらない。月なんかよりも遙か遠くにある星の輝き。おそらく月の民ですら真理にたどり着けていない星の数々。こちらに届くのは何万年も前の原初の光。刹那的に頭に過ぎった星の神秘を思い浮かべながら障子を開ける。
「あっ」
我ながら間抜けな声を上げたと思う。障子をあけるとそこには一人のイケメンが立っていた。先ほど星々への憧れなど忘却の彼方へ追いやられる。闇夜の中で部屋の明かりに照らされて映し出された彼の姿は私の瞳をとらえて離さない。里の人間には見られない茶髪に加えて、凜々しさと爽やかさを併せ持った整った顔。すらっとした体を包むベージュのチノパン、赤いインナーと黒いジャケット、頭には暗い色のメンズハットを被っている。外の世界のファッション雑誌の表紙になりそうな素敵な男性だった。
「えっ」
変な声を出してしまった。いや、こんな美少女見たら男なら誰だってこんな反応するだろ。逆光で少しわかりにくいけれど、この子の髪は緑色をしている。普通だったら残念な髪の色だと思うだろうが、そんなことは一切感じさせない。それくらい整った顔立ちだった。否、この顔立ちだからこそ緑色の髪が似合うのだ。
しばらく二人はお互いに固まったまま動けないでいたが、その沈黙を破ったのは早苗の方であった。
「えっと、参拝客の方…ですか?」
「…いや、死んだらこの神社に居てですね…」
おいおい、何言ってんだ俺は。これじゃただのやべー奴じゃんか。ここは嘘でも参拝客ですって取り繕うべきだっただろうが…。向こうの子も首をかしげてるじゃんか。ああ。第一印象最悪だよ…。こんな絶世の美少女に嫌われたらこの先、生きていける気がしねえよ。もう死んでるけど。
「早苗、どうしたの?」
「障子開けたまま固まっちゃうとかさ。」
「あ、神奈子様。諏訪子様。」
「えっ、お、お、男ぉ?!」
「ちょ、早苗ぇ、何で男がここに居るんだよぉ。」
「わ、私にも分かりませんよー。」
なんか更に二人出てきたんだが、この子のお姉さんと妹さんだろうか。お姉さんと妹さんもこれまた別嬪さんなんだが、ここの神社の血筋は美神に由来するとでも言うのか。なんか皆、男が居るっていうだけで、混乱してるご様子なんだけど…。女神の前では男子禁制なのか。もしやこの神社は幽霊ではなく女神達の住まう禁断の場所なのか。
いや、俺は目覚めたらなぜかここに居たんだ。おそらく何かの縁でここに流れ着いたに違いない。つまり俺はこの女神達に関わる権利を天から与えられたに違いない。そうと決まれば話は早い。こういう時は男から会話のペースを作るもんだぜ。
「すいません。お取り込み中のところ申し訳ないのですが、お嬢さん達はこの神社の方ですか?」
「えっ、はい。そうですが…」
「俺は
「は、はい。お二人も良いですよね?」
「え、ああ。我々も構わないよ。」
「ありがとうございます。」
彼は素敵な笑顔でお礼を言うとこちらへ近づいてきた。私は勿論、神奈子様も諏訪子様も軽い金縛りにあったように緊張で身体が
彼は私達の顔から一切目を背けずにお嬢さんとか美人さんとか平気な顔で言ってくる。最初はおちょくられているのかと思ったが、それは嘘偽り無い言葉なのだとすぐに理解した。彼の眼差しに一切侮蔑の意図はない。そうか、彼は俗に言うブス専という奴なのか。彼ほどの容姿なら私達と比べものにならない美人達にもてるだろうに。
やべぇ、どうしても意識して見ちゃうわ。目の前に選り取り見取りの美人さんが居るってのも目に毒なんだな。緑の髪の子は早苗ちゃん、お姉さんの方は神奈子さん、妹さんの方は諏訪子ちゃんというのか、しっかり覚えたぞ。自慢じゃないが女性の名前を覚えることには長けているからな。というか本当に皆神様だったんだな。そりゃ初見でこの世の者とは思えない女性だと感じるわけだ。
「あのー、夏目様は先ほど、死んだらこの神社に居た、とおっしゃっていましたよね?」
「えっ、ああ。そのことなんですけど…やっぱ、変なこと言ってましたよね。すいません。」
ああ、終わったよ。やっぱやべー奴と思われてたじゃんか…。
「いえ、お話を聞かせてください。もしかしたら外来人の方かもしれないので。」
「外来人…?」
「ってことは、ここは幻想郷って場所で、俺は外の世界からここに来た…と。」
「ええ、容易には信じられないかもしれませんが、そういうことになります。」
神奈子さんにそう突きつけられる。あの時の光は幻想郷への入り口だったのか。
「ですが、夏目殿のお話だと既に死んでから幻想入りしたことになるのですけど、それが大変珍しい例でして…」
「そうなんですか…。」
「博麗神社という場所に行けば、専門家が居るので何か分かるかもしれないのですけれど…ここからはとても遠いので今から行くには遅すぎるのです。話を聞くと言っておいてお力になれず申し訳ありません。」
早苗ちゃんがしょんぼりとする。いや、全然そんなことないから。自分が今現在幻想郷にいるという情報が得られただけでも助かったし、部屋に上げてもらってお茶までいただいたし。何より俺の訳分からない話を真摯に聞いてくれて…。なんていい子なんだ。神奈子さんと諏訪子ちゃんもそうだ。見ず知らずの俺にこんなに温かくしてくれるなんて…。
「いやいや、とんでもないよ。早苗ちゃん達のお陰でいろいろ分かったし。」
「今、早苗ちゃんって…」
あ、しまった。距離を詰めすぎたか…。ていうか女の子に接する時の俺の癖が出ちゃったか。諏訪子ちゃんの言葉にハッとなる。
「もしかして、夏目さんって丁寧語苦手だったりする?」
「アハハ…。」
「良かった良かったぁ。実は私達もいつもはこんな感じなんだよ。」
「丁寧な言葉を使うのは営業の時だけだもんねー。」
「神奈子様、諏訪子様。一気にだらけすぎじゃないですかね…」
「まあまあ、俺もこういう雰囲気の方が好きだし。早苗ちゃんももっと砕けていいのに。」
「いえ、私は…その…///」
年上の人ですし…と言いかけて早苗ちゃんは顔が赤くなってしまった。照れてる早苗ちゃんも可愛いな。
「ところで、拓実君は私達の顔を見て本当はどう思ってるのかな?」
「ちょっと、神奈子それ聞いちゃう?」
「さっきから言ってる通り。皆美人さんだけど?」
「ええっ?!それって本当だったの?」
「…ねぇ、嘘じゃないよね?」
「嘘な訳ないじゃん。もう最初に見た時からずっと綺麗な人達だと思ってたよ。」
おかしなことを言う人達だ。神奈子さん達のレベルじゃ容姿を褒められることくらい日常茶飯事なはずなんだけどな。
「さ、早苗!聞いたか!ついに私達にも春が来たぞ!」
「か、神奈子様。私は気づいていましたよ!拓実さんはブス専だということに。」
「マジかー。滅茶苦茶希少な人じゃないかー。」
ダメだ。ここにきて会話について行けない。幻想郷とか外の世界とかいう概念や妖怪や神様が実在することは意外にもすっと理解できたのだが、目の前の彼女達が舞い上がっている理由が分からん。俺は断じてブス専ではないし、寧ろ逆の男だと思ってる。女性の価値は見た目、特に顔と胸が9割9分だと思っている男だ。性格に難があったり料理が下手だったりとか大した問題じゃない。友達には、お前は外見さえ良ければいいのな、なんてしょっちゅう言われている。
「あのー、盛り上がっているところ悪いんだけれど、君らはどうして自分がブスだと思うの?」
「えー、私の顔とか?」
「体とか?」
「髪とか…ですかね?」
いや、何言ってるんだ。君達は。それじゃ全身隈無くってことじゃん。俺の聞き方が悪かったのか?
「ごめん、質問を変えよう。逆に美人の特徴って何だと思う?」
「顔がお餅みたいに膨れてて眼が細くて…」
「体は相撲取りのように大きくて」
「髪は太くて油っこいのがいいと思います。」
何じゃそりゃ。想像しただけで吐き気がするわ。そんなクリーチャーみたいなのが幻想郷の美人なのか。
「ねえ、もしかして幻想郷と外の世界じゃ美人の特徴が逆転してたりするの?」
「あはは、そんな訳ないじゃないですか。」
「もしそうだったら早苗は高校でモテモテだっただろうね。」
笑われたんだけど…。ていうか俺が外の世界から来たとしたらそれはおかしくねぇか。
「私達に気を遣ってくれているのは嬉しいけどさ。別に隠さなくっていいんだよ。蓼食う虫も好き好きって言うし。人の好みなんて皆違うんだから。」
違うんだ、諏訪子ちゃん。
「もしかして、俺がいた世界は外の世界じゃないのかもしれない…」
「おや、変なこと言うねえ。」
「まあ、幻想郷に来たばかりで混乱してるんだろう。拓実君、今日は泊まっていくといいよ。」
結局、俺はここ―守矢神社に一泊することになった。博麗神社には明日案内してくれるらしい。夜遅いので風呂まで沸かしてもらって、寝間着は早苗ちゃんのお父さんの物をお借りした。早苗ちゃんのご両親については踏み込んで聞けなかったが、もうお亡くなりになっているのかもしれない。先ほどの居間に布団を敷いてもらってそこで寝ることになった。麗しい女性三人と同じ屋根の下…と思うと嬉しくなるが、それ以上に先ほどのちぐはぐな会話が俺の頭をかき乱す。どうなっているんだ、この世界は。まるで美人への価値観が逆転したようだ。ダメだ。頭が冴えて眠れない。
山奥の神社だから夜は本当に静かなんだな。秋の夜らしく虫の鳴く声しか聞こえてこない。明かりは小さな電灯1つのみ。早苗ちゃんに寄れば幻想郷にしては珍しく守矢神社は電気が通っているらしい。何でも独自の発電ルートがあるのだそうだ。まあ、現代っ子の俺にとってはありがたい話だ。
拓実さん。あなたは一体何者なのですか。あなたは本当に外の世界の住人なのでしょうか。神奈子様と諏訪子様は冗談のように流していましたけど私はどうしても気になってしまいます。もしかして異次元から来た人とか。だとしたら幻想郷ではどういう種族になるのかしら。明日博麗神社に行ったらあなたの正体が分かるのでしょうか。もし幻想郷にとってもイレギュラーだとしたら霊夢達に退治されてしまうかもしれません。いや、でも今は私達の力は消えかけているから大丈夫かしら。
そして、彼と出会って会話をしたこの数時間で私の霊力が回復したように思えるのです。神奈子様と諏訪子様も元気を取り戻したのでしょうか。あんなに楽しそうにお話されるのは久しぶりでした。
軽く力を入れてみる。すると、私の体は宙に浮いた。空を飛ぶ力が戻ったのだ。
やっぱり、そうだ。すると、拓実さんは私達の救世主になってくれる。神奈子様も諏訪子様も力を取り戻すことができるかもしれない。あなたが本当に異次元人で元の世界に帰ってしまったら、もう二度と会うことができないのでしょうか。それは嫌です。拓実さん…あなたとずっと居たい。私を可愛いと言ってくれた男の人はあなたで二人目でした。あなたと離ればなれになるのは嫌です。決めました。今からでも頼み込みにあなたの元へ行きます。
ミシリミシリと誰かが廊下を伝う音と、それに混じって床と足が擦れ合うあの独特の音がする。早苗ちゃんだろうか、神奈子さんだろうか、それとも諏訪子ちゃんだろうか。足音はだんだん近づいてくると、俺が寝ている居間の前で止んだ。少しの沈黙の後、トントンと
「もう、お休みになられていますか、それでも失礼しますね」
襖越しでくぐもっているが、言葉遣いと声で分かる、早苗ちゃんだ。
入っていいよ、と言う間もなく襖が開かれた。
「夜空っていいですよね。私、大好きなんです。」
秋の月に照らされた縁側で早苗ちゃんはそう切り出した。居間に入ってきた時は何事かと思ったが、私も眠れないもので、お話に付き合っていただけませんか、と来たものだ。これを喜ばない男はいない。俺と早苗ちゃんは縁側に面した障子を開け、少しだけ寒い秋の夜空の下、夜話を始めたのだった。
「幻想郷は外の世界と違って夜は真っ暗ですからね、星空が綺麗に見えるんです。」
「確かに、言われてみればそうだねー。都会の中じゃこんな綺麗な夜空は見えないよ。」
神社前で目覚めたときは気にも止めなかったが、上を見上げるとそこには美しい夜空が広がっていた。都会の生活に慣れた自分を洗い流すような、そんな見事な星空だ。
「あの星々から届く光は何万年、何億年も前の光なんですよね。私達が生まれる遙か昔に発せられた光…、とても神秘的です。」
「ああ、神秘的だね。」
早苗ちゃんはその後も星について語り続ける。俺はただ相槌を打ちながら答える。宇宙の話、そして、人工衛星や惑星探査車の話までに発展して途中でついて行けなくなったけれど。よっぽど宇宙が好きなんだな、早苗ちゃんは。その辺の理系学生以上に知識がある程に。
「すいません。こんな話、興味ありませんよね…。」
「ははは、早苗ちゃんは本当に宇宙が好きなんだね。」
「でも、私ったら一方的に喋ってばかりで…」
「いや、構わないよ。星とか宇宙の話してるとき、早苗ちゃん、とても嬉しそうだったし。」
「女の子の話に付き合うのは男の務めさ。まして相手が早苗ちゃんみたいな可愛い娘なら尚更さ。」
「…ふふ、よくそんな恥ずかしい台詞言えますね。」
全く、この人は。今までそういった言葉とは無縁だった私にとって、言われた方が恥ずかしいというのに。でも、きっと本心からのお言葉なのですよね。そこがずるいですよ。ますますあなたに惹かれてしまう。
「あっはっは、早苗ちゃんも同じこと言うのか。」
彼は豪快に笑いながらそう言った。
「友達にも散々言われたよ。よくそんな歯が浮くようなこと言えるなってさ。」
お友達…。拓実さんにも元の世界にお友達が居たはずですものね…。
気がつけば私達を照らしていた月は雲に隠れたようで、暗がりが辺りを支配していました。
「やっぱり、元の世界のお友達にまた会いたいですか。」
「えっ…まあ、そうだね。」
「やっぱり、元いた世界に戻りたいですよね…。」
「…まあね。」
「っていうか、どうしたのさ。急に改まって。」
ずっと、星や宇宙のお話ばかりしてましたけれど、本当の目的は違うのです。できたら、あなたにここに居て欲しい。
「…私がここに居て欲しいって言ったら、どうします?」
「そ、それは…」
「私は…いえ、私達は拓実さんと供に居たいのです。今、この守矢神社は滅びようとしているのです。里からの信仰が得られず、このままでは神奈子様も諏訪子様もいずれ消滅してしまうでしょう。」
「っですが、拓実さんとふれ合ったこの数時間で、お二人は元気を取り戻したのです。拓実さんは私達を救う不思議な力をお持ちです。これは拓実さんにしか頼めないことなのです。お願いです。どうか私達のお側にいてくれませんか。」
私はこんなに饒舌だっただろうか。たたみかけるように次から次へと言葉を投げる。
「…あのさ、何があったのかは分からないけど。」
しばらく面食らっていたあなたは落ち着きを取り戻すと言葉を紡ぎ始めました。
「俺は可愛い女の子から頼まれたことは断ったことがないからね。」
「早苗ちゃんの頼みなら…」
「ここにいるよ。」
一息ついた後、優しさと少しの威厳のこもった声であなたはそう言いました。ちょうど群雲に隠れた月が顔を出し、あなたを照らしていました。
「―とこんな感じで俺と早苗ちゃんは出会ったって訳だ。」
「もう、拓実さんってば恥ずかしいですよー。」
「いいじゃないかー、折角俺達のロマンチックな出会いを皆に教える良い機会なんだしー。」
博麗神社の居間で一組の男女がいちゃつく。
まあ、元気そうで安心したよ、お前はこっちに来ても変わらんのな、などなど拓実の友人の男達は若干引き気味ながらも各々感想を漏らす。
「ロマンチックな出会い、いいですね。私と健一さんの出会いも素敵なものでしたよ。」
「こらぁ、勘違いブス淫乱ピンク!彼女面してんじゃないわよ。」
「か、勘違いブス淫乱ピンク…」
何もそこまで言わなくてもいいじゃない…、霊夢に怒鳴られた華扇はしょぼくれる。
「れ、霊夢、私達の出会いも話さなきゃダメ?」
「当ったり前よ。あんた達がどうして一緒にいるのか聞いておきゃなかならないの!」
居間の小さな机を挟んで霊夢達は三人の男と対峙していた。霊夢としては三人を糾弾するつもりは微塵もないが、それぞれの隣にまるで恋人のように付き添っている少女三人が腹立たしいのだ。紫は霊夢を見て、そんなにムキにならなくても…と思ったが、彼らが幻想郷のどこに呼び出されたのか、どういう経緯を経て博麗神社に来たのか、確認しておく必要があったため、この場は霊夢本人に好きにやらせるようにした。
一方、東風谷早苗、アリス・マーガトロイド、本居小鈴の三人は霊夢の気迫に圧倒されながらも心の内では勝ち誇っていた。彼らを呼び出したのは霊夢達であったとしても、最初に出会ったのは私達なのだ。彼の事を幻想郷で一番知っているのは私だ、三人ともそう思っていた。
「さあ、アリス!話しなさい。」
「わ、分かったわよ。」
「そういうわけだから、
「ああ、俺は構わないよ。」
アリスに剛成さんと呼ばれた、強面で体格の良い男はそう答えた。
お疲れさまでした。そして、誠にありがとうございました。チョロインを超えたら何になるのでしょうね・・・。