夕暮れの森というのは恐ろしいものだ。まして目が覚めた場所が森の中というこの状況。山登りを趣味としている自分は、森という場所が好きではあるが、同時にその恐ろしさも知っている。水、食料はない。熊よけの鈴もない。あるのは腕時計と財布と携帯だけ。携帯は圏外であり、外部との連絡もとれない。自分は生きてこの森を出られるのだろうか。いや、そもそも自分は―
死んでいる。その一言が頭に響き渡る。そうだ。俺はハイキング帰りに土砂に巻き込まれて死んだのだった。嫌な記憶が甦る。運転席に座っている自分、車内にはいつも通りのメンバー。退屈な山の車道を友人達と駄弁りながら降りていく。突然、視界の左半分が曇る。崩れた地盤の影に覆われて、暗雲に包まれたように車内は暗くなる。声を上げる間もなく土砂に巻き込まれ、そこで自分の中の何かがプツリを切れた。
次に意識を取り戻した時には自分は霊になっていた。鉄塊と化した車の周囲から離れられず恨みに意識を持って行かれ、悪霊になりかけた。家族、友人、恩師、数え上げればきりがないが、彼らにすら恨みを抱くことになるとは。呪怨の泥沼に沈みかけた自分は、突然白い光に覆われて―。
そうだった。自分は死んだ後で、今この森にいるのだ。ここはあの世というやつなのだろうか。どうしたものか、周りをよく見ると見たこともないキノコが生えている。お伽話の世界に出てくるような不思議な色をしたキノコだ。何やらキラキラした物を漂わせてるが、これは胞子だろうか。そうだとしたらあまり近づかない方が良いだろう。
突然、ガサリという音がする。恐る恐る音のする方を見ると、そこには何も居なかった。いや、確かに音がしたのだ。地面に眼を懲らす。
気づいてしまった。気づかない方が良かったかもしれない。木々の合間から溢れる夕陽に反射してつやつやと輝く鱗を持った物体がのろりのろりと動いていたのだ。蛇だ。それもかなり大きい。全身の毛が逆立ち、恐怖を覚える。こちらを攻撃したきたらどうしようか。警戒しながら、蛇の方を睨み続ける。それが茂みの中に消えるまで睨み続けた。
ここは地獄だ。自分はそう確信した。元々ハイキングは自分が企画して自分が彼らを連れてきたのだ。自分が誘わなければ彼らは命を落とさずに済んだのだ。そして車を運転していたのも自分。周囲の安全確認を怠らなければ土砂を回避できたかもしれない。この場所は自分に罰を与える為の地獄なのだ。毒キノコや毒蛇でじわじわと苦痛を与えられる地獄だ。
しかし、人間はこうも簡単に地獄に落ちるものなのか。生前それなりに善行を積んできたのに、死ぬ寸前の数日でこうもあっさり地獄にたたき落とされるものなのか。悔しい。自分は今まで、家族を愛し、友人を愛し、周りのため、社会のためにできることを必死で頑張ってきたのに。それらは何だったのだろうか。
こうなったら、いっそのこと、この地獄の管理者を探し出してやろうか。なぜ自分が地獄に落とされたのか、納得のいく説明が欲しい。案ずるよりも産むが易し。そうと決まれば行動あるのみだ。落ちていた太めの木の枝を拾い、護身用の武器とする。付け焼き刃でも構わないこんな枝でもないよりはマシだ。
そもそもこの地獄に管理者がいるとは限らない。だが、今の自分はとにかく動き回るしかない。歌を歌い、気を高め、拾った枝を振り回しながら、辛うじて通れる道を進んでいく。腕時計が指す時刻は午後5時を回ったところだ。腕時計は問題なく機能しているし、地獄にも時間は流れているらしい。できれば日没までに何か手がかりを見つけたいのだが。真っ暗になってしまえば動けなくなってしまう。ヘッドライトも懐中電灯もランタンもないのだ。携帯のバッテリーは温存しておきたい。故にライトとしては使えない。
20分ほど歩くと、少し開けた場所に出た。踏み固められた後があり、左右にそれが続いている。つまりここは人の通り道である可能性が高い。周囲には木も少なく、空が見渡せる。深呼吸をして落ち着く。さて、この道をたどってみるか。右と左どちらへ行こうか。おや、何か落ちている。枝を構えながらじりじりと近寄るとそこには人形が落ちていた。
可愛らしい。そして、よくできた人形だ。ブロンズの髪に赤いリボンをつけたメイドさんのような服装の人形だ。一見すると、クレーンゲームの景品にありそうなぬいぐるみに近いのだが、よく見ると手の関節など細部に渡って精巧に作られている。マニアの間で取引されそうな上品なアンティークと言った方が適切だろう。この地獄の森には不似合いな程、可愛らしく見事な人形だった。
誰かの落とし物だろうか。見た目からしてかなり高価な物に違いない。自分のような男が触れることすら恐れ多いが、両手で抱き上げるようにして慎重に持ち上げる。手に取ってみると、また違った印象を受ける。無機物特有の静寂と重さ、それを上書きするような、今にも動き出さんとする生物特有の鼓動を感じるのだ。実際この人形が脈打っている訳ではないが、そう感じざるを得ない程に、自分の眼には人形が動いて見えた。
恐る恐る人形の頭に触れようとする。この人形をなでたくなったのだ。この数十分の苦しみを癒やそうとしたのか、それとも、この人形を見て父性が目覚めたのか。理由を付ける前に自分の指先は動いていた。
その時の、驚嘆、恐怖、興奮、そして感動すらもが複雑に絡み合った感情を自分は決して忘れないだろう。自分の指先が人形の髪に触れた瞬間、人形は右手を横に上げ、首を同じ方向に向けたのだ。
人形はまるでこっちに行けとでも言うように、左右に続く道の一方を向いていた。人形を投げだそうとは思わなかった。高鳴りの冷めやらぬまま、自分はこの人形に従おうと決めた。直感とも本能とも違う、釘が磁石に引きつけられるような、そんな法則めいたものに自分は決定づけられたのかもしれない。
人形が動かなくなってからといもの、私は引きこもって眠るばかりの生活となった。睡眠など本当は必要ない体なのだが、魔法使いは常に魔力と隣り合わせの種族であり、魔力を失ってしまうと体を動かすことにすら気怠さを感じる。そして、日常的に人形に依存していた私は、生活の基盤を失っていた。簡単な指示を出せば、人形達が、紅茶を淹れたり、窓を修理したり、雪下ろしをしたりしてくれた。それらは勿論、私の魔法の研究成果なのだが、いつの間にか私はそれを絶対のものだと信じて疑わなくなっていたのだ。魔力を失った私はこんなに無力なものだったのか。
今は酉一つ時(午後5時半)くらいだろうか。前に目が覚めたのは、辰二つ時(午前8時)くらいだったかしら。どうでもいいことだ。どうせ自分はこのまま何もできずに死んでいくのだから。魔力のない魔法使いなどに存在する価値などない。
一度でいいから、消える前に男の人とデートの1つでもしてみたかったなあ。魔法使いに恋人など要らない、希望なんて捨てなさい、紅魔館の魔女がよくそう言っていた。魔法使いの本職は研究にあり。いかに容姿が醜くとも、積み重ねてきた実績の前には些細なことだ。でも、私はそうやって割り切ることができなかった。幼い頃、私の創造主様―私の母親に当たる人が読んでくれた絵本を忘れることができなかったのだ。竜に囚われた少女を兄の少年が助けるお話、何の変哲も無いお伽話だが、私はどこかその妹に自分を重ねていたのだ。そして、私はどこかお兄さんという存在に憧れ始めた。幼少期の私の周りには女の子しかいなかったのだ。創造主様は、私は女の子しか作れないのよ、と言っていた。
創造主様を含め皆、私のように容姿に恵まれていなかった。否、魔界と幻想郷では少し美醜観念が違かったのだ。霊夢達が魔界に攻めてきた時に私達は始めて思い知らされた。自分達が醜い少女であることを。その真相を探るために私は幻想郷に移り住んだ。そこで私は絶望した。自分の醜さを嫌でも実感したのだ。人里で人形劇を開けばひそひそと顔や体を馬鹿にされた。最初は悲しみに暮れたが、それでも容姿なんて関係なく自分達の力に自信を持って、陽気に宴会をしている霊夢や魔理沙、幽香を見て、私もそれに染まっていった。
でも、魔法使いとして機能しなくなった今になって思う。私はやはり諦めきれなかった。心のどかではあの絵本のような妹を守ってくれるようなお兄さんへの憧れが燻っていた。せめて夢の中ででも理想の人と素敵な時間を過ごしたい、眠りに落ちる前の一瞬でも妄想に逃げていたい。さてと、また眠ろうか。次はどんな妄想に浸ろうかしら。
人形の指示通りに歩くこと10分。森の中のとある洋館の前に自分はたどり着いた。白を基調としたシンプルな洋館だ。洋館の周囲には木も少なく、先ほど見られた不気味なキノコの類いは見られない。まるでここがこの地獄の森の安全地帯のような場所に思えた。
人形はこの館を指したまま動かなくなった。この館に入れということなのだろうか。人気はなさそうだが、中に誰かいるのだろうか。もしかしてこの人形の持ち主が住んでいるのかもしれない。既に時刻は5時半を回っている。間もなく日が沈むだろう。真っ暗闇の森の中で一晩を過ごすよりは館の中の方が安全だろう。
だが、仮に館の主人が居たとしても、突然やってきた男を泊めてくれるだろうか。そもそも、人が居るとは限らない。ホラー映画でよくある呪われた館である可能性も捨てきれない。ええい、ままよ。とにかく扉を叩いてみよう。
トントンという玄関の扉を叩く音に続き、どなたかいらっしゃいませんかー、という声がする。これから眠ろうとしている折、迷惑この上ない。いや、そもそも私の家を訪ねてくるものはこんな丁寧な口調ではない。すると、外来人だろうか。
だが、外来人であっても対応する義務はこちらにはない。普段なら快く泊めてあげるのだが、状況が状況だ。運が悪かったということで、夜の森の餌食になってもらおう。外来人への対応を怠ったからと言って私が責められる謂われはない。そもそも、今の私は体を動かすことすら気怠いのだ。全く人が妄想に
いや、この声の主は男性か。それなら相手をしてもいいかもしれない。向こうも必死だろう。いくら醜い私がここの住人だからといって、夜の森で野垂れ死ぬよりはマシだろう。どうせ私は静かに干からびていくだけなのだ。最後に男と一つ屋根の下で過ごすくらいのいい思いをしてもいいだろう。私は重い体を起こすと寝室を出て、ランプに火をともし、それを片手に玄関の方へ向った。
やはり人はいないのか。5分ほど粘ってみたけど反応がない。仕方ない今夜はこの館の前で野宿になるかもしれない。人がいなくても建物の前というだけ救いがあるかもしれない。扉から離れようとした時、扉越しに明かりが見えた。
綺麗だ。
扉から出てきた彼女を見た自分が抱いた感想はそれが全てだった。まるで先ほどの人形以上に精巧に作られた奇跡の少女が目の前にいた。美しい黄金色の頭髪に可愛らしく乗っかった赤いカチューシャ、人形のように整った顔、儚さを帯びたほっそりとした手先に華奢な身体、それを覆う青の洋服と赤いリボンと白いケープ。彼女がお伽の国のお姫様だと言ったら、自分は簡単に信じるだろう。
やはり外来人だ。服装から見て間違いない。外の世界の洋服については詳しいことを知らないが、幻想郷の人間にはいない服装だ。そして、背がとても高い。六尺三寸(約190センチメートル)はあるかもしれない。そして服の上からでも分かるが、筋骨隆々とした身体つきをしている。こんなに
「突然呼び出してごめんね。この人形は君のものかい?」
見た目の割に優しい口調で彼は言った。その手には私が作った人形が大切に抱かれていた。
「そうですけど、どうしてあなたが…。」
なぜ彼は私が作った人形を持っているのか。私が作った数多の人形の中には落としまま存在を忘れてしまったものがあってもおかしくはないのだが、どうして彼はそれが私のものだと分かったのだろうか。
「実はこの人形が動いてここを教えてくれてね…。」
そう言って彼は困ったような表情をする。教えてくれたって…今の私の人形は動くはずがないのに。外来人の彼が魔法使いだとでも言うのか。これは詳しく話を聞く必要がありそうだ。私は彼を家の中に招き入れた。
テーブルの上のランプの明かりを挟んで、自分は金髪美少女と対面している。自分のようなむさ苦しい男をまさか館の中に招いてくれるとは思わなかった。リビングの壁には絵画や時計がびっしりと飾り付けてあり、部屋の隅や暖炉の前には、本や瓶が積まれている。棚には自分が拾ったような人形がびっしりと飾られており、ファンタジーの世界にあるような高貴ながらもどこか不気味な雰囲気が漂っている。そして、それらに囲まれている彼女は、気品と可憐さに満ちていて、この館の住人にとても似つかわしかった。
それに比べて自分は何だ。ハイキング帰りだったものだから山登り用の地味な服装だ。紺色のシャツにアウトドア用のウェアを羽織り、下は動きやすいジャージのままだ。そして服にはまばらに汚れが着いている。今自分が腰掛けている綺麗なソファを汚しはしないか気がかりだ。彼女に比べると自分はまるで惨めな浮浪者だ。
「幻想郷、魔法の森か…。とりあえず地獄ではないようで安心だ。」
にわかには信じがたいといった顔をしながら、彼は考え込む。その反応は大多数の外来人と変わりはしなかった。しかし、彼はこの森をさまよい歩いて、私の人形に案内されてここに来たというのだ。通常の人間がこの魔法の森をうろつけば、化け物茸の胞子にやられて体調を崩すはずなのだが、目の前の彼は特に胞子の幻覚毒に惑わされたような様子はない。そして何よりも触れた人形が動いたということが驚きだ。彼は魔法に耐性がある、あるいは彼も魔力を有しているということになるのだろうか。
「ねえ、あなたは本当に人間なの?」
おかしなことを聞いてくる娘だ。自分は何の力もない人間だ。聞いたところ、幻想郷には目の前の彼女のような魔法使いや妖怪が住んでいるらしいが、外来人と呼ばれる自分はただの人間だろう。いや強いて言うとすればアレか。
「一度死んでいる、と言ったら信じるかい?」
「じゃあ、幽霊ってこと?」
「さあ、どうにも俺には分からなくてね。死んで幽霊になって、気がついたら肉体を取り戻してここの森にいたんだ。」
「まるで生き返ったようね…。」
「そうなのかもね…。」
彼は軽く微笑みながらそう零した。その表情はどこか哀愁の漂う物で、年期の入った大人の男性特有の渋さや威厳を纏っていた。
「それにしてもこの人形達は本当に素晴らしいものだよ。そして君が作ったということに驚きさ。流石は魔法使いだ。」
「ふふ、ありがとう。」
まさか人形を褒められる日が来るとは思わなかった。しかも男性にだ。大抵の人は私の人形達を私に似て不気味としか思わない。美人の人形を作ろうと思えば作れるが、私はそれをやろうとは思わなかった。私の感性が魔界に住んでいた時に培われた物であり、幻想郷のものとは少し違うのだ。大好きな人形作りで自分を偽りたくはなかった。
彼は指先で優しく人形をなでる。普通の人間だったら触るのすら躊躇うと言うのに。彼の手に抱かれた人形が羨ましい。私も彼の大きな手に撫でられたい。彼の丸太のように太い腕の中で抱かれたい。
人形をなでている彼を凝視していると、ごめん、嫌だった、と言った。あまりにも可愛らしかったからついなでたくなったらしい。嫌なはずがないだろう。寧ろ嬉しいくらいだ。自分が作った物を褒められて嬉しいのは魔法使いも変わらない。その相手が男性なら尚更だ。
唐突に人形がふわりと宙に浮いた。私も彼も目を丸くする。人形はくるくると回ると彼の方を向いてスカートの裾を上げてお辞儀をした。
一瞬の出来事だった。動かなくなったはずの人形が勝手に動き出したのだ。やはり彼は魔力を持っていて、それを分け与えることができるのだろう。だとしたら私も魔力をもらえるかもしれない。
「凄い。魔法みたいだ!」
彼は目を見開き興奮しながら言う。
「これも君の魔法なのかい?」
「そうよ。でも今は使えないはずなんだけど…」
どういうことだい。そう彼は問う。最近になって魔法が使えなくなったこと、彼が触れたら人形が動き出したこと、そして、彼は魔力を持っているかもしれないこと、それらを矢継ぎ早に伝える。
「俺が魔法使い…?」
そんな馬鹿な話があるか。自分に不思議な力などない。ただの幽霊人間だ。
「そう。信じられないかもしれないけれど、私はそう思ってる。あなたには確かに魔力があるわ。」
現に…、そう彼女は言うと、立ち上がって袖の上からでも分かる細くしなやかな腕を振る。
すると、飾られた人形達が一斉に動き出した。
あまりの出来事にあっけにとられている自分に彼女はこう告げる。
「あなたが来てくれたから、私は本来の力を取り戻せたわ。ありがとう。」
彼女がスカートの裾を横に持ち上げ、丁寧にお辞儀をする。それにシンクロするように数多の人形達も同様に頭を下げる。
「ごめんなさい。驚かせてしまったわね。」
驚きで言葉を失った自分に彼女は笑顔でこう続ける。
「あなたは大切なお客様。何もお持てなしをしないというのは不作法だったわね。お腹も空いているでしょう。お食事にしましょうか。」
「えっと、お構いなく…?」
「そういえば、まだ名前を名乗っても居なかったわね。」
彼女はくるりとこちらを振り向くと、
「私はアリス。アリス・マーガトロイド。七色の人形遣いよ。素敵な外来人さん、あなたのお名前は?」
「…俺は、俺は
「―そうして、私達は一宿一飯を供にして今ここにいるってことよ。ここに来たのは剛成さんの正体をはっきりさせるためなんだけど、まさか異次元人だとは思わなかったわ。そして、魔力の正体が愛の力だったなんてね。」
「そう言われると恥ずかしいな…。」
「でも、就寝前に私を抱っこしてベッドまで運んでくれたじゃない。」
「そ、そこまで言うのかい?!」
「…もういいわ。それ以上は聞きたくない。ああ、頭が痛いわ…。」
馴染みの友であるアリスが女の顔をしているのを見て、霊夢は頭が痛くなった。霊夢だけではない。見知った顔が突然男を知ったような雰囲気を醸し出しているのだ。それを見ていると、面白くないような、気持ち悪いような、妬ましいような、なんとも言えない気持ちになる。
「ほう、お前みたいな女っ気の一切無いデカブツが随分と思い切ったもんだな。」
「おい、拓実、お前どういう意味だ、それ。」
「アリスちゃんも災難だなー。こんなむさ苦しい奴に目をつけられるなんて、俺だったら死んでもごめんだぜ。あ、もう死んでるんだっけか。ぎゃははは。」
「目をつけたって…偶々森で出会ったのがアリスちゃんだったんだよ。」
「あらら、それ本人の前で言っちゃうー?全く乙女心を分かってないなあ。あーあ、可愛そうなアリスちゃん。」
「まあまあ、諍いはそれくらいにしてしておきなよ。次は小鈴さんと僕の番なんだから。そういう訳で霊夢さん、次は僕達のお話でよろしいですか?」
丸い縁のメガネをかけたやせ気味の青年がそう言う。
「やっとですね。じゃあ、話しますね。霊夢さん。」
小鈴が浮き浮きとした気分でそれに続く。
「…そうね。よろしくお願いするわ。」
正直、食傷気味だった霊夢だが、こちらから話せと言った手前、やめろと言うわけにもいかず、我慢して耳を傾けることにした。
お疲れ様でした。そして、毎度ありがとうございます。アリスは可愛い。自明の理です。