幻想少女を愛したい   作:ファトウの砲台

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1ヶ月以上も放置していた人間の屑がいるらしいですよー


※遅くなって大変申し訳ありませんでした。



第7話 苦渋の宣告

 

 

所変わって、博麗神社。霊夢達が里に行っている間、交流会を終えた紫は疑問を抱えていた。

 

「どうしたのさ、紫、一人で考え事して」

 

「萃香、健一さん達と関わって何も疑問はなかったの?」

 

「私は特に何もなかったな。妖力は回復したけれど、それは計画通りだろ?」

 

「じゃあ、質問を変えましょうか、彼らの種族は何だと思う?」

 

「種族…?」

 

そうだ。彼らはどの種族に相当するのだろうか。私は人間から幽霊となった彼らの魂を、妖力や霊力、仙力などのあらゆる力を使って呼び出した。彼らはその力で肉体を取り戻し、生前と変わらない姿で呼び出された。私自身も初めて使う術だったので不明な部分が多いのは当然なのだが…。

 

「元々、人間だったし、蘇った今でも人間なんじゃないの?」

 

「それは無いわ。幻想郷における人間の定義には当てはまらない。現に人間にしては丈夫過ぎるもの」

 

「丈夫過ぎるって…?」

 

「そう、妖怪である私達は、日常的に妖力を纏っているわ。だから、物理的な力は人間を凌駕する」

 

「まあ、幻想郷(ここ)の基本だな。特に鬼である私は怪力が売りだしね」

 

「でも、彼らはあなたが握手をしても平気そうにしてたわよ。特に加減もしていなかったのに、怪我の一つもしなかったし…」

 

4人の中のうち、眼鏡をかけた男性―質郎さんが、幻想郷縁起によると妖怪さんの力は相当なものらしいですね、是非僕達に見せていただけませんか、なんて言うものだから、私達はいい気になって自分の特技だとかを披露した。霊夢が空を飛んだり、萃香が巨大化したり、私がスキマを繋げたり…、男性に驚いたり、喜んだりしてもらえたのは嬉しいけれど、その後、怪力を体験したいという理由で質郎さんが萃香に握手を求めてきたのは流石に驚いたわ。私達が止める前に萃香は質郎さんの手を握りしめていた。その状態でもケロッとしながら、おお、すごい力だ、まるで万力みたいですねー、なんて言っていた時には更に驚いた。鬼が力加減なしに握手などすれば、他の妖怪だってただでは済まないというのに。

 

 

交流会をした理由は彼らのことをよく知るためだった。彼ら個人の性格とか趣味とかを聞く目的もあったが、これは女性としての目的であり、裏の目的は彼らが種族としてどのような特徴を持っているのかを知るためだったのだ。それは幻想郷の管理者としての目的である。失礼なやり方だとは思うが、これも私の仕事なのだ。とはいえ、小一時間ばかりの交流会では分からないことだらけであったのだが…。

 

「じゃあ、妖怪ってことでいいんじゃないの?」

 

「明確な定義ができないもの、という意味では妖怪かもしれないですね…」

 

「そうね、藍の言うことも一理あるわ。でも、まだ情報が足りないわね…」

 

 

 

「藍様ー、見つけてきましたよ!」

 

「おお、橙、あったか」

 

「霊夢さんは何でもすぐに蔵の中にしまうので、探すのに苦労しましたけど…」

 

「あうんもよくやってくれた」

 

橙とあうんが博麗神社の蔵の中から、陰陽玉(おんみょうだま)をいくつか抱えて戻ってきた。この陰陽玉は、普段霊夢が弾幕ごっこで使うものとは別のもので、地底へ異変解決に向った時に通信機として紫が霊夢に渡したものであった。最も渡された本人はどういうものなのか理解していなかったようであるが。

 

「懐かしいな、それ。確かテレビ付き携帯電話…だっけ?」

 

「まだ使えますかね?」

 

「ちょっと、試してみましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

「本当に僕達が貰ってもいいんですか?」

 

「ええ、勿論。皆様も連絡手段があった方が良いでしょうから」

 

里から神社に帰ってきた僕達は紫さん達に今の里の状況を伝えた。伝えたと言っても半分感想のようなものだったと思う。拓実君なんかは里の連中は見る目がなさ過ぎる、とか怒りの混じった愚痴を零していたから。美醜観念の違いを改めて実感してなんとも言えない気持ちになっていたけれど、やるべき仕事が決まったことを紫さん達が喜んでくれたのは素直に嬉しかった。里の美人(・・)さん達を相手に仕事をするのは辛いけれど、華扇ちゃんや霊夢ちゃん、紫さん達が喜んでくれるならいくらでも頑張れそうである。

 

報告が一段落すると、僕達4人は紫さんから陰陽玉を1つずつ渡された。何でも携帯電話代わりになる優れものらしい。普段スマホに依存している僕達からしたら大助かりだ。これで幻想郷のどこにいても友達と連絡がとれる。そして、紫さんにもいつでも連絡が着くようで非常に心強い。まだまだ僕達は幻想郷のことをよく知らないから危険なことに巻き込まれるかもしれない。ここはお言葉に甘えさせて貰おう。

 

「何かあったら私に連絡してくださいね。外の世界で言う110番のようなものですから」

 

 

 

紫がその場にいる男達の注目の的となる。浴びせられるのは賞賛や驚喜、感謝の声。紫は表情がほころびそうであったが、光栄ですわ、と謙遜した雰囲気を漂わせていた。それを見ていて面白くないのは男達の隣にいる少女達。自分がやっとのことで運命的な出会いをした…と思い込んでいる男性が胡散臭くて文字通り化け物じみた醜女に心を踊らされているのだ。茨木華扇、東風谷早苗、アリス・マーガトロイド、本居小鈴、皆それぞれ思うことは若干違えど、芯の部分は変わらない。最も紫の直接の協力者である霊夢はとくに怒りもせずただただ黙って聞いていたのだが。

 

弱々しかった今朝の様子は忘却の彼方。健一達との触れ合いで妖怪の賢者としての力を取り戻した紫はすっかりいつもの調子に戻っていた。そして、彼女は幻想郷を救うための最大の願い事を改めて男達にぶつけるのだ。

 

「恥を忍んで申し上げますが、皆様がふれ合うことでここの少女達は救われ、それは幻想郷の維持にも繋がります。」

 

改めて説明されると歪な因果関係であり、状況が飲み込めてはいるが、困惑を隠せない男達。それにとどめを刺すように紫は続ける。

 

 

 

「ですので、皆様には幻想郷を巡りながらそれぞれハーレムを形成していただきたいのです」

 

 

 

 

 

 

ハーレムを作って欲しい―面と向ってこんな爆弾発言を受けてしまっては勿論女も男も皆たまったものではない。

 

 

「ぼ、僕で良ければ…?」

 

「け、健一さんを狙う女が更に増えるってことぉぉー!」

 

「ふん、健一さんがいくら他に女を侍らせても私が一番になれば問題ないじゃない」

 

了承しながらも気が抜けている健一とライバルが増えることを嘆く華扇、割り切ってトップを狙えば良いと決意を固める霊夢。

 

 

「もしかしてこれって合法ハーレムってやつかぁー!早苗ちゃんみたいな顔も可愛くておっぱい大きい彼女を沢山作っても怒られないのかなぁ、やったぁー!」

 

「ちょ、ちょっと、拓実さん!私の味方って言ってくれたのは嘘だったんですかー!」

 

欲望が解放され隣の女子の気持ちを顧みない拓実とそれに怒りと悲しみを隠せない早苗。

 

 

「なんと不純な…、でも、そうでもしないと恩返しができない…いや、でもダメだ…さっきアリスちゃんの気持ちを最優先にすると誓ったばかり…」

 

「だ、大丈夫よね…、私捨てられたりしないよね…?」

 

頭を抱えながら葛藤する剛成と彼の腕につかまり不安で涙目になるアリス。

 

 

「なるほど、幻想郷なら明治時代までの一夫多妻制の文化も残っているかもしれませんね。現代日本で淘汰された風習が結界を超えて入ってくるのであれば、自然と言えば自然か…」

 

「…ふれ合うって友達レベルじゃなかったんですか……アハハ…サヨウナラ…ワタシノバライロノジンセイ……」

 

動じずに分析を開始する質郎と絶望で心が壊れかける小鈴。

 

 

 

それぞれが爆風に巻き込まれ、ある者は耐え、ある者は打ちひしがれていた。それを見て爆心地の紫はキョトンとしていた。

 

 

 

あら、男の人は皆喜んでくれると思ったのだけれど、失言だったのかしら…。男の人ってやっぱり難しいものね…。

 

 

どうやらこの幻想郷の賢者は男心の複雑さを知らなかったようである。しかし、ほとんど男を知らない生活を人間の人生の何倍もの間続けてきたのだ。彼女には悪気など微塵もないのである。

 

 

 

「ああ、でも、安心してくださいね。皆様も仕事がありますし、それぞれのペースで構いませんから。そして、皆様の隣にいる子達に皆様を手伝わせますから、離ればなれにはなりませんわ。健一さんは博麗神社、拓実さんは妖怪の山、剛成さんは魔法の森、質郎さんは人里と丁度いい感じにばらけていますし…」

 

 

彼女なりに頑張って取り繕うとしたようだが、それが逆効果であることを当の本人は理解していない。自分が彼女になれると思っていた少女達にハーレム作りを手伝わせるなど、女は勿論、男にも理解しがたいものなのだ。

 

 

 

「そういう訳だから貴女達には幻想郷の管理者直々に同居する許可をあげます。ただし、できる限り知り合いの少女達に彼らを紹介してあげなさい」

 

 

うふふ、いい気味だわ。茨木華扇、東風谷早苗、アリス・マーガトロイド、本居小鈴、あなた達にはいい薬になるでしょうね。私達が苦労して呼び寄せた男性を奪い取ろうとした罪は重いのよ。同じ屋根の下にいながらもパートナーが次々と他の女と親交を深めていくのをお手伝いしなければならない。これはいい罰になりそうね。まさに因果応報よ。

 

 

男心は知らずとも女心はよく知っている。つまり、女を苦しめるにはどうすればいいのか、八雲紫は熟知していた。自分が慕っている男性が他の女の元へ通うことを嘆いた和歌は古来日本よりおびただしい程詠まれてきた。この次元も例外ではない、否、むしろ健一達が住んでいた次元よりも甚だしいことだろう。それらをリアルタイムで見てきた紫はもはや女の心を折るプロであった。しかも今回は、少女達を絶望にたたき落としながらも、彼女達が慕っている男達からの紫への評価は落ちることはなかったということだから尚のこと質が悪い。多少常識外れであっても、元居た世界とは価値観が違うこともあるためこういうこともあるだろうと受け止めることができ、何より紫は彼らにとっては新しい命をくれた恩人であるのだ。彼女を拒絶できるはずがない。

 

 

 

秋の夕暮れの中、苦渋の宣告を言い渡されたままの少女達と困惑気味の男達は各々帰路に着くのであった。

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、霊夢。私も今日から博麗神社(ここ)に住むわ」

 

「はあ?あの動物屋敷に帰りなさいよ、淫乱ピンク仙人!」

 

「健一さんは私が居たら迷惑かしら?」

 

「いや、僕としては華扇ちゃんも居てくれると嬉しいけど…」

 

「じゃあ、決まりね!」

 

「こら!勝手に話を進めるなぁー!」

 

 

 

 

 




お疲れ様でした。今後も書き貯めしてから数話まとめて更新という方針でいくと思います。すいません。
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