転生した男がイレギュラーとして過ごすお話し。   作:神領千鶴

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皆さんこんにちは作者です。凛緒リンカーネーション編ですが、今回で終わらせます。早く万由里ジャッジメント書きたい(万由里推し)
因みに授業中に見て泣いた。(リアルに)


第22話

神領陽牙は考えていた。今回の解決方法はいつものやり方では間違いなく失敗するからである。理由は簡単、この凶禍楽園自体が不完全であるから。何故それが分かるか。陽牙は1つの記憶を取り戻し、この先起こるであろう出来事を思い出したからである。このままいくと、間違いなくあの4人は消えてしまう。それは避けなければならない。

 

[陽牙]

「『1番大事なものは』士道が必ず見つけてくれる。それが凛緒の手の渡るまでに対策を練らないと……。」

 

ガチャ

 

[士道(並)]

「入るぞ〜。」

 

[陽牙]

「ここ士道の部屋だろうが。で、なんかあったのか?」

 

[士道(並)]

「いや、琴里から聞いて陽牙が凄い考えてるって聞いてな。」

 

[陽牙]

「ああその事か。」

 

[士道(並)]

「……この世界について考えてたのか?」

 

[陽牙]

「そうだ。士道、お前はこの世界をどうしたい?」

 

[士道(並)]

「……俺はこの凶禍楽園を壊したくない。」

 

[士道(並)]

「それが何を示すかなんて分かってる……でも俺は過去に1度失敗して無力な自分を恨んだ。もうこんな思いはしたくない!例えこの先出会うであろう精霊がいても、俺はこの凶禍楽園を守る!!」

 

[陽牙]

「フッ……士道らしい言葉だな。なら1つ言っておくぞ。お前思う『1番大事なもの』ってのは俺が言うまで誰にも渡すな。それが凛緒や鞠奈でもだ。凶禍楽園は守られるだろうが、お前の望む凶禍楽園には成らない、絶対にな。この世界は俺が何とかしてみせる。それまで士道は凛緒や凛袮、鞠亜に鞠奈と遊んでろ。」

 

[士道(並)]

「ありがとう陽牙。頼む。」

 

[陽牙]

「任せろ。」

 

[陽牙]

(俺にとっての『1番大事なもの』は、お前らの幸せそうな日常だからな。俺の全てをかけてやってやろう。)

 

陽牙は士道に誓い、彼らの為に、そして自分の為に計画を進めることにした。

 

━━次の日━━

 

士道と凛袮、鞠亜は学校へ行き、陽牙はこの家の警備員として残り、来る日の為に計画を練っていた。

 

[陽牙]

「いや……これだと凛緒の存在が確立しないな。」

 

今やろうとしているのは、不完全な凶禍楽園を完全な物にしてから壊すといった方法。これをやるだけなら簡単だが、問題は凛緒の存在である。凛袮や鞠亜、鞠奈は過去に肉体を作った為大丈夫だが、凛緒だけがない。オマケに凶禍楽園は不完全、そしてタイムリミットがあるというなかなか厳しい状況なのである。

 

[陽牙]

「……逆に凛袮と士道の霊力で仮の肉体形成してから本物を与えるか?それなら向こうの世界の士道と凛袮にも協力してもらわないとな。」

 

[???]

「そう思って来たぞ。」

 

急に声が聞こえた。士道達は今学校の筈。そう思いながらも振り向くと……

 

[士道]

「俺たちも手伝わせてくれ。」

 

この世界の士道ではなく、向こうの世界の士道だった。だがそれだけではなかった。

 

[陽牙]

「ルシアに凜祢まで……なんで来たんだ?」

 

[ルシア]

「ヨー君に会いたかったから。」

 

[士道]

「また凶禍楽園が発動したって聞いて気になったから来たんだ。」

 

[凜祢]

「私も同じ理由かな。」

 

[陽牙]

「そうか。だがまあ今お取込み中でな。」

 

[士道]

「そのことに関してだが、陽牙は凜緒に専念してくれ。」

 

[陽牙]

「他の三人はどうする。」

 

[士道]

「言い方悪いが、最近自分のコピーを作ることが出来るようになった。真穂たちのおかげでな。それで凜祢、鞠亜、鞠奈の体は俺が作る。その間に陽牙は凜緒の事について頼む。」

 

[陽牙]

「いいのか……?」

 

[士道]

「勿論。今まで助けてもらったしな。」

 

[凜祢]

「私なんて存在しない人だったしね。」

 

[陽牙]

「よろしく頼む。」

 

陽牙の計画に士道と凜祢が加わった。その助手としてルシアまで参戦することとなった。

 

 

 

 

 

━━学校━━

 

放課後になり、士道達は家へ帰るところだった。だが士道は突如何者かに突進される。

 

[凜緒]

「……パパっ!」

 

ドスンッ!

 

[士道(並)]

「おわっ!やっぱり君は昨日の……。」

 

[凜緒]

「きみ、じゃないよ?りおだよ?」

 

突撃してきた人物は凜緒だった。

 

[士道(並)]

「あ、ああ……そうだな、凜緒。それで、こんなところで何してるんだ?」

 

[凜緒]

「パパにあいたかったの!」

 

[士道(並)]

「お、俺に……?そうか、ちょうどいい。俺も会いたかったぞ。」

 

[凜緒]

「えへへ……うれしい!ぱーぱーとおーんなじー♪」

 

[士道(並)]

「今日は鞠奈は一緒じゃないのか?」

 

[凜緒]

「まりな?まりなはね、おそとがくらくなってからきてくれるの!」

 

[士道(並)]

「そうか。優しいお姉さんだな。」

 

[凜緒]

「うん、まりなはやさしいよ!りおとね、いっしょにいてくれるから。」

 

[士道(並)]

「よかったな。」

 

[凜緒]

「でもね、パパといっしょだと……もーっとたのしいとおもう!だからね、おさそいにきたの。」

 

[士道(並)]

「お誘い?」

 

[凜緒]

「そう、おさそい!パパもりおのさがしもの、てつだってくれる?」

 

[士道(並)]

「探し物って、昨日言ってた……。」

 

[凜緒]

「そうだよ、いちばんだいじなもの!りおはここで、ぜーったいにみつけないとだめなものなの。」

 

[士道(並)]

「見つけないといけないもの、か……。」

 

凜緒の言う絶対に見つけないといけない物、十中八九凶禍楽園に関係するものだろう。だがこの世界の士道にとって、その一番大事なものというのはある程度予測がついている。だがこれを聞くには少し離れた方がいい。

 

[士道(並)]

「少し場所を変えよう。付いてきてくれるか?」

 

[凜緒]

「うん!」

 

士道は凜緒を連れて街中の方へ歩いていく。そして少し離れると聞きたいことがあったので話始める。

 

[士道(並)]

「なあ、凜緒。」

 

[凜緒]

「なになに、パパ?」

 

[士道(並)]

「どうして俺の事をパパって言うんだ?」

 

[凜緒]

「どうして?いつかしどうはりおのパパ。パパはパパだよ?」

 

[士道(並)]

「そうか……もう一つ聞いていいか?」

 

[凜緒]

「うん!パパがつきあってくれるなら!」

 

[士道(並)]

「ええと……わかった。今日だけな。」

 

[凜緒]

「うん!」

 

[士道(並)]

「それで聞きたいことなんだが、園神凜祢って名前知ってるか?」

 

[凜緒]

「りんね?そのがみ……りんね……そのがみりんねは、ママ。りおのママ!」

 

[士道(並)]

「Oh……。」

 

その言葉に思考が一瞬停止する。だがすぐに動かしまた話始める。

 

[士道(並)]

「……とりあえず、凜緒は凜祢に会いたいか?」

 

[凜緒]

「あいたいッ!あ……でも、あいたくない。」

 

[士道(並)]

「どっちだよ……。」

 

[凜緒]

「りおはね、ほんとはママにもあいにいこうとしたんだ。でもね、まりながそれはだめだよっていったの。りおはいいこだから、ちゃんとやくそくをまもってるんだよ。」

 

[士道(並)]

「そうか……本当に良い子だな、凜緒。」

 

そう言って頭を撫でる士道。すると凜緒は嬉しそうにそっと体を寄せてくる。

 

[士道(並)]

「鞠奈が来るまでまだ掛かるんだよな?だったら、一緒に散歩でもするか?」

 

[凜緒]

「うん、する!ぱーぱーとーおーさんぽー!ぱーぱーといーしょにー!おさーんぽー!」

 

凜緒と士道は元気そうに歩いて行った。だが士道は1つ不安抱えていた。

 

[士道(並)]

(このままだと……前と同じになる。陽牙に伝えておこう。)

 

 

 

━━士道宅━━

 

[陽牙]

「あとはこれを描いて……とりあえずこんなもんか。」

 

[士道]

「こっちもある程度の準備は出来てるぞ。あとは……」

 

[凜祢]

「……凜緒ちゃんの肉体だね。」

 

[陽牙]

「一様俺の考えだと、2人の霊力を混ぜて肉体を作ろうと思う。」

 

[士道]

「それだと何も変わらなくないか?」

 

[陽牙]

「そのままだとな。ここで一手間加えるんだ。」

 

[士道]

「それは何だ?」

 

[陽牙]

「魂の保存。」

 

[凜祢]

「聞いただけでもすごく恐ろしいね……。」

 

[陽牙]

「簡単に言えばこの世界の凜緒の魂をコピーして、それを作った肉体に入れるって感じだ。」

 

[士道]

「出来るのか?」

 

[陽牙]

「出来る出来ないじゃなくてやるしかねぇんだよ。」

 

[士道]

「そこまでやるなら止めないぞ。止める気は更々ないが。」

 

[陽牙]

「ルシア、そこの小さいクーラーボックス取ってくれ。」

 

[ルシア]

「は~い。」

 

[陽牙]

「今のシナリオだと、この世界の士道が一番大事な物を見つけ、それを使って4人を生きていけるようにする。あとはこの凶禍楽園だけだな。」

 

[ルシア]

「とったよ~。」

 

[陽牙]

「おう、サンキュー。」

 

プシュー

 

ゴクゴクッ

 

[士道]

「いや待て待て!?何普通に酒飲んでるんだよ!?」

 

[陽牙]

「飲みたかったから?」

 

[士道]

「いや飲みたくてもダメだろ。」

 

[陽牙]

「年齢的に大丈夫!!」

 

[凜祢]

「大丈夫じゃないよねそれ……。」

 

[陽牙]

「プハ~最高!!よしやる気でてきた。」

 

[士道(諦め)]

「もういいや……。」

 

[凜祢]

「ダメでしょ!?」

 

[陽牙]

「ん~どうやって壊すか……。物理的でもいいんだがそれだと色々と面倒くさいからな~。少し書き換えるか?」

 

[士道]

「書き換える?何をだ?」

 

[陽牙]

「凶禍楽園を。用はこの世界の凶禍楽園を俺たちの世界と同じようにして、どこぞの空中に浮く城にでもするってわけだ。」

 

[凜祢]

「でも今回はそれだけじゃないんでしょ?」

 

[陽牙]

「そだから書き換えるの。まず凜緒が凶禍楽園を完成させたら消えるっていう設定をなくす。んでそこに凶禍楽園を完成させたら俺たちの世界と同じようにするって感じか?」

 

[士道]

「でも凜緒はちゃんと制御出来るのか?」

 

[陽牙]

「出来るな。現に今不完全な状態でも制御出来てる。これでいいか?」

 

[士道]

「俺はいいぞ。」

 

[凜祢]

「私もそれでいいかな。」

 

[ルシア]

「任せます。」

 

[陽牙]

「んじゃそういうことで。次に━━━。」

 

こうして、この凶禍楽園に対する対策が着々と進んでいった。

 

 

 

 

━━士道side━━

 

士道は凛緒と一緒に出かけていた。色んな所を回っていると、気づいたら夕方になっていた。

 

[凛緒]

「りお、そろそろいかなきゃ。」

 

[士道(並)]

「鞠奈の所にか。」

 

[凛緒]

「うん、やくそくだから。」

 

[士道(並)]

「そうか、楽しかったか?」

 

[凛緒]

「たのしかった、すっごくたのしかった。」

 

[士道(並)]

「ならよかった。」

 

[凛緒]

「それじゃ……またね、パパ。」

 

[士道(並)]

「じゃあな、凛緒。」

 

パタパタと走り出したが、『あ、』っと言って戻ってきた。そして耳元で呟く。

 

[凛緒]

「きょうあいにくるなら、こうえんね?」

 

[士道(並)]

「……分かった。」

 

[凛緒]

「ばいばい!」

 

再び凛緒は走り出して去っていった。

 

[士道(並)]

「……陽牙に報告しておくか。」

 

士道は凛緒と一緒にいた事を陽牙に話すことにした。それに加えて公園に行くことも。

 

━━士道side end━━

 

 

[陽牙]

「……やっとここまできた。」

 

[士道]

「肉体の形成ってこんなに大変なんだな……。」

 

[陽牙]

「当然だ。イメージが不完全だったらその肉体に必ず違いが出てくる。それを防ぐために完全にしないといけねえからな。」

 

[陽牙]

「これでも成功率は……多分30はまだあるな。」

 

[凛袮]

「これだけ煮詰めても30パーセントはあるんだ……。」

 

[陽牙]

「なんせ不完全だからな。何が起こるか分からん。んー最終手段でも使うか?」

 

[士道]

「最終手段?」

 

[陽牙]

「俺が一時的に人間をやめて精霊になる。」

 

[士道/凛袮]

「「……は?」」

 

[陽牙]

「ほら、『目には目を歯には歯を』って言葉あるじゃん?だったら天使には天使で対抗すんだよ。」

 

[士道]

「……本当に陽牙は何でも出来るな。」

 

[陽牙]

「まああくまで最終手段だ。使わないで済むなら使いたくない。」

 

ガチャ

 

[士道(並)]

「ただいまー。」

 

[陽牙]

「おう、おかえりー。」

 

[士道/凛袮]

「「お邪魔してまーす。」」

 

[士道(並)]

「……そっちの世界の俺と凛袮か。」

 

[陽牙]

「理解が早くて助かる。それでどうだった?」

 

[士道(並)]

「今日の夜に凛緒と鞠奈に会う。」

 

[陽牙]

「成程。て事は凶禍楽園について色々と言われそうだな。」

 

[士道]

「多分この凶禍楽園について説明されて、選択肢を与えられると思うぞ。鞠奈の事だし。」

 

[士道(並)]

「まあ聞かれたら俺の答えを言うだけだ。」

 

[凛袮]

「流石、士道らしいね。」

 

[陽牙]

「とりあえずこっちの準備は殆ど終わってる。後はお前次第だ。今回俺達はお前の道具だ、好きに使え。」

 

[士道]

「俺はお前に助けられた。」

 

[凛袮]

「だから今度は私達が助ける番だよ。」

 

[士道(並)]

「みんな……ありがとう!」

 

[陽牙]

「気にすんな。」

 

[陽牙]

「早く飯食え。この後行くんだろ?」

 

[士道(並)]

「陽牙達はどうするんだ?」

 

[陽牙]

「今日は俺たち外食するか?俺の奢りで。」

 

[士道]

「いいんすか先輩!!」

 

[陽牙]

「まあ今回は手伝って貰えたしな。いいぞ。」

 

[凛袮]

「ご馳走様です♪」

 

[陽牙]

「士道(並)は?お持ち帰りしてやろうか?」

 

[士道(並)]

「それを口で言うのか……まあ今日はいいや。ご飯食べてから行くし。」

 

[陽牙]

「おっけー。んじゃ飯行こうぜもう腹減った。」

 

[士道]

「いや早いな。」

 

殆どやる事が終わり、陽牙と士道と凛袮は外に出ていった。どこに行ったかは知らない。士道(並)はご飯を食べて公園へ向かう時、凛袮(並)や鞠亜(並)に少し不安に思われていた。

 

 

 

 

━━次の日━━

 

トントン

 

[士道(並)]

「ん……んん?」

 

[陽牙]

「起きて、士道。」女声

 

[士道(並)]

「…………は?」

 

[陽牙]

「おはよ、士道。」女装&女声

 

[士道(並)]

「……。」思考停止

 

[陽牙]

「お〜い起きろ〜。」ペシッ

 

[士道(並)]

「ハッ!なんだ陽牙か……。」

 

[陽牙]

「最初からいたわ。」

 

[士道(並)]

「夢じゃなかった……。」

 

[陽牙]

「で、どうだった昨日は。」

 

[士道(並)]

「陽牙の言ってた通りだったよ。この凶禍楽園にはタイムリミットがあってもって1週間。んで今凶禍楽園を維持してるのが凛緒だって事。それでそのままだったら凛緒達が消えるって事も聞いた。」

 

[陽牙]

「予想通りの答えありがとう。今の所順調だな。んじゃ下行くぞ〜。」

 

そのまま下へ降り顔を洗うと、凛袮と鞠亜が来ていた。

 

[凛袮(並)]

「おはようみんな。随分眠そうだね。」

 

[鞠亜(並)]

「みなさん、おはようございます。朝食の準備は出来ていますよ。」

 

[士道(並)]

「ああ、ありがとう。なんか任せっきりで悪いな。」

 

[凛袮(並)]

「大した事ないよ。私は自分のやりたい事をしてるだけだから。」

 

[鞠亜(並)]

「はい、私も同じです。ですが士道?私や凜祢がいなかった時の事も考えて、もう少し早く起きた方が良いですよ?」

 

[士道(並)]

「はい……。」

 

[陽牙]

「なんか士道って勿体ないよな。飯美味いのに早起き出来ないって。なんなら俺が起こしてやろうか。『士道……起きないとイタズラしちゃうゾ☆(女声)』って。」

 

[士道(並)]

「それはそれで地獄を見そうだからやめとく。」

 

[陽牙]

「チッ……。」

 

[士道(並)]

「おいなんで舌打ちした。」

 

[陽牙]

「てかルシアどこ行った?」

 

[凜祢(並)]

「出かけてくるって朝早くから出て行ったよ?」

 

[陽牙]

「ああそうなんか。ま、いっか。」

 

顔を洗ったら次にすること。それは朝飯ッ!!という事でみんなでご飯を食べる為にリビングへ戻っていった。

 

 

 

━━とある廃墟━━

 

[ルシア]

「来たよ~。」

 

[士道]

「お、来たか。」

 

[凜祢]

「お、ルシアちゃん。」

 

ルシアが来たのは少し離れたところにある目立たない廃墟。実は士道と凜祢はこの世界にいる間ここに住むことにしている。だが廃墟と言っても部屋の中は綺麗でテレビもある。ドアは霊力で形成し、明かりや電機も霊力で補っている。普通に羨ましい。

 

[ルシア]

「それで、話って何かな?」

 

[凜祢]

「今回の件、ルシアちゃんから見てうまくいくと思う。」

 

[ルシア]

「んー……正直言うと6割行くか行かないかだと思う。」

 

[士道]

「何でだ?」

 

[ルシア]

「凜緒ちゃんに関してはぶっつけ本番で行動するし、凶禍楽園も一度完成させないといけないからね。」

 

[士道]

「あれだけ練ってもそれくらいなのか……。」

 

[ルシア]

「一様6から7割半まで上げる方法はあるんだけど……多分使わないと思う。というか使ってほしくない。」

 

[凜祢]

「ルシアちゃんがそこまで言うってことは……かなり危ないの?」

 

[ルシア]

「うん、ヨー君は能力で【創造】って能力を持ってるの。簡単に言えば頭に浮かべた物を作るって感じなんだけど、昨日こんな紙拾ったんだよね。」

 

[士道]

「どれどれ……。」

 

士道と凜祢は、ルシアから渡された紙を受け取りそれを見る。そこに書いてあったのは……

 

天使 神想雷霆《ラミエル》

 

代償を払い、願いを叶える。

 

神威霊装:番外

 

 

[士道]

「確かに……これは使って欲しくないな。」

 

[凛袮]

「代償を払って願いを叶える……つまり同価値の物を失うって事だね。」

 

[ルシア]

「そう。凶禍楽園を『世界』として認識して天使を発動させると、多分その代償は

 

 

 

 

 

『本人の命』」

 

[士道/凛袮]

「「っ!?」」

 

[ルシア]

「多分【世界】の価値を『お金で買えない物』として扱って、同価値のものは『自分の命』として発動させると思う。」

 

[ルシア]

「だから頼みがあるの!」

 

[士道]

「……発動の阻止、だろ?」

 

[ルシア]

「うん……。」

 

[凛袮]

「……出来るか分からないけど……やってみるよ。」

 

[士道]

「そうだな……無理矢理にでも止めてやる。」

 

[ルシア]

「ありがとう……。」

 

[士道]

「俺達も大切な人が離れていく辛さは知ってるからな。」

 

[凛袮]

「それにルシアちゃん達は過去に1度離れたんでしょ?再会出来たのにそれは嫌だろうしね。」

 

[ルシア]

「ありがとう……本当にありがとう……。」

 

言い終えた時には、ルシアの目に少し涙が溜まっていた。

 

[士道]

「んじゃ、こんなシリアスな話はお終い!!俺が好まんッ!!」

 

[ルシア]

「そうだね!」

 

[凛袮]

「フフッ……。」

 

この後は3人でゲームをしたり、買い物に行ったりした。

 

 

━━士道(並)side━━

 

この時士道は凛緒の事を待っていた。

 

[士道(並)]

「凛緒も鞠奈も……まだ来てないか?」

 

そんな事を言うと、ひょこっと凛緒が姿を現す。

 

[凛緒]

「おはよう、パパ!」

 

[士道(並)]

「おはよう、凛緒。鞠奈はどうしたんだ?」

 

[凛緒]

「まりな?まりなはいないよ?」

 

[士道(並)]

「いないって……そう言えば昨日、暗くなってからって言ってたな。」

 

昨日の夜、士道が鞠奈と凛緒に会いに行った時に言っていたのを思い出した士道。確かに彼女と会うのは基本的に夜だった。

 

[凛緒]

「まりなはりおのがーでぃあんだからね。あぶないときはいっしょにいてくれるんだよ?」

 

[士道(並)]

「それなら、今日は俺と凜緒の二人って事か。」

 

[凛緒]

「ううん、ちがうよ?もうひとり、いっしょでしょ?」

 

[士道(並)]

「もう一人?ここには、俺と凜緒しか━━」

 

[凛緒]

「ね、そうでしょ、まりあちゃん。」

 

[士道(並)]

「……鞠亜!?」

 

凛緒に気付かれたのか、茂みの奥から鞠亜が出て来た。

 

[鞠亜(並)]

「……気付かれていましたか。」

 

[士道(並)]

「鞠亜、お前……何で……。」

 

[鞠亜(並)]

「すみません、士道。少し士道の様子が気になって……見つかるつもりは無かったのですが。」

 

[士道(並)]

「見つかるつもりはなかったってどういう事だよ……。」

 

[鞠亜(並)]

「そのままの意味です。」

 

[士道(並)]

「おいおい……。」

 

混乱しそうな感じだった。だがふと考えるともしかしたら鞠亜は勘付いていたのかもしれない。ここの所、良く外に出る事が多かったので恐らくはそこら辺りで分かったのだろう。

 

[鞠亜(並)]

「初めましてになりますね、凜緒。私は或守鞠亜と言います。」

 

[凛緒]

「うん!おねえちゃん、はじめまして!でも、あんまりそんなかんじしないね?」

 

[鞠亜(並)]

「そうですか。それは嬉しいです。貴女の様な可愛い女の子にそう言われるのは、光栄ですね。」

 

[凛緒]

「かわいい?りおかわいい?」

 

[鞠亜(並)]

「ええ、とっても。抱きしめてしまいたいくらいです。」

 

[凛緒]

「ありがとう、まりあおねえちゃん。」

 

[鞠亜(並)]

「いいえ、私は本当の事を言っただけですから。しかし、お姉ちゃんと呼ばれるのは、何処かくすぐったいですね。」

 

[凛緒]

「おねえちゃんはしらないの?おねえちゃんっぽいひとはおねえちゃんってよんでいいんだよ?」

 

[鞠亜(並)]

「くすっ……成程、確かに一理ありますね。」

 

そう言って、鞠亜は凜緒の頭を撫でた。その時、士道は一瞬だけだが鞠奈の事を思い浮かんでしまったのであった。

 

[士道(並)]

「━━━なぁ、鞠亜。もしかして鞠奈の事……。」

 

[鞠亜(並)]

「先程の士道の話を聞いていましたから。鞠奈がこの子の面倒を見ているんですよね。」

 

[士道(並)]

「ああ、そうだ。それじゃその子も……。」

 

[鞠亜(並)]

「ええ、分かっています。ですが、その話は後で。所で凜緒、士道と何処に行くつもりですか?」

 

[凛緒]

「パパといくところ?いろんなところにいくんだよ。『いちばんだいじなもの』をさがすの!」

 

その言葉に、鞠亜は少し驚く。

 

[鞠亜(並)]

「一番大事な……もの、ですか。」

 

[士道(並)]

「ああ、凛緒はそれを探すのが目的らしんだ。」

 

[鞠亜(並)]

「そうですか。それは形のある物なのですか?」

 

[凛緒]

「うーん……わかんない。でもね、きっとみつかったらわかるとおもう。」

 

[鞠亜(並)]

「途方も無さそうですね……では、私もお手伝いして良いですか?」

 

[凛緒]

「ほんとう!?おねえちゃんがてつだってくれるなら、りおはすっごくうれしい!パパもそうだよね?」

 

凛緒は鞠亜の言葉に嬉しそうな表情をする。子供ならではの表情だった。

 

[士道(並)]

「ああ、そうだな。嬉しいよ。」

 

[凛緒]

「それじゃあ、パパとおねえちゃんとさんにんだね!」

 

[鞠亜(並)]

「ええ。探しもの、必ず見つけましょう。」

 

そんな雰囲気を出しながら、3人はその探し物を探すのであった。

 

 

 

━━士道(並)side end━━

 

視点が変わって、ルシアは陽牙を連れて散歩をしていた。

 

[ルシア]

「ねえヨー君、ひとつ聞いていい?」

 

[陽牙]

「なんだ?」

 

[ルシア]

「今回解決する為の手段で、精霊になるの?」

 

[陽牙]

「……やっぱりあの紙を持ってったのはルシアだったのか。士道には言ったがあくまで最終手段だ。正直使わなくて済むなら使いたくない。」

 

[ルシア]

「やっぱりそうなんだ……。ヨー君、絶対に使わないで。例えヨー君でも、絶対に阻止するから。」

 

[陽牙]

「そう焦んなって。ぶっちゃけ使うか使わないかは俺が決めることじゃないからな。」

 

[ルシア]

「そうなの?」

 

[陽牙]

「俺が天使をラミエルにしたのは、この神は幻視支配し、地上の人間にメッセージを伝える神だ。そして人間の意見も聞くという意味で俺はこの名前にした。つまり俺がこれを使うのは俺自身じゃない、あいつらが決める事だ。」

 

[ルシア]

「そうなんだ……。」

 

ルシアは安心したのかホッとする。

 

[陽牙]

「そんな思い詰めんなよ。俺だってルシアや他の奴らと離れるのは嫌だしな。そもそも使う必要もないと思うしな。」

 

[ルシア]

「それならそれで私は嬉しいんだけどね。」

 

そんなこと言いながら歩いていき、公園に着くと……

 

[士道(並)]

「ハァ……ハァ……。」

 

息切れしている士道と、楽しそうな顔をしている凛緒がいた。

 

[陽牙]

「何してたんだ?」

 

[凛緒]

「おいかけっこ!」

 

[ルシア]

「成程。」

 

[士道(並)]

「……まぁ、楽しかったなら良かったよ。」

 

[凛緒]

「……ねえ、パパ。パパは、ここはきらい?」

 

[士道(並)]

「り、お……?」

 

[凛緒]

「りおは、ここがだいすき。だってパパにあえるでしょ?まりなにあえるでしょ?それから……いろんなひとがわらってるから。」

 

その言葉に士道は言葉が詰まる。確かに自分が望んだのかもしれない。だが本当にそれでいいのかと悩んでしまう。

 

[士道(並)]

「それは……なあ、凜緒、俺は━━━」

 

[凛緒]

「うー……うーん……。」

 

[士道(並)]

「ど、そうしたんだ凛緒?」

 

[凛緒]

「ちょっとだけ、ねむたくなってきちゃった……。」

 

ウトウトと揺れる様に眠ってしまいそうな凜緒。鞠亜は凜緒が眠り掛けていた所を何とかしようとした。

 

[鞠亜(並)]

「士道、凛緒をこっちに連れてきて下さい。」

 

[士道(並)]

「おう。凛緒、ほら。」

 

ベンチに座っている鞠亜の元へ連れていき、膝枕をすると直ぐに寝息を立てて眠ってしまった。

 

[鞠亜(並)]

「お腹がいっぱいになって眠たくなってしまったんですね。ふふ、可愛い寝顔です。」

 

[陽牙]

「癒されるな。」

 

[ルシア]

「それは私も思った。」

 

[士道(並)]

「朝からそこら中歩いて、さっきも走ってたしな……疲れてもいるんじゃないか。」

 

[鞠亜(並)]

「そうかもしれませんね。そもそも、子供にはお昼寝が重要だと言いますし。」

 

全員でもう一度凛緒を見つめる。その寝顔は、正しく天使の様に可愛かった。

 

[鞠亜(並)]

「……士道。凜緒も眠っていますし、丁度皆さんもいますから、一つだけ聞いても良いですか?」

 

[士道(並)]

「ん、何だ?」

 

[鞠亜(並)]

「士道……あなたは、『一番大事なもの』というのが何か、もう気付いているのではないですか?」

 

[士道(並)]

「っ!?」

 

その瞬間、士道は凛袮に言われたあの言葉を思い出した。

 

 

 

 

 

 

―――――ありがとう、士道……大切にするからね。

 

 

 

 

 

[鞠亜(並)]

「やはり、そうでしたか……。」

 

[士道(並)]

「……。」

 

[鞠亜(並)]

「士道は優しいですから。きっと、また誰かの事を考えて……誰かを傷付けたくなくて、心を痛めているんでしょう?」

 

[士道(並)]

「いや……実は……。」

 

[陽牙]

「その事に関しては俺が何とかする。」

 

[鞠亜(並)]

「どうにかなる、のですか?」

 

[陽牙]

「ああ。お前らが本気で願えばな。今回ばかりは本気でやるからな。どっかの黒いツンデレ姉ちゃんがツンツンしたら成功率は下がるな。」

 

[士道(並)]

「黒いツンデレ姉ちゃんって……まあ間違いではないと思うけど。」

 

[鞠亜(並)]

「それを鞠奈が聞いたら怒りますよ?否定はしませんけど。」

 

[凛緒]

「ん……んん……。」

 

丁度良いタイミングで凛緒が目を覚ます。時間は既に夕方になっていた。

 

[凛緒]

「おはよう、パパ。まりあおねえちゃん。よーがおにいちゃんに……えーと。」

 

[ルシア]

「ルシアだよ。ルシアお姉ちゃんでいいよ。」

 

[凛緒]

「るしあおねえちゃん!」

 

[鞠亜(並)]

「おはよう、凜緒。よく眠っていましたね。」

 

[士道(並)]

「おはよう。元気になったか?」

 

[凛緒]

「うん、ねむいのなくなったよ。」

 

[陽牙]

「そりゃよかった。なら、さっさと正体表わせ鞠亜……いや、『鞠奈』。」

 

[士道(並)]

「え?」

 

それを聞いた鞠亜ははぁー……と溜め息を付く。と、同時にその姿も変わった。

 

[鞠奈(並)]

「何で見ず知らずの人にバレちゃうのかしらね。」

 

そこに居たのは或守鞠亜ではなく、或守鞠奈だった。

 

 

[鞠奈(並)]

「本当、面倒な事するわね。もっと早く五河士道と別れなさいよ。って、そんな事言っても無駄か。」

 

[凛緒]

「しっぱいしちゃった。」

 

[鞠奈(並)]

「そう言いながら笑顔なのが癪ね。それで五河士道、あたしの顔に何かついてる?」

 

[士道(並)]

「いや、だって……鞠亜、じゃないのか?服だって、そのままで……。」

 

[鞠奈(並)]

「全部話すわ。だから凜緒、ちょっと向こうで遊んでなさい。」

 

[凛緒]

「うん、待ってる。」

 

トテトテと凜緒が走って行き、ようやく本題に入る。

 

[鞠奈(並)]

「さて、何から話せば良いのかな。質問はある?」

 

[士道(並)]

「質問も何も……結局鞠亜は何処に行ったんだよ?」

 

[鞠奈(並)]

「……そうね、そこからか。あたしはこの世界で鞠奈であって、鞠亜でもある。理解出来るかな?」

 

[士道(並)]

「二人で一人……って事か?」

 

[鞠奈(並)]

「正解。あたしはね、あの時消えたんだ。でも、最後にプレゼントを残した。分かるでしょ?」

 

[士道(並)]

「鞠亜のデータか……。」

 

[鞠奈(並)]

「そう。その中にね、混じってたみたいなのよ。ほんの小さな、あたしのデータの欠片。白の中に溶け込んで、見えなくなってしまう程小さな黒。」

 

[士道(並)]

「それじゃあ……鞠奈のデータを蘇らせる事は……。」

 

[鞠奈(並)]

「―――絶対に出来無い。今の或守鞠奈はね、言うならば亡霊みたいなもの。いつか気付かなくなる位の薄っすらと残った影。」

 

[鞠奈(並)]

「この凶禍楽園の中でさえ、あたしの体は再現されなかった。鞠亜は再現されたけど、ちっぽけなあたしはこうして鞠亜の体を借りないと自由に出歩く事さえ出来無い。」

 

[士道(並)]

「鞠奈……お前はそれで、いいのか?」

 

[鞠奈(並)]

「良いも何も、仕方無いじゃない。ここがあたしの終着点なの。これから先は━━━無いから。」

 

[陽牙]

「ま、お前がそう思ってる内は結果は変わらないな。」

 

[鞠奈(並)]

「どういう事かな?」

 

[陽牙]

「ただでさえお前はツンデレなのに自分の本心を語らない、語る時は必ず手遅れの時、だからそうやって全部諦める。正直に言ってやるよ、くだらないってな。お前が消えた時、士道がどれだけ悲しんだか分かるか?自分を閉じ込めた敵に対してあれだけ近づくと思うか?俺は思わない。なら何故近づいたか、それは簡単だ。お前を救いたかったから。もしお前が本気で助けて欲しいなら士道でもいいしルシアでもいい、俺でもいい、何なら他の奴らに言え。」

 

[鞠奈(並)]

「肝に銘じておくわ……後、一つ言い忘れてたけど、鞠亜もあたしの事には気付いているから。」

 

[士道(並)]

「この瞬間にも、鞠亜の意識はあるんじゃないのか?」

 

[鞠奈(並)]

「起きているけど、眠っているみたいな感じかな?鞠亜が出ている時はあたしが似た様な感じ。なんて言うか……文字通り少し混ざってる。今のあたしは鞠亜から再現された存在だから、その影響も凄く強い。だから今のあたしは或守鞠奈だけど、前にキミと戦った或守鞠奈ではない。だからさ、気にしないで良いよ。あたしの事はさ。」

 

[陽牙]

「はいまた出ました〜。仏の顔は三度までって言うが俺はちげぇから次言ったらぶっ飛ばすからな。」

 

[鞠奈(並)]

「それはちょっと酷くないかしら……はい、これで話は終わり。待ってる人がいるんだから、そろそろ帰りなさい。」

 

[陽牙]

「ダメだ。貴様も連行する。」ガシッ

 

[鞠奈(並)]

「何処に!?」

 

[陽牙]

「士道の家。凛緒ちゃ〜ん士道の家行くぞ〜。ママにも会えるぞ〜。」

 

[凛緒]

「ママに!?ねぇパパ、ママにあってもいいの?まりなはあったらたいへんだからだめっていってたよ?」

 

[士道(並)]

「いいんだよ、パパが許す。」

 

[陽牙]

「それに凛袮とあった所で特別な事は起きねえよ。凛緒、行くか?」

 

[凛緒]

「うん!りおね、ママとおはなししてみたい!」

 

[ルシア]

「全速前進DA☆」

 

[鞠奈(並)]

「行動力はずば抜けているんだから……もう……。」

 

と、言った鞠奈だが口元が緩んでいたことに本人は気づかなかった。

 

 

 

 

[陽牙]

「戻りました~。」

 

[凜祢(並)]

「おかえりなさい、みんな。ご飯、ちゃんと出来てるよ。」

 

家に帰ると凜祢がお出迎え。他の全員の声は全く聞こえていない。

 

[士道(並)]

「おう、わざわざありがとうな。琴里たちは?」

 

[凜祢(並)]

「琴里ちゃんはもう寝ちゃったよ。四糸乃ちゃんは家に帰ったよ。」

 

[士道(並)]

「じゃあ、凜祢は琴里達と食べたのか?」

 

[凜祢(並)]

「ううん、まだだよ。士道を待ってからにしようと思って。それにほら、琴里ちゃんから鍵……借りたから。迷惑だった?」

 

[士道(並)]

「そうか。迷惑なんて事無いって。凜祢には助けられてばっかりだ。」

 

[凜緒]

「パパ、げんかんではなしすぎだよ?りお、いつまでまてばいいの?」

 

後ろを見てみると、凜緒がムスーっとした顔で士道を見ていた。

 

[凜祢(並)]

「ぱ、パパ?パパって士道……どういう━━━」

 

[凜緒]

「―――――ママっ!」

 

突然凜緒が凜祢に抱きついた。凜祢はまさかの行動に驚き混乱しかける。

 

[凜祢(並)]

「え?え?……ママって、私の事?」

 

[凜緒]

「そうだよ、ママ!そのがみりんねが、りおのママだよ?すっごくやさしくて、すっごくかわいいの。」

 

[凜祢(並)]

「ええと……ありがとう、で良いのかな?」

 

[士道(並)]

「そうだな、それで良いと思うぞ。凜緒も凜祢と会えて嬉しそうだし。」

 

[凜緒]

「きょうはねー、パパとまりあちゃんでずっといっしょにいたの!すごくたのしかったんだよ!」

 

[凜祢(並)]

「えーと……士道、詳しく説明してくれる?」

 

流石に凜祢もこのことに関してはわからなかったらしい。なので士道が知っていることを話す。

 

[凜祢(並)]

「士道がパパで……私がママかぁ……。」

 

[陽牙]

「んじゃ、あとは頑張れ~。」

 

[士道(並)]

「ええ!?ここまで来て?」

 

[陽牙]

「大丈夫大丈夫、何も起こんねぇから。」

 

[士道(並)]

「そうだといいんだが……。」

 

[陽牙]

「じゃあな~。あとは他の奴らに任せる。」

 

[ルシア]

「お疲れさまでした~。」

 

そう言って陽牙とルシアは離れていく。

 

[士道(並)]

「とりあえず上がるか……。」

 

[士道(並)]

「そうだね……。」

 

その後は全員で晩御飯を食べたりした。途中風呂に入るとき凜緒が『いっしょにはいらないの?』と言ってパニックになった。※一緒に入っていません。

 

そして寝る時にも『かわのじになってねないの?』と言ってそこでもパニックになった。※うるうる顔になっていたので一緒に寝ました。

 

 

━━次の日━━

 

朝早く、高台公園に一人の男が居た。

 

[陽牙]

「流石に夜通しで作業すると眠くなるな……。だがまあある程度は出来たな。」

 

陽牙は凜緒たちを生存させるための作業を一睡もせずやっていた。そのおかげもあってか殆どの作業は終わった所である。

 

[陽牙]

「士道と凜祢、鞠奈に鞠亜、凜緒がここに来るから……その時と同時に魂のコピーをするか。凜緒は肉体もか。んでそれらを合わせたら……士道が━━━を持ってきてくれるはずだから…それを使って凶禍楽園を完成させて壊すか。」

 

[陽牙]

「……このくらいか?」

 

言い終えると、ふわぁ~と欠伸をする。

 

[陽牙]

「ねみっ……時間が来るまで近場で寝てるか。」

 

陽牙は高台公園から下の方へ降りていき、近場にある木陰で寝ることにした。

 

 

 

━━とある商店街━━

 

[士道(並)]

「……なあ、凜祢、ちょっと買い過ぎじゃないか?」

 

[凜祢(並)]

「そうかな?私、普段あんまり自分の買い物しないから……こういうの、楽しくなっちゃって。」

 

[士道(並)]

「ああ、そう言えば確かに、こういう買い物は今まで殆どしなかったよな。」

 

[凜祢(並)]

「もう、それは士道が私を女の子扱いしてくれなかっただけでしょ?」

 

[士道(並)]

「あー……まぁ、家族みたいなものだと思ってたし。」

 

[ルシア]

(いやあんた前に士道閉じ込めてたでしょ。)

 

2人のデートをルシアは尾行していた。理由は適当にふらついていたら2人を見つけたからである。予感的にルシアは士道が誘ったのではないかと考えている。

 

[凜祢(並)]

「それはそれで嬉しいけど……やっぱり、士道はもう少し女の子の気持ちに気付いてあげて欲しいなぁ。」

 

[士道(並)]

「いや、それは男に中々難しいだろ。」

 

[凜祢(並)]

「ふぅ~ん……でも、天央祭の時の士道なら、そうでも無いんじゃない?」

 

[士道(並)]

「!?あ、ああ……あれは、その、だな……美九の事があって、仕方無く……。」

 

[凜祢(並)]

「その後、美九さんの件とは関係無く学校に行ったって琴里ちゃんに聞いたけど?」

 

[士道(並)]

「いや、あれもその……。」

 

[凜祢(並)]

「今度は私も見て見たいなぁ……士織ちゃん。」

 

[士道(並)]

「いや、すまん。それだけは……本当に勘弁してくれ。」

 

[ルシア]

(弱み握られてるしwwそれにしても女装した士道か……ヨー君とのツーショット……最高ジャン。)

 

監視しながらも妄想が膨らんでいうルシア。その間にも2人の会話は進んでいく。

 

[凜祢(並)]

「ふふ……それなら、もっと女心を勉強する事。良い?」

 

[士道(並)]

「わかったよ……。」

 

[凜祢(並)]

「それじゃあ、勉強中の士道君?この服の感想をどうぞ。」

 

[士道(並)]

「可愛いブラウスだと思う。その明るい色も、凜祢に良く似合ってるよ。」

 

[ルシア]

(普通じゃん!)

 

返し方が普通過ぎたので思わず内心ツッコむルシア。

 

[凜祢(並)]

「ありがとう。それじゃあ、これも買うね。」

 

[士道(並)]

「おう……って、まだ買うのかよ!?」

 

[凜祢(並)]

「私、もう買わないなんて言って無いけど?」

 

[士道(並)]

「そりゃそうだけど……程々にしてくれよ?あんまり多いと歩くの大変だしな。」

 

[凜祢(並)]

「そうだね。でも、ちょっと残念……前が見えない位の荷物って、ちょっと憧れてたんだけど。ほら、漫画とかで良くあるでしょ?」

 

[士道(並)]

「それ完全に男が荷物持ちになってるヤツだよな!?流石に勘弁してくれ……。」

 

士道は内心『マジで買い物だけで終わっちゃうよ……。』と思っており、ルシアは『女の子だなぁ……。』と思っていた。

 

[凜祢(並)]

「はーい。それでは、お会計して次のお店に行きましょう。」

 

[士道(並)]

「おう……って、やっぱりまだ買うのかよ!?」

 

[ルシア]

(素晴らしいほどの満面の笑み、ご馳走様です。)

 

と、思っているが士道からすると容赦のない笑みである。そこから時間が過ぎていくと、凜祢は買い物を終わらせ、士道の両手には買い物袋が沢山握られていた。

 

[凜祢(並)]

「こんなにいっぱい買い物しちゃったの、初めてかも。」

 

[士道(並)]

「凜祢が満足してるなら良かった。でも、琴里の買い物より豪快でびっくりしたぞ。」

 

[凜祢(並)]

「あはは……ごめんね、ついつい。でも、王子様だったら許してくれるでしょ?」

 

[士道(並)]

「許さないって言うなら、どうする気だ?」

 

[凜祢(並)]

「こうするかな。」

 

[士道(並)]

「え……。」

 

すると、凜祢が士道の手をギュッと握ったのであった。さっきまでは士道が握っていたのだが、今度は凜祢から握って来たのだ。

 

[凜祢(並)]

「ほら、行こうよ士道。」

 

[士道(並)]

「お、おう。でもどうしたんだ?今日は凜祢らしくないと言うか……。」

 

[凜祢(並)]

「士道が、頑張ってくれたから。私も少し頑張ってみようかなって思って。」

 

[士道(並)]

「凜祢、それって……。」

 

[凜祢(並)]

「あ、見て士道!クレープ屋さんが来てるみたい。ほら、行こう!」

 

[士道(並)]

「お、おい待てって!引っ張るな!」

 

[凜祢(並)]

「クレープってデートの定番でしょ?ね、一緒に食べようよ、士道。」

 

[士道(並)]

「分かったから、そんなに焦らなくたって良いって。クレープは何処にも行かないぞ?十香じゃないんだから……。」

 

[凜祢(並)]

「あ、あはは……ごめんね。別に十香ちゃんの真似をした訳じゃないんだけど。」

 

[士道(並)]

「分かってるよ。ほら、ゆっくり歩いたって間に合うぞ。」

 

[凜祢(並)]

「はーい、分かりました。」

 

そうして2人はクレープを買って食べるのであった。ついでにルシアも同じところでクレープを買い、その後を再び尾行するのであった。

 

[凜祢(並)]

「ちゃんと食べたのって初めてだけど……美味しいね、クレープって。」

 

[士道(並)]

「そういや、お前と一緒に食べた事って無かったな。」

 

[凜祢(並)]

「士道は色んな女の子と食べてるもんねー?」

 

[士道(並)]

「おい凜祢よ、その言い方はトゲが無いか?……て言うか、これで帳消しだろ?」

 

[凜祢(並)]

「残念ですが、利子が貯まっております。」

 

[士道(並)]

「笑顔で言うな、笑顔で。」

 

[凜祢(並)]

「でも、士道はちゃんと返してくれるんでしょ?」

 

[士道(並)]

「そうだな。2倍でも3倍でも、幾らだって返してやるよ。」

 

[凜祢(並)]

「あはは、そんな事言っちゃって大丈夫?私は十香ちゃんみたいに誤魔化されてあげないよ?」

 

[士道(並)]

「誤魔化さねえよ。それに……俺はそんなのじゃ足りない位、凜祢に返すものがいっぱいあるんだ。」

 

士道は凜祢によって、大切な物や大事な事を学んだ。それと同時にそれを失う悲しさも学んだのである。

 

[凜祢(並)]

「うーん……そんなにいっぱいは無いと思うけど?」

 

[士道(並)]

「いや、有るだろ。何時まで経ったって返しきれる気がしない。」

 

[凜祢(並)]

「ううん、返してくれてる。士道は私にこんなに幸せな気持ちをくれてるんだから。」

 

その言葉に、士道は一瞬言葉を失う。何気ない日常の中で、凜祢は幸せだと言ってくれている。そのことが何よりも嬉しかった。

 

 

その後もルシアは二人を尾行し、気付くと夕方になっていた。そして来たところは高台公園。凜祢との別れの場所であり、凜緒との出会いの場所だった。

 

[士道(並)]

「どうして、ここに来たかったんだ?」

 

[凜祢(並)]

「色々な意味で、思い出の場所だからかな。士道と一緒に、士道が過ごしているこの天宮市を見たかったのかも。」

 

[士道(並)]

「何だよそれ。」

 

[凜祢(並)]

「前の時も一緒に見たでしょ。ここからの光景。」

 

[士道(並)]

「……そうだな、そうだった。」

 

[凜祢(並)]

「今日はね、全部忘れて楽しもうって決めてた。士道に嫌われない様にしないととか。士道を困らせない様にしないととか。そう言うの……全部忘れて。」

 

[凜祢(並)]

「だから、すっごく楽しかった。何時もの私と少し違って士道も驚いたでしょ?」

 

[士道(並)]

「ええと……そうだな。俺は驚くって言うより、嬉しかったな。」

 

[凜祢(並)]

「嬉しかった?」

 

[士道(並)]

「そうだよ。そもそも俺はお前が《ルーラー》だったって知ってるんだぞ?お前がただの良い子じゃないって事をさ。」

 

[凜祢(並)]

「……ふふっ、あははっ。そうだね、そうだった。士道は私がとっても面倒で、重くて、お節介だって知ってるもんね。」

 

[士道(並)]

「自分の事、そんな風に言うなよ。」

 

[凜祢(並)]

「でも、士道も人の事言えないんじゃない?士道だって、面倒で、重くて、お節介。」

 

[士道(並)]

「……まぁ、否定はしない。」

 

[凜祢(並)]

「ねぇ士道……もう、答えは出したの?」

 

[士道(並)]

「……まあな。」

 

[凜祢(並)]

「私はね、決めたよ。前に進む、覚悟。」

 

[士道(並)]

「覚、悟?」

 

[凜祢(並)]

「士道は前に言ってくれたよね、一緒に帰ろうって。」

 

[士道(並)]

「ああ、行った。でも、お前は……」

 

[凜祢(並)]

「そんな悲しい顔しないで、士道。見ているこっちも、少しだけ悲しくなっちゃう。」

 

[士道(並)]

「だって、お前はまた言うんじゃないのか?一緒に帰れないって、俺と一緒にはいれないって!」

 

[士道(並)]

「嫌なんだよ、嫌なんだ!俺は思い出しちまったんだよ!お前がいたこと、お前がいなくなったこと、お前が……俺を守ってくれてたことッ!!」

 

[凜祢(並)]

「…………士道」

 

[凜祢(並)]

「士道は優しすぎるから、だからね、いっぱい抱えちゃうんだ。」

 

[士道(並)]

「また言われた……。」

 

[凜祢(並)]

「また?」

 

[士道(並)]

「鞠亜にも、鞠奈にも言われたんだ。優しすぎる……って。」

 

[凜祢(並)]

「そっか……二人とも、士道のことよく見てるんだね。」

 

[士道(並)]

「違うッ……違うんだ……俺は優しいんじゃない。俺が……俺がお前らと一緒にいたいだけなんだよ!」

 

[凜祢(並)]

「士道、思い出してほしいことがあるんだ。」

 

[士道(並)]

「思い出してほしい、こと?」

 

[凜祢(並)]

「私ね、士道が好き。何があっても、この気持ちは絶対に変わらない自信があるの。」

 

[士道(並)]

「凜祢……。」

 

[凜祢(並)]

「だけどね、私はみんなも好き。恋愛の好きじゃないけど、その気持ちは恋愛にだって負けないと思う。」

 

[凜祢(並)]

「おいしそうに食べる十香ちゃんが好き。突然変なことをする鳶一さんが好き。たまにお手伝いしてくれる四糸乃ちゃんが好き。」

 

[凜祢(並)]

「おねーちゃんって呼んでくれる琴里ちゃんが好き。みんなをひっそり助けてくれる時崎さんが好き。大袈裟に驚いてくれる耶俱矢ちゃんが好き。」

 

[凜祢(並)]

「落ち着いて意見を言ってくれる夕弦ちゃんが好き。一生懸命に動き回る美九さんが好き。似た者同士の鞠亜ちゃんが、好き。」

 

[凜祢(並)]

「この世界で出会ったみんなが大好き。その気持ちは、間違いなく私の宝物なんだ。」

 

[凜祢(並)]

「士道がいて、みんながいて……私はこんなにみたされた。だから、私も返さなきゃ。みんなの本当の、未来を━━━。」

 

[士道(並)]

「……なんでお前も、鞠奈と同じことを言うのかよ……ッ!どうして、どうしてみんな言ってくれないんだよ!一緒にいたいって!みんなで過ごしていきたいってっ!!」

 

[凜祢(並)]

「私達はみんなね、似た者同士なんだよ。面倒で、重くて、お節介。誰かが傷つき続ける事にね、耐えられないの。」

 

[凜祢(並)]

「このまま凶禍楽園がうまくいって、日常を繰り返したとしても、私の時のように、いつか終わりは来るよ。その時後悔するのは、きっと士道だと思うから。」

 

[凜祢(並)]

「だから、みんな士道に立ち止まってほしくなんだ。私たちの想いを背負って、前に進んでほしい。」

 

[士道(並)]

「俺には無理だ……それでも……。」

 

[凜祢(並)]

「やっぱり、士道らしいね。」

 

[士道(並)]

「……なあ凛袮、これ、覚えてるか?」

 

士道は懐からあの鍵を取り出す。

 

[凛袮(並)]

「やっぱり、それだったんだね。士道にとって、『1番大事なもの』は。」

 

[士道(並)]

「当然だろ。だから決めたんだ、俺は━━━」

 

[???]

「やっと見つけたのね、五河士道。」

 

横から声が聞こえその方向へ顔を向けると、そこには鞠奈と凛緒がいた。

 

[士道(並)]

「鞠奈、凛緒……。」

 

[鞠奈(並)]

「五河士道、それを凛緒に渡しなさい。これは約束なんだから。」

 

[士道(並)]

「……悪いがすぐには渡せない。やり残したことがあるんでな。」

 

そう言うと、後ろから声が聞こえる。

 

[陽牙]

「う〜し全員いるな〜。」

 

[士道(並)]

「陽牙……頼む。」

 

士道は『合鍵』を陽牙に渡す。

 

[陽牙]

「さて、お前らに1つ聞く。因みに鞠亜は既に聞いてあるから気にすんな。お前らは士道と一緒に過ごしたいか?」

 

[鞠奈/凛袮]

「「……え?」」

 

[凛緒]

「???」

 

2人は突然の質問に困惑し、凛緒はわかっていなかった。

 

[陽牙]

「なあ凛緒、凛緒は士道……パパと一緒に過ごしたいか?」

 

[凛緒]

「すごしたい!でも、りおはこのせかいをかんせいさせなきゃいけないから……。」

 

[陽牙]

「はい凛緒は過ごしたいと……了解。凛袮は?」

 

[凛袮(並)]

「……士道ともっと一緒にいたいよ!!もっと一緒に笑いたかった!!だけどそれだと、みんなの未来を……。」

 

[陽牙]

「凛袮らしい言葉ありがとう。さて、後は鞠奈、お前だけだ。」

 

[鞠奈(並)]

「あたしは……」

 

 

『もし助けて欲しいなら士道でもいい、ルシアでもいい、なんなら俺でもいい。』

 

 

[鞠奈(並)]

「あたしだって、士道と一緒に生きたい!!敵だったあたしに色んな事を教えてくれた!!肉体を持てなかったあたしに心配してくれた!!あたしだって士道が好き!!一緒に生きたいよ!!」

 

[陽牙]

「やっと素直になったか。さて、君達の願いが本物ってのがわかったんで、俺がお前らを救ってやるよ。」

 

[凛袮(並)]

「それじゃあ……私や凛緒ちゃんが消える心配はないって事?」

 

[陽牙]

「そういう事だ。んじゃ助っ人どうぞー。」

 

[士道]

「よっ。」

 

[凛袮]

「こんばんわ。」

 

[凛緒]

「パパとママがふたりいる!!」

 

[陽牙]

「ここからは俺達が何とかするんで、アンタらは祈ってろ。『一緒に過ごしたい』ってな。」

 

[士道(並)]

「ああ、わかった。」

 

[士道/凛袮]

「「……凶禍楽園。」」

 

瞬間、士道と凛袮の姿が変わる。いつもの姿ではなく、霊装を纏った精霊としての姿に。

 

[陽牙]

「魔法陣展開。対象を凛袮、凛緒、鞠奈に指定。」

 

陽牙の言葉で魔法陣が出現し、それぞれの足元に移動する。

 

[陽牙]

「魂のコピーを開始する。士道と凛袮はこの鍵を使って凶禍楽園を完成させろ。」

 

[士道/凛袮]

「「了解。」」

 

[陽牙]

「同時に、2人からの霊力の吸収を開始。ルシア、ネックレスはどうなった。」

 

[ルシア]

「とりあえずこんな形になったよ。」

 

ルシアから渡されたのは、霊装姿の凛袮や凛緒が身につけている凶禍楽園のマークが付いたネックレスだった。

 

[陽牙]

「最高だな。エンチャント、このネックレスに肉体保持と消失防止の能力を付与。」

 

[士道]

「凶禍楽園は完成させた。ついでに凛緒の凶禍楽園の管理権を俺に移した。」

 

[陽牙]

よし……これで完了。肉体を対象者に付与。」

 

そう言うと、魔法陣が光り始める。

 

[陽牙]

「凛緒、お兄ちゃんからのプレゼントだ。大切にするんだぞ?」

 

[凛緒]

「うん!ありがとうよーがおにいちゃん!!」

 

[陽牙]

「スゥー……ハァー……よし。今から凶禍楽園を解除する。目を瞑っとけよ。」

 

[3人]

「え?」

 

[士道/凛袮]

「「凶禍楽園、解除ッ!!」」

 

刹那、視界が眩しくなり全員が目を閉じる。そこから約束10秒後、目を開ける。

 

[陽牙]

「全員……いるな。」

 

[凛袮]

「凶禍楽園の気配は……上?」

 

[陽牙]

「おう、俺達の世界と同じようにした。だから鞠亜に鞠奈、凛袮は精霊の力を使えるようになってる。ここら辺は簡単だったな。」

 

[鞠亜(並)]

「ここは……。」

 

[鞠奈(並)]

「さっきまでいた公園ね……。」

 

[陽牙]

「当たり前だろ。流石に商店街とか駅前に急に人が現れたらヤバいやろ。」

 

[凛袮]

「それもそうだね。」

 

[凛緒]

「う、うーん……。」

 

[陽牙]

「凛緒、起きろ。」ツンツン

 

[凛緒]

「パパ!!ママ!!」

 

凛緒は起きると士道と凛袮に抱きつく。

 

[凛袮(並)]

「私達……本当に生きてるんだ……。」

 

[士道(並)]

「陽牙、本当にありがとう!お陰で大切な者を失わなくて済んだ。」

 

[陽牙]

「気にすんな。んじゃ俺達は帰るぜ、後はお前らの好きにしろよ。」

 

そう言って陽牙は高台公園から去っていく。

 

 

 

 

あれから陽牙達は元の世界に帰った。こっそり士道の携帯に自分の連絡先を改造して入れていたので何時でも連絡出来る状態になっている。

 

 

 

 

 

だが、これで終わらないのが人生という物、新たな出来事が始まろうとしていた。

 




皆さんこんにちは作者です。今回で凛緒リンカーネーション終わらせると言ったため、初の2万文字突破でした。なので次回は万由里編です。

蓮ディストピアを書くか(作者はゲーム持ってない)

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