━━フラクシナス内━━
その夜、フラクシナスではあの球体について調べている最中だった。
[令音]
「……球体の様子は?」
[調査員]
「異変は有りません。」
[調査員]
「耶倶矢、美九、四糸乃、夕弦に酷似した波長は軒並みレベルダウンでしてます。」
[神無月]
「次は司令の番ですね。」
と、神無月が声を上げた途端全員が一斉に琴里を見たのであった。これに琴里はドキッとした様な感覚が走る。
[琴里]
「な、何よ……。」
[神無月]
「いや~、気になりますよ~。司令が士道君とどんなデートするのか。今、我々の間も会話と言えばその事ばかりですからねぇ~。司令のデートの場所を当てるブックメーカーもいる程で。」
気付けばそれぞれのモニターに「司」、「令」、「ファ」、「イ」、「ト!!」と書かれた文字が映っていた。
[琴里]
「人に断りも無く賭け事にしない!!すぐに解散させなさいッ!!」
怒声と共に神無月の膝を蹴る。
[神無月]
「弁慶ッ!承知しました~……。」
そう言い終えて神無月は倒れてしまった。全くもう……と琴里は照れ隠ししたが、その肩にぽんと手を乗せられる。
[真那]
「照れなくても良いじゃねーですか。同じ妹として、応援しやがりますよ。」
[琴里]
「うぁ……もう真那まで……。」
流石に真那まで言われたらやらなくちゃならないだろうと、琴里は少し焦りながら椅子に座った。
[琴里]
「明日かぁ……。」
そんな裏腹に、顔は笑顔という正直者であった。
━━5日目━━
5日目。士道と琴里はスーパーマーケットに来ていたのであった。
[士道]
「なあ、琴里。本当にこれで良いのか?」
[琴里]
「良いの。あ、挽き肉あった。うーん……こっち?」
順々に買い物かごに野菜やら肉やらと入れていく。どうやらこれが二人にとってのデートらしい。
[琴里]
「こういうの久しぶりでしょ。普段やらない事するのもデートかなって。」
[士道]
「そっか。お前が良いなら。」
[琴里]
「あっ!ニューフレーバー!買っても良い?」
[士道]
「ああ。」
[琴里]
「ありがとう、士道!」
一通りの買い物を終え、二人は一緒に店を出て、歩くのであった。
[琴里]
「重くない?」
[士道]
「ん?こんなの何時もだろ。」
[琴里]
「持とうか?」
[士道]
「良いよ、気遣うなって。」
[琴里]
「うーん……ちょっと待って。」
すると、琴里は自分が今付けているリボンを黒から白へと変えた。
[琴里]
「やっぱり私が持つ!」
[士道]
「お、おい!?」
いきなりで驚いた士道。間髪入れずに琴里は士道の手を握った。
[琴里]
「良いでしょ、おにーちゃん。」
[士道]
「………ああ。」
[琴里]
「にひひー!」
その後は何事も無く帰宅。そして……。
[十香]
「琴里のデートはハンバーグか……じゅるっ……なんと見事な……じゅるっ……。」
[よしのん]
「お家でデートかぁ。琴里ちゃんすっごく楽しそうだねー!」
二人から見ても分かる様に、士道と琴里は楽しそうにハンバーグを作っている様子が見えていた。
[琴里]
「おにーちゃん、ほらー!」
[士道]
「おお、たぬき型か?」
[琴里]
「うさぎだよー!」
[士道]
「ああ……すまんすまん。」
[琴里]
「これは私の分のハンバーグは倍にして貰わねばなりませんなー!」
そう言った途端、琴里は今日買って来たチュッパチャップスを開けようとするが……
[士道]
「こーら。飯の前はダメだって言うのに。」
[琴里]
「うー……ごめんなさーい……。」
それでも士道は項垂れる琴里の頭を撫でるのであった。数分経過して、ようやくハンバーグが焼き上がる。
[士道]
「よーし、完成だ。」
[琴里]
「やったー!ハンバーグ!」
完成と同時にうずうずしている十香と四糸乃。
[四糸乃]
「美味しそうですね……。」
[十香]
「ぐぅぅ……だがいかん……今日は琴里のデートだ。私達が邪魔する訳には……いや、しかしだが……。」
と、ずっとドアの隙間から覗いていたのだが、その様子に琴里は気付いていた。琴里は白から黒へとチェンジした。
[琴里]
「何やってるのよ。十香、四糸乃。」
[士道]
「ほら、お前達の分もあるぞ。」
[十香/四糸乃]
「「……!!」」
士道の手に持っていたのは十香と四糸乃の分のハンバーグだったのだ。4人全員で集まり、ハンバーグを食べる事に。
[4人]
『頂きまーす!』
手を合わせて「頂きます」を言う全員。
[十香]
「う、美味いぞシドー!」
[四糸乃]
「―――!」(親指をグッと見せる。よしのんも同じポーズ)
[琴里]
「うん、流石士道ね。」
どうやら士道の作ったハンバーグは好評だったらしい。
[士道]
「まあ、普通に作っただけだけどな―――っと、ドレッシングが無いか。」
椅子から立ち上がり、キッチンにあるドレッシングまで歩く士道。が、その瞬間、士道は視線を感じた。
[士道]
「―――っ!?」
振り向くと、そこには例の少女が立っていたのであった。しかも、至近距離で。
[士道]
「お前、何時の間に―――!?」
[琴里]
「士道?どうかした?」
[士道]
「いや、その―――っ!?」
が、気付けばまたその少女は消えていた。少女は何時の間にか裏口のドアの隣に立っていた。
手に持っていたのは今日、琴里が買ったであろうあのチュッパチャップスの新作フレーバーだった。それを少女は口に入れた。同時にまたイヤリングが赤へと変化する。
[士道]
「ここか!」
士道が勢いよくドアを開けたが、既に彼女の姿は無かった。が、士道はどうしても気になったのか外へ出る事にしたのだった。
[士道]
「あの子……一体……!」
[凜祢]
「士道?どうかしたの?随分焦ってるみたいだけど……。」
[士道]
「……さっき、家の中にあの女の子を見てな……。」
[凜祢]
「見たって……士道が見た子?それらしい子は見なかったけど……。」
[士道]
「一体何なんだあの子は……。」
士道は駅で彼女を見かけてからずっと気になっていた。何処へ行ってもずっとみられているような感覚が走っていた。
[???]
「気になりますの?」
[士道]
「っ!?」
その聞こえた声の方向へと向ける。電灯付きの電柱から放たれる光のサークルから一つの影が現れる。そしてそこから現れたのは……
[???]
「くるくるみんっと。」
[士道]
「狂三!?」
[狂三]
「そう構えないで下さいまし。一度は協力し合った仲ではありませんの。」
[士道]
「何か用なのか?」
[狂三]
「いえ。最近士道さんや陽牙さんの周りに起こっているであろう不思議な事……それを確かめに参りましたの。」
指と頭を上に示す狂三。凜祢も上を見る。未だに陽牙と士道以外全く見える気配は無いが、今の言い方だと、狂三も見えていたのであった。
[士道]
「っ!?狂三!もしかしてアレが見えるのか!?」
[狂三]
「その口ぶりだと、やはり士道さんにも見えている様ですわね。」
[士道]
「教えてくれ狂三。あれは一体なんだ?どうして俺達だけ見える?」
[狂三]
「話せば長くなりますわね。ただ、今お二人が取っている対策は間違いではありませんわよ。」
[士道]
「それって……みんなとデートをしている事か?」
[狂三]
「きひひ……あらあら、お客様が来てしまいましたわ。これ位に致しましょう。」
狂三の方向を見ると、そこにはガードレールで座っているあの少女がいた。
[???]
「………。」
[士道]
「君は……。」
[狂三]
「一つだけお二人にご忠告致しますわ。人の心は自分でも予期せぬ様に揺れるもの。ご注意を……。」
そう言い残して狂三は去って行った。
[凜祢]
「狂三さん……。」
[士道]
「あ!おい!」
士道が叫んだ時、少女はガードレールから飛び降りた。士道と凜祢が追いかけたが見失ってしまった。
[十香]
「おーい、シドー!」
声の聞こえた方向に全員が向く。ベランダで十香が士道に向けて話している様だった。
[十香]
「やっと私のデートプランが決まったぞー!シドーも楽しみにしてるが良い!」
[士道]
「お……おう!」
[よしのん]
「十香ちゃん!テレビ始まるよ!」
[十香]
「むっ、今行く!またな!シドー!」
手を振りながら十香は部屋に戻って行くのであった。
[士道]
「そうだな……気になる事は有るけど、十香とのデートを楽しまないとな。」
[凜祢]
「士道、頑張って‼」
[士道]
「ああ。」
そう言葉を交わしながら士道と凜祢は家へ戻っていった。
━━最終日━━
十香は手鏡で髪が乱れていないかチェックしていた。足音が聞こえた方向を見ると、士道がすぐそこまで来ていたので、十香は手鏡を放り投げた。
[十香]
「来てくれたかシドー!」
[士道]
「十香!ごめんな。待ったか?」
[十香]
「いや、全然だ!」
が、それを遠くで見守る集団が一つ。それは亮達だった。
[よしのん]
「十香ちゃん、あんな事言って……一時間も前に来てそわそわしてたのにぃー。」
[美九]
「士道さんも待ち合わせの15分前に来てますけどねぇ。」
[耶倶矢]
「ずっと見てる私達も私達だけどね。」
[士道]
「オシャレして来てくれたんだな。うん、良く似合ってるよ。」
[十香]
「そ、そうか?行くぞシドー!今日は思いっきりシドーと楽しむからな!」
[士道]
「ああ、よろしく頼む。」
━━同時刻フラクシナス内━━
[調査員]
「十香ちゃんのデート開始しました!」
[琴里]
「推測通りなら、十香のデートが終われば見えない球体は霊力を失い、完全に消え失せる。そうよね?」
[令音]
「……ああ。これまでの観測結果からすれば、そうなる可能性は高い。」
[祐成]
「色々調べてみたんだけど、球体に関しては何もわからないままだねぇ。」
[神無月]
「本音を言えば、正体を把握しておきたい所ですが……。」
[魁斗]
「成果なし……か。」
[鞠奈]
「だけど……なーんか嫌な予感するのよねー。」
[鞠亜]
「やはり鞠奈もですか。私も同じことを思っていました。」
やはり1部の人?からは不審がられてた。そして肝心の2人は商店街でデート中でった。
━━商店街━━
[十香]
「まずは……コレだ!」
いきなり小龍包を買い、その場で食べる二人。
[十香]
「うむ……美味い!」
[士道]
「お、じゃあ俺も……ぐっ!?熱っあぁっ!?」
[十香]
「大丈夫かシドー!?」
ペットボトル丸々一つ飲まされ、何とか復帰した士道。意外と彼にもおっちょこちょいな部分が垣間見えたこの瞬間である。
[士道]
「ぷはっ!た…助かったよ十香……。」
[十香]
「うむ……無事で何よりだ。」
[士道]
「で?今日のデートは何処行くんだ?」
[十香]
「うむ、次はそこのタコ焼き屋さんだ!」
[士道]
「うぇっ?」
まさかの連続食べ歩き。しかし、それだけで終わらないのが彼女なのであった。
[十香]
「それから串焼き、クレープ、焼きそば、かき氷、いか焼きにアメリカンドッグ!」
[士道]
「待て十香。全部食べ物か?」
[十香]
「そうだ。これまでのデートを見せて貰って考えたのだが、ズバリ!デートだと言うのに皆食べ物が少ない!あ、ハンバーグは美味かったぞ!」
[士道]
「おう……。」
[十香]
「そこで!私のデートプランは全部シドーと一緒に何か食べる事にしたのだ!」
完全に食べ歩きコースのデートだった。十香らしい考え方なのだが、それだと逆に士道が死ぬ。
[ルシア]
「やっぱり十香ちゃんらしいね。」
[凜祢]
「士道大丈夫かな。」
[リー]
「頑張れ士道。」
こっそり聞いていた人達も士道に同情していた。
[十香]
「ダメ……だったか……」
[士道]
「あ、いや。ちょっと驚いただけだ。よし十香。俺もとことん付き合うぞ。」
[十香]
「うむ!」
そして、二人は延々と食べ歩きを続けるのであった。その様子をまた例の少女が見ていたというのも言うまでも無かった。
━━カレー屋━━
2人はカレー屋でカレーを食べていた。中々の大所帯なのでかなり人気な店なのだろう。
[十香]
「ふむ……美味い!これは美味いなシドー!」
[士道]
「ああ、並ぶのも納得。流石十香のプランだな。」
[十香]
「そ、そうか?」
ちょっと照れる十香。すると十香は肉を士道に渡した。
[十香]
「シドー、これをやろう!」
[士道]
「良いのか?じゃあ俺も。」
今度は士道がカレーの中に入っていた別の肉を十香に渡した。
[十香]
「おお!ありがとうだシドー!」
すると、士道は福神漬けのビンを取ろうとした。
[士道]
「あれ?空だ。」
その直後に、隣からビンが渡される。
[士道]
「あ、ありがとうございま―――っ!?」
その瞬間、士道は目を見開いてしまった。何故なら━━━
[???]
「………。」
昨日見たであろう少女が隣で座っていたのだ。これには思わずビックリする。
[士道]
(一体何時から居たんだ!?いや、そもそも入って来た時にあの子の姿は何処にも見なかった筈!?なのに何故ここに居るんだ!?え!?どういう事!?)
[十香]
「どうしたのだシドー?」
[士道]
「いやその……。」
その時、ドンッと強くドアを開く音が聞こえた。
[折紙]
「士道。」
[士道]
「お、折紙!?」
まさかの折紙乱入。これは未だに予測していなかったケースだった。恐らくこれから起こる事はただ一つ。
[士道]
(喧嘩不可避だこりゃ。)
この2人、犬猿の仲なので喧嘩が始まってしまうのであった。既にギャーギャーと叫んでしまっているようだ。
[士道]
(救いはないのですかー……?)
どこぞの娘見たいな事を内心思っていた。すると……
バシュッ!!
[折紙]
「うっ……。」
バタンッ
折紙が突然倒れた。そしてその後ろにいた人物は……
[???]
「いやぁ!!すみませんねぇ食事中うるさくしてしまってぇ!!」
中々テンションの高い男がいた。それも上裸に長ズボン。そしてムキムキの肉体。
[???]
「と、言うことで失礼しまぁす!!」
その男の人は折紙を担ぐと走って店から出ていった。
[士道]
「た、助かったのか?」
[十香]
「嵐のように去っていったな……。」
[士道]
「本当だよな……って!?」
振り返った時には、例の少女はいなかった。そして士道が持っていたあのおみくじが、少女に奪われていた事にも気付かずに……。
━━高台公園━━
デートも終盤を迎え、2人はきなこパンを持って高台公園にいた。
[士道]
「やっぱり、最後はここだな。」
[十香]
「ああ……私とシドー、そしてヨーガと出会った、大切な場所だからな。」
この場所は、十香が撃たれそうになった所を陽牙がギリギリでカバーした場所だった。
[調査員]
「球体の霊波レベル、順調に減衰。」
[調査員]
「このまま行けば、2分後には完全に消滅します!」
[琴里]
「見えない球体……結局見えないままだったわね。」
[令音]
「………。」
このまま順調に終わる……と思いきや……
[鞠亜]
「鞠奈、行きましょう。」
[鞠奈]
「はいはい。」
或守姉妹は何かを感じ取り、すぐさま走っていった。
[裕成]
「やれやれ、仕方無い。」
[ルナ]
「とか言っておきながらもう準備済んでるわよ?」
[魁斗]
「お前も何か気づいてるんだろ?」
[裕成]
「まあね。」
どうやら他の人物も何かを感じとり既に動いていた。
━━所変わって高台公園━━
[十香]
「シドー、今日はとっても楽しかったぞ!」
[士道]
「そうか、俺も楽しかったよ。」
[十香]
「さあシドー、暗くなる前に帰ろう。今日のご飯は何だ?カレーでも良いぞ!」
[士道]
「さっき食べたろ━━━っ!?」
振り返った時には例の少女が立っていた。恐らくだがこれでやっと話し合いが出来るのでは、と士道は思った。
[士道]
「君……。」
その様子に十香も士道の視線に合わせるが、その先には誰もいない。
[十香]
「シド―……何を見ている?」
[士道]
「見えないのか!?」
[十香]
「何がだ?」
[士道]
「十香、デート中なんだが悪い。ちょっとだけいいか?」
[十香]
「うむ……構わんが……。」
こうして、士道は女の子の元へ歩いていった。それをフラクシナス内から琴里達は見ていた。
[士道]
「君━━━。」
[琴里]
『何やってるの士道?』
[???]
「おめでと。」
唐突の言葉に点になる士道。
[???]
「どうやら私と雷霆聖堂【ケルビエル】の出番は無いみたい。」
[士道]
「雷霆聖堂……?まさかあれは君の!?」
どうやらあの球体はその少女がやったものだと確定した。
[士道]
「教えてくれ。お前は何なんだ?俺に何の用があったんだ?」
[万由里]
「私は「万由里」。雷霆聖堂の管理人格。一つの場所に霊力が一定以上集約された時、私は自動的に生まれる。器がそれに値する者か確かめる為に。」
[士道]
「器……俺や陽牙の事か?」
そう言って、万由里は頷く。
[万由里]
「アンタ達を監視した結果、現時点においてシステム発動の必要は無いと判断したわ。私と雷霆聖堂の役目は終わった。」
[士道]
「役目が……終わった……?」
[万由里]
「そう。後は存在の構成を分解し、無に還るだけ。」
その言葉に士道は目を見開いてしまう。
[士道]
「っ!?何だよそれ!?どうしてそんな……!?」
[万由里]
「どうしてって……判断が終われば消滅する。私はそういう風に出来ている。ただ、それだけよ。」
すると、万由里の体が光を放ち、今にでも消えそうな雰囲気を思わせる。
[万由里]
「ただ……何でかな?最後にアンタ達と話がしたかった……。」
[士道]
「おい待て!万由里ッ!!」
強い光と風に押し返される。そして、万由里は翼に包まれ、精霊としての姿へと戻って行く。4つの翼と黒い服装が特徴的な彼女の姿だった。姿が変わった時、万由里の表情は悲しそうだった。
[万由里]
「さよなら、士道……。」
そう別れの言葉を告げた時だった。すると、あの球体が強い光を放つ。その異変に万由里は驚いた顔を見せた。
[士道]
「な、何だ!?」
[耶倶矢]
「何あれ!?」
[夕弦]
「発光!眩しいです!」
そして、光が治まると、球体は姿を変え、翼が生え、尻尾のようなものまで生えた。
[万由里]
「雷霆聖堂……!?何で!?」
その瞬間、雷霆聖堂は砲撃の様なモノを形成し、士道達のいる場所目掛けて雷を放った。高台公園が一瞬にして崩れてしまう。
[琴里]
「士道!」
[神無月]
「状況確認!」
[調査員]
「士道君、無事です!」
[調査員]
「あの子誰!?」
[調査員]
「球体が!展開しています!この反応数値は……天使!?」
[琴里]
「………!?」
何とか無事に避けられた二人。そして、他の精霊達も既に霊装化しており、或守姉妹や凜祢達も合流していた。
[十香]
「一体どうなっているのだ!?シドー、それに突然出て来たその女は誰だ!?」
[士道]
「説明出来るかどうかは分からんが……後で詳しく話す!」
[耶倶矢]
「また来る!」
雷霆聖堂の球体から無数の目が現れ、そこから弾幕が放たれる。
[士道]
「させるかッ!!」
士道も霊装を纏い、他の精霊とカバーしあう。だがそれでも範囲が広すぎた。
[調査員]
「攻撃範囲拡大!」
[調査員]
「空間震警報、間に合っていません!」
[琴里]
「神無月!」
[神無月]
「お任せを!インビジブル解除!その分の形成魔力を、ユグドフォリウムへ!」
フラクシナスが具現化し、戦艦としての姿を見せる。
[神無月]
「ユグドフォリウム、全機射出!」
ファンネルの様な形がケルビエルを囲む。
[神無月]
「バウンドアップ!!」
そして、雷霆聖堂がかなり遠い上まで飛ばされるが、攻撃がまだ放たれる。
[耶倶矢]
「あーもう!避けてばっかりってのは性に合わない!夕弦!行くわよ!」
[夕弦]
「同意。気が合いますね。耶倶矢!」
[十香]
「私も行くぞ!」
[四糸乃]
「私も……!」
[よしのん]
「おっけー!」
[鞠奈]
「私達も行きますか。」
[鞠亜]
「そうですね。一緒に行きましょう。」
[士道]
「みんな、気を付けろよ!」
[十香]
「うむ!任せておけ!」
そして、空で戦える者が次々雷霆聖堂の元へと行ったのであった。
[美九]
「となると私は……。」
すると雷霆聖堂の攻撃が防御展開を突き抜けてきた。
[士道]
「せやッ!!」
[美九]
「ああああああああ!!」
だがその攻撃を二人で何とか防ぎ切る。
[美九]
「士道さんを守る係ですぅ!!」
[士道]
「すまん美九。」
[万由里]
「雷霆聖堂……どうして?器は資格を得ている……なのに何故……!?」
[美九]
「彼女何なんですぅ……?」
[士道]
「いや、それが……。」
━━一方上空では━━
[ルナ]
「思ったより硬いわね。」
[十香]
「くっ!このままでは……!」
[夕弦]
「同意。埒が明きません!」
[琴里]
「退きなさい皆!早めにケリを着けるわ!集束魔力砲ミストルティン発射用意!」
[神無月]
「了解!ミストルティン、最大出力発射!!」
キィィィィン……ドゴォォォォォッ!!
フラクシナスが最大の砲撃を放つ。
ドォォォォンッ!!
だが雷霆聖堂は傷一つ無くまだ浮いたままでいた。それも翼でガードしながら。
[琴里]
「なっ……!?」
[調査員]
「ミストルティン効きません!」
すると、雷霆聖堂が何かを落とす。それは小さい球体だった。認知障害魔法陣をすり抜け、万由里の頭上まで落ちて来た。
[万由里]
「っ!?」
球体はいきなり無数の長い棘を形成し、それを篭の様にして万由里を閉じ込める。
[士道]
「万由里!?」
[美九]
「『離しなさい!!』」
ドンッ!!
美九が声で攻撃をするが、それも翼で防がれる。それ所か風で追い返されてしまう。
[万由里]
「きゃあああああぁぁぁぁぁっ!!」
[士道]
「万由里!!」
篭は雷霆聖堂本体の所まで辿り着き、一つになった。まさかの出来事に上空にいた全員は驚いていた。
[万由里]
「け、雷霆聖堂!何を!?」
直後、雷霆聖堂から様々な攻撃を繰り出す。刃物が付いた歯車を飛ばし雷を飛ばす。それを全員は避け続けた。
[万由里]
「止めなさい!もう、止めて!雷霆聖堂!」
[凜祢]
「これ以上声かけても止まるとは思えないよ!」
[万由里]
「どうして……こんな……あの子達の心は安定している筈……。」
万由里でも自分がここまでこうなるとは想定していなかった。しかし、万由里はある事に気付く。
[万由里]
「この…感じは……?」
その異変はフラクシナスでも気付いていた。
[調査員]
「天使、精霊らしき少女を取り込みました!」
[調査員]
「霊力レベル更に上昇!」
[調査員]
「攻撃力も増しています!」
[真那]
「くっ……!こうしちゃいられねーです!」
見ていられなくなったのか、真那も戦闘へと参加する。
[琴里]
「気を付けるのよ真那!どういう事なの……?そもそも十香のデートは上手く行っていた筈よ……なのに何故こんな事に……?」
[調査員]
「し、司令!霊波の波長に変化が!」
[調査員]
「十香ちゃんのものとは別に最初に観測した様な波長が発生しています!」
[琴里]
「まさか……!?」
モニターに映し出されていた波長は十香達の物ではなかった。まるですべてが混ぜられたような色をしていた。
[万由里]
「この感情は……あの子達のものじゃない……これは……私自身の……。」
そう。万由里自身の波長。しかも、その波長の正体は……
[令音]
「……「嫉妬」。あの精霊自身も予期しなかった感情が天使を暴走させている様だね。」
[琴里]
「じゃああの子も士道を……!?じゃあどうすれば……。」
[真那]
『破壊するしかねーです。』
[琴里]
「真那!」
フラクシナスから離れた真那からの電波を受け取る。ブーストで加速しながら雷霆聖堂に目掛けて飛ぶ。
[真那]
「事情はどうあれ、このままじゃ街が滅茶苦茶になりやがります。魔力砲が打ち消されるなら、私が直接攻撃で!」
真那がレーザーソードを取り出した瞬間━━━
[士道]
『待ってくれ!』
[真那]
「兄様!?」
士道の声が入り、真那は攻撃を中断した。どうやら士道達はフラクシナスへと移動していたみたいだ。
[士道]
「真那!万由里を連れ戻すまで待ってくれ!俺が何とかする!アイツを助けさせてくれ!」
[琴里]
「士道!?」
[士道]
「アイツは!万由里は……みんなの霊力から生まれた存在なんだ!」
[琴里]
「!?」
[士道]
「十香や、四糸乃、耶倶矢、夕弦、美九、そして琴里!万由里はお前等全員の分身なんだ!」
万由里は確かにそう言った。それは異常にも酷い運命だった。
[士道]
「アイツは言った……自分は役目を終えれば消え去ると……その為だけに生まれたと……消える為に生まれる命なんて在って良い筈が無い……!あの暴走が、万由里の消えたくないって思いなら尚更だ!俺はアイツを……みんなを助けたい!」
士道の言葉に強い意志を感じたのか、十香達全員が輝きだした。それも波長にはない凜祢や鞠奈に鞠亜までもが。
[美九]
「これは……。」
[琴里]
「まさか!?」
精霊全員が最初に出会った頃の姿に戻っていた。即ち封印されていた力を取り戻したのである。
[琴里]
「令音、これって……?」
[令音]
「……理由は定かでは無いが、シンの言葉にそれぞれの想いが同調した結果……だろうな。」
[士道]
「令音さん。」
[令音]
「……この状態が何時まで続くか分からない。だが、チャンスはここしか無い。」
[士道]
「美九、琴里、頼む。」
その言葉に美九は頷く。
[琴里]
「分かったわ、やってやろうじゃないの。私たちのデートを始めましょう。」
その言葉に士道も頷く。
上空では、一段とパワーアップした精霊たちの総攻撃が行われていた。無論他の人物も負けじと対抗していた。
[士道]
「十香!!みんな!!」
[十香]
「シドー!!」
士道がその場所へ到着するとみんなが合流する。
[四糸乃]
「士道さん……。」
[士道]
「万由里を、助け出す!協力してくれ!!」
[ルシア]
「勿論!!いくよ!!」
ルシアの言葉が合図となり、全員が雷霆聖堂へ向かって突撃していった。
雷霆聖堂も無数の目から弾幕を放ち、刃物の付いた歯車を飛ばしていった。だが精霊達もその攻撃を防いでいた。
すると凜祢が士道を掴んだ。
[凜祢]
「士道!万由里ちゃんをお願い!」
そしてすぐさま万由里目掛けて投げ飛ばして行った。だが予測してたのか天狼星を顕現させ、歯車を真っ二つにしていく。檻が目の前まで来るとその檻を斜めに斬る。
[士道]
「待たせたな。」
[万由里]
「士道……私は……。」
[士道]
「大丈夫だ、安心しろ。」
[万由里]
「士道……。」
カアァァァァァ……!
突如檻の上にあるコアのようなものが光を放ち、檻が再生されていった。士道と万由里はそのまま閉じ込められてしまったのである。
[士道]
「ったく……仕方ない。」
士道は天狼星を構えると、それをコア目掛けて突き刺す。すると次第にヒビが入っていき、コアが爆発する。だがそれと同時に檻ごと羽根化してしまい……
[士道]
「うおっ!?足場が!?」
足場が無くなってしまったのである。油断していた士道はそのまま落ちていったが……
バサッ ギュッ
[士道]
「ありがとう、万由里。」
万由里が助けたのである。そのまま士道を抱え、みんなの所へ合流した。
[十香]
「無事だなシドー!!」
[士道]
「ああ、万由里もな!」
[凜祢]
「投げた私が言うのもおかしいけど大丈夫?」
[士道]
「大丈夫だ、問題ない。」
[カムイ]
「そいつぁグレイトだぜぇ。」
[琴里]
「後は、あれを何とかするわよ!」
万由里を助け出し、残るはあの雷霆聖堂だけになった。だがこの時、雷霆聖堂は形態変化しており、巨大な棘となっていた。そして雷霆聖堂はチャージを始めた。
[美九]
「あれは……?」
[万由里]
「雷霆聖堂……まさか…ラハットヘレヴ?!」
雷霆聖堂のラハットヘレヴは、士道達とは別の場所方角目掛けて発射された。だがその途中で━━━
[???]
「……。」
キィィィィィィィンッ!!ドォォォォォンッ!!
その砲撃は、上へ受け流された。それも一人の男によって。
[全員(万由里以外)]
『陽牙!!』
そう、もはや人外とまで言われそうな程の規格外である神領陽牙だった。だがそれよりも……
[陽牙]
「……。」
この男、一言も喋らないのである。それも容姿も若干変わっており、髪と目が黒くなっていた。
[士道]
「陽牙?」
[陽牙]
「……寝起きは辛い。」
[全員(万由里以外)]
『あ、何時もの陽牙だ。』
[万由里]
「い、何時も?」
[士道]
「それよりも、その姿どうした?」
[陽牙]
「知らん。起きたらこうなってた。」
[士道]
「左様ですか。」
[よしのん]
「こいつ……さっきより全然強くなってる!!」
これが雷霆聖堂の第2形態であり、最終形態なのであろう。威力だけで見るなら凜祢の天使である凶禍楽園と同等かそれ以上。それに加え爆発力にその範囲。全てが高かった。
[琴里]
「令音!!」
[令音]
「解析結果が出た。あの天使には、通常の攻撃ではまともにダメージを与えられない。」
[琴里]
「何ですって?!」
[令音]
「……君達の霊力を結集させた一撃を、一点に集中させることが出来れば。或いは……ヨーガのように力業でやるしか。」
[琴里]
「後者は兎も角、前者はどうやって!?」
その話を聞いて、万由里は覚悟を決めたのか十香の手を掴んだ。すると紫色の輪が放たれ、他の精霊からもそれぞれの色の輪が放たれた。そしてそれは一点に集中し、巨大な輪となった。
[士道]
「霊力が、集まっていく……。」
[十香]
「力が湧いてくる……。」
[琴里]
「これなら、いける!」
[真那]
「兄様!天使が!」
既に雷霆聖堂は第2射のチャージをしていた。
[万由里]
「雷霆聖堂!!」
[耶倶矢]
「くっ!今来られても!」
[夕弦]
「焦燥!お相手出来ません!」
[陽牙]
「俺が時間を稼ぐ。お前らは霊力を集める事だけに集中してろ。」
そのまま陽牙は雷霆聖堂に向かって飛んでいった。そして目の前に来るとそこで止まり、紅桜を構える。雷霆聖堂も陽牙目掛けてラハットヘレヴを打つ。砲撃が目の前に来る瞬間、陽牙はゆっくり目を開ける。その時目には紅い光が宿っていた。そして砲撃は刀に当たると、綺麗に真っ二つになった。
[万由里]
「凄い……。」
[陽牙]
「はぁ!!」
シュッ キィィィィンッ!!
そのままの勢いで、雷霆聖堂の両方の羽根を一瞬で破壊する。
[士道]
「あれならっ!!」
[万由里]
「まだ、足りない!」
[ルシア]
「どういう事?」
[万由里]
「雷霆聖堂を消滅させるには、外部からの一撃に加えて、霊力の供給を止める行動を、同時に行う必要がある!」
[陽牙]
(ん?それって……)
[士道]
「じゃあどうすれば……!」
と、士道と万由里が一瞬見つめ合う。そして万由里が士道にキスを━━━
[陽牙]
「はーい一旦ストップねー。」
出来なかった。
[万由里]
「な、何をするの?!」
[陽牙]
「こんな所でキスして、尚且つまた探しに行かないとならん俺の身になれ。どっかの誰かさんみたいにな。」
[凜祢]
「……。」( ˙-˙)スッ
誰のことでしょうね。だが陽牙の意見はご尤もである。それにあのモザイク野郎がいたとしたら今度は連れ戻せないかもしれない可能性があるのでさせなかった。
[陽牙]
「取り敢えずまずは俺の言うことに従え。士道とのキスはその後だ。」
と、先に凜祢や或守姉妹にやってきた事と同じ事を万由里にもする。割と直ぐに終わったので、万由里の指にリングが嵌められた。
[士道]
「じゃ、じゃぁいくぞ……。」
[万由里]
「う、うん。」
流石に緊張してるのか少しガチガチになっている。そして2人がキスをすると万由里が輝きだし、雷霆聖堂の挙動が変わった。
[陽牙]
「さて、万由里のは終わったからあとはアイツだけだな。」
雷霆聖堂は余っていた霊力で翼を再生させ、こちら目掛けて突進してきていた。
[陽牙]
「にしても、随分変わったな。」
[十香]
「うむ!これも万由里やみんなのお陰なのだ!!」
今の十香の姿は、何時もの姿ではなかった。鎧も変わっており、翼に近いものまで着いていた。そして右手には鏖殺公、左手には滅殺皇が握られていた。
[陽牙]
「折角だし、俺も二刀流にしますか。」
陽牙は背中に背負っていた黒い刀、紅蓮狂刃を取り出した。
[陽牙]
「いくぞ十香!!」
2人は雷霆聖堂へ飛んでいき、最後の攻撃を与える。最初は十香による十時斬り、その次に陽牙の斬撃。これによって雷霆聖堂は破裂し、跡形もなく羽根化して消えていった。
[調査員]
「天使の反応……完全に消滅しました!」
[士道]
「よっしゃあああああああああああああ!!」
士道の咆哮が広がり、それを起点にして周りからも聞こえ始めた。だが一人だけ、何も喋らなかった。
[陽牙]
「……。」フラッ フラッ
陽牙は顔色が悪く、少しふらついていた。
[十香]
「ヨーガ、大丈夫か……?」
[陽牙]
「あ、あぁ……大丈夫だ……少し力を使いすぎたっぽい……ゴホッ……。」
[十香]
「なら私は運んでやろう!」
[陽牙]
「サンキュー……。」
十香は琴里に説明をして、フラクシナスへ運んでもら言うように伝えてくれた。陽牙は運ばれるとすぐさま寝てしまった。どうやら相当疲れていたようだ。
こうして、再び天宮市と精霊を巻き込んだ事件は幕を閉じた。
因みに雷霆聖堂は凶禍楽園と仲良くしているようです。
皆さん本当にお久しぶりです。何とか万由里編書き終わりました。最近は忙しすぎて書くことが出来ません。構想は頭の中で出来てるのに……。
Strinovaのキャラ出した小説作るか(原作はなんでも)
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作る
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作らない