[陽牙]
「流石俺だな。」
[士道]
「流石にキスで霊力封印ってのはな···」
[十香]
「キスとはなんだ?」
[士道]
「と、十香?!え〜とキスってのはその、えっと···」
[陽牙]
「キスってのは大切な人と唇と唇を合わせる事だ。」
[十香]
「おーそうか!!それじゃあシドー!!私とキスしてくれ!!」
[士道]
「に〜げるんだよ〜!!」
[十香]
「待てシドー!!」
[陽牙]
「···本編どうぞ。」
━━???━━
[???]
「【プリンセス】っ消失しました!!」
[???]
「なんですって?!···わかったわ。それなら士道を回収して。」
[???]
「···っ?!司令!!士道君いません!!それと付近にいた男の子も!!」
[???]
「なっ?!どういう事···。すぐに士道を探して!!何がなんでも見つけるのよ!!」
[???]
「はっ!!」
[???]
「···琴里はどう思う?あの子。」
[琴里]
「まだわからないわ。ASTと互角に勝負し、精霊の攻撃を弾いたなんてね。令音はどうだった?」
[令音]
「···彼から霊力は感知されなかったわ。彼は間違いなく人間よ。」
[琴里]
「なんですって?!···どうにか上手く加えられないかしら。神無月っ!!」
[神無月]
「はっ司令。」
[琴里]
「彼を見つけ次第すぐにスカウトして。」
[神無月]
「了解。」
神無月がその場から立ち去ろうとした時···
[陽牙]
「あーあーマイクテス、マイクテス。ドーモ皆さんこんにちは。おそらく君たちが探しているであろう神領陽牙です。」
モニターに移されたのは、浮いている陽牙達である。
━━━数分前の陽牙宅━━━
[陽牙]
「フラクシナスに決まってるだろ?」
[士道]
「お前?!フラクシナスって空中にあって、見えないんだろ?どうやって行くんだ?」
[陽牙]
「場所は大体把握した。行くには空でも飛んでいくか。」
[士道]
「空飛ぶってお前···いやお前ならできるか。」
[陽牙]
「そういうこった。それじゃあ···【エア】」
すると陽牙達の体が少し浮いた。
[士道]
「お、おぉ!!これが浮く感覚か!!面白いな!!」
[十香]
「私は別にいいぞ?精霊だからな。」
[陽牙]
「そうか?ならこのまま行くか。」
そう言って俺と士道、十香は外に出た。
━━そして冒頭に戻る━━
[陽牙]
「初めましてラタトスクの皆さん。見ての通り士道は無事です。それと君たちが探してた精霊の名前は『 夜刀神十香』となりました。パチパチ~。」
[十香]
「おぉ~!!」
[士道]
「何だろう…すごいこれじゃない感がすごい。」
[陽牙]
「んで今からそちらに十香と士道送るんで話があるならそちらにお願いします。ではっ!!」
シュン!!シュン!!
[士道]
「っと。ここがフラクシナスの中か。」
[琴里]
「よ、ようこそフラクシナスへ。早速だけど説明してくれるわよね?」
[士道]
「それはこっちのセリフだわ。ファミレスに座標あったままだし、その上空中にいるし、どれだけ心配したと思ってるんだ?」
[琴里]
「それは…すまなかったわ。」
[士道]
「んまあお前が無事ならいいや。んでなんだ?あいつの事か?」
[琴里]
「そうよ!!急に消えたり現れたりして!!」
[士道]
「ん~説明しろって言われてもそこらへんの奴よりは断然強い奴としか言えないな。」
[琴里]
「それは映像で見たわ。んでね士道に頼みがあるのよ。」
[士道]
「俺はラタトスクに入ってるわけじゃないぞ。んまあそれはどうでもいいとしてなんだ?」
[琴里]
「どうでもいいって…まあいいや。どうにか彼を…」
[士道]
「あいつをスカウトしようとしてるなら諦めた方がいいぞ。」
[琴里]
「なっ?!どうして!!」
[士道]
「あいつはどこかに所属するつもりはないらしいよ。やるとするなら自分で作るって言ってたし、あれだろ?霊力の封印手伝えって言いたいんでしょ?それなら自分でできるから俺は入らないだとよ。」
[琴里]
「なら早速十香の霊力を封印しなくちゃならないわ。」
[士道]
「それならもう終わってるぞ。見ての通り今の十香は霊装じゃないだろ?十香、霊装を出してくれ。」
[十香]
「うむ。分かったのだ。【神威霊装・十番(アドナイ・メレク)】」
すると十香の服装が来禅高校の制服から初めて会った時の霊装になった。
[琴里]
「うそぉ?!」
[十香]
「おぉ~!!初めてだけど上手くいったぞ!」
[士道]
「ってわけだ。だから陽牙を誘うのは諦めろ。」
プルルルルル。プルルルルル。
[士道]
「あ、陽牙からか。もしもし。」
[琴里]
「士道、ちょっとスピーカーモードにしてくれないかしら。」
[士道]
「わかった。ちょっと待ってな。」
そういうと電話をスピーカーモードにする。
[琴里]
「こんにちは神領陽牙。フラクシナスの指令を務めてる五河琴里よ。」
[陽牙]
『うん知ってる。んでなんでスピーカーモードにしたんだ?』
[琴里]
「単に聞きたいことがあったのよ。んで早速本題に入るわ。どうしてフラクシナスの事を知ってるのかしら?」
[陽牙]
『あ、まだ話してないんだ。ただ単にASTについて調べてたらフラクシナスの事も出てきたからハッキングさせてもらったよ。』
[琴里]
「…つまりあなたはASTとフラクシナスの両方の事について知ってると。」
[陽牙]
『厳密にいえばそれ以外の事についても知ってる。』
[琴里]
「なるほどね。で、貴方はラタトスクに入らないと聞いたけど本当かしら。」
[陽牙]
『士道から聞いたんだろ?その通りだ。ちょっと今からそっち行くわ。』
ピッ。 シュンッ!!
[陽牙]
「んで来て早速だがお前らに質問がある。空間振警報が鳴った時、お前らは何してた?」
[琴里]
「…ここで被害が出ないようにしてたわ。」
[陽牙]
「はぁ…。士道があの時どれだけお前の事を心配してたかわかるか?命を投げ捨ててまで行ったのにその場所には居ない、んで肝心のお前は安全な場所から傍観してる。お前家族を何だと思ってるの?」
[琴里]
「っ…!」
言い返せない。事実であったから。これは他ならぬ琴里自身の問題であった。
[神無月]
「確かに、その辺に関しては申し訳ありません。ですが、こちらもこちらで事情がありますので―――」
[陽牙]
「事情だァ?精霊とデートさせてデレさせる事が事情なのか?ASTに妨害されながらも、プリンセスにキスをして力を封印ってか?しかも、それを担当しているのが士道ォ?ふざけんなよ、何考えているんだ?」
[琴里]
「…そこまで知ってるのね。」
[陽牙]
「ASTもそうだけど、あんたらはそういう立場を分かってるんか?空間震に怯えながら生きている人の気持ちが分かるか?悲しそうなプリンセスの顔を見た事あるか?それにお前らは本当の恋を理解してない。」
[琴里]
「貴方のだって士道と同じ高校生でしょ?!何知ったような口聞いてるのよ!!」
[陽牙]
「これだけはあまり言いたくなかったんだが、少なくもお前たちよりは長生きしてる。訳あって高校生やってるだけだ。中学生で司令官やってるからって調子乗んなよ。」
[琴里]
「······。」
何も言い返せない。陽牙が言ったことは全て本当のことだ。
[陽牙]
「俺から言うことはもう無い。何か言いたいんだったら俺の家に来い。それと俺の事は士道と十香に聞け。それじゃあな。」
そう言うと陽牙はテレポートした。
[琴里]
「···詳しく聞かせてもらうわ。」
琴里は目には少し涙が溜まっていた。
[士道]
「ああ。それよりも···」
士道は琴里の頭を撫でた。
[士道]
「お前はまだ中学生だ。少しくらい俺を頼ってもいいんだぞ?」
[琴里]
「···うん。ありがとう···おにーちゃん。」
[士道]
「んで陽牙の事なんだけど···」
士道は話した。陽牙は1度死んで2度目の人生を過ごしていることを。
━━陽牙宅━━
[陽牙]
「···少しキツく言いすぎたな。今度謝っておくか。」
少なからず、罪悪感はあった。
[陽牙]
「とりあえず何か組織的なものでも作ろうかな。幾ら霊力を封印できるからって、急に『君の力を封印しに来たよ。』とか言ったら引かれるだろ。組織名は···」
[???]
「【Freedom(フリーダム)】でいいんじゃない?」
[???]
「ああ私もそれいいと思う!!」
[陽牙]
「ならそれでいいか······ってうん?今誰か喋った?」
陽牙の家には誰もいない。陽牙以外住んでいないから。
[陽牙]
「気のせいか。」
[???]
「ちょっと無視しないでよ!!」
[陽牙]
「へっ?]
前を見るとさっきまでいなかったはずなのに2人の女の子がいた。
[???]
「やっと気づいた。君全然1人にならないんだもん。」
[陽牙]
「え?どちら様でぃすか?」
[桜]
「まだ名乗ってなかったですね。私達はマスターが所持している刀です。私は紅い刀【紅桜】の桜です。」
[紅蓮]
「私は黒い刀【紅蓮狂刃】の紅蓮よ。よろしくね、マスター。」
[陽牙]
「は、はあよろしく。」
刀が人間体になる事ってあるんだな。
[陽牙]
「ん?てかその声確か···。」
[桜]
「はい。私達がマスターに力を授けた者です。」
[陽牙]
「あ~やっぱりね。んで力ってどんなのなんだ?」
[桜]
「私は主に刀にですね。マスターの任意で属性を付与できます。」
[紅蓮]
「私は身体面によ。沢山あるけど、メインは状態異常無効化ね。」
[陽牙]
「すげえなその能力。てかなんでマスターなんだ?」
[紅蓮]
「簡単よ。君しか私達は使えないからよ。」
[陽牙]
「Ok把握した。これからよろしくな。桜、紅蓮。」
[桜]
「はい。」
[紅蓮]
「よろしくね。」
[桜]
「それでマスター、」
[陽牙]
「なんだ?」
[桜&紅蓮]
「お腹空きました(空いた)。」
[陽牙]
「よっしゃ任せろ!!」
この後めっちゃ食べた。
━━━次の日━━━
[陽牙]
「···んん?」
重い、特に俺の腹付近が。
[陽牙]
「んんんん?」
目を擦り、重い原因を見る。
[桜]
「おはようございます。マスター。」
そこに居たのは【紅桜】もとい桜が居た。
[陽牙]
「ああ、おはよう桜。」
[紅蓮]
「おはよう陽牙。朝食出来てるわよ。」
[陽牙]
「おはよう紅蓮。ありがとう、着替えるから先に行っててくれ。」
[桜]
「分かりました。」
トテトテと階段を降りていく。そして着替えが終わると俺も降りていく。
[陽牙]
「んアアアアア。」
[紅蓮]
「凄い声出すわね···。とりあえず冷めないうちに食べなさい。」
[陽牙]
「では、」
『いただきます』
そうして俺達は朝食を食べた。しかし食べている途中。
ピンポーン、、、
[陽牙]
「ん?誰だこんな時間から。」
[桜]
「この気配は五河琴里ですね。」
[陽牙]
「朝早くに来るなんてなんかあんのか?」
[紅蓮]
「おそらく昨日の事で言いたいことあるんでしょ。」
[陽牙]
「ああなるほどな。んじゃ行ってくる。」
ギシ、ギシ、ギシ。
[陽牙]
「はいはーいどちら様ですか。」
[琴里]
「昨日ぶりね。」
[陽牙]
「そうだな。んで何の用だ?」
[琴里]
「そうね、まずは···」
琴里は頭を下げた。
[琴里]
「ごめんなさい。あの後士道に貴方の事を聞かせてもらったわ。それに今でも言われたことを覚えているわ。」
[陽牙]
「んで、お前はどうしたいんだ?」
[琴里]
「···士道を守りたいと思う。」
[陽牙]
「···そうか。俺も少し言いすぎたな。悪かった。」
[琴里]
「いや、あれだけキツク言われたから分かったのよ。本当に感謝してるわ。それで頼みがあるのよ。」
[陽牙]
「ん?何だ頼みって。」
[琴里]
「十香とデートしてほしいのよ。」
[陽牙]
「なんで俺なんだ?」
[琴里]
「十香に言ったら『ヨーガも一緒がいい!!』って言われてね。それでよ。」
[陽牙]
「なるほど。でもうちら学校あるからそのあとでもいいか?」
[琴里]
「勿論よ。それじゃあ頼むわね。」
[陽牙]
「はいは~い。それじゃあ。」
ガチャン。
[陽牙]
「まあ何とかなってよかった。ってどうした二人とも。」
[桜&紅蓮]
「時間(ですよ)。」
[陽牙]
「あ、少しやばいな。今回ランニングできないから明日みっちりやるか。」
[桜]
「荷物は私がやっておきました。これどうぞ。」
[陽牙]
「お、サンキュー。で桜と紅蓮はどうするんだ?」
[紅蓮]
「私たちは刀の姿で行くわ。何時もそれで見てたしね。」
[陽牙]
「ああそうなんか。そんじゃ行くか。」
━━━学校━━━
[士道]
「陽牙おはよう。琴里から話聞いたか?」
[陽牙]
「ああ。まあ今回はしょうがないからな。」
[士道]
「そういえばデートって何すればいいんだ?陽牙はした事あるのか?」
[陽牙]
「···ああ。前世でな。」
少し陽牙の顔が暗くなった。何かあったのだろうか。
[士道]
「···なんか悪いな。前の事思い出させたようで。」
[陽牙]
「いや気にするな。いずれ言うことになるから。」
[珠恵]
「は〜い皆さん。席に着いてくだ〜い。今日は新しい先生を紹介しますぅ。」
[陽牙&士道]
「···は?」
驚くのも無理ない。なんせそこに居たのは···
[令音]
「···村雨令音です。担当は物理で···」
バタンッ!!
[珠恵]
「だ、大丈夫ですかぁ?!」
[令音]
「···ああ、大丈夫だ。どうも最近不眠症でね。」
[士道]
「···陽牙知ってたか?」
[陽牙]
「俺が知ってる訳ないだろ。ラタトスクもようやるな〜。」
[紅蓮]
「おそらく裏で活動してるんでしょうね。」
[桜]
「おそらく士道とマスターの監視が主でしょうね。」
[士道]
「ん?今誰か喋ったか?」
[陽牙]
「ああ士道にはまだ言ってなかったな。今喋ったのは俺が持ってる刀だ。挨拶しときな。」
[桜]
「紅い刀【紅桜】の桜です。よろしくお願いします。士道。」
[紅蓮]
「黒い刀【紅蓮狂刃】の紅蓮よ。よろしくね士道。」
[士道]
「お、おうよろしく。」
[令音]
「···ちょっと荷物運びを手伝って貰いたいのだがね···」
[殿町]
「では私が···」
[令音]
「頼めるかい?シン、ヨーガ。」
[士道、陽牙]
「OK!!」
[令音]
「···では着いてきたまえ。」
[殿町]
「チクショウメェ!!」
━━━物理準備室━━━
[令音]
「···ここだ。入りたまえ。」
ガラガラガラ。
[琴里]
「遅かったわね。早く席に着きなさい。」
[士道]
「お前学校は?」
[琴里]
「ちゃんと手続きしてきたわ。」
そういってスリッパを見せる。そこには来客用の文字があった。
[陽牙]
「てっきりグレたのかと思ったぜ。」
[琴里]
「なんでや!!」
[令音]
「…そろそろいいかね…」
[陽牙]
「ああ、すまん。で、なんですか?わざわざここまで改造してるから何かあるんでしょう?」
今いる物理準備室は、俺たちの知ってるものとは程遠く、目の前に大量のディスプレイがある。
[琴里]
「そうね。それで呼んだ理由は今回のデートについてよ。」
そうして琴里と令音から説明を受けた。どうやらラタトスクが全面サポートするらしい。金については副司令である神無月に請求してもいいとのこと。ドンマイ神無月。あといつでも連絡できるようにインカムを渡されたが、俺はいらないと断った。
そして授業を全て終え、校門を出た時…。
[十香]
「おお!!ヨーガ!!シドー!!早くデェトとやらをしよう!!」
[陽牙]
「十香わざわざ来てくれたのか。ありがとうな。」
[十香]
「それにしても随分視線を感じるのだがなぜだ?。」
[士道]
「それは十香が可愛いからだよ。俺から見てもそう思うぞ。」
[十香]
「そ、そうか。ありがとうなのだ。」
『聞こえてる?士道。』
[士道]
「ああ。大丈夫だ。」
『そう。朝も言ったけど私たちが全面サポートするわ。何かあったらインカムを二回叩いて頂戴。』
[士道]
「了解。それじゃあ十香、行こうか。」
[十香]
「うむ!よろしくなのだ!!」
[陽牙]
「ああ、よろしく。」
[士道]
(にしても陽牙の奴かなりピリピリしてるな。なんかあったのか?)
そう。陽牙はデートをしろと言われてからかなりピリピリしてる。てか眼つきが怖い。やっぱり過去に何かあったのだろうか。でも今は聞かないでおく。
[十香]
「それで、最初はどこに行くのだ?」
[陽牙]
「そうだな~。それじゃあ最初は商店街とかだな。やっぱり食べ物や飲み物を知っておくことも重要だからな。」
[士道]
「確かにそうだな。それじゃあ十香、行こうか。」
[十香]
「うむ!!」
━━━商店街━━━
[十香]
「……っ、な、なんだこの人間の数は。総力戦か?!」
[陽牙]
「違う違う。誰もお前の命なんか狙ってないだろ?」
[十香]
「……本当か?」
[陽牙]
「本当だ。」
[十香]
「まあヨーガがそういうなら…」
少し警戒しているようだ。まあそれは仕方ないか。すると十香の顔から少し力が抜けた。
[十香]
「ん……?シドーこの香りはなんだ?」
[士道]
「香り…?」
目を閉じて辺りの匂いを嗅いでみると、確かに十日の言う通りに香ばしい香りが漂っていた。
[士道]
「この香りは…きなこパンだ。」
[十香]
「そのきなこパンとやらはうまいのか?」
[士道]
「ああ。香ばしく揚げられた表面ともちもちの生地、そしてそれらを包む優しいきなこの風味……」
[十香]
「…ジュルリ。」
[士道]
「どうした十香、行きたいのか?」
[十香]
「シドーが行きたいのなら…」
ぎゅるぎゅるぐぅー。
十香の腹からそんな音がなった。
[士道]
「……行こうか。」
そして店の扉を開け中に入っていく。それを目撃していた少女は小さく呟く。
「……精霊。」
鳶一折紙はそう呟く。彼女たちの討伐目標である精霊が、士道と陽牙の隣に制服で歩いていたのだ。しかし精霊が出現するときには、予兆として平時では考えられないレベルの前震が観測される。それを彼女が所属しているASTの観測班が見逃すはずがない。
だが、それならば空間振警報が鳴っているはず。そこでASTに電話をした。返答は『そんなものないよ。』
だった。だが折紙が精霊の顔を忘れるはずがない。だから彼女はアドレス帳から番号を選び、
[折紙]
「AST、鳶一折紙一槽。A‐0613、観測機を一つ回して。」
こうして彼女の尾行が始まった。それを知っている者が一人。
「…やっぱり来たか。絶対にさせねぇからな。」
神領陽牙だった。
その後も十香たちのデートは順調に進んでいった。ゲームセンターに『きなこパン』のぬいぐるみがあり、2人は必死に取ろうとしてた。それが落ちてきたときは十香は大喜びだった。その時の笑顔はステキだった。そして今俺たちがいるのは公園の高台。ここから綺麗な街並みと夕焼けを見るのは絶景の場所かもしれない。
[十香]
「……私は……こんな綺麗な場所を壊していたのだな…。」
[士道]
「十香…」
[陽牙]
「……。」
[十香]
「私が目覚めると、常にあの連中だけがいた。人間だけは信じられないと思っていた。けど、シドーやみんなだけは違っていた。みんな、私の存在を認めてくれたのだ。」
そうして十香は一呼吸置いた。そして振り返り、真剣な目を向ける。
[十香]
「今一度聞く。私は本当にここに居ていいのか?」
[士道]
「当然だろ?もし居場所がないのなら俺たちが作ってるから安心しろ。」
[陽牙]
「ああ、お前は俺達の仲間だ。否定なんて一切させねぇよ。否定するヤツなんざ俺がボコボコにしてやるよ。」
[十香]
「みんな……ありがとう!!私は……幸せ者だ…。」
[陽牙]
「っ!!」
シュン!! スパーン!!
[陽牙]
「…はぁ。やっぱりな。」
[士道]
「陽牙!!今のは…」
[陽牙]
「今のは明らかに十香を狙った狙撃だった。なぁ! そうだろぉ?鳶一折紙ぃ!!」
[隊長]
「なっ?!バレてる?!」
そう。陽牙は早めにこのことを予測しており、対策していた。
[士道]
「鳶一折紙?!もしかしてASTか?!」
[十香]
「またしても私の邪魔をするか!!」
[陽牙]
「…士道…少し離れていた方がいいぞ。」
[全員]
「っ?!」
[士道]
「…わかった。十香、行くぞ。」
[十香]
「…わかったのだ。」
決めるのは早かった。なぜなら陽牙の放つ殺気が常人では耐えられないほどのものだったから。
[陽牙]
「……さてお前ら。よくも俺たちの時間を台無しにしてくれたな。殺すことで正義を掲げようとしてるのか?」
[隊長]
「ち、違う!!私たちは明確な目的があって…!」
[陽牙]
「どんな形であろうが何だろうが、お前等がやっている事は全部『殺し』だ。それを許すと思うか?」
シュン!!
[陽牙]
「どうなんだ?鳶一折紙?」
[折紙]
「神領陽牙……私は……。」
[陽牙]
「さて、今から見せてやるよ。精霊より人間のほうが恐ろしい生き物であることを。」
そうして剣を二本取り出す。
[隊長]
「総員!!じゅ、銃を━━━」
[陽牙]
「深淵━輝華━!!」
すると陽牙は一瞬で消えた。そして…
ズバズバズバズバッ!!
「きゃぁぁぁぁ!!」
「うあぁぁぁぁ!!」
「グハァ…!!」
「がっ…!!」
彼の間合いにいた連中はみんな気絶した。
[陽牙]
「あとはお前だけだ。鳶一折紙。」
[折紙]
「嘘……全滅…。」
[陽牙]
「少し気になってたことがあるんだ。お前は全国のテストでトップを取るレベルなのにどうしてこの学校に居るかだ。それにお前は精霊に対して異常な執着心を持っていう。つまりお前は…」
過去に精霊に何かされたんだろ?
その言葉で折紙が少し反応した。
[折紙]
「…私の両親は5年前に━━」
[陽牙]
「精霊によって殺された…だろ?」
[折紙]
「なっ?!どうしてそれを…」
[陽牙]
「ただの勘だ。今までのお前の行動、そして無関心さとASTに入ってることで何となく予想できたよ。」
[折紙]
「…その通り。だから私のような人間はもう増やしたくない。」
[陽牙]
「なるほどねぇ…。俺と似てるな。」
[折紙]
「…どういうこと。」
[陽牙]
「…俺は一度死んでるんだよ。同じ奴に彼女も殺された。」
[折紙]
「?!」
驚くのも無理はない。似た境遇、もしくはそれ以上の人間が目の前に居るから。
[陽牙]
「それで最初はそいつの事を殺そうとしたよ。だけど考えたんだよ、『こいつを殺して何になる?俺に得はあるのか?』ってね。その結果、負の連鎖が始まるってことが分かったんだよ。」
[折紙]
「負の…連鎖?」
[陽牙]
「犯人が俺を殺し、俺が犯人を殺す。そしたらその親族たちが同じことをするだろうよ。今となってはその犯人は捕まってるからどうでもいいって思ってるけどな。それで最後に問う。お前は精霊が許せないのか?それとも両親を殺した精霊が許せないのか?」
[折紙]
「私は、精霊を殺し続ける。それだけ。」
[陽牙]
「そうか。なら俺は徹底的に妨害してやる。」
[折紙]
「精霊側に付くの?」
[陽牙]
「当たり前だ。俺の目の前で殺人は起こさせねぇ。話はそれだけだ。連中は気絶だけで済ましてるから回収しな。んじゃな。」
シュン!!
[十香]
「おお!!ヨーガ!!無事だったか!!」
[士道]
「まあ陽牙が危ない状況になることが珍しいけどな。」
[陽牙]
「そういうこった。んじゃそろそろ帰るか。」
『ちょっといいかしら士道。』
[士道]
「ん?なんだ琴里。」
『実は陽牙と士道にお礼をしたくてね。十香を回収してもいいかしら。』
[士道]
「ああ分かった。十香、今からフラクシナスへ行ってくれ。」
[十香]
「わかったのだ!!それじゃあまたなシドー!!ヨーガ!!」
そう言って、十香はフラクシナスへ回収された。
[士道]
「それじゃあ俺たちも帰るか、陽牙。」
[陽牙]
「ああ。」
そして二人は帰路に就く。
━━━その日の夜━━━
[士道]
「…俺もあそこまで強くなれるだろうか。」
士道と十香は陽牙の戦いを見ていた。その戦闘力は人間を超えていた。『もしかしたら私より強いかもしれん。』っと十香が言っていたが本当にそうなのかもしれない。だから士道はそう思った。
[士道]
「俺もあそこまで強くなりたい。琴里だけじゃない、精霊も、みんなを絶対に守るために!!」
そう強く思い士道は眠りにつく。そして士道は夢をみた。
[士道]
「ここは…。」
士道はこの場所を知っている。大火災にあっている最中の天宮市だ。
ゴゴゴゴゴゴゴッ!!
[士道]
「っなんだ?!」
突如、士道は周りの炎に囲まれる。その炎はまるで意思を持っているかのように。
[士道]
「このままじゃここから動けないじゃん…。」
っと随分冷静に考えていた。だがその考えは一瞬で崩れる。
[士道]
「のわっ!!」
士道は炎に飲まれた。
――熱くない。はじめに士道が思ったのはそれだ。まるで炎ではないかのように熱さを感じないのだ。
直後、頭をガツンと殴られるような感覚と共に、言いようの無い衝動が自身に生まれるのを感じる。
――全てを壊せ。炎にのみ込め。滅ぼせ。
灼爛殲鬼の持つ破壊衝動は、士道の精神を蝕む。士道とてやられているだけのつもりはなく、そんなことはするもんか! と破壊衝動を否定するが、とめどなく流れ込む衝動は少しずつ、士道の意識を蝕んでゆく。
彼の体を操るように炎はまとわりつき、戦斧の形へと変わり、徐々に大砲のような形へ姿を変える。
その途端、さらに自らへ襲いかかる衝動が強くなる。
だがそこで士道は諦めない。ここで負けたら約束を果たせない。そう思い必死に抵抗したら、それは戦斧の姿へと戻り、流れ込む衝動も勢いを減らす。
[???]
「……なぜそこまでして抗う。」
[士道]
「誰だ!!」
突如目の前から声がした。そこに居たのは天女の格好をした人。顔は見えない。だが頭には角が二本生えていた。
[灼爛殲鬼]
「…我の名は【灼爛殲鬼(カマエル)】。どうしてそこまでして抗う。このまま楽にしていればいいものを。」
[士道]
「俺は…破壊するだけの力なんて要らない。」
[灼爛殲鬼]
「ならば貴様は何を欲する。」
[士道]
「俺は…」
みんなを守れる力が欲しい。その一言がキーとなった。その言葉が発せられると、世界にヒビのようなものができる。それは徐々に大きさを増していく。
[灼爛殲鬼]
「…そうか。貴様にはこの力を授けても良いな。五河士道!!」
[士道]
「はい!!」
[灼爛殲鬼]
「この力で···約束を守ってくれ。」
[士道]
「ああ!!」
そう言って士道と灼爛殲鬼は拳をお互いに突き合う。そして士道の意識は沈んでいった。
━━━次の日━━━
[士道]
「ふわぁぁぁ···。」
[陽牙]
「随分と眠そうだな。なんかあったんか?」
[士道]
「いや。ただ寝付けなかっただけだ。」
[陽牙]
「そうか。(こいつから若干だけど霊波を感じるな。)」
相変わらず勘が鋭い陽牙である。するとタマちゃんが入ってくる。
[珠恵]
「皆さぁんおはようございますぅ。早速だけど転校生を紹介しますぅ。入って〜。」
[???]
「うむ!!」
そして入ってきたのは、誰が見ても美少女と言われるほどの容姿をもった少女だった。そして彼女は黒板に自分の名前を書く。
[十香]
「今日から厄介になる夜刀神十香だ!!よろしく頼む!!」
そう。精霊の彼女が転校生として来たのだ。おそらくラタトスクが根回ししたのだろう。
[十香]
「おお!!ヨーガとシドーではないか!!」
そう言って手を振ってくる。途端にクラスメイトの視線が俺達に集まる。
[珠恵]
「十香さんの席は···陽牙君の前ですね。」
俺の前って誰かいなかったっけと思いながらどうでもいいかと同時に思っていた。
[士道]
「十香、霊力とか大丈夫なのか?(ボソボソ)」
[十香]
「どうやら9割近くブレスレットの方にあるらしいから大丈夫だと言っていたぞ(ボソボソ)」
[陽牙]
「一様念の為に注意してくれよな(ボソボソ)」
[十香]
[うむ。わかったのだ。改めてよろしく頼む。シドー 、ヨーガ。]
[士道&陽牙]
「こちらこそよろしく。」
こうして十香も無事、人間と同じ生活を出来るようになった。
皆さんこんにちは作者です。無事十香編終了しました。そして期末テストも終わりました。今回でかなり原作と変わりました(特に士道が)次回からは四糸乃編ですが、その前に少しアナザーストーリー的な物入れたいと思います。なので四糸乃編がスタートするのは少し先になります。ご了承ください。