NTRと主人公に思われたくないけど、童貞は捨てたい転生者 作:鳩は平和
俺は夢から起きて、頭を抱える………マジかマジか!?俺が初めて付き合う彼女は……野中柚希………だと。嬉しい8割……悲しみ2割。そりゃ、この作品の推しの一人だ、嬉しくないはずがない。
野中柚希……勇者の里出身であり……霊刀咲耶を振るう超技術タイプの女の子。妹がおり………テンションが上がると偶に関西弁になるという……たしか、性感帯はお尻だっけ?
けど……出来ない、だってそんなことしたら確実に原作に関わる。それは彼女は主人公に……家に不法侵入するぐらい好きなんだよ。そんな彼女が俺と付き合える可能性がある!?嘘だと言ってくれよ…………考えれば考えるほどに思いつかない……俺は深いため息を吐く。
「どうやって…………告白すればいいんだよ」
その時だった………俺の脳内に天啓が聞こえた。
『土下座で告白すれば……イケる』
「そうか………土下座か!?………体育館の旧校舎に彼女を呼んで土下座で告白したらいいんだ!?」
俺は………どうやって彼女を呼び出すための手紙の執筆を始める。
ー○●○ー
夏休みが終わった、登校中の俺は空を見上げた。見渡す限りの蒼。それがこの色だった………結局、野中柚希とは会うことも出来なかった。セミまでもが暑いと喚いているように鳴いた。
「あー暑いな……くそ」
すると目の前に………見たことがある……赤い髪の女子……成瀬澪と男が楽しそうに話している……つまり、隣にいるのが主人公、東城刃更……か、くそ、あそこにいるっていうことは、昨日はイチャイチャとエッチなことをしていたんだろ。いいよーだ!!俺だって……俺だって………ちくしょう、これは汗だ……目から流れる汗なんだ。
「あれ?」
主人公東城の後ろにワンピースを着た少女が……現れた。あれが……成瀬澪の従者の成瀬万理亜か………あいも変わらず、ロリロリしてるな。いやでも、確か本気モードだと、すごい妖艶になって…でも、ロリ……あれ……サキュバスってなんだ?
「早く教室に向かって、クーラーの恩恵に縋ろう」
気温も三十度でもあるために、早足になりつつ三人の横を通り過ぎた時………成瀬澪と一瞬目が合った……気がする。そのまま学園の中に吸い込まれるように入っていった。
ー○●○ー
今のは……成瀬銀よね。話したことはない………あったのは、この前のストーカーの時だけ……いつも、教室の隅で表情が見えない……どこにでもいる人間なのに、どうしてか、彼から目が離せなかった。
私は魔王の娘……成瀬銀は人間………ねぇ、銀…教えて、どうして、あの時私を助けてくれたのか……今も、元勇者の一族のお世話になっている……嬉しい、私を私のまま受け入れてくれる……隣にいる刃更とも楽しくやっていけてる。また、夜みたいに、影と魔獣が襲ってくるかもしれない……それだけはだめ。
主従契約もやってしまった………首に紋様が浮かんだ。これで私と刃更は常にどこにいるのかわかる。
「澪さま?……暗い顔をしてどうしたのですか?」
「えっ!?……ううん、なんでもないわ!!
私と視線を合わせる万理亜………いけない。もうすぐ、学校も始まる。万理亜を心配させてはいけないわね。
「いい、刃更、学校では、私に話しかけてはダメだから」
「へいへい、お前もあんまり無理するなよ……呪いが発動してしまうかもしれないからな」
刃更の言葉に私は優しく自分の首を触る……呪いが発動すれば紋様が浮かぶ。その範囲は配下が主を裏切れば、呪いが発動する………本当なら私が主で刃更が配下なのにそれが逆になるなんて……それに万理亜の催淫の呪いも発動するなんて……胸を揉まれるなんて……でも、キスはしてないわ。
「それでは澪さま、私は近くで待機しておりますので……刃更さん、澪さまをお願いします。人が多い場所なので大丈夫とは思いますけど」
「うん、よろしくね」
「ああ、何があったらすぐ報せるよ」
万理亜と別れて、私たちは校内の中に入っていった。
ー○●○ー
教室にて、俺は理想郷にいるかのように……ぐでーと俺は倒れる。はあ、クーラー発明してくれてありがとう!!
もう、原作展開とかどうでもいい………もう、一生童貞で死んだ後はサキュバス地獄……にイきたくない!!あっぶっねぇ、もう少しで、思考が溶かされるところだった。
チラリと窓側の席を見れば、まるで氷のように冷たい少女……夢に見た、野中柚希が本を読んでいた。誰とも話さず静かにしていた。流石氷のお姫様……さて、どうやって、彼女を呼ぶか……ラブレターは出来た。あとはこれを渡せば………勝てるわけあるかぁぁぁぁ!!
こちとら年齢=彼女いない歴のキング童貞だぞっ!!女の子なんて、コンビニの店員で『温めますか?』『袋はご利用なさいますか?』ぐらいだぞ………どうやって告白すればいいんだよっ!!
教室の扉が開き、入ってきたのは爽やかオーラを放出させる坂崎担任だった。まあ、みんなからマモちゃんとしたわれているが俺は好きではない……何故なら、本物の坂崎は死んでおり、そこにいるのは神族の……たしか、オルニスだったか?とりあえず人を虫と思っているし……擁護教論信者だし………はあ、どうやって過ごそう。
その後ろに……主人公東城が入ってきた。クラスのみんなは、東城の値踏みが開始された。そして、男ども落胆するな……いくら男だからといって露骨に落胆するなよ、主人公様に失礼だろう。
あれ……気のせいか、野中柚希が主人公東城に対する視線が弱い?なんといえば…久しぶりに会った友達程度に……どういうことだ?
うーんこれはよくわからないなと考えている………が、坂崎が爽やかに笑った。
「さて、見ての通りの転校生だ。───東城、自己紹介を」
「あ、はい」
気の抜けた返事をしながら、黒板に名前を書く主人公。
「えーと、東城刃更です。名前はちょっと物々しいですが、見ての通り普通の奴なんで、これからよろしくお願いします」
原作通りに主人公は自虐的に自己紹介すると、教室の空気が和み、歓迎ムードになった。そこから質問タイムがあった……何質問したらいいからわからなかったので、最近買ったラノベを読もう。
ホームルーム終了のチャイムが鳴ったのと同時に、坂崎が手を鳴らした。
「よし、とりあえずここまで。続きは、始業式の後でな。東城、お前の席はそこの空いている所だ。野中、委員長のお前が東城の面倒を見てやってくれ」
「……はい」
野中が立ち上がるのと同時に、クラス全員が立ち上がり始業式のために体育館に向かうために、廊下に並ぶ。俺はこれから一悶着が起こるために、あえて……そう、あえて最後まで残ったのだ。
「────」
「────」
遠いのか、小声で話しているのか……よく聞こえなかったが、幼馴染と出会ったみたいに二人は嬉しそうに話し……そうこの後だ、この後に野中は東城に抱きつき、澪はそれを怒って、東城と同棲していることを廊下にまで響き渡り、東城は友達が出来ない。
「………えっ!?」
二人はそのまま廊下に並ぼうとした……おかしいおかしい!!成瀬もまた廊下に並ぼうとしているし………原作ではこんなふうになっていない。
おかしいと思いながらも俺も廊下に並ぶ。
ー○●○ー
放課後になった………やっぱり、おかしい……東城が普通にクラスメイトと話している。こんなことに……ならない。昼休みだって、滝川と屋上で食うはずだったのに……普通にクラスメイトの男子達と楽しそうに話していた。
「なあ、刃更、カラオケ行こうぜ」
今もまた……クラスメイト達と、楽しそうに話している。おかしい………何もかもがおかしい。東城は……俺と同じぼっちだと思っていたのに…どうしてこんなことに……
悩む中、東城が俺にいつのまにか近づいていた。ひえっ!!お、俺……まだ、あなたのヒロインに手を出していないよ………もしや、澪さんが俺は家に泊まらせたことで怒ったのか!?
「なあ、成瀬……あー、でもそれだともう一人の成瀬と被るか……なあ、銀、お前も一緒に来ないか?」
「えっ!?」
まさかのお誘いだった………けど……後ろにいる男子生徒達はめっちゃ嫌そうな顔をしているのがバレバレだった。
「あー俺、今日掃除当番だし………やめておくよ」
「そうなんだ……わりぃな」
軽い謝罪をしつつ、東城は男グループの方に向かい、教室を出た。思わず、俺は深いため息を吐いた……掃除は半分嘘、半分は本当だ。今日、俺は掃除当番ではないが、彼女とデートなのかクラスメイトに押し付けられて掃除をすることになった。
ここまでいい、お気づきだろうか……絶賛、俺はクラスメイトのほとんどに嫌われている。理由もわからないが……とりあえず、居場所が出来ない。
べ、別にぼっちだからといって悲しくないんだからねっ!?前世だって、ブラック企業なのか、気がつけば同期は俺以外いなかったし、いっつも一人酒とかしてたし、別に友達と一緒にご飯食べたり、カラオケ行ったりしたいとか思っていないんだから………ヒクッ……早く掃除して、家に帰って告白作戦練ろう。
「ねえ、銀………話があるの」
高校生活……久しぶりの会話は……ヒロインでもある野中柚希だった。
ー○●○ー
向かった場所は体育館の裏側だった。心臓の鼓動がうるさい…………ちょっと待ってちょっと待って!!もしかして………告白なのかっ!?嫌……ないな、だって主人公ゾッコンヒロインだも、俺知っているんだもん。
「あの……野中さん、どうしたの?」
「柚希……」
「え───」
次の瞬間、俺は理解出来なかった…………それは、野中柚希が俺に抱きついてきたのだ………理解できない、夢なのか、そうだ……そんな、会って数秒で俺が原作主人公みたいことになるはずがない。
しかし、野中柚希から匂う甘い匂いと体の柔らかさが伝わり……現実だと伝わってくる。そして………何かが気に入らなかったのか、頰を膨らませる野中……グハッ!!これが可愛さの暴力。
「柚希って………呼んで」
えぇぇぇ!?何、この野中のなつき様……俺、もう理解が出来なくて頭が爆発しそう。
「いや、流石に………野中さんと俺、
「えっ…………」
野中は何かに驚いたのか、俺から離れた………その顔はまるで捨てられた犬のように悲しい表情になっていた。
「銀………
「今この状況………」
どういうことかわからない言葉に首を傾げる………どういうことなのか、俺にもわかるようにいってほしい。
「そう………ねえ、銀…………成瀬澪に近づいちゃダメ……話はそれだけ」
それだけを言い野中はそのままどこかに去っていった………ああ、もう!!これどういうことなんだよっ!!告白じゃないのかよ!!俺は両手を地面につけて、涙を流す。
「違うだろ………俺があそこで告白したらいい話だろう!?」
くそっ!!この胴体野郎め!!この馬鹿野郎!!
ー○●○ー
夜…………落ち着かない。目を瞑ればあの時のことを思い出す!!ああ、もう……このヘタレ野郎めっ!!
「はあもう!!野中さんの感触もそうだけど、それ以上にあの言葉が理解できない」
くっそぉ!!思い出せ、俺っ!!野中さんとあそこ以外で話した記憶がどこかにあるはずだ!!それを思い出せば
『──えるか』
「───っ」
他の記憶を思い出そうとした時……また声が聞こえ左目が疼くのと頭痛が起きた。くっそぉ!!最近疼かないから忘れかけたくせに………痛い痛い!!
「俺………何か、大事な記憶を忘れているの?」
幼少期の記憶はぽっかり穴が空いたように忘れている。思い出せない………あの夢に見た赤い女の子の顔のように
「ああ、もう!!」
一旦冷静になる為に……家の外を出て散歩に向かうのであった。夜であってもそれでも二十度は超えていた。
「公園に向かおう」
暑い暑いと思いながらも俺は公演と向かう。
ー○●○ー
「ふぅ、夏はやっぱり嫌いだ〜早く冬にならないかや〜」
ベンチに座りながら俺は呟いた。多分、冬になったら今度は早く夏になれ!!とか思っているんだろうな………途中で勝ったスポドリを飲む。
「はあー結局、野中さんの言葉の意味がわからない………」
「ああ、それは君が監視対象だからだろう」
俺の独り言に反応し、あらぬ方向から声が聞こえた。この声……まさかっ!?錆びたブリキ人形のようにギギギと向いた方向にいたのは……一般人でもわかるほどの禍々しいオーラを放つ白の仮面に黒のタキシード男だった。
「───!!」
そこにいたのは主人公のライバルポジの魔族ラース、又は俺と同じクラスの滝川八尋………思わず滝川と呼びそうだった俺は……口を塞いでなんとかなった。もし、人間名言うと、多分殺される!!嫌絶対に殺される!!
「まあ、とりあえず……一人だけだからとっとと終わらせるか」
滝川の手が光ると………影が蠢き………5つの影が形を作る。黒い布に全身を包み、柄の長い大鎌をもつ人形の影が三つ。二つは羽を持った獅子の魔獣──原作だとあれは……えーと、あれ………そう、マンティコアだ!!
「とっとと、そこにいる監視対象を捕まるぞ」
そこから始まったのは、捕まれば地獄の逃走劇であった。