迷宮都市に生きる   作:オミ

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UA4000件突破ありがとうございます!

新編です!


11話

 

 

 「……あの、タラニス……様とガイさんってファミリア組んでるんスよね?」

 

 「ああそうだぜ?あと無理に様付けしないでもいいぞ?お前が呼びやすいように呼んでくれた方が俺も楽だ」

 

 「あっ、ありがとうございますッス」

 

 

 三人での最初の一杯を飲み干し、最初に話を持ち出したのはメルグだった。

 まだまだ少年と言える頼り無さを持った痩せ気味の体躯からは、先程カウンターに突っ伏して泣き声を上げていた時の悲壮感の代わりに不安と緊張を滲ませていた。

 つい先程まで涙を流していた目はわずかに赤い。

 

 

 「……じゃあタラニスさんっ、ファミリアに『空き』……というか新しい団員が入る余地ってあるッスか⁈」

 

 「……なんか勘違いしてるかもしれねぇから一応言っとくとガイ(こいつ)はまだ15だぞ?」

 

 「15⁉︎17とか20とかじゃなくてッスか⁈」

 

 

 割と良い体格を持ち、落ち着いた雰囲気を感じたガイを一回りくらい上の年齢だと思っていたメルグは驚きの声を上げる。

 

 

 「年齢(そこ)間違われたのは初めてだな……。まぁオレ達はまだ始まったばかりのファミリアだから新しい奴が入る余地ってのはあるが、始まったばかりだから余裕があるって訳でも無いぞ?」

 

 「そ、そうなんスか」

 

 「まぁ新しい団員ってのはいくらでも欲しい……って言う(やつ)もいるんだろうが俺はこだわる性質(タチ)でなぁ?ここで会ったばかりで(なん)も知らないし気が合うかも分からない奴をあっさり入れるのは嫌だからよぉ?飲みながらで良いからどうしてファミリアに入りたいのか教えてくれねぇか?」

 

 「わ、分かりましたッス」

 

 「タラニス様、抑えて抑えて……」

 

 

 器用にカウンターの端にいるメルグとガイにだけ圧迫感を感じさせながらタラニス・ファミリアへの入団を許すかの面談が始まろうとしていた。

 

 

 「魚のフライ二つ、エールが三杯、お待ちどう」

 

 「おぉ〜!待ってたぜ!」

 

 「タラニス様、美味しいからってそんなあっさり放り出さなくても……」

 

 

 と、ここで無愛想な主人がカウンターに『古木亭』名物・揚げたての魚フライと飲み物のおかわりを出した事でタラニスは圧迫感をあっさり放り出した。

 

 

 「あれ、注文したのって一つじゃなかったッスか……?」

 

 「そこの若いの(ガイ)へのサービスだ。取っとけ」

 

 「っ、ありがとうございます!」

 

 

 注文より一皿多かった事へのメルグの指摘に簡潔に切り返した主人はガイからの感謝を背にカウンターの向こうへと去っていく。

 

 

 「……ま、ともあれだ。お前の話を聞かせちゃくれないか、メルグ?」

 

 「まぁ緊張するなとは言わないが落ち着いてな?」

 

 「はっ、はい」

 

 

 杯を手に、主従二人は話を促されたメルグの語りを聞きに入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メルグはまだ記憶もない小さな頃に親を亡くし、使用人として両親を雇っていた魔導士に育てられたそうだ。

 ……と言っても小さい頃のメルグは育ての親と血の繋がりが無い事なんて知らずに「じいちゃん」と呼んでいたし、血の繋がりが無い事を知った今もメルグにとっては「じいちゃん」だって話だ。

 

 「じいちゃん」は近くの村からの相談に答えたり、何かの研究をしたりしていたが魔導士という肩書きに反して『魔法』というものを見せる事は誰にも無かったらしい。

 

 だがメルグが小さい頃のある日、朝から出かけたまま帰って来ない「じいちゃん」を心配して探しに行って森で迷子になっていた時にふと、空を見るとどこからか綺麗な火花が流れて来るのが見えたという。

 

 

 その綺麗さに夢中になって火花が来た方に向かって行ったメルグは、色とりどりの火花が空に吹き上がっているとても綺麗な光景を目にした。

 そして静かに手元から火花を送り出す「じいちゃん」の背中を見て、この火花が「じいちゃん」の魔法なのだと確信すると共に、いつか自分もこんな風に『魔法』というものが使えるようになりたいと思ったそうだ。

 

 

 魔法を使えるようになりたい、と「じいちゃん」に言った小さい頃のメルグに「じいちゃん」はあまり良い顔をしなかったらしい。

 ……『使えるようになりたい』の言葉からも分かるようにメルグはエルフとかの魔法種族(マジックユーザー)では無いただのヒューマンだ。

 魔法を使えるようになる為にはどこかのファミリアで神から恩恵(ファルナ)を受けて魔法を形にしなくちゃならない。

 「じいちゃん」はどこかで神様にひどい事されたから神様から恩恵受ける形になるのを嫌ったのかもしれない、とメルグは思っている。

 

 それでも長い間口にし続けて12の頃にようやく『成長の可能性に賭けるならオラリオだ』という言葉を引き出してから二年間、魔法について色々教わって今年の春に「じいちゃん」の元を離れてオラリオに向けて出発したのだそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…………だけど、どこのファミリアでも門前払いを食らって今ここに至るって事か……」

 

 「はい……」

 

 

 話し終えたメルグはオラリオに着いてから今までの事を思い出したのか落ち込んだ様子をしている。

 時に暴言も食らったって話だし、無理もねぇよな…………。

 

 ……オレはファミリア探しに移る前にタラニス様と出会えたから良かったけど、あの頃メルグと同じ状況に置かれて耐えられたとは思えねぇし……。

 

 

 「確か新しい団員の募集が一番多いのが春頃だったよなガイ?」

 

 「えっ、そうなんスか⁉︎」

 

 「ギルドの受付さんからも聞いたし、オレも三ヶ月くらい前に来たばっかりで、オレの仲間……あぁ別のファミリアの新人なんだがそいつらも同じくらいに来てるからまぁ確かだと思うぜ?」

 

 「三ヶ月⁉︎三年とかじゃなくてッスか⁉︎」

 

 

 ……また歳、いや今度は経歴についての勘違いだ……

 

 

 「……さっきまだ始まったばかりのファミリアって言ったぞ?そんなとこに三年やってる奴が居るのはおかしいだろ?」

 

 「あっ……、そうッスよね」

 

 

 …………オレってそんな老けて見えるのか……。

 ……いやメルグが不安感じてるからオレみたいな新人でも頼りになるように見えるんだって思っておこう。

 

 それはともかくとして、新しく冒険者になる奴が多い春頃、つまりだいたい三ヵ月くらい前なら普通に受け入れてくれるファミリアも多かったんだろう。

 ……だけど出発したのが春じゃあ確実に出遅れるだろうな……。

 ナタリーさんに聞いた話だと今のオラリオだと腕っぷしの強い奴はどんな時期でもすぐに歓迎するファミリアが多いらしいが……。

 パッと見でメルグが腕っぷしが強いようには見えねぇしなぁ…………

 

 

 「念の為に聞いとくけどよー、お前って体力に自信がある方じゃないんだよな?」

 

 「ハイ……、じいちゃんの手伝いとかはしてたッスけど喧嘩とかには自信が無いッス……」

 

 

 タラニス様の質問に頼りない声が答える。

 ……もしかして今頃着いたのは体力が無くて旅も慣れてなかったからか?

 

 

 「……てか今のオラリオは危険だって言われてるぞ?そんな所に腕っぷしに自信も無いのに向かう事についてじいちゃんから何も言われなかったのか?」

 

 

 ふと、浮かんだ疑問を口にした。

 話を聞く限りでは、だが「じいちゃん」は両親を亡くしたメルグを育てたり村の相談に乗ったりするぐらい優しい人のように思える。

 そんな人が今のオラリオに送り出すだろうか?

 

 ……いや三ヶ月前のオレみたいにまともに情報持ってなかったって可能性も無くは無いか。

 ……でも隠れて魔法使っていたくらい慎重な人がそんな迂闊な真似はしねぇか。

 

 

 「何度も聞かされたッス。『今のオラリオは二大派閥の崩壊から始まる混乱を抑えきれてない。可能性に賭けるには危険な場所だ』って何度も言われましたッス」

 

 「じゃあお前は危険を承知で可能性に賭けてみた、って訳だな?」

 

 「……まぁ、誰にも相手してもらえないのは想像してなかったッスけど……」

 

 

 メルグはそう言って頼りない笑みを浮かべている。

 ……だけどこいつはその頼りない笑みのままこの『危険な場所』に来たって事だ。

 恩恵貰って戦いを知る前のオレが知ったら間違いなく引き返してるような場所に。

 

 

 初めて、目の前に座る男に『憐れみ』ではなく『期待』で手を貸したいと思った。

 

 

 「でもそれぐらいしなくちゃ魔法なんて手に入りっこないって思ったからここまで来ました」

 

 

 頭の中で認識を変えていると、メルグがこちらに向き直って来る。

 

 

 「自分は自分で考えつくような危険しか考えないでここまで来ました。誰にも相手されないなんて考えもしないでここまで来ました。だからガイさん、タラニスさんに話を聞いてもらえた事は……、とても嬉しかったです。その上で厚かましいお願いをさせて欲しいです」

 

 

 ……あいにく、左にいるメルグに向き合おうとすると右にいるタラニス様がどんな表情をしてるのかは分からない。

 ……そもそもオレが声を掛けようとした時にもタラニス様はいい顔をしてなかった。その心情をオレが説得できるものかは分からない。

 

 

 「どうかタラニス・ファミリアに入れてください!できる事はなんでもします!だから……」

 

 「いいぞー」

 

 

 だが知ったものか、オレはこいつに……「「ってええっ⁉︎」」

 

 

 「?どうしたお前ら声重ねて?最後の奴食っちまうぞ?」

 

 「あっさりしすぎじゃないッスかタラニス様⁉︎「い、いいんスか、タラニスさん⁉︎」」

 

 

 オレ達の驚きを他所にタラニス様は最後の魚のフライを摘み上げて口の中に放り込む。

 いや、オレの決心返して下さいよ……

 

 

 「いやお前、あそこまで赤裸々に言われたら受け入れないなんて選択肢ねぇだろ?俺は『かっこよくなって町の奴らを見返したい』くらいの奴想定してたのに、小せぇ頃からずっと続いてた憧れの事聞かされた上で俺達が話聞いた事も絡めて真剣にお願いされるなんて思ってなかったぞ?」

 

 「あっ、それはすいませんッス……」

 

 「まぁそうでしょうけども……」

 

 

 てかその理由バードの奴……

 

 

 「それに覚悟も充分みたいだからな。……さっきガイが言った話だが、俺からも改めて言えば俺達は始まったばかりのファミリアだ、部屋も狭いし余裕もねぇ、それでもお前はこのタラニス・ファミリアに入りたいのか?」

 

 「はいッス!」

 

 「もしお前がもっと入りたいファミリア見つけても1年は改宗(コンバージョン)できねぇ、それでもいいのか?」

 

 「はいッ!」

 

 

 タラニス様の問い掛けにメルグは声を上げて答える。

 

 

 「嘘はねぇな、お前の心からの言葉だ。……改めてようこそ、タラニス・ファミリアへ。歓迎するぜ?」

 

 「よろしくな、メルグ?」

 

 

 「ーーはい!よろしくお願いしますッス!」

 

 

 そうしてメルグはタラニス・ファミリア二人目のメンバーとして受け入れられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さて、もう閉店時間も過ぎてるからとっとと出るぞー」

 

 「「えっ?」」

 

 

 ……周りを見ればもう客は一人もいない。

 ……親父さんがカウンターでグラスを磨いているだけだ。

 

 

 「「ってすいませんでしたぁぁぁあ!」」

 

 「……また来な」

 

 

 親父さんが言ってくれた何かも理解できないまま、とっとと店を出たタラニス様に続いてメルグと二人、逃げるように店を出るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さてこれでお前も俺の眷族だ……。……『魔法』、見つけてみせろよ?」

 

 「はいっ!」

 

 

 主従二人が暮らし、主従三人が住まう事となる集合住宅(アパート)の一室で、一人の子の背に恩恵が刻まれる。

 こうしてタラニス・ファミリアに二人目の団員、メルグ・ラッカが加入した。

 

 

 

 

 

 

 

 




※現在原作9年前から変わらず

タラニス・ファミリア2人目加入!

……なかなか書き上がらず三ヶ月もかかってしまいました……
すいません……
次話はまだ書き途中です……


タラニス・ファミリア
…なおメルグは「新興のファミリア……?いやガイさんの落ち着き具合からしてそれなりの規模のファミリアが団長と主神だけで飲みに来た……?」みたいな感じに思ってた。


:メルグ・ラッカ…14歳・男・ヒューマン。今の所魔法は持っていないただのヒューマンである。時と場合によっては「ッス」は外せるタイプ。原作8年前にオラリオに来たらしいラウルさんとは語尾が被ってるけどラウルさんはこの人のキャラモチーフの一人なのでまぁ当然である。むしろカタカナにしたのは完全に被せない為。(名前の由来は作者のフィーリング。ガイ含む最初のメンバー決める時に語感で決めた。キャラモチーフは「ラウル+???(+後輩的キャラ)」。???にしたけど今話だけでも悟られるかもしれないのでその時まではナイショで)

:ガイ…「同年代と並ぶと10代と分かるけど街中だと10代か20代か迷う」みたいな感じだろうか。最初は「目の前で困ってる奴の助けになりたい」だったが話を聞き、メルグの覚悟を感じ取って「こいつの助けになりたい」に変わった。自分とは違いはっきりした目標を持ち覚悟を持ってオラリオに来たメルグに感心したと言ってもいいだろう。

:タラニス…二人目の眷族を手に入れた主神。メルグの事はイマイチに感じられたけど、俺がそう言ってもガイは聞かないだろうなーと思いとりあえず話だけは聞こうと思ったら、思いっきり身の上話とそれに基づく憧れ・目標を聞かされ最早見放す気にならなくなってしまった(ひと)


:『古木亭』の主人
…新しい常連にサービスをした。タラニスは「あれ、俺四ヵ月くらい通ってるけどサービスなんて一度もなかったぞ……?」なんて思ってるがそもそもこの人がガイにサービスしたのはタラニスからガイが怪我したからしばらく来ないって聞いていたから。……無愛想だけどいい人である。


:バード…本人の預かり知らぬ所で無自覚にディスられた人。(爆睡中)

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