迷宮都市に生きる   作:オミ

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しっくり来る流れを作るのって難しいですね……

新入団員・メルグを加えての話です。


12話

 

 

 

 

 「うりゃあぁ〜……」

 

 『……ギャア?』

 

 

 力無く振り下ろされた直剣をどこか戸惑いながらもゴブリンが避ける。

 

 

 「やあーっ」

 

 『ギッ……』

 

 

 続く横薙ぎはさっきの振り下ろしよりはマシだったが、それでも最下級のモンスターであるゴブリンが避けられる程度の速度しか出なかった。

 

 

 『ギャッ「……ここまでにしとくか」ギャッ⁉︎』

 

 

 相手が大した事ないと見て守りを考えずに襲いかかろうとしたゴブリンは、次の瞬間意識から外した人間の大木刀で殴り飛ばされ絶命するのであった。

 

 

 「すっ……、すいませんッス……。付き合ってもらったのに……」

 

 「気にすんな、向き不向きって奴だ」

 

 

 ダンジョン2階層。

 なし崩し的にファミリアの団長となったガイは新入団員のメルグを連れて、メルグがどのくらい戦えるかを測りに来ていた。

 

 ……しかし分かった事はとりあえずメルグに剣才は無いという事だけであった。

 

 

 「大木刀(これ)扱えるならもう一本作るって手もあったんだがなぁ……」

 

 「ハァ……、いやいくらなんでも申し訳ないッスよ……、ハァ……」

 

 「……っておい大丈夫か?水飲むか?」

 

 「ハァ……、いただきますッス……」

 

 

 一回目の戦いで疲れを出し、体力も劣るという事が分かったメルグに水を渡しているガイが背中に負った大木刀は、先程メルグが試しに振った時は勢いを殺しきれていなかった為武器の候補からは早々に外されていた。

 

 

 (しかしどうしたもんかな……、このままずっと戦い方の模索をするって訳にもいかねぇだろうし……。……久しぶりに行ってみるか、相談)

 

 

 只管に水を流し込むメルグを横目にガイはこれからの行動を決めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「とりあえずサポーターじゃないかな?」

 

 「サポーター……、……ってなんスか?」

 

 

 ギルド本部、相談用スペース。

 早めに切り上げてダンジョンから帰還したガイとメルグはガイの担当であり、メルグの冒険者登録も受け付けたナタリーにアドバイスを求めていた。

 

 

 「サポーターっていうのは簡単に言っちゃえば荷物運びの事。パーティが倒したモンスターの魔石やドロップアイテムを集めたり、回復薬(ポーション)とかのアイテムを運んだり配ったりするのが役目、かな?まぁ戦えるようになってからダンジョンに行くのも一つの手ではあると思うけど、どうかな?」

 

 「……体力無いのをなんとかしないと戦う訓練したって体力つける手間がかかるだけなんじゃないかと思うッス。だからサポーターから始めるって形にしたいんスけど、大丈夫ッスかガイさん?」

 

 「もちろん大丈夫だぜ?同じファミリアなんだ、気にすんな」

 

 

 メルグの申し出をファミリアの仲間として快く受け入れるガイを、ナタリーは微笑ましげな表情で見守っている。

 

 

 「……ってそうか先輩方にも話通さなきゃか」

 

 

 と、ここでガイが話を通すべき大事な相手を思い出した。

 

 

 「?先輩方?」

 

 「ルゴス・ファミリアとベレヌス・ファミリア、だね?あの人達はギルド(私達)から見ても良心的なファミリアと言っていいけど、取り決めとかはきっちりしておくんだよ?」

 

 「もちろんそうするつもりです。あの人達にもあいつらにも世話になってますから」

 

 「あいつら?」

 

 「あぁ……、まだ言ってなかったか?オレの戦友って奴だ」

 

 

 そう言ってガイはニッと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「分かった、団長とバード達には話を通しておくからまた後日に主神立ち会いで契約の更新を行うってタラニス様に伝えておいてくれるかな?」

 

 「ありがとうございます!了解しました!」

 

 

 ギルド本部を後にしたガイとメルグが訪れたのはルゴス・ファミリア本拠(ホーム)、『光真館(こうしんかん)』。オラリオの北と北西のメインストリートに挟まれた位置に建つ、周辺でも有数の大きさを誇る屋敷である。ガイはここ三ヵ月の間に何回ではあるが訪れている、……がオラリオに来たばかりのメルグにとっては初めての訪問である。

 ガイ達を出迎えたのはゼルマと同じくLv.3の若手、ガラシュ・ノミラ。優しさと穏やかさの中に勇敢さと強さを秘めた第二級冒険者であり、ガイとは三ヵ月の間に面識を持っていた。……当然の事ながらメルグとの面識は無い。

 

 ……立派な屋敷と初対面の人物の二重圧(ツープラトン)によりガチガチに緊張したメルグは品の良い内装の応接室に通されてから一言も口にしていない。

 

 

 「あと魔法使い……、いや魔導士(こころざ)す上でなんかアドバイスって貰えませんか?」

 

 「うーん……、メルグ君は後天的な魔法の発現については知ってるのかな?」

 

 「はっ、ハイっ‼︎知ってますッス‼︎」

 

 

 そんな中で話を振られた事でメルグは飛び上がるようにして返事を返す。

 

 

 「なら発現について僕から改めて言える事は無いだろうから……、立ち回り、かな?敵味方の動きをしっかり見て、どう動くかというのを観察する力を身につけるんだ。それは魔法を覚えた時きっと君の力になる」

 

 「わっ、分かりましたッス‼︎ありがとうございましたッス‼︎」

 

 「……それと、道が見えなくなった時は自分の心に問い直すんだ。果ての無い道でも、きっと答えは浮かび上がって来るから」

 

 「あっ、ありがとうございますッス‼︎」

 

 

 先達の感情の籠ったアドバイスも今のメルグにとっては飛び上がるように返事を返す引き金でしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…………はあ〜っ、き、緊張したッス……。……タラニス・ファミリアってあんな大きなファミリアと繋がりがあるんスか⁉︎」

 

 

 昼の日差しが刺す『光真館』を後にしてようやく緊張が解けたメルグは驚きの言葉をガイに向ける。

 

 

 「タラニス様が向こうの主神様と天界から交流があって、あの人達が好意的に接してくれるからだけどな?」

 

 「……えっ、もしかして昨日のタラニスさんの『もっと入りたいファミリアが見つかっても』って」

 

 「まぁここだと思うぜ?もし改宗(コンバージョン)したいって言うんなら一年待たなきゃなんだが……」

 

 「いやあんな大きなお屋敷目が回っちゃうッスよ……、……それにタラニス・ファミリアの方が過ごしやすそうッスし、『縁』も大事にしたいッスから改宗はしませんッスよ?」

 

 「……ありがとうな、メルグ」

 

 「いえいえ、こちらこそありがとうッス!」

 

 

 

 そんな会話をしながら辿り着いた『日向の庭』で、メルグは店番をしていたカリエの服装の露出度の大きさに赤面する事となるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「できたッスよ〜」

 

 「おぉー……、ホントにできるもんなんだな……」

 

 「オレ達じゃできなかったからなぁー……、料理……」

 

 

 日も落ちてタラニス・ファミリアの本拠たる集合住宅(アパート)の一室。

 台所のやりくりが上手くいかずに残っていた食材や惣菜を見て『これでなんかできそうッスね?』と言ったメルグはその宣言の通りそれなりの料理を作り上げていた。

 

 カサカサに乾いたパンはクルトンとして(しな)びかけていたトマトとスープに、余った惣菜の味付け肉はじゃがいもと混ぜて焼き物に姿を変えている。

 

 その手際に節約の一環として自炊に挑戦しようとして失敗したタラニスとガイは驚きを隠せない。

 

 

 「オレも料理なんて慣れてなかったんだがタラニス様が酷くてなぁ……」

 

 「いやなんでそこで俺がディスられるんだよ⁈」

 

 「でぃすられる……、……いやディスられたって仕方ない事してますよねタラニス様?あの鍋の底に溜まった泥みたいもんの事忘れたとは言わせませんよ?」

 

 「……………………次は上手く行く!」

 

 「あのー、冷めないうちに食べてほしいッスから早く席についてくださいッス」

 

 「「……あーい」」

 

 

 やり直せない過去について不毛な問答をする二人にメルグが席に座るよう促す。

 不毛な問答を切り上げた二人は席につき、程なくしてタラニス・ファミリアの夕食を始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「まぁこんな感じで自分がいくらか作れるんでその分食費が浮くと思うッスよ?」

 

 「そうだなー……、それを勘定に入れてお前の装備分も考えると……、検算してくれるか?」

 

 「いいッスよー。……うーん今以上の余裕は作れないッスねー……」

 

 「だよなぁ……」

 

 

 ガイ・タラニスの両者共に満足できた夕食後、ガイとメルグが取り組んでいるのは家計簿の記入である。

 商家の出身であるガイは計算というものも学んでおり、タラニスとの二人暮らしの頃からどうにか帳面を確保して支出・歳入の管理に努めて来たが、じいちゃんから計算も習ったメルグが加わった事で改めて支出の予想に努めていた。

 

 

 「……あんまり遅くなるんじゃねぇぞー」

 

 「おやすみです、タラニス様」

 

 「おやすみッス、タラニスさん」

 

 

 その真剣さは『全知無能』と言えど、計算は己の領分ではないタラニスが大人しく部屋に下がってしまうしかない程のものであった。

 

 

 

 

 やがて灯りも消え、タラニス・ファミリアは眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 灯りが消える、それは人の営み根付く大抵の建物に起こる事である。深夜を通り越して早朝まで営業するような酒場や娼館でも四六時中ド派手に光を撒き散らしている訳ではない。

 今現在のオラリオに於いてもそれは変わらない。むしろ今のオラリオはゼウス・ヘラの二大派閥が睨みを効かせていた頃よりも夜の光は少ないくらいである。

 

 理由は多々あるが一番の理由は闇派閥(イヴィルス)──

 ではなく多くの者が夜闇を恐れ、多くの後ろ暗い者が夜闇に乗じる心理に依るのだろう。

 

 オラリオの人々は後ろ暗い者達の狙いから少しでも逃れようと夜は早めに灯りを落とし、闇派閥(イヴィルス)を始めとした後ろ暗い者達は灯り照らさぬ夜に身を潜める。

 

 

 

 

 タラニス・ファミリアの収まる集合住宅(アパート)のすぐ側、路地の暗がりにも何者かが潜んでいる。

 灯りが消えてもじっ、と集合住宅(アパート)に視線を向けていた影はやがてより深くの暗がりへと消えていった。

 今宵の月は一際明るく、影はより濃い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……コソコソしてんねぇ」

 

 

 その人物は影が路地の奥に消えるまでの一部始終を誰にも気づかれる事無く屋根の上から眺めていた。

 人の潜む場所は暗がりだけではない。そんな事も分からずコソコソと影に消える連中を嘲笑うかのようにその人物は高みに居る。

 

 

 月の明かりは、ただその自信を讃えその姿を照らし出すのみだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




※現在原作より9年前の初夏〜夏頃。


ダンまちだと現代風の言葉とかネット用語とか伝わってても「神様が伝えた」って事にすりゃええ、ってできる。


……こうして二次創作書いてると気になる所やあれ、どうなってたっけ……?ってなる所が色々出てくる。
(例)
:オラリオってどこから水を確保してる?井戸は下にダンジョンあるから難しいだろうし、ロログ湖は汽水湖だよね?
:ファミリアの利益の分配ってどうなってる?パーティー参加者で完全に分配する?それともLv.ごとに調整する?
:ファミリアの事務作業ってやっぱり眷族がやるもん?……ロキ・ファミリアは三首領がやってるのが想像つくけど、フレイヤ・ファミリアは?オッタルさんが仏頂面で(苦労しながら)やってる?ヘディンさんが片付けてる?
:オラリオってどんな食材がある?(『トマト野朗』の発言からトマト・じゃが丸くんから恐らくじゃがいも・リューさんが投げてたから林檎なんかはある。……鶏の卵ってあったっけ?)
:というかダンまち世界ってモンスター以外にどんな動物が生き残ってる?(馬・猪・ラクダは覚えてる。……筆者的には象とか鯨とか絶滅してそうだなって思う)
:ダンまち世界の識字率と教育度ってどのくらい?四則演算を修めた人はどのくらいいる?

……もっとも、気になってもモチベーションやらアイデアやらに繋がらないのですが。

適度にぼかしたり描写したりで書いていく所存です。



タラニス・ファミリア
…二人目の団員の加入では今のところ目に見える程の変化はない。

:ガイ…実家で割と色々仕込まれてる。タラニスの料理の事は忘れない。……料理は慣れてないから手際が悪いだけでちゃんと食べれるものを作れる。

:メルグ…じいちゃんに色々教えられてる。冒険者業はまだ始まったばかり。じいちゃんは家事が上手くなかったので家事全般できる。

:タラニス…また一つ救いの神補正が落ちていた事が明らかとなる料理下手な主神。


ルゴス・ファミリア
本拠(ホーム)初登場。神格者の主神と良心的な団員の組み合わせでギルドからの信頼も高い。ちなみにガイは初来訪でも表に出るような緊張はしなかった。

:ガラシュ・ノミラ…ようやく登場したウルトラマンメビウス由来の人。でもきっとゼルマさんの方が出番多い。(名前の由来はウルトラマンメビウスの変身者とその演者さん)




???
:影…タラニス・ファミリア本拠の集合住宅をじっ、と見ていた。目的は不明。セリフ無し。

:???…タラニス・ファミリア本拠をじっ、と見ていた影を更に上から観察していた。目的は不明。セリフ有り。
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