迷宮都市に生きる   作:オミ

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お待たせしてすいません……
&UA8000件突破ありがとうございます!

屋上回です。


16話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……ふっ!」

 

 「ぜあっ……!」

 

 

 掬い上げる様に跳ね上がる斬撃が防がれる。

 

 

 「……あああぁっ!」

 

 「くぅっ……!」

 

 

 噛み合わされた剣はそのまま押し込まれ、鍔迫り合いの形が出来上がる。

 

 

 「しっ!」

 

 「うおっ⁉︎」

 

 

 しかし、巧みな外しと牽制の一閃により再び距離が取られる。

 

 

 「……ふはーっ、はーっ、はー……」

 

 「ふーっ、ふーっ……」

 

 

 そして両者共にその間隙を呼吸を整えるのに費やし、睨み合う。

 朝方から数時間剣を打ち合わせ続けた二人に、すかさず追撃に移る体力は残されていない。

 

 

 「…………ほんとやるじゃん(キミ)?こんな粘られるなんて思ってなかったよ?」

 

 「ははっ、まぁな……」

 

 

 シミアの心からの称賛──或いは呆れ──を受けるガイの頬からは先程の牽制が掠ったのか血が垂れる。

 

 タラニス・ファミリアのガイと素性定かならぬ少女シミアの『手合わせ』という名目で始まった戦いは終わりが近づいていた。

 

 

 「でもまぁ、そろそろ終わりかな?」

 

 「そうだな、ケリつけようぜ?」

 

 

 近づく終わりを確かめ合いながら剣が構えられる。

 ガイは天衝く様に剣を立て、シミアは枝垂れる様に剣を下げる。

 緊張が両者の間合いに溜まってゆく、

 

 

 「……あー。いや、その前に一つ聞きたいんだが良いか?」

 

 「ん、何?」

 

 

 その空気をガイの力を抜いた声が塗り替えた。

 張り詰めた空気は剣が下ろされた事で有耶無耶になってしまったが、シミアは気を悪くする事も無く力を抜いて答える。

 

 

 「()()()()()()()()『剣だけ』()()()()()()()()?」

 

 「……大(せい)かーい」

 

 

 しかしその脱力は、ガイの質問が獰猛かつ不敵な笑みを呼び起こした事で姿を隠す。

 即ち己が縛り(ルール)を見抜いた事への賞賛、それを込めた笑みを浮かべながらシミアは茶化すかのように返事を返した。

 

 

 「違和感が分かるのに随分掛けちまったけど……、左が利き手って事で合ってんのか?」

 

 「いや?利き手はこっち()だよ?でも私の全部を使うなら利き手空けた方がやりやすいんだよねー」

 

 「それってつまり利き手じゃない方でも使える様に鍛えたって事だろ……?すげぇなお前……」

 

 「でしょ〜?」

 

 

 獰猛な笑みから、気の抜けた笑み、そして得意気な笑みとくるくる表情が変わるのにガイが少し気圧されながらも会話は続いた。

 

 

 「じゃあオレが聞きたい事も済んだし、()るか……!」

 

 「(おう)!」

 

 

 だがそれも再び剣が構えられるまでの一時の事に過ぎない。

 ガイは天に、シミアは地に向けて剣を構えるのは言葉を交わす前と変わらない。

 しかし両者の間にある空気は緊張を孕んだものではない。

 ガイの『未知に対する恐れ』は取り払われ、シミアの感情にも変化が見える。

 最後の縛りが解き明かされた事が二人の間の空気をも変えていた。

 

 

 「じゃあ、行くよ!」

 

 「来い!」

 

 

 そして、矢の如きシミアの突撃から『手合わせ』は再開される。

 その突撃が狙うのは、正中・胸の中央。

 

 

 「ぜあっ!」

 

 「……。よっ、と」

 

 「⁉︎お前……」

 

 

 一分のブレも無い一撃はその正確さ故にあっさりと弾かれる。

 が、その反動によってシミアは後ろに跳び下がる。

 着地するのは元の位置……、()()()()

 

 

 「ちょっと距離が足りないからね?こんくらいは良いでしょ?」

 

 「……あぁ良いぜ!」

 

 

 そう言ってのけるシミアが立つのは屋上の端。

 ()()()()()()()()()()

 最大の加速を掛けた一撃を繰り出す()()に他ならない。

 

 

 「三つ数えたら行くよー?」

 

 「あぁ」

 

 「さーん、にー、」

 

 「……」

 

 

 カウントと共にジリジリと力が溜められる。

 ガイは振りかぶり、シミアは姿勢を低く。

 

 

 「いち」

 

 「 」

 

 

 力が爆ぜる。

 

 

 瞬く間に距離が喰らい尽くされてゆく。

 

 

 「(まだ……、まだだ……)」

 

 

 目に見える中では一番の疾さで片刃刀(サーベル)が、少女(シミア)が迫る中、ガイの感覚は引き延ばされる。

 

 

 「(今!)」

 

 

 全ては最高の機会(タイミング)で相手の一撃を相殺する為。

 振りかぶった剣を滑るように送り出す。

 数時間格上と──()()()()()格上と──闘った事で飛び出した、最高の一撃。

 

 

 「……!」

 

 「(……なんだ?何かが違う……!)」

 

 

 だがガイ自身も気付かない最高の一撃は、ガイ自身の動揺に揺らぎ、立ち消えてしまう。

 その代償として得たのは──、──気付き。

 

 

 「うおらぁぁあああ‼︎(手首か‼︎)」

 

 「‼︎くっ」

 

 

 剣を振る腕と身体の動きと、剣を操る手首の動きをずらす。

 たったそれだけだが、気付かなければピッタリ防御した──と思い込んだ剣が一拍遅れて飛び込んで来る罠。

 シミアが仕掛けたその罠をガイは最大の強打で撃ち抜いた。

 

 

 だがしかし──、──それで終わりだった。

 振り抜いたガイの手元に直剣は無い。

 

 

 「…………ハァ、」

 

 

 最後の最後、残心を待たずして疲弊しきったガイの身体は剣を取り落とし、音を立てて足元に転がした。

 

 ──そして、シミアの後ろの方にあった植木鉢の群れを音を立てて突き崩しながらガシャン、と片刃刀(サーベル)が突き立つ。

 

 

 「…………んんっ……」

 

 

 剣が手に無いのはシミアも同じであった。

 疲弊の具合はガイよりマシだったものの、意図的に手首を緩めた状態で渾身の強打と打ち合った衝撃は彼女にとって(こと)(ほか)大きかった。

 

 

 「………………」

 

 

 武器の距離ではガイ有利。

 しかし一つだけ、それを覆せる手があると気付いたシミアの目に冷たい視線が宿「もう終わりだろ?」

 

 

 口に出しながら素早く、ガイが足元に転がる自分の剣を踏んづけて固定した。

 

 

 「…………そだね、終わりだね……。……私の負け、かな?」

 

 

 それは『お前(シミア)にオレの剣は使わせない』という意思表示であったが、同時に『こいつ(ガイ)にも剣は使えない』という判断材料にもなった。

 その上でシミアは自分の敗北、という判断を下した。

 

 

 「そりゃ光栄だ、なっ……」

 

 「ふはっ…………」

 

 

 答えようとして崩れ落ちるガイ、笑おうとして吐息しか出ずに崩れるシミア。

 二人分の重さが屋上に音を立てる。

 

 

 こうして朝より続いた二人の手合わせは終わりを迎えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤバいだろアレ……

 死んでたぞオレ……

 

 

 「ハァ……、お前もう恩恵貰ってるだろ……」

 

 「鍛えりゃあれぐらいできるよ……」

 

 「マジかすごいな鍛え方……」

 

 

 どんな鍛え方したら恩恵無しであれだけ出来るんだよ……。

 ……いや待て、よく考えりゃ呼吸読むのも最後の手首も『技』で出来る事か……。

 ……いや、それでも凄くないか?

 

 

 「まぁね〜……、てかそれ止めた(キミ)はどーなるのさ?」

 

 「ギリギリで気付かなかったら止められねぇよ……。気付かなかったら首元バッサリだろあれ……」

 

 「そーかもね……」

 

 

 そーかもね、ってオイ。

 ……こうして二人仲良く屋上に転がれてるだけ御の字って奴だったか……

 

 

 「私剣離す気無かったからね?無かったのにすっぽ抜けて植木鉢ブッ壊しちゃったのお分かり?」

 

 「それはすまん「あー、話に花咲かせてるとこ悪いが緊急事態だ」あっ、タラニス様」

 

 

 そうしてオレを見下ろしながら水のコップを渡して来たのは手合わせの様子を観察していたはずのタラニス様だ。

 ……いや、もう手合わせは終わりでいいのか。

 

 

 「良かったら水どうぞッス」

 

 「ありがとー……、……それで緊急事態って?」

 

 

 横を見るとメルグもシミアに水の入ったコップを渡している。

 ……って普通にシミアが聞いてるけど、まぁ大丈夫か。

 

 

 「()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 「おぅ、どうも襲撃しくじって追い立てられてる闇派閥(イヴィルス)の下っ端がこっちに逃げて来てるらしいぜ?」

 

 「……マジですか」

 

 

 タイミング最悪だな……。

 何してくるか分からないしタラニス様もメルグも居る以上早いとこ部屋に引っ込むのが正解だろうな……

 

 

 「あっ、()()()()()()()()()。これは部屋の中に駆け込むより先に鉢合わせるんじゃない?」

 

 「は?」

 

 

 ……今こいつ(シミア)オレの考え読んだか?

 てか足音?

 特に聞こえねぇけど……

 

 

 「えっ?分かるんスか?」

 

 「うん、()()()()()()()()()()闇派閥(イヴィルス)でしょ。っと」

 

 

 メルグに続いてオレが何か聞く間も無く、シミアの手から何かが投げ放たれた。

 

 

 「ぎゃっ⁉︎」

 

 「……えっ?」

 

 

 それは向こうの建物からこちらに飛び移ろうとしていた闇派閥の奴に命中し、足を滑らせた闇派閥の奴は真っ逆様に落ちていった。

 

 

 「えっ……?」

 

 「今のは足が速かった奴だね。()()()()()()()?」

 

 

 呆然とした声を上げるメルグの傍に立つシミアが持ってる棒っぽいあれは……、……なんだ?

 ……いや、考えるのは後だ!

 

 

 「階段は狭いからここで迎え撃つぞ!シミア、力貸してくれるか⁉︎」

 

 

 迎え撃つ手筈を整えないとな!

 

 ……まずはシミア(こいつ)が力貸してくれるか、だな……。

 ……まぁまだオレと手合わせしただけの関係じゃオレ達置いて逃げられても仕方ないっちゃ仕方ない。

 ……けどそうなるとオレ一人でタラニス様とメルグ守るってのはかなりキツい気がするから協力してくれるとありがたいんだが……

 

 

 「ちゃんと評価してくれるならいいよ?」

 

 「もちろんだ!よろしく頼むぜ!」

 

 「よろしく〜」

 

 

 ……よし!クリアだ!

 後は……

 

 

 「メルグ、回復薬(ポーション)持ってるか?」

 

 「あっ、持ってるッス。二本あるんでシミアさんもどうぞッス」

 

 「ありがとー♪」

 

 「片刃刀(これ)お前のだよなー?投げるぜー」

 

 「はーい」

 

 

 おっ、タラニス様が助かる動きしてる。

 ……あぁそうだ、オレも剣拾っとかないと……

 

 

 「よっ、と。……それでどーすんですかー?()()()ー?」

 

 「まぁこの通り何も持って無いからお前のそれ「棒手裏剣?」そう、その『ぼうしゅりけん』で出来る限り落としてくれると助かるんだが良いか?」

 

 「いいよー、任せて?」

 

 「メルグは一番後ろから周り見て声掛けてくれ」

 

 「はいッス!」

 

 「タラニス様はオレ達とメルグの間に」

 

 「(りょ)(かい)

 

 

 こうして闇派閥の奴が来た方向を前にして一番前にオレとシミア、その後ろにタラニス様、一番後ろにメルグという即興の陣形が出来た。

 

 

 「よし、じゃあ後は頼むぜ?団長様よぉ?」

 

 「あぁもちろん……「もう来るよ?足音からしてLv.2以上は居ないみたい、っと」「ぐあっ⁉︎」……分かった!」

 

 

 急いで回復薬(ポーション)を飲み干せばヘトヘトの身体に活力が戻る。

 

 

 「来たッスよ!……あっ、道路の方にもいるッスけど」

 

 「上がって来なけりゃ無視だ!やるぞ!」

 

 「(おう)!」「はいッス!」

 

 

 屋上での防衛戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「クソォォォ!」

 

 「ちいっ……!」

 

 

 シミアの手裏剣が尽きてから三人目、闇派閥(イヴィルス)がナイフを構えて突っ込んで来るので受けに出て──、──キン、という音と共に剣が折れた。

 

 

 「がぁあああ⁈」

 

 「死ねぇえええ‼︎」

 

 「ガイさん⁉︎」

 

 

 そのまま脇にナイフが突っ込んで来る。

 折れた勢いで振りかぶってしまったオレには防ぐ手立てが無い──

 

 

 「オラァァァア!」

 

 「えっ」

 

 「ぐえっ‼︎」

 

 

 ──のでそのまま肘を叩き下ろした。

 ついでに頭も踏み付ける。

 

 

 「四人目と五人目だぞー」

 

 「はーい」

 

 「あっ、はいっ!」

 

 

 そうこうしてる間に屋上には二人並んで飛び降りて来ようとしている。

 ……これいけるな。

 

 

 「シミアしゃがんでろ!」

 

 「はいよっ」

 

 

 三人目を両手で掴んで──、──振り回す。

 そしてブチ当てる!

 

 

 「うおおおおおぉぉぉ‼︎」

 

 「「「ぎゃあっ‼︎」」」

 

 

 上手く叩きつけられた三人は纏めて屋上の下、つまり地面へと落ちて行く。

 シミアが手裏剣で落とした十二人と蹴りで叩き落とした二人もそこに転がってるはずだ。

 …………邪神から、とはいえ恩恵貰ってるし死んでない、よな?

 

 

 「次来るぞー」

 

 「うっす!」

 

 

 ……まぁ気にしてるヒマもねぇか!

 次の闇派閥(イヴィルス)に対して拳を握る。

 

 

 ……今の一連の流れで一つ気付いた感じがある。

 

 

 「おらぁ!」

 

 「はぁっ!」

 

 「「ぶえぁっ⁉︎」」

 

 

 『武器無しでもオレは案外戦える』という事実にだ。

 

 ……今まで考えもしなかった、というのが間抜けだが手に何も握らず、そのまま殴り掛かるのは剣や木刀とは違った良さ……、……『馴染み方』を感じる。

 

 

 「……うぁらっ!」

 

 「げぇっ」

 

 

 オレの拳とシミアの蹴りに二人叩き落とされる隙に飛び移って来た奴にも、こうしてすぐに手刀(チョップ)を打ち込める。

 もちろん防御面で不安はあるが、『挙動の素早さ』『手軽さ』は十分な利点だろう。

 

 

 「ほいっ」

 

 「ぎゃああぁ……」

 

 「ありがとな!……メルグ!もう来てないか?」

 

 

 ともあれ屋上の縁に叩きつけられたのをシミアが蹴り落とした所で襲来も止んだので、後ろのメルグに確認を頼む事にした。

 

 

 「あ、あー、えっと……、……もう来てないみたいッス」

 

 「こわーい女神様の配下も追いついて来たからね、(あたし)もう終わりだと思うよ?」

 

 

 見れば揃った意匠の制服を着た冒険者達が街路に現れる所だった。

 そいつらは転がってる闇派閥(イヴィルス)達を手早く縛り上げては引っ立てて行く。

 あれは確か……

 

 

 「フレイヤ・ファミリア……、……の下っ端だな。わざわざ追い狩りするなんざ奴らにしちゃ随分殊勝じゃねぇか?『戦いの野(フォールクヴァング)』に火炎石でも投げられたか?」

 

 「ま、基本女神とその所有物が優先だからねー。普通にありえると思うよー?」

 

 「だなー?」

 

 「あの……、もう少し声抑えて……」

 

 

 今こっち睨んだよな……

 ……まぁ挑発するような事言ったのはこっち(タラニスとシミア)なんだから当然ではあるんだが。

 

 

 「倒したのはこっちなんだし『それがお前らの当然の義務だー』みたいな態度されるのムカつくじゃん?お礼どころか言葉一つ出さないんだよ?」

 

 「まぁ分かるからわざわざ喧嘩売るなって……。態度がどうだろうと普通に正義の派閥だぞ?」

 

 

 闇派閥(イヴィルス)にも居るって言うLv.5──冒険者で言えば第一級冒険者級──に対抗してくれるだけでもありがたいからな……

 

 

 「いや、フレイヤ・ファミリア(あいつら)はフレイヤの奴がやれ、つったら普通に闇派閥(イヴィルス)に付くと思うぜ?……ま、フレイヤの奴に最低限でも『矜持』がある限りは闇派閥(イヴィルス)に付け、なんざ言わないとは思うがな」

 

 「『矜持』なんて捨てられる人には捨てられるもんだよー……、と……。……それでどうだった(あたし)?」

 

 「ん?」

 

 

 ……あぁ、評価の話か。

 タラニス様は……、……『お前に任せるぜ』って顔してんな……

 じゃあオレから……

 

 

 「十分強かったぜ?オレとしては文句無しだ」

 

 「ほ〜?」

 

 

 実際上着の下に隠していた『ぼうしゅりけん』は全部命中させてるし、『ぼうしゅりけん』を使い切った後も手こずる事無く闇派閥(イヴィルス)を屋上から叩き出してる。

 

 ……それにオレも『やりやすかった』。

 向こうが気を遣ってくれたのかもしれないが、剣が折れるアクシデントや素手で戦うという未知の展開にも躊躇う事無く挑めたし、オレの動きとカチ合う事も無かった。

 

 『上手く噛み合った』と言うのが正しいだろうか。

 

 

 「……そんな感じでオレとしては文句無しの太鼓判ってとこだ。ありがとうな?」

 

 「ほーほー」

 

 

 ……まぁ向こうからすれば『こっちが噛み合わせてやってんだよ?』かもしれないからそこ以外の感想は全部口にしてみたんだが……。

 なんかめっちゃ嬉しそうだな……。

 気の抜けた声出そうとしてんのかもしれないが、声色からも表情からも喜びが抜けてねぇぞ……?

 

 

 「もちろん俺も文句は無いぜ?回復薬(ポーション)有りとは言えあれだけ長丁場やった後も普通に戦えるのは大したもんだ」

 

 「自分もありませんッス。……耳も良かったですし」

 

 「ほーほーほー!」

 

 

 ……まさか()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 どんな環境だそれ……

 

 ……まぁ詮索は後回しとして二人の評価も問題無し、と。

 ただまぁ、タラニス様に関しては『タラニス様が嫌う要素が無いだけ』って考えておいた方が良いかもな……。

 ……あの(ひと)盲信すると痛い目に遭う気がする。

 

 …………そしてメルグは()()()()の事だ。

 いつもの様でいて()()()()()()()()()。……後で向き合って話さなきゃだな。

 

 

 「ふふん、高評価頂きましたっと」

 

 「まぁそれはそれとして、だ。一つ聞きたいんだが()()()()()()()()()()?昨日のあれだけじゃ言葉が少なすぎて、お前が何したいかよく分からなくてだな……」

 

 「あー」

 

 

 ……ただまぁ、今ここの確認を欠かす訳にはいかないだろう。

 

 オレとシミアで対決して、その後タラニス・ファミリアで肩を並べて戦ってみた感想としては、とりあえず悪い奴じゃなさそうだとは思う。

 ……まぁ何の問題も無い奴ではないんだろうが。

 

 けど、()()()()()()()()()()()()()()

 ……勿論うち(タラニス・ファミリア)に入ってくれるなら心強いしありがたいが、シミアが口にしたのが『入団したい』じゃなくて『力貸そうか?』である以上『ファミリアに入らず助っ人的立ち位置に就く』のが目的なのかもしれない。……と昨日の話し合いでもそんな考えは出て来た。

 

 ……実際、剣も飛び道具も蹴りも出来て、索敵も出来る、そして確定ではないが情報収集も出来るならわざわざファミリアに入って神様に従う必要も無さそうに感じるからな……

 

 さて、どうだ……?

 

 

 「昨日は確かに曖昧にしたとこあったけど……、……今は違うかな?ファミリアに入団して力貸しても良いかなって思ってる」

 

 

 …………!

 

 

 「「それってつまり……」!」

 

 「いや、(あたし)(キミ)らに自分の事何も説明してないでしょ?それ説明してからにしたいなー、って。良い?」

 

 

 …………そういえばそうだったな。

 ……まぁ元々の予定でも人柄に問題無さそうなら手合わせの後に色々聞こう、って事になってたから大枠に変わりは無いな、うん。

 そんな訳だから……

 

 

 「オレは良いぜ」

 

 「自分も文句無いッス。……タラニスさんはどうッスか?」

 

 「んぁ、俺も構わねーぜ。もう昼だし飯でも食いながら話すか」

 

 「お昼?じゃあ(あたし)の下宿来ない?(キミ)ら多分タイプだからご馳走してくれるよ〜?」

 

 

 ……オレ達は屋上を降りてシミアの話を聞くついでに昼飯と洒落込む事になった。

 

 

 「タ、タイプってどういう事ッスか?」

 

 「あー、うちの下宿の店長オラリオでもあんまり見ない感じの人だからねー。驚くかもだけど悪い人じゃないよー?」

 

 「まぁ()が居る以上驚くのは二人だけだな?」

 

 「そこは下界の未知を期待しましょうよ……」

 

 

 まぁ変わり者なら神様の方が多いだろうしな……、と思いながら天界()の方を見上げてみる。

 

 

 

 

 「……晴れだったんですね、今日」

 

 「?気付かなかったんか?」

 

 

 ……そこには見事な蒼穹が広がっていた。

 色を濁す煙も散り、白く漂う雲も無い空は残酷なまでに美しく見えた。

 

 

 「行くよー?」

 

 「おーう」

 

 

 先頭に立つシミアの案内で街へ繰り出して行く。

 

 ふと、オレ達はずっとあの空の下で戦ってたのだと思うと妙な感慨が胸に湧いて来るのだった。

 

 

 

 

 

 




※現在原作より9年前の秋頃

タラニス・ファミリア、3人目内定。

……いや長かった……(完成まで)
中々思うようにいかず、別の匿名作品にも手出しながら月日が過ぎる事過ぎる事……
待たせてしまい本当に申し訳ありません……


※タラニス・ファミリア
…ガイ・メルグ共に極東についての知識は無いに等しいので『手裏剣』だとか『味噌』だとかは知らない。ガイが口に出す『棒手裏剣』が平仮名なのもそのせい。

:ガイ…なんとか負けを認めさせる事が出来た。……が、手合わせじゃなかったら負けてた。片手で扱える剣の腕ではシミアに敵わない。試してみた徒手格闘は良い感じだったものの、使い始めも使い始めで経験不足。戦闘に於いてはシミアに勝る要素の方が少ない。ただし……。なお、首元バッサリに文句言ってる(思ってる)が足元に抜き身の剣取り落としてるコイツが言えた事じゃない。刃物の扱いと体力の消耗には注意しましょう。

:メルグ…弱気を含んだ複雑な心中を抱いている。詳細は次回。

:タラニス…シミアをファミリアに入れても良いと思っていたのは前話から変わらず。シミアが要求しないなら自分から誘うのもアリだろうな、とまで思っていた。だって()()()()面白くない訳ねぇじゃん?


:シミア…タラニス・ファミリア3人目の団員に内定しそうな人。強い。『剣だけ』『三回で交代』『慣れてない方の手で剣を振る(New!)』といった縛りを課してたからこそ今のガイでも勝負になってた。本気なら「連撃+蹴り+棒手裏剣+etc…」で間合いを完全に握られた上でボコボコにされていた。おまけに遠くの衣擦れを聞き分けられる良い耳まで持ってる。その上で恩恵無し。……これだけ能力があるのに褒められ慣れていない模様。


※闇派閥
…今回逃げて来たのは下っ端の中でも新入りの方。逃げて来るに至った理由はほぼタラニスの考察通りで『調子に乗ってフレイヤ・ファミリアの本拠に火炎石投げ込んだら予想以上に苛烈な反撃喰らって慌てて逃げて来た』というもの。焦って選んだ人目に付く逃走ルート上に屋上を使えるファミリアの本拠があったのが運の尽き。その多くが捕まり、なんとか逃げ延びた数人も下っ端の癖して迂闊に最上位派閥に手出しした事で残虐な制裁を受ける事となった。


※フレイヤ・ファミリア
…現在のオラリオの最上位派閥。今回出て来たは下っ端の平団員のみ。タラニスとシミアは何かしら気に食わないものがあるようだがガイはまぁ好意的。

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