迷宮都市に生きる 作:オミ
「でっけぇ……」
ガイ・シグロという冒険者志望15歳の男が巨塔聳え立つ「迷宮都市オラリオ」をはっきり視界に入れて最初に発した言葉である。
近づいていくにつれてより大きく見えてくる巨塔に対してガイは最初の方は呆然と「でっけぇ……」と繰り返していたが、都市に入る為の検問の列に並ぶ頃には巨塔を擁するオラリオそのものの大きさにも気づかされ、ただただ呆然とするだけで言葉も出なくなっていた。
冒険者になるぜ!と寂れた田舎町の実家を後にしてみたものの、浮足立つばかりで道のりくらいしかまともに情報収集しなかったガイはオラリオについて「モンスターが生まれるダンジョンがあってそれを倒す冒険者がいる」「
その為実際にオラリオの威容を目の当たりにして呆然とする他になかったが、ーー同時にいよいよそのオラリオの冒険者の一員になるという事実はガイの心を大いに盛り上げていた。
「やべぇな……!ついにオレも冒険者か……!」
ーーだからこそガイは列に並ぶ旅慣れていそうな者達が若干の緊張感を以って列に並んでいる事に気付けなかったのである。
気付いていたとしてもそもそもの情報不足故にもはやどうしようもない事ではあったのだが。
○
「やべぇぜ……」
オラリオに入ってから数時間、酒場のカウンターの端っこでオレが零したのはやべぇくらい情けない声だった……。
オラリオの塔ーーバベルって名前らしいーーのデカさとオラリオという街のデカさにはしゃぎまくりながら列に並び、検問の職員さんに「冒険者になる為には『神様』の『ファミリア』に入らないといけない」と聞いて、じゃあファミリアに入れさえすればオレも冒険者だ!なんてバカみたいにはしゃいで都市の中に入ったら……
……故郷とは比べものにならないくらいデカく人も多いのに、妙に暗い空気を放つメインストリートがオレを待っていた。
道ゆく皆さんもなんかビクビクしてるし、オレの後から検問を通ったいかにもベテランって感じの商人らしい親父さんもなんかピリピリしてる。アレ?これってやべぇんじゃ……と思って道沿いの店を見れば窓に鉄格子が嵌っている。
……やべぇよなって思って話を聞いてみれば「兄ちゃん冒険者志望か……エラい時に来ちまったモンだねぇ……」と同情されてから話を聞く事になった。
……商店の親父さんが言うには今のオラリオは『暗黒期』なんて言われるくらい危ない街らしい。
簡単に言えば6年くらい前にオラリオで一番強い冒険者達があの『黒竜』退治に失敗して全滅したあたりから悪い神様のファミリアがのさばって好き放題やるせいで誰も安心できないのが今のオラリオだという話だった。
……悪い神様のファミリアに人が殺される事も日常茶飯事らしい。
「……まー早いとこ神様見つけちまった方がいいよ?兄ちゃんみたいなのはいいカモって見られてもおかしくないからねぇ?」
……そんな言葉とタダじゃ駄目だろと思って買ったコップと一緒に店を出てからは生きた心地がしなかった。
「……多分大丈夫だよな?」って思った宿を取る所までにビビりすぎて時間を食って神様探しに街に繰り出したものの全く見つからずに気付けば夕暮れ時、「……宿に戻るか」って思って歩いていたらーー
ーー人が殺された。
遠目だったから胸を刺されて倒れたヤツがいた事以外は分からないまま、悲鳴を上げて逃げる皆さんに巻き込まれて気付けばどこにいるか分からなくなり逃げるようにしてこの酒場に入ったんだが……
「やべぇよオラリオ……」
……帰る気しか起こらねぇ……。
ホントに人が殺されやがった……。
ロクに調べもしないで「冒険者になるぜ!」なんて思ってた過去のオレをぶん殴りてぇ……。
そもそも神様だって見つからねぇし……
「おいおいシケた顔してんなぁお前?どうした?」
「は?」
……神様だ。
……姿形は人間となんら変わりなくてもオレの隣に座り込んで来たこの顔のいい男の気配は「自分は神様です!」って思いっきり叫んでるから間違えようがない。
天界から下界に降り立った『
人に恩恵を与えてくれる者。
「あぁ名乗った方がいいか……
……一目見ただけで「違う」と分かる程の存在が酒場にいて誰も気にした様子がねぇ……
「ガイ・シグロって
やべぇなオラリオ……。
※現在原作より9年ほど前
……中堅所というテーマで考えると短い期間でポンポン成長する人を主人公に置くのはなんか違うな、と思ってどのくらいが妥当かなぁと考えたらどう考えても暗黒期を避けて通れない上にバッサリカットしないと書くのも面倒になりそうという問題が…
:ガイ・シグロ…主人公のヒューマン。故郷は寂れてはいるが割と平和だった為オラリオが思ったよりヤバくてビビりすぎてる。初めて見た神様に腰が低めにもなってる。名前の由来はウルトラマンオーブのクレナイ・ガイとその演者さん。ただし変身する予定はない。
:タラニス…神様。由来はケルト神話の神から。わざわざアイルランドの方のケルト神話からではなく大陸の方のケルトの神様選んだのは被りにくそうだと作者が思ったから。