迷宮都市に生きる 作:オミ
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──冒険者ぁ?ハッ、お前がなった所で野垂れ死にが関の山だ。
故郷の町の夢を見る。
どこかぼやけた風景の中でオレは兄貴に小馬鹿にされていた。
……いや、今思えば兄貴なりに忠告してくれていたんじゃないだろうか。
お前は気持ちを伝えるのが下手だ、って親父が兄貴に言っていたのを思い出す。
──お前の本心は『この町に居たくない』だろ?それの誤魔化しで『冒険者になりたい』って言ってるだけだ。そんな奴がノコノコ行った所で何になる?
あの時は小馬鹿にされてるとしか思わなかった。
だからまともに噛み締める事もせずに聞き流してた。
……いや、違う。オレがどこか誤魔化してた事を突き付けられたのを意識しないようにしてただけだ。
……故郷の町は物心ついた頃にはオレにも分かるくらい寂れていた。
昔は山の方の村と木材とか薬草とか取り引きしてたからそれなりに人が居たらしいが、オレが生まれる前にモンスターに山の方の村が全滅させられてからそういう取り引きもできなくなって人が離れていくようになったらしい。
それでもまだ牧場とか畑とかもあるから残る人間だって少なくはない。あの町で生まれたオレと同じ歳頃の奴らはだいたい町に残って家業を継いでる。
……あぁそうだ、オレは多分散々遊んだ顔馴染みを諦めた表情にするあの町が、あの町の諦めた空気が気付かない内に嫌いになってたんだ。
だからきっとオレはあの町から飛び出してオラリオを目指した。
──お前はそんな誤魔化しで冒険者続けられるのか?
最後の問い掛けを突き付けて、夢の風景は真っ白に消え失せていく。
「……ぅお……」
気づくとオレは寝床で目を覚ましてた。
ここは迷宮都市オラリオで、この天井はオレとタラニス様が暮らす
「あー……、……顔洗うか」
のろのろと起き上がって今日もオレの一日が始まる。
……だけどここ数日程の『今日も頑張るか!』って感じの高揚感は無い。
兄貴の言葉に冷や水を浴びせられた感じだ。
「……誤魔化し、か」
顔を洗ってもどこか詰まるような感じが取れる気配は無かった。
○
「……あの、タラニス様。オレって冒険者続けられますかね?」
「?どしたんだいきなり?」
朝。タラニス・ファミリアにとっては、起床してパンだけの朝食を食べて準備を整えて
そんなルーティーンの中、道を歩くガイが隣を歩くタラニスにやや落ちた表情で相談する。
「昨日夢に兄貴が出てきたんですよ……」
「あ〜、お前は冒険者になれないーとか言った奴だよな?そんで不安になったって訳か?」
「いや昔……つってもまだ四ヶ月経ったかぐらいなんですけど、兄貴にお前の『冒険者になりたい』は『この町に居たくない』の誤魔化しだって言われたのが昨日の夢に出てきたんですよ……」
「……ふーん?」
懇意にしているファミリアであり、タラニスのバイト先でもあるベレヌス・ファミリアの
「今はこうして冒険者続けられてますけど、この先冒険者としてやってくのにちょっと不安が出てきたって言うのか……」
「ふーむ……。つまり『オレとしても町を出たかったからとかそんな理由で冒険者やってくのは嫌』って事か?」
「えっ」
思わぬ言葉が出て来た事に驚き、朝の街並みの中でガイの動きが止まる。
「……………………そうなりますかね」
しかしタラニスが導き出した言葉は受け入れ難くも納得できる言葉だったのか、長い沈黙の後にガイが吐き出したのは肯定の言葉だった。
「ま、俺としちゃお前がどんな理由で冒険者やろうとお前の自由だって思ってるつもりだ。別に町出たかったからとかでも全然構わないとも思ってる。……けどそれはあくまで俺の話だ、お前の理由になる訳じゃねぇ」
「…………」
再び歩みを進めながらガイは己の主神の言葉を黙って耳にする。
「お前が戦うのが怖くなったとか言うなら俺も無理に冒険者続けろとは言わんよ。だけどお前が気にしてんのは『冒険者やる理由』……『冒険者やる根底』って言い換えてもいいか?それに自分自身で納得できてないから冒険者続けられるか不安になってる……ってとこだと俺は思ってる。そこんとこ合ってるか?」
「……間違ってないと思います」
やや固くなりながらガイは答えた。
「まぁそんな固くならんでも大丈夫だと思うぞ?お前はそんなん気にしないで三ヶ月も冒険者やれてんだ。良くできてる方だと思うぜ?だからお前が冒険者続ける『根底』ってもんはお前自身が自然と見つけられるさ」
固くなるガイに対し、タラニスは気さくに笑いバシバシと肩を叩きながら己の眷族を励ました。
「『根底』……」
「ま、どーしても答えが見つからないなら色んな奴に聞いてみればいいさ。あいつらとかな?」
「あいつら……、あぁ」
『あいつら』と言われて一瞬誰の事か分からなかったガイだったが、視線を街路の先に向けてすぐに理解した。
いつの間にか目的地のベレヌス・ファミリア
中ではガイと同時期にそれぞれの理由を抱えて冒険者になった三人の新人団員達が準備を整えて待っているだろう。
今日はタラニス・ベレヌス・ルゴスの三つのファミリアの新人団員合わせて十人がパーティを組み、新米向けとされる最後の階層・ダンジョン4階層に挑む予定が決まっていた日である。
○
「冒険者になった理由、ですか?…………うーん……、……簡単に言えば『薬が憎かったから』ですね」
そうガイに話した少女はベレヌス・ファミリアの新人団員、アモル・ハリャン。三ヶ月前にガイが『日向の庭』で一宿一飯の世話になって以来、
「薬……?それならなんで製薬やってるファミリアに入ったんだ……?」
「フィオさん……、いえ団長さんに助けてもらった事があったんですよ。ただここでするにはちょっと長い話になりそうなので、また別の機会って事にしてもらえませんか?」
「あぁ分かった。ありがとうな?」
冒険者になった理由を話してくれた事に礼を言いながらガイは話を打ち切ろうとした、
「おいおいなんだよー?俺には聞かないのかー?」
所に入り込んできた男がいる。名前はバード・ゼッテン。ルゴス・ファミリアの新人団員であり、ガイがここ三ヶ月の間ダンジョンに潜る時に他の新人共々一番多くパーティを組んだ仲である。
「いやお前は歓迎会の時自分から言ってるだろ」
「格好よくなって町の奴らを見返してやりたい、ですよね?」
「げっ、俺そんなん言ってたのか?」
「言ってたな?」
「言ってましたね?」
「マジかよー……」
アモル、ガイ、バード。それぞれファミリアは違うものの、同じ年頃の三人が築いた交友はこうして三つのファミリアの合同パーティが編成されるきっかけともなっているのであった。
現在パーティが進むのはダンジョン4階層中程のルームに差し掛かった所。
三ヶ月かけて着実にステイタスを上げてきた新人達の実力は新しい階層に対してもなんら見劣りする事無く通用していた。
「そういえば俺らより年下なのにもう4階層より下に行ってる奴らがいるらしいぞ?」
「【人形姫】だろ?そんなん冒険者なら誰でも知ってる話だぞ?」
「一度見かけた事がありますけど、本当に人形みたいでとても怖い子でしたよ……?」
「いや【人形姫】だったら今さら話に出さねぇよ⁈『奴ら』って言っただろ⁈パーティかファミリアでメキメキ実力伸ばしてるのがいるんだって!」
「……?誰でしょうか?」
故に戦闘を他のメンバーと交代制にして警戒に回りながら、雑談に興じる余裕さえ彼らにはあった。
「……いや、言われてみればオレも聞いた覚えがある。……んだけど名前が出て来ねえ……!」
「まぁオレも先輩の話をちらっと聞いただけなんだけどな?リーダーは赤毛の女……、いや確か女の子でファミリアは「待った、なんか来る」っておい⁈飛び出すなよ⁉︎」
……何も
前方でルゴス・ファミリアの面々と戦っているモンスターの更に後ろから迫って来る『何か』をいち早く感じ取ったガイは、一気に飛び出して『それ』を迎え撃った。
「うおっ……⁉︎」
『…………』
しかしバシィィィン!と『指刃』と打ち合った大木刀はその勢いを殺し切れずガイの身体を後ずさりさせる。
見ればここ一週間、多くのモンスターを一撃で打ち倒してきた木刀にくっきりと傷が残っている。
「あれは……!」
「『ウォーシャドウ』⁉︎なんでこんな所に⁉︎」
現れたのは冒険者の間で『新米殺し』の悪名を付けられたモンスターの一体、『ウォーシャドウ』。
ゴブリンやコボルトなどとは一線を画した
『……………!』
本来6階層初出であるはずの
「オラぁ!」
『…………』
所で今度はバードの剣がガキィィィン!と音を立てながらその一撃を止めた。
「飛び出すな、って言ってたけどこんなんあいつらに突っ込まれてたら危なかった。ありがとな!」
「気にすんな、飛び出したのには変わりねぇ!」
モンスターと戦ってるメンバーへの奇襲を防いでくれた事への礼と飛び出してしまった事への謝罪を短く交わし合う。
「『新米殺し』も一体だけだ!ヨキアとメロはそのまま
「「「「「「「「「おぉっ!」」」」」」」」」
手早く指示が下され、新人達のうち八人が素早くウォーシャドウを取り囲む。
本来ステイタス評価G200以上で挑む相手であるウォーシャドウに対し、高いものでようやくH180前後の彼らでは戦う相手として荷が重いがそれは
H180にも届くステイタス持ちが八人はいかに『新米殺し』といえど荷が重い。
『…………!』
「きゃあっ!」
「アモル!」
だがしかし『人数』を活かした戦いこそ新米には荷が重い。
「人の事よりまずは自分の……ってうおおおっ!」
「このっ……!」
『…………』
取り囲んだはいいものの初見の敵の素早い挙動に翻弄され、新人達はウォーシャドウに攻撃を当てられず逆に指刃に切り裂かれて衣を血に染める。
しかも八人という人数を包囲に回した事で囲いが広くなってしまい、ウォーシャドウの素早さを封じきれていない。
もっとも囲いの広さが無ければ素早さを見切れずに、衣を血に染めるどころかそう時間を置かずに首か腹を切り裂かれて致命傷を負っていただろうが。
「…………おらぁあああああ!」
『…………⁉︎』
しかしそれでも均衡は冒険者の側に傾く。
ウォーシャドウが標的を切り替えようとした所に隙を見出したガイが雄叫びを上げながら突っ込む。
隙を突かれたウォーシャドウは迫り来る木刀に片手を振り上げて防御を取ろうとする。
「うおらぁっ!」
が大木刀は指刃の生える手を避け、肩の方からウォーシャドウを叩きのめした。
『…………!……』
「オラッ!」
吹き飛ばされたウォーシャドウにすかさずバードが剣を突き刺し、トドメを刺す。
魔石にかすったらしく体は灰と崩れ落ちる。
「…………ふぅ〜っ……」
誰とはなしに息を吐き、緊張を緩める。
そうして新人達は『新米殺し』との戦闘を死者なしに終えるのであった。
続く。
……少なくとも今回のはなるだけ期間空けずに終わらせたい。
(話の流れはできてても書いた内容がなかなかしっくり来ないでぐだぐだやってたけど話の順番入れ替えたら上手くいきました)
※現在原作より9年前の初夏〜夏より変わらず。
タラニス・ファミリア
…現在の本拠は二階建てのアパートの一室。2LDK(仮)で暗黒期時代のクロエ・ルノアの住処よりは上だけど全体的に見て下の方なのは変わらない。
:ガイ…今話からが真に冒険者としてのスタートと言っていい。(書き切れるかは不明)ここ一週間くらいは前話で作った木刀で大活躍してた。
:タラニス…神様らしい事してる主神。実際もしガイが冒険者やめるってなってもそれはそれで面白そうだから見放さない。
ベレヌス・ファミリア
…今回のパーティへの参加者は三人。「この時代で身を守れないのはヤバいでしょ〜?」という副団長の意見で戦う術も身につける方針。今年の新人は三人とも戦えるようで副団長はご満悦。
:アモル・ハリャン…ようやくフルネーム登場の新人団員。武器は山刀。穏やかな気質だがなにやら抱えるものがあるようで…?(なお、描写されるとは限らない)名前の由来は「ウルトラマン妹」より自称・ゾフィーの妹分のウルトラウーマンアムールから。(アムール川のスペルAmor+満州語でのアムール川の名称「サハリャン・ウラ」から「ハリャン」)
ルゴス・ファミリア
…今回のパーティ参加者は六人。最初の頃は先輩団員がついてたけど最近は忙しく、新人だけで行かせる事が多い。そもそも今回は新米の卒業認定的な探索として計画されており、引率としてルゴス・ファミリアから誰かしらついていく予定だったが何かあったらしく誰もついていない。
:バード・ゼッテン…こちらもようやくフルネーム登場の新人団員。今回の武器は剣だがいまいちしっくり来ないらしく槍を使う時もある。こいつは特に抱える事情とかなしに冒険者になった。名前はまず『バード』という語感が先に来て、そこにどういう苗字をつけるかってなった時に「ニュージェネのウルトラマンから取るのはどうだ?」って思いついたので「ウルトラマンZ」を由来にして『ゼッテン』という苗字がつくられた。
:ヨキア…「あれは……⁉︎」って言った人。簡素だが兜をつけ、盾と剣を持ってる新人団員。女性。
:メロ…「『ウォーシャドウ』⁉︎(以下略)」って言った人。明らかに偽名であろう「メロン」と名乗って入団を希望し、怪しまれまくったが主神と団長の判断で入団を許された新人。もっぱらメロと呼ばれているのだが……。斧とメイスを持ってる。男性。
:【人形姫】「赤毛の女の子」
…この話に出て来る誰ともたいした関わりはない。今の所は。……ソード・オラトリア見るとまだ10歳11歳前後であろうあの人達がパトロールしてるらしき描写があってビビるんですけど……
:ウォーシャドウ…原作ではベルくんに対する「第一の強敵」(ミノタウロスは「敵」にすらならなかった……って感じで)を務めたがここでは「1vs2でロクな装備も無かったらまぁ苦戦するよな、でも8vs1なら初見でも勝てる……よな?」って筆者が思ったのでこんな感じに。苦戦気味に見えたらそれは『新米殺し』相手に慎重になってたって事で……
※「高いステイタスがH180前後」は「三ヶ月でどのくらいステイタスって上がる?」って考えて、「最初のうちは熟練度が10以上上がる事もある」……との事だけど『最初のうち』がどのくらいの日数なのか明記されてた覚えが無いのでとりあえず一週間と仮定して10×7で70、あとは『最初のうち』を過ぎたステイタスの伸びを一週間で10・一ヶ月を四週間として、最初の一週間を引いた三週間+二ヶ月が11週間×10で110。足して70+110で180……みたいな計算で仮定しました。
もちろん早熟するスキルなしでの話です。