ではスタート!
「さんご〜一緒に皆んなの所に行こう!」
朝早くから帝はさんごと一緒にまなつ達会いに行こうと家の前で叫んでいたが、代わりにみゆきが出て来た
「帝君ごめんなさい。さんご、今日は気分が悪いらしくて」
「そうですか、分かりました!」
体調が良くないと言われ、仕方なく涼村家を後にした
「……」
そしてその様子をさんごは窓から覗いていた
「良かったのさんご」
「うん……もう、帝君とは関わりたくないの…」
さんごは、怯える様にベッドに潜り込み布団を被って静かに時間が過ぎるのを待った
////////
水族館の屋上
そこでまなつ達は、昨日の出来事に付いて話し合っていた
「帝があとまわしの魔女と一緒だったなんて信じられない」
「信じられなくても事実だ。今度会ったらぶっ飛ばしてやる」
「そうね。今回ばかりは人間を許せない。こうなったら徹底的にやってやるわ!」
「うん…」
みのりは未だに嘘の出来事の様に思い、あすかとローラに至っては帝を倒す気満々だった
そしてまなつとはいうと、いつもの元気は無くカラ返事で返答する
「何よまなつ、貴女迷ってるの?」
「迷ってるし分かんないよ!だって、ついこの前までは一緒に遊んで、笑って、過ごして、部活をやっていたんだよ!」
「帝は最初から、わたし達の事なんてどうでも良かったんだ。迷う事なんてない」
「ですが、帝だってさんごの為に色々やっていた。少しやり方は間違っていますが…」
「やっている事が正しければ、そのやり方には目を瞑れって事か?」
帝に対する事で二つに分かれてしまった
帝の事を今でも信じてるまなつとみのり。
どんな理由であれ許せないあすかとローラ
「一番傷付いたのはさんごだ。帝と一番長く居て、近くに居て信頼していたんだ。アイツはそれを踏み躙ったんだ。それでもまだ許そうとするのか?」
「話し合えば分かり合えます」
睨み合いが続いてると、不意に声が聞こえた
「仲間割れですか?お友達同士、ウッキウッキのワックワクでいませんとダメですよ?」
「アリス!」
言い争いは中断されたが、代わりにアリスに何処にも向けれない怒りの目で見る
「人間は何処に居るのよ?」
「帝様を御指名ですか。彼も中々モテモテで罪に置けない人ですね」
「ふざけないで!!」
「……帝様なら街で待っています。そろそろゼンゼンヤラネーダを出す頃だと──」
それと同時に街の中心近くでヤラネーダが現れるのを目撃した
「噂をすれば何とやら」
「行くわよ…」
ローラとあすかは、飛び出してアリス横を通り抜け、まなつとみのりも遅れて続く
「まなつ様」
「え、何?」
「彼女──涼村さんご様の事は私に任せて下さい」
「…よく分からないけど分かった!」
「帝!」
「意外と早かったなまなつ」
「こんな事もうやめよう!」
「やめる?今更?それは無理だ」
話し合って済めば良かったが、この分だといくら言っても無駄
「まなつ、お前いつも言ってるな。『今一番大事なこと』俺にとってさんごを幸せにする事、その世界の始皇帝になる事が今一番大事なことだ。それをやめろと言うのか?」
「それ、は…」
「だが感謝する。そのお陰で、一体自分が何をすれば良いか改めて迷い無く出来る」
「ヤラネーダ!!」
ヤラネーダが今か今かと暴れ出したくてウズウズしている
「少し話し込んだな。やる気パワーは奪って無い。俺を止めたければヤラネーダを先に止める事だな」
「止める。絶対に止める!」
「"絶対"だと?それはお前達では無い、俺が決めるんだ。この俺が絶対なのだから」
////////
「……」
「いつまで引き篭もっているつもりですか?」
「ッ!?」
暗闇の部屋から突然声がした。さんごは慌てて布団を退けるとアリスがドア近くで立っていた
「…何?」
「失礼ながらお節介を焼きに来ました」
「帰って下さい…」
「敵を目の前にしながらこの体たらくですか。昨日の事といい、無様で醜く哀れなものですね」
さんごの姿は言う様に酷い有様だった。未だに着替えられてないパジャマ姿に、ボサボサで整えられてない髪。
瞳も光など微塵も無い
あるのは裏切れた絶対と痛め付けられたトラウマ
帝に対する気持ちも180度変わっていた
前の大好きだった気持ちはもう無い
「街にゼンゼンヤラネーダが出現しています。まなつ様達が頑張っていますよ」
「まなつ達が…」
「勿論、帝様もそこに居ますが」
「ッ!」
帝の名前を出した途端、さんごは過剰に反応して布団をまたも被る
「はぁ…貴女もプリキュアなら覚悟を決めたらどうですか?」
机に置かれてあるトロピカルパクトを手に取り、律儀にもさんごに差し出すのだが
「やだ…やだよぉ……」
それを拒否した
「いやだ…もう帝君に会いたくない、関わりたくないよぉ……」
「あらそうですか。それはそれは仕方ありません」
アリスはベッドに座り、くるまうさんごを優しく寄り添う
「でも良かったじゃないですか。貴女の為に帝様は奮闘していますよ」
「わたしの為じゃない…あんなの、ただ帝君がやりたいだけだよ…」
「そう、全部貴女の為に帝様がやっているだけ。帝様は純粋に、さんご様の事を第一に考えてらっしゃるお優しい方ですよ」
「優しくなんか…」
『──お前を蔑ろにした事あったか?子供の頃から思い返してみろ!!』
その言葉を思い出して考えてみる
『──いいよ!あそぼ!』
『──さんご泣かないで。さんごのかわいいは、俺もかわいいと思ってるから』
『──いつも隣に居るだろ?』
『──さんご?』
『──なぁさんご〜』
『──さんご!』
「……」
確かに今まで、さんごに対して変な事は沢山されたが、それでも嫌がる事などしていない。
寧ろこれ以上無い程に優しくしていた
でもだからって、昨日の事を許す訳にもいかない
「帝君なんか嫌い…嫌い嫌い嫌い嫌い!!大っ嫌い!!!」
「それ程嫌っているって事は、それと同じか或いはそれ以上に好きだったと考えます」
「お願いもう喋らないで!」
さんごにスイッチが入り、溜まっていたものを全て吐き出す
「帝君と喋りたくない!帝君なんて知らない!帝君なんて大嫌い!帝君に近付きたくない!帝君なんて…帝君なんかと────出逢わなければ良かった」
涙と嗚咽でまともに話せれてるか自分でも分からなかった
さんごの悲しみの叫びを聞きながら、アリスは一つの質問をする
「…さんご様、貴女とって"幸せ"とは何ですか?」
「わ、わたしの幸せ…?」
「はい。今帝様は幸せを掴もうとしていますが、私から言わせて貰えばあんなものは幸せとは言えません」
「知ってるよ…」
「いいえ貴女は知りません。本当の幸せ"真の幸せ"の意味を」
アリスは布団を強引に引っ張り剥がして、さんごを目を合わせる
「いいですか?幸せは
アリスはさんごの喉に指を置き、そこからなぞる様にして唇に触れる
「コレの意味分かりましたか?」
「はい、アリスさんが言った意味が何となく分かりました…」
「では後は簡単です!」
「でもわたし、帝君とはもう…」
会いたくない──という気持ちが本音だ。
もう一度会えば何されるか分からない。それどころか自分は正気でいられるかも怪しい
「酷ですが、帝様を止められるのは貴女だけです。真の幸せを知った貴女なら大丈夫です」
さんごはトロピカルパクトに目を向ける。震える手でパクトを掴み取る
「帝、君…」
アリスは最後に背中を押す
「帝様の事が本当にお嫌いになられたのでしたら、あんなに泣き叫んだりしません。貴女は今でも彼の事を」
「……」
さんごはゆっくりと立ち上がり準備をする
いつもの私服に着替え、髪を整える。そしてその瞳には光りが戻っていた
「覚悟は出来ましたか?」
「分からない。でも……わたしが、今一番しないといけない事は分かったから…知ったから。初めてプリキュアになった時を思い出します」
初めてプリキュアになったあの日、それは自分の本音を素直に出す事から変身出来、前へと進む事が出来た
「だから今わたしの想いを伝えに行きます。この気持ちを全部吐き出して」
さんごはアリスを通り抜けドアノブに手を掛ける
「では行ってらっしゃいませ」
アリスは一礼をするとその場から姿を消した
そしてさんごは飛び出す
殻に籠ったこの場所から
自分にとっての幸せを伝えるために
(もう逃げない。自分からも、帝君からも!!)
何とか立ち直ったさんご!真の幸せとは何か?
次回へ続く
割と強引な立ち直らせ方でしたが、あれ以上は何も思い付かなかったぜ!
あ、タグを追加しましたので目を通すのも良いかもです