ではスタート
「ロ〜ラッ!」
「ギャアァァァ!!」
急に背後から帝に胸を掴まれて、絶叫しながらも的確に肘で溝に一撃を加える
「で、で何よ」
「ゲホッ…い、一緒に部室に行こうって…」
「もっと普通に話し掛けれないの?」
「二人共どうしたの?早く部室に行こう」
「まなつ、ローラは日直だから」
「そういう訳だから先に行ってなさい」
仕方なく、帝達三人で部室へ行く事になった
「遅くなっちゃった」
屋上へと続く階段を登りながらそう呟いた
「はぁ…それにしても帝はよく飽きないわね。人の胸を掴んで何が楽しのか全然理解出来ない……したとしても嫌だわ」
部室前に着くと、外からでも分かるくらい中で騒いでいた
「まなつ〜!久し振りにパンツ見せて〜!」
「え、嫌…」
「おい二人共走り回るな」
「みのりん先輩何読んでるんですか?」
「料理の本」
ローラは肩をすくめて扉に手を掛ける。騒がしいけど温かな時間。それがこれから始まると思うと嬉しくなる
そしていつも通り元気に部室に入る
「もう皆んな!外まで声が聞こえるわよ!」
だが入った途端、急に静かになった
「?」
部室内は誰も居なかった
(はは〜ん、隠れてるわね)
そう思い、隠れてそうな場所を探し始める
「分かってるのよ。隠れてないで出て来なさいよ」
しかし数分探しても見つからない
「…ちょっと何処に隠れてるのよ。いい加減にしなさい!」
もう諦めたのか椅子に座った。その時やっと気付いた
「ちょっと、部室が何でこんなにも散らかってるのよ。それに埃だらけじゃない」
いそいそと落ちてる物を拾っていく。顔を上げようとした時、机に頭をぶつけてしまった
「いった〜!」
その時、机に置いてあった物も衝撃で目の前に落ちた
「もう…え?」
落ちたのは卓上カレンダー。カレンダーの日付けに丸をされており、その日付けに疑問を持つ
「4月16日…2022年?どういう事よ…?」
ついこの間ハロウィンが終わったばかりの筈。
しかし、日付けはそれよりも更に数ヶ月先を進ませていた
「もしかしてこれって…!」
ローラは少し前の事を思い出す。状況は違えど、こんな事を出来るのはたった一人しか知らない
「また夢……アリス居るのでしょ!出て来なさい!」
「はい何でしょう?」
「うわっ!?」
突然目の前に現れて、ローラは驚き尻餅をつく
「いつも思うけど、貴女出て来る時距離が近いのよ!もう少し離れなさい!」
「そんな悲しい事を言わないで下さい…しくしく」
「……それよりもまたわたしの夢の中に入ったわね?早く出て行きなさいよ」
しかしアリスは首を傾げて惚ける
「はて?夢ではありませんよ」
「は、はぁ?じゃあ一体何なのよ此処は?」
「有り得るかも知れない"未来"です」
「み、未来!?」
「えぇ、先日も話した通り、みのり様にも同じ様な夢を見せました。まぁみのり様が見た未来は、帝様と深い関係を持った光景ですが」
急なスケールの大きい話にローラはこんがらがって来た
「どうせまた変な事を企んでるんでしょ?分かった付き合ってあげる。わたしは何をすれば良いのよ?」
「ローラ様に見せたいものがあります。それを見るまで帰れません」
「何サラッととんでもない事言ってるのよ……まぁいいわ、その見せたいものって何よ?」
「それを探すのもローラ様自身です。それが出来れば帰してあげます」
「全部丸投げ…分かったわ。それじゃあ貴女も一緒に……」
ふと目を離した隙に、アリスは姿を消していた
「怒るのも疲れたわ…」
取り敢えず部室から出て、街の様子を見る事が最優先
外へ出て最初に思ったのが
「何よ…これ!?」
あおぞら市は暗く沈み、街は破壊されて滅茶苦茶な状態だった
「ッ!」
街へ急ぐも校舎へ走り抜けるが、そこでも目を逸らす光景があった
「皆んな!?」
廊下で沢山の人達がやる気を失って倒れていた
それは学校だけではない。街を出れば、街中全ての人々がやる気を失っていた
(たった数ヶ月でこんなにもなるっていうの?未来で、わたし達は負けたって事?)
ローラは走ってまだ動ける人を探す。しかしそんな人はもう何処にも居ない
あおぞら市は完全に壊滅してしまっているのだ
「誰か、誰か居ないの!?」
その呼び声に反応する者が居た
「「ヤラネーダ!!」」
突然建物の中から現れたヤラネーダ二体だった
「クッ!」
「プリキュア!トロピカルチェンジ!」
「レッツメイク!キャッチ!」
「フェイス!」
「ネイル!」
「ドレス!」
「ゆらめく大海原!キュアラメール!」
「おりゃぁぁぁ!!」
ラメールの一撃が一体のヤラネーダを吹き飛ばした
ラメールはすぐさまもう一体のヤラネーダの足元へ駆け込み
「やぁ!」
「ヤラネ!?」
足払いでヤラネーダを転倒させる
「マーメイドアクアポット!サーチ!」
転倒されたヤラネーダからやる気パワーを奪い返そうとサーチするが
「え、無い!?それじゃあこっち!」
一体目のヤラネーダにやる気パワーは無かった。ならば二体目とサーチする
「え…こっちのヤラネーダもやる気パワーを持ってない?じゃあ誰がやる気パワーを…」
「ヤラネーダ!」
「しま──」
やる気パワーを探すのに夢中で、ヤラネーダの攻撃を正面から受けて、建物の中に転がっていく
「油断した…でも、やる気パワーを持ってないなら容赦はしないわ」
ラメールはすぐさま飛び出し、飛び蹴りをかましてやり返した
「一網打尽で浄化してあげるわ!」
「パフュームシャイニーリング!」
「シャボンフォーム!」
「アクアチャージ!」
「プリキュア!オーシャンバブルシャワー!」
「ビクトリー!」
(思ってた以上に強かった。次は気を付けないと)
一息ついて変身を解いた直後、少し離れた場所で大きな爆発音が鳴り響いた
「また!?」
ローラは急いで走って行く
////////
「今度のヤラネーダは当たりなのでしょうね?」
やる気パワーを持っていれば、街中のやる気を一気に取り返せれる。
それを願い、マーメイドアクアパクトを持って走る
そして目の前の建物が大きく崩れた。
土煙りが大きく立ち、その中から一人の人影が飛び出した
「あれは!!」
思わずローラは建物の影に隠れた
ローラが見た人影に思わず二度見をしてしまう。
プリキュア に変身してるとはいえ、それは紛れもない自分自身。
キュアラメールの姿だった
「もしかしてだけど、あれが未来のわたしって事よね?」
ラメールは降り注ぐ攻撃を素手で弾き返して、建物の側面を足場にして大勢を整える
「敵はヤラネーダ?それとも魔女?まなつや皆んなは?」
ローラは必死に周りを探す。しかしそれらしい人影は何処にもない
戦っているのはラメール一人だけ
「この化け物め!!」
ラメールの怒号が離れているローラの耳に届く
ラメールの言う化け物が土煙りから出て来た
「一体だ…れ……!?」
ローラは目を疑った
それは今まで共に笑い合って、過ごして来た人物。
時に敵として現れた事もあったが、今はそんな事気にせず部活動を励んでいる
約束した。何か迷ったりしたら頼ってと。力になると
他人の幸せを大事にしてる彼
そんな彼が今、未来の自分自身と対立している
「帝…何で……」
////////
「最初の威勢はどうしたラメール?」
「黙りなさい!!」
ラメールは目の前に居る帝に、殺意とも言える目を向けていた
「そろそろ諦めたらどうだ?勝ち目は無い」
「うるさい!!」
ラメールは怒りのまま飛び出す
『DEFENCE!』
振るう拳は青い盾によって阻まれた
「ッ!!」
それでも尚、ラメールは拳を打ち付けるのをやめない。
破るまで叩き付けるつもりだ
「ほう…」
その甲斐あってか帝の盾にヒビが入る
「ハァッ!!」
最後の渾身の一撃で完全に盾を打ち砕いた
そのまま手を開いて帝の首を掴もうとする
「ッ!?」
しかし、掴んだかと思いきやすり抜けた
『FANTOME!』
直前でディスクを入れ替え、更に能力までも変更していた
すり抜けたラメールの後ろから首を掴んでは引き寄せ、地面に抑え込んだ
更に動きを封じ込める為に、首を足裏で踏み潰す
「がっ!?」
ラメールはジタバタして抵抗するも、肺に空気が送り込まれず、力が上手く入らない
「化け……もの…めぇ!許さな…いん、だからぁ…!!」
「これでようやくラメールも俺の手に──」
「やめなさい!!」
建物の影からローラが出て来て叫んだ
////////
なす術もなくやられるラメールを見て、ローラは我慢出来なかった
このままでは取り返しのつかない事になる
それを予感したローラは、二人の前に出て止めるしか出来なかった
「あれ?またローラか?」
そう言って、帝は足に力を入れてラメールの首をへし折った
抵抗していたラメールの手は、力を失くして動かなくなった
「なるほどな…別の時間軸から来たローラか。こんな芸当が出来るのはアリスだけだ」
ローラを一目見ただけで全てを察して当てた
「久し振りに制服姿の見れて嬉しいよ。しかし、リボンがズレてる。直してやろう」
帝はローラに近付き制服の乱れを整える
「今のお前の考えを当ててやる。『何でこんな事をする?』『一体何があったの?』。そんな所だろ?」
ローラは唇を噛み締めて黙る。それは図星を表していた
「悪いが今はその質問に答える気は無い。俺はラメールを…ローラを連れて行かないといけないからな」
制服から手を引いて、倒れてるラメールの頬を撫でる
「人は俺を歪んでると言うだろ。でも俺は、殺す程まで愛してる。文字通りな」
帝は立ち上がり、ローラの目を見て話す
「俺を止めたいなら俺を殺すんだな。ローラがな。そしてちゃんと見届けろ。この悲惨な結末を変えられるのはお前だけだ」
「変えるって?」
「アリスは帰すと言ったのだろう?」
「え、えぇ…」
「戻ったらすぐにでも俺を殺すんだ」
想像もしない言葉を投げられてローラは一気に冷静さを欠く
「じ、冗談じゃない!帝は大切な友達よ!そんな事出来る筈が──」
「何にも分かってない。その大切な友達が、今この地球を終わらせようとしている!もしやり直せるなら、ローラはきっと俺を殺す」
「そんな筈は無い!だってわたしは貴方の事が──」
「それがどうした?絵空事では何も救えない!周りをよく見ろ」
現実、街は崩壊し、人々はやる気を奪われ、未来の自分はたった今その命を落とした
「…道を踏み外したならもう一度戻せば…」
「ローラもそう思った。けれど俺からしたら鬱陶しく思える。対話が無理だと判断して結局勝負に出た。勝つと信じて。だが負けた、負けるんだよ」
「それでもわたしは…信じる!」
「流石俺が惚れ込んだ女だ。ますます気に入った……俺はこれで失礼する」
ラメールを抱いた後、頬擦りし、自分の手の中にラメールがいる事を堪能して立ち去ろうとする
「わたしは絶対帝を止める!どんな犠牲を払ってでも!」
「…どう足掻こうと、ローラは此処で死んで俺と一生共にする。悪いが、俺のやる気が勝つ」
ラメールを抱えて姿を消した
「ここまでよ」
突然アリスが背後に現れ、指を鳴らすとローラは意識を失った
////////
「……ラ!」
(ぅ…ん…)
「ロー………ラ!」
(だ…れ…?)
誰かの声がする。その声に誘われ目を開けると
「ローラ!おいローラ!」
目の前に帝の顔があった
「みか…ど?」
「何こんな所で寝てるんだよ?風邪引くぞ」
「え、寝て…」
顔を上げると、教室で自分の机に突っ伏して居た
「中々部室に顔を出さないから心配したんだぞ。来てみれば寝てるで」
「帝…」
「何ロー…ラ?」
ローラはいつの間にか涙を流していた
「おい大丈夫か?何か悪夢でも?」
「え?あ…」
ローラも自分が涙を流してる事に気付いた
「な、何でもないわ…」
「そう?なら早く部室に行こうか」
「ねぇ帝」
「何?」
「これからも、わたし達の側に居てくれるわよね?」
「何当たり前の事言ってんだ?変なローラ」
歩く彼の背中を見て願うしかなかった
帝が、あの様な道を進まないことを
不意に重たい話を盛り込みます
間に合えば、次は打って変わって日常回を挟みたいです
ここまでの拝読ありがとうございました〜