ではスタート
そしてパーティーの時間となった夜の時間
城下町はまだ騒がしくも明るくもありつつあるが、まだ太陽祭のメインが始まってすらない。
寧ろ、このパーティーこそが太陽祭のメインなのだ
帝達は個室で正装に着替え、それぞれ大広間へと向かっている最中だった
帝は黒のタキシード、まなつはピンク、さんごは薄紫、みのりは黄色、あすかは赤、ローラは水色のドレスをそれぞれ着飾っていた
「さんごお前可愛い過ぎな。目に入れても全く痛くない」
「フフ、ありがとう帝君!」
「いやいや、目に入れたら痛いよ?」
「まなつ、少し国語を勉強したらどうだ?」
「帰ったら付き合うよ」
「国語もいいけど作法もまなつは覚えないと。貴女、一体何にをしでかすか分からないもの」
「皆んなして酷い!!」
そして大扉の前で一同足を止める
「皆んな、礼儀正しくね」
ローラの注意を聞いて大扉を開けて大広間へと足を踏み入れた
「わぁ〜!!トロピカってる〜〜!!」
入って早々大声で叫ぶまなつに、一気に注目される
「みのり、馬鹿に効く薬は無いの?」
「それよりもここからは自由行動な」
部長である、あすかの許可でトロピカる部の面々は散らばって行った
「帝君、見た事の無い料理が沢山あるよ!」
「お、おい。受け皿に入らねぇぞ!?」
さんごの皿には、かなりの量の料理が置かれた
「大丈夫だよ!わたしと一緒に食べるんだから!」
「それ俺の分も入ってるのか!?」
「偶には一緒のご飯を共用して食べようよ!」
フォークを刺した料理を帝の口へと放り込む
「…うん美味しい。少しピリッとするけど、濃くなくサッパリとし過ぎずの丁度良い加減」
「帝君!」
「ほい」
「あ〜ん……ん〜っ!美味しいね!」
帝とさんごの二人は、お互いに食べさせ合いをしていた
「みのりん先輩みのりん先輩!これ美味しいですよ!あとこれも!」
「う、うん分かったから…」
まなつは、みのりの皿に勝手に入れては困らせていた
「まなつ、わたしはもういいから…」
「お肉だよお肉!お肉食べましょう!!」
「もう…」
「いい味ね」
「そう、だな」
あすかとローラはグラスを片手にジュースを飲んでいた
「ジュースだけど、甘くてサッパリしてる。それにこの果実が、原料となっている物の臭みを良い香りに変えてるわ」
「ローラ、食レポ出来るんだ…」
「フフン!」
「その顔腹立つな…」
あすか達も盛り上がってる最中、大扉からグレン王子、王様に女王が入場した
中でもグレンだけは誰かを探しており、誰か見つけたと思ったらあすか達の方へと向かって来た
グレンは一礼した後、改めて名乗った
「改めて自己紹介しよう。私はグレンと申します。以後お見知り置きを」
「わ、わたくしの方こそ、ローラ・アポロドーロス・ヒュギーヌス・ラメールと申します」
「滝沢あすかです」
「ローラさん、あすかさん。パレードの時はありがとうございます。他の方にもお礼を言いたいのですが…」
グレンは辺りを見渡すが、帝達の事を中々発見出来ない
「帝達の事は気にしなくていいと思います」
「ところで王子はどうしてこちらへ?」
「そうでした。ローラさん、私と一曲余興に付き合ってくれますか?」
グレンがローラに手を出したタイミングで、大広間に音楽が鳴り響く
「…では、お願いします」
ローラもそれで察してその手を受け取り、そのまま広間の中央に連れて行かれた
「……」
「あれ?あすか先輩ローラは?」
一人になった時、帝とさんごが顔を出して声を掛けた
「帝も分かるだろ?」
広間の中央に目を向けると、ローラとグレンが踊っていた。
勿論音楽が鳴り始めてから、他の人達も広間中央に集まって男女で踊り始めたのだ
「さんご、折角だからあすか先輩と踊ってみたら?」
「えでも、そうしたら帝君一人になっちゃうよ?」
「気にしない気にしない!」
さんごとあすかの背中を押し、笑顔で中央まで見送った
「はぁ…」
帝は一人寂しく城のバルコニーで、溜め息を吐いては柵にもたれ掛かっていた
(ローラはあの王子と一緒だし、さんごはあすか先輩。まなつとみのりん先輩はまだ食べてるし……何か寂しいな)
そんな感情に浸ってると、後ろから女の子が喋りかけて来た
「溜め息を吐いていましたら、幸せが逃げてしまいますよ?」
「え?」
振り返ると、赤いドレスを着たローラが立っていた
「路地裏以来ですね」
「ローラ?」
「フフ、意地悪はこの辺にしときましょうか。わたしは貴方の言うローラさんとは別人です」
「べ、別人!?」
髪色から声色まで、顔も何もかも同じ存在。違いを出すとなると、今着てるドレスのみ。それ以外は瓜二つなのだ
「じゃあお前は誰何だ?」
「…一曲お付き合い出来ますでしょうか?」
少女は手を差し出て、ダンスの誘いをした
「一曲って、音楽なんて此処には…」
ふと耳を澄ませると、音楽が外まで漏れていた
「そういう事か。暇だし付き合うよ」
差し伸べられた手を取り、少女と余興をする事となった
「路地裏では助かった。ありがとう」
「いえ。困っている人を助けるのが好きなので。そう言えばまだ、お名前をお伺っていませんでしたね」
「帝だ」
「帝様。フフ、良いお名前ですね!」
「君の名前は?」
ローラと違うと言われてから、少女の名前が気になり質問を返したのだが、ダンスの振りに紛れて指で唇を押さえられた
「ひ・み・つ!」
「秘密ってお前なぁ…」
「女性に秘密は付き物ですよ」
「なら、何処から来たんだ?」
「秘密です!他にご質問はありますでしょうか?」
「…辞めだ。答える気無いだろ?」
「フフ、バレちゃいましたか」
けれどそこで一番聞きたい事を思い出した。
そもそも今回はその用事で遥々ここまで来たのだ。
未だに手掛かり無しという訳にもいかない
「なぁ、空のリングって聞いた事ないか?」
「…"太陽の指輪"でしたら聞いた事ありますが、空のリングと言うのは初耳です」
「…因みにどんな指輪何だ?」
「そうですね……一口で言ってしまいますと、その所有者によって形を変えると言われております。心の中の太陽は人それぞれ異なる輝きを持ち、その人だけの指輪になると伝えられて……もしかして欲しいのですか?」
「それが空のリングならな」
「でしたら──」
ダンスも終盤へと差し掛かり、お互いに最後を決めて終わりを告げた
帝の手を離す前に、少女は懐から一個の指輪を取り出しては握らせた。それが少女が言っていた「太陽の指輪」
「指輪…お前が持っていたのか。それに…良いのか?」
「はい。今のわたしにはもう必要無い物ですので。代わりと言って何ですが、一つだけお願いを宜しいでしょうか?」
「いいよ。タダより高い物は無いしな」
「グレン王子を救ってはくれませんか?」
「命を狙われてるのか?」
「いえ。グレン王子は帝様とよく似ておられます」
「俺と?」
そこへ踊り終えたさんごがバルコニーへやって来た
「あ、帝君!こんな所に居たんだね。ところで誰と話してたの?」
「誰って…あれ?」
隣を向くがそこには少女の姿は何処にもなかった。
音も無く消えたのだ
その代わり、懐いていたホムラ鳥が柵に止まっていた
「まさかとは思うが、お前があの少女とか言うなよ?」
「ピィ?」
ホムラ鳥は首を傾げて城の天辺まで飛んで行った
「帝君戻ろうか。夜になると冷えるって聞いたから」
「それは大変だな」
////////
帝と少女がまだバルコニーでダンスしてる時、ローラとグレンは思う以上に距離を縮めていた
「ダンスがお上手ですね」
「お褒めの言葉ありがとうございます」
「…もう少し距離を縮めては如何なものですか?こうフランクに」
「じゃあ遠慮無くそうするわ。でも何で急に?」
「その方が話しやすいので」
グレンはローラの腰に手を当て、息が掛かる程まで身を引き寄せた
「時にローラは心に決めた人はいるのかい?」
「え?えぇまぁ…」
「浮かない顔だけど何かあったのですか?」
「ここ最近彼の様子がおかしいのよ。なんていうか、昔みたいに戻ったみたいで」
ローラの言う彼とは帝の事だ。グランオーシャンでの一件以来、ローラは少し様子を伺っているのだ
「不安なのか…」
「まぁそうね…」
「…そろそろ音楽も終わります。その時良いお知らせを言いますので、きっと喜びとなるよ」
「それは楽しみね」
音楽が止まり、お互いに一礼した後グレンは大広間の奥にある階段を登り声を上げる
「諸君!今年の太陽祭は盛り上がっていますか?時に、トラブルもありましたがご安心下さい!外敵から救って下さった勇気あるお客様がお越しなさってます!そんな彼女達に讃える拍手を!!」
広間の明かりが消えたと思いきや、まなつ達へとスポットライトが照らされた
「おぉ〜ってあれ、さんごと帝は?」
「それなら…来たよ」
バルコニーから帰って来た二人にもスポットライトが照らされていた
「何が始まるんだ?」
「王子が昼間のわたし達の活躍を讃えてくれるってさ」
「それでわたし達だけにライトが照らされてるんですね」
広間中大勢から拍手喝采を浴びてむず痒くもありつつ、プリキュアとしてやって来て改めて良かったと認識した
「では、ローラ・アポロドーロス・ヒュギーヌス・ラメールよ。私の所へ」
帝やまなつ達がいる中で、何故かローラだけが呼ばれた。
首を傾げつつもグレンの元へ歩いて行く
「ローラよ。昼間の騒動での沈静化感謝する」
「こちらこそお言葉光栄に御座います」
「そこで私は思った。この人こそ、共に国を背負うパートナーとして相応しいと。ローラ───私の"妃"になってくれないだろうか?」
「……へ?」
「「「「「えぇぇぇぇ!!!?!」」」」」
感謝の言葉より突然の求婚。ローラは素っ頓狂な声を出し、帝達は驚きの声を大きく上げた
「ちょっと待って!急過ぎるわよ!それにこの国には王女がいる筈よ?」
「今この国には王女はいない」
「なっ!?」
「だからローラ。君にこの国の王女、いずれは女王になって欲しい」
「でも…」
ローラはふと帝達へ目を向ける。あわあわと慌ててる仕草をしていたのだ
「折角だけどお断りするわ。わたしには皆んなが居る。それに……心に決めた人がいるから」
「…あの少年か?」
「えぇ…帝よ」
「そうか、なら────亡き者にすれば済む話だな」
グレンが指を鳴らすと、大広間の扉から大勢の兵士達が現れて、逃げられない様に広間を囲い込んだ
この状況に、王様、女王共々予期してなかった
「グレン!」
「お父様、お母様。私はもうこの手は離しません。邪魔する者は全員始末する!!」
突然の豹変に動揺しない人などいない。兵士達も、王の声など全く聞こえてない
「全員捕らえろ!特にあの客人は丁重に持てなすんだ」
兵士達は次々と広間に居る人達を捕らえては、引き摺って何処かへ連れ去って行く
逃げようとするなら、女子供問わず捩じ伏せる
それは帝達も同様だ
「さんご、みのり下がれ!」
「ほっ!急に何なの!?」
「どうやら面倒事になったな!」
あすかがさんごとみのりを庇い、帝とまなつが降り掛かる火の粉を払い除ける
しかし数が数で防戦一方。帝はやむなくステッキを握る
「ルーレットスタート!」
『ATTACK!』
オーシャンステッキを両手で持ち、回転しながら一気に振り抜ける
それによって風圧が起き、周りの兵士達を吹き飛ばした
「ローラ!!」
帝は一心不乱にローラの元へ駆け抜ける
「帝君!」
「勝手な」
「皆んな来るよ!」
「取り敢えずわたし達も変身」
まなつ達はプリキュアへと変身を遂げた。
散開して兵士達を傷付けず、無力化しようとしたがそんな彼女達の前に、二人の兵士が立ちはだかった
その兵士は街でグレンを護衛していた者
拳を握る者の名は「ソル」
槍を握る者の名は「バーナー」
「「「「やぁぁぁ!!!」」」」
「邪魔だ退けェェ!!」
兵士を一人殴り、かわしてからジャンプして、兵士達を足場にしてその上を跳んで行く
「帝!」
「ローラ──ッ!?」
あと一歩の所で誰かに腹を蹴り飛ばされた。受け身を取りつつ前方を確認すると、先程まで居なかった人物が立っていた
「隠れていたのか…」
「オレはそういう者なので」
手には鎖が巻き付けてあり、その先には大きな鉄球が付けられてあった
「ヒート、排除しろ」
「帝逃げて!」
ヒートが鉄球を振り回すが帝は、ステッキを巧みに使い受け流した
「ハッ!」
振り回した勢いを利用して、天井高くまで振り上げ、今度は叩き付けて来た。
上手く避けたが、床にクレーターが出来上がった
当たれば一撃必殺。しかし重い武器な事もあり、遅ければ動きも単調で読みやすい
「プリキュアの王杖!」
ならば最短距離で正面突破
(この程度の相手なら造作もない)
『ABSOLUTE!』
「──【這い蹲れ】!」
「ッ!?」
四つん這いになるヒートの横をすり抜けた
これで帝を邪魔する者はグレンのみ
「何考えてるか知らないが、ローラは返して貰う」
「ダメだ」
グレンの指先から小さな火の玉が出て来た。攻撃のつもりか、何をもって出したのか不明だが帝は安全に最小限の動きで回避する
「その油断が命取りとなる」
指を弾くと火の玉は光を発した
(これは──)
その瞬間、光は帝を呑み込み大きな爆発を起こしたのだ
「帝!!」
爆発で起きた煙から帝は上へと飛び出した
「グッ…!」
帝は何とか回避していた。
しかし、爆発が起きた場所は跡形も無く吹き飛んでいた
帝も無事でいたが、爆風の影響で左半身が軽度の火傷で負っていた
「この…!」
「帝左!!」
ローラが声を上げるも帝には見えていなかった
「がっ──」
火傷が目にも負っており、まともに開けれる状態では無く、視界が悪かったのだ
鉄球が直撃した帝は当然、一瞬で意識を刈り取られた。
崩れ落ちる帝だが何とか踏ん張った
本能か、それとも彼のプライドがそれを許さなかったか定かではないが耐え切ったのは事実
(意識が朦朧とする……早くローラを…)
ソルと戦っているのはサマーとコーラル
自分達と同じサイズの拳を受け切るのも限界に近付いて来た
『ぺけ!』
「くっ…きゃあ!」
「コーラル…大丈夫?」
「だ、大丈夫…でも」
コーラルのシールドがたった一撃で破られた。見た目通りの破壊力に手が未だに痺れている
「そんなものか!!」
「コーラル危ない…うわっ!!」
「サマー!!」
薙ぎ払われた腕からコーラルを庇う為にサマーが代わりに受け、床をバウンドしながら転がっていく
「はぁ…ぁ…」
力を振り絞り立ち上がったが、とうとう力尽きてしまいその場に倒れ変身も解けてしまった
「まなつ…ハッ!」
まなつを心配するあまり背を向けてしまったのが失敗だった
コーラルに覆い被さる様に背後から大きな影が重なる
「プリキュア!もこもこコーラルディフュージョン!」
すぐさま振り返り、超至近距離での技を放った
「ッ!?」
しかしそれでも尚立っていた
「終わりだ!」
「ッ!」
『ぺけ!』
振り抜く拳にシールドで防御するも、力技で強引に押し込まれた
「ぁ…ぁ…」
今の一撃でさんごも倒された
「クソ!」
「なんて槍捌き!」
パパイアとフラミンゴはハートルージュロッドを用いて、バーナーの槍に対抗しているが一枚も二枚も上手だった
「緩い!」
「ッ!?」
フラミンゴのハートルージュロッドが弾かれてしまった
けれどパパイアすぐにフォローに入る
「フラミンゴ伏せて!」
「ッ!」
「プリキュア!ぱんぱかパパイアショット!」
「無駄な事を」
バーナーは槍を巧みに回してパパイア攻撃を無力化した
「防いだ!?」
「だから言ったろ。何をしても無駄だと!」
「「キャアァァ!!」」
一瞬で距離を詰め横の薙ぎ払いで吹き飛ばされ、パパイアとフラミンゴは壁に打ち付けられて変身が解けてしまった
「ぐわっ!!」
炎の縄が帝を拘束し、柱へと括り付けられ完全に動きを封じた
「プリキュアの王杖!」
拘束されてるとはいえ手は未だ健全。ステッキさえ握らせれば此方のペースと考える
「【解けろ】!」
しかし、プリキュアの王杖を使っても炎の縄が解かれる事はなかった
「何でだ!?」
「プリキュアの王杖が通用しないなんて!?」
「なら力づくで──」
腕に力を入れようとした時、何かが頭を強打し気絶させた
「帝!!」
「全員牢に入れるんだ」
「グレン貴方…ッ!?」
抵抗とも言える睨みで威嚇しようとしたが、それすらもローラに与えさせない程のモノを見てしまった
グレンの背後から黒い炎が燃え上がっているのを
「これで君は私のもの。もう二度と────
────離さない」
頭の中では構成は出来ているが、それ故に難しい
ここまでの拝読ありがとうございました!