トロピカル〜ジュ!プリキュア PICARO   作:シロX

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そんな訳で最終決戦です。ちょっと文章力が乏しくなっている上、主人公めちゃくちゃです

ではスタート!


第84話 ローラや皆んなの為ならこの世の全てを敵に回す。誰もが幸せな世界でトロピカる部を続けたい。悲しいことや辛いことなどせずに済む。その為に俺は世界に君臨する。これが俺の“今、一番大事なこと“だ。

「何を、考えてるのよ?」

 

愚者の棺に溜まってあったやる気パワーを全て、自分の体内へ移し替えた帝の行為

 

それはサマー達からしたら全くもって意味不明。

しかし帝にとっては意味のある行為

 

「何を、しているのよ?」

 

「見れば分かるだろ?」

 

「答えなさい!!」

 

「……」

 

「お願い、答えて……お願いだから…!」

 

震え声のラメールはこの状況を理解出来ていない。してる筈なのだが、そう思いたくはない

 

「…俺の描く理想の幸せじゃなきゃ、この世界に守る価値など無い」

 

「何馬鹿な事言ってる帝!守る価値が無い?ふざけるな!!」

 

「ふざけてなどない。知っているだろ、俺の戦う目的」

 

帝が戦う意味。それは皆んなの幸せを願ってのこと。それはもう皆んなが知っている

 

知っているからこそ疑問にしか浮かばない

 

「帝、早くやる気パワーを出さないと!」

 

「手放なさい」

 

「本当にこれが帝の今、一番大事なことなの?」

 

「そうだ」

 

「帝君──」

 

「くどいぞお前達。そもそもこの先の未来はもう終わっている。

 

帝はサマー達に手の平を向ける。完全に敵対関係となってしまっている

 

「わたしは…貴方と戦いたくは──」

 

帝から紫の光弾が放たれ、無慈悲にも説得するラメールを攻撃した

 

冷徹な目で見抜く帝は懐から、超ゼッタイヤラネーダの素を四つ取り出して使用した

 

「「「「ヤラネーダ!!」」」」

 

「ヤラネーダ、サマー達の相手をしろ。俺はラメールだ」

 

ヤラネーダ達はサマー達へジャンプして、ラメールから全員を引き剥がした

 

「帝君!!」

 

「大丈夫だコーラル。後で相手をしてやるからな」

 

一人一体という過酷な条件で相手をする事となってしまった

 

そして倒れているラメールに見下して言葉を投げる

 

「ラメール」

 

「み、かど…」

 

「寝てる暇はないぞ。それとも諦めたか?」

 

雑にラメールの髪を掴み上げて起こさせる。今から始まるのは強者が弱者に対しての暴力、虐めだ

 

帝は拳を作り振り上げる

 

「これで──」

 

「帝君ダメェェェェエエ!!」

 

『ぺけ!』

 

直前、コーラルのシールドが間に割って入り、やむを得ずラメールから距離を置く。

コーラルは、後ろからヤラネーダが追いかけて来るにも関わらず、ラメールを助ける事を最優先とした

 

実力差もあるが何より、精神的に問題を抱えたままでは無様にやられるのはオチ

 

「ラメール歩いて!」

 

コーラルは逃げる様に促すが、当のラメールは動くこともせずその場に崩れ落ちる始末。

そして変身も解けてしまい、完全に戦意喪失となってしまった

 

「一分だ。一分待とう。それだけの時間があれば立て直しもきくだろう」

 

「……」

 

コーラルはローラの手を引いて無言でその場から逃げ出した

 

「ヤラネーダ!」

 

「追うな。いずれ戻って来る。必ずな」

 

追跡しようとするヤラネーダをわざわざ止める指示を出した。

このまま逃げてしまう恐れもあるが、帝の中ではそうは思わなかった

 

彼女達は絶対に逃げない。何故なら

 

プリキュアだから

 

 

 

 

 

なんとか逃げおおせたサマー達は岩陰に隠れていた

 

「クソ!まさか、あそこで帝があんな行動を取るなんて考えもしなかった!」

 

「コーラルの件でもうそんな気は無くなったと思ってたけど」

 

「多分ずっと機会を伺ってたのかも。帝君、慎重な所あるから」

 

「また話し合いでなんとか出来ないかな?」

 

「……そんなの無理よ」

 

サマー達が帝についてどうするか話し合いをしていたが、ローラだけはそうではなかった

 

「いやほら、前はコーラルと話して解決したし」

 

「今の帝は、そんな生易しいものじゃないわよ……本気で、本気でわたし達を倒そうとしていた。折角ここまで来たのに…」

 

「だが、帝を何とかしないと世界が終わってしまう」

 

「約束したのに…」

 

「ローラ気にしたらダメだよ」

 

「もう、無理…色々耐えて来たけど無理よ…」

 

突然の帝の裏切りがローラを弱らせる。自分の気持ちにも最近気が付き始めて、これからというのにこの仕打ち

 

そんな弱音を吐くローラにコーラルは少しムカムカとしていた

 

「ローラらしくない。こういう時、いつものローラなら帝君を何とかしようと動く」

 

「そんな無理よ…」

 

「無理無理ばっか!」

 

「ちょちょ、コーラル落ち着いて!」

 

「サマーは黙ってて!」

 

「はい…」

 

止めようものならコーラルがすぐに怒る。サマーの様子を見て、それにパパイアとフラミンゴは萎縮する

 

「わたし思うの。今の帝君を止められるのは、わたしやサマー達じゃない。ローラだけなの」

 

「それは理想論よ!見たでしょ?わたしは帝とは戦いたくない!こんな結末わたしは嫌よ!!」

 

「それでも!!」

 

「ッ!」

 

声を張り上げたコーラルにローラは少しビクつかせた

 

「それでもローラしかいないの。ローラしか帝君を助けれない…」

 

涙が出る程まで悔しかった。コーラルの声は、もう何言っても届かない事は自分でも重々知っている

 

もし、彼に届かせる言葉を誰か持っているとしたらそれは一人。彼が一番大事な人と思っているローラだけ

 

ローラ以外の人の説得はほぼ皆無

 

「ローラの声ならきっと帝君は聞いてくれる」

 

「もし無理だったら?」

 

「そんな事は絶対にないよ。だって帝君、ローラの事大好きだから!」

 

「…」

 

「ねぇローラ。ローラの今、一番大事なことは何?」

 

「わたしの、今、一番大事な、こと……」

 

深く考えてみる。今、一番大事なことは何か

 

愚者の棺を壊す?

 

違う

 

帝を止める?

 

少し違う

 

なら帝を────

 

「「「「ヤラネーダ!」」」」

 

上を見上げれば四体のヤラネーダが顔を覗かせていた。

上手く隠れてたかと思ったが、その認識が甘かった

 

「「「「やあぁぁ!!」」」」

 

サマー達がヤラネーダを体当たりをして、ローラに近付けさせない様にする

 

「待ってて!わたしも早く変身──」

 

「ローラ行って!」

 

変身しようとパクトを持つもサマーがそれを止める

 

「此処はわたし達に任せるんだ!」

 

「ローラはローラにしか出来ない事がある!」

 

「待ってるから!ローラが帝君を連れて帰って来るのを!!」

 

「皆んな……ッ!!」

 

ローラはサマー達を信じ、作られた道を全力で泳いで行った

 

 

 

 

 

////////

 

「来たな、ローラ」

 

半壊した屋敷で待っていた帝。ローラが来るのが最初から分かっていた

 

「ローラ俺と来い。お前が来ればこの世界はより良い方向へとなる。人魚の掟、人間界での小さな事で悩む事など無くなる。さぁ!」

 

「今の帝にはついて行けない。止める為に此処に来たの」

 

「フフ…アハハハ!俺を止める?究極にして完全、完全にして完璧、完璧にして最強、最強にして無敵!今の俺は誰にも止められない。この俺が絶対だからだ!全ての生物を超越し、全ての頂点に君臨した人間。それが俺、始皇帝である皇帝だ」

 

そんな無茶苦茶で自分勝手な事が良い訳がない。

腹も立つし、なんて返せば良いのか分からないが思える事は一つだけ

 

「『皆んなを幸せにする』あのやる気と願いは嘘だったの?」

 

そもそも帝の戦う理由はそれなのだ。誰かの為に全力で成し遂げる

 

けれど今は……それよりもずっと前からだ。その考えが余りにも極端になり過ぎている

 

さんごの時もそうだったが、他人の為と言いつつもそれは一周回って自己中心的なもの

 

それが帝を暴走させている最大の要因

 

しかしその事について本人が全くもって悪いと思っていない。寧ろ良いと感じている始末

 

「いいや、皆んなを幸せにする事は俺の夢。だが悲しい事に、その夢は今のままでは一生叶う事など無い」

 

「そんな事──」

 

「ある。一年近くお前達と一緒に過ごしたからこそ分かる。あすか先輩は仲間から裏切られ、みのりん先輩は否定され、さんごは自分の殻に閉じこもってしまった」

 

帝の言う様にこの一年で沢山の光景を目にした。良い事も悪い事も全部。

最終的に良い結果とはなりはしたが、それまでの過程が帝の考えをより強固なものとする

 

「お前もそうだろ?グランオーシャンに帰れば記憶を消される。本当にそれが幸せなのか?」

 

「……」

 

「だからこそ必要なのだ。誰かが世界を掌握し、統治して一つになれさえすれば幸せの世界を実現出来る!人は大きな力を恐れ、平伏し、従う!世界を掌握する者…つまり始皇帝である俺が世界を導く者となる!!正しく本来あるべき王としての姿…素晴らしいとは思わないかローラ?」

 

「それが帝の目指す夢の果て…」

 

「最後だ。ローラ、俺の手を取れ。俺と一緒にこの世界を導く王として、やる気が絶えない幸せな世界を創るんだ。プリキュアの力も、その時初めて正義と為す。またトロピカる部の皆んなで、トロピカるな事を成し遂げよう」

 

手を伸ばし誘いを掛ける。けれどローラは、首を横に振ってその手を受け取る事はなかった

 

「愚かな、永遠にトロピカる部で幸せな日々が送れるというのに。それは誤った選択だ」

 

「だとしてもわたしはこの世界を守る。そして───」

 

 

 

「プリキュア!トロピカルチェンジ!」

 

「レッツメイク!キャッチ!」

 

「フェイス!」

 

「ネイル!」

 

「ドレス!」

 

 

「ゆらめく大海原!キュアラメール!」

 

 

 

「そして帝、貴方を連れて帰る!それがわたしの今、一番大事なこと!!」

 

「ッ!!」

 

ラメールの言葉で戦闘が突然始まった。不意打ちの紫のビームを放たれたが、ラメールはジャンプして避け、海中を今まで以上に泳ぐ

 

帝の背後で浮かんでいる幾つものルーレットの針が一斉に動き、能力を同時に発動させる

 

『ATTACK!』

 

『NATURAE!』

 

『SPACE-TIME!』

 

ラメールに手の平を向け、渦潮を仕掛けて来る。ATTACKで攻撃力を増し、SPACE-TIMEで視覚からの位置から送り付け不意打ちを食らわす

 

「グゥ…ッ!!」

 

痛みに耐えながら渦潮を抜けようとするも、周りを見れば四つの渦に取り囲まれていた

 

完全に逃げ場を無くした上、徐々に近付いて来る。

渦潮の勢いが更に増して、とうとう四つの渦が一つになってしまう

 

巨大な渦潮にラメールは呑み込まれ、体を引き千切られる感覚に襲われる

 

無理矢理渦からの脱出をしたのだが、体はボロボロな上想像以上にダメージが蓄積されており肩で息をしていた

 

それでも引く訳にはいかない

 

「プリキュア!オーシャンバブルシャワー!」

 

距離を取りながらも浄化技を放ちはした

 

しかし、帝に触れるとオーシャンバブルシャワーの泡が全て弾けて終わる。

これといった事は何もしてはいない。只普通に受けただけ

 

それが何を意味するのかはもう言わずと知れてる

 

「全く効いてないなんて…」

 

歯軋りしてまう気持ちが込み上げる。

帝は文字通り無傷だった。水中というのに、わざと服についた埃を払うフリをして余裕を表していた

 

「よくもそれで俺を止めようとしたな。それでも俺は手加減は、しない!!」

 

帝は懐から超ゼッタイヤラネーダの素を一つ取り出した

 

ラメールは訝しげにその様子を見る。今更ヤラネーダが出て来たところで、自分の足を引っ張るだけ。それは本人が一番よく分かっている

 

「見せてやる。全てを懸けた俺の覚悟を!」

 

すると帝は、バトラーと同じ様にヤラネーダの素を自分に使い、それを体内へと取り込んだ

 

帝の周りを紫のオーラが渦巻き、帝自身に変化をもたらす

 

「あ、あぁ…」

 

その様子にラメールは絶句する

 

肌の色は青緑で鱗も所々身に付け、瞳は赤く染まり見た目は完全に人間と魚の境目、半魚人と化していた

 

「見ろよラメール。やる気パワー、ヤラネーダ、そして俺自身の力。その全てを兼ね備えた俺は人間という枠からはみ出した。これも全部お前達の為だ」

 

瞳が光ると帝の姿が消え、一瞬で目の前まで迫った

 

「────ッ!?」

 

顎を打ち上げられた。驚く余り一瞬反応が遅れたというのもあるが、それでも攻撃どころか近付いて来た事すら視認出来なかった

 

気付けば顎は跳ね上げられ、その勢いは止まらず海の外、海上まで打ち上げられた

 

「がっ────」

 

痛みを耐える瞳は空を見上げていたが、瞬く間に帝の姿によって遮られる

 

(いつの間──)

 

考える暇など与えられず、今度は踵落としを胸に食らわし、また海の中へと強制的に引き戻した

 

水中だというのに落ちるスピードは和らぐ事なく、屋敷近くの地面に叩き付けられ埋もれる形となった

 

(速過ぎる…!)

 

何とか体を起こし、顔を上げるとその先に帝は此方を見据えていた

 

「これならどうなの!──プリキュア!くるくるラメールストリーム!」

 

『DEFENCE!』

 

今度は受けるのではなく、盾を展開させて防御する。

当然ながら、くるくるラメールストリームでは突破出来ず無駄な攻撃となった

 

だがそれは囮。本命は、技に隠れたラメール自身

 

「ッ!」

 

盾を蹴り上げて強引に引き剥がして拳を振るも、届く前に喉を掴まれてしまった

 

「ぁ…が…っ、!」

 

ジタバタもがいて振り解こうとするも、肺に空気が行き届かず力を出し切れない。

握られる手に力が込められ始め、息苦しさが増して意識が遠のいて行く

 

次第にもがく体は力を失くして、その腕を下ろしてしまう。

それを見た帝は喉を掴む手を緩め、代わりに渾身の一撃を腹に加える

 

「ブハッ!!?」

 

その衝撃は全身に一気に伝わり、背中から衝撃波が出る程だった。

車に撥ねられた人形の様にラメールは転がって行く

 

「オエ゛ッ……!!」

 

急激な意識の目覚めの混乱と、腹に貰った攻撃に吐き気をもようして、地面に吐瀉物を撒き散らす

 

「どうした?俺を止めるんじゃなかったのか?」

 

「…プッ!」

 

口の中に残る吐瀉物を吐き出し、口周りを拭い。

足元がまだおぼつくが弱音を吐いてる暇はない

 

ラメールは指輪一つ取り出す。その指輪は、とある幸せの国の女王から譲り貰った物。

共に女王になってより良い国作りと、友達からの贈り物

 

(シャロン、わたしに力を貸して!)

 

 

 

「スノーハートクルリング!」

 

「おめかしアップ!」

 

「スノークリスタル・トロピカルスタイル!」

 

 

 

 

「ッ!!」

 

ラメールもパワーアップして機動力は先程よりも格段に上がっている。

それを活かして連撃を繰り出すも全て避けられるか、受け流される

 

これでも尚帝とは互角に戦えない

 

「どうしたそれで全力か?もっと本気で打ってこい!!」

 

「ハアァァァアアッ!!」

 

挑発されてか、更に攻撃を繰り出す速度にキレが増して来る

 

思い付く限りの組み合わせで攻撃し続ける

 

右拳からフェイントを掛け、腰を低くして左足で蹴り付けようとするも読まれており、受け止められ投げ飛ばされる

 

体勢を整え、水を蹴り付けて体を一回転させて踵落としを繰り出したが、またも脚を掴まれ二度と地面に打ち付けた後、脇に拳を打ち付け軽く吹っ飛ばす

 

ラメールの背中に回り込んでは蹴り付けて、這い蹲らせるも瞬時に起き上がってジャンプして距離を置く

 

易々と逃す訳にも行かず、地面を蹴り距離を詰める。折角距離を置いたにも関わらず、たったひと蹴りで追い付かれてしまっている

 

完全に帝の方が実力が上で、それを埋める事はほぼ不可能

 

「クッ…っ!」

 

ここまで接近したのなら通用しない打撃ではなく、自分の体の柔らかさを活かして掴み技で反撃しようと試みるも、容易に手を簡単に振り払われてしまう

 

そして反撃の頭突きでラメールを怯ませ、帝はラメールの左肩を掴んで関節を外して脱臼させる

 

(痛い!痛い痛い痛い痛い痛い!!)

 

人生で初めての脱臼に涙を流しながら心の中で泣き叫ぶ。

初めてという事は、戻し方も分からないというのも事実

 

(でも──ッ!?)

 

肩を気にする余り帝の姿を見失ってしまった。戦闘において相手を見失う事は命取り

 

後頭部から強い衝撃を受けて顔から倒れてしまう。

軽く蹴り飛ばして仰向けにさせては、顔を何度も何度も強く踏み付けて痛め付ける

 

「ッ!!」

 

ラメールも只踏み付けられるだけでは終わらない。帝の足をタイミングよく掴んではそのまま持ち上げ、自分の両足を曲げて帝の腹に蹴り付ける

 

「まだ抵抗するか」

 

「抵抗、するわよ!!」

 

ラメールは近接に持ち込む為に接近するが、ジャンプで避けられラメールの真上を通り背中に回り込み、背中から抱いて締め上げる

 

「無駄だ。諦めろ」

 

「諦めないわ…絶対……うぎゃッ!?」

 

喋るラメールの股間を膝で蹴り上げて黙らせた

 

「嗚呼、俺のローラ。何でこうも聞き分けが出来ないのか?」

 

ラメールの顎下を優しく撫で、頬を舌で舐め回して堪能する

 

「思った通りローラは美味しい。食べても良いか?」

 

「それで帝が全部捨ててくれるなら。わたしは、わたしの人生を貴方に捧げても良いわ」

 

「それは良い提案だ。だが無理だ」

 

「そう言うと思ったわ」

 

締め上げられてる状態で器用に手を動かして、シャボンフォームに変形させたパクトを帝の腰に当てる

 

「クッ!」

 

食らっても無傷に済むとはいえ、当たれば痛いものは痛い。

それを思い、ラメールを蹴り飛ばして至近距離からの技を回避する

 

「フッ!」

 

ラメールが振り返ると同時に拳を突き出して殴り掛かる。

対しラメールは防御するのだが、脱臼して使い物にならない左腕を持ち上げて拳を受け止める

 

「〜〜ッ!!」

 

拳を受け止めたのは良いが肩から鈍い音が聴こえた。

しかしこれがラメールの狙い

 

帝の拳を受け止めた衝撃を利用して、外れた肩を強引に戻したのだ。その代償として、激しい痛みを感じる事となったが安いもの

 

脱臼した肩が治って左は完全復活。手にも力が入り、引き戻そうとする帝の拳もがっちり掴んでいる

 

「この!離せ!」

 

「えぇ、離してあげるわよ!!」

 

帝を引き寄せ右拳で頬を打ち抜き、大きく後ろへ後退りして帝は殴られた頬をさする

 

「キッ!調子に乗るな!!」

 

勢い付いてるラメールに癪に触り、今まで以上のエネルギーを右手に集めて紫の球体を作り投げつけた

 

直撃し、爆発と泡でラメールの姿が見えなくなる。

確実に手応えはあった。勝利を確信して力を抜くと、泡の中からラメールが飛び出して懐に潜られた

 

「おりゃあァァァ!!!」

 

腕での防御は間に合わない。かと言って能力を使うにしても間に合わない

 

帝の顔面にラメールの渾身の右がクリーンヒットし、屋敷まで吹っ飛び壁をぶち破って瓦礫に埋もれていった

 

「クソ……ッ!?」

 

瓦礫から這い出た帝だが、自分の姿を見て衝撃を受けた

 

「貴方の負けよ帝。もうこんな事は辞めて」

 

そして目の前には、ラメールが帝を見下ろしていた。

帝は両手に尻餅を付いて倒れて見上げている状態

 

「そんな、馬鹿な……この俺が負けるだと?」

 

これまで帝は戦闘では多少の苦戦は有りはしたが、倒れるという事自体は無かった。

それは彼自身が無意識の内にそうさせなかったのだ。

本能なのだ。倒れたら負けというその事実が

 

そして帝は今、ラメールの攻撃によって初めて倒れた(・・・・・・)のだ。

帝にとってそれは屈辱以上のもの

 

「ほら手」

 

そして追い討ちを掛けるようにラメールは手を差し出した

 

その行為によって帝の中で何かが解放された

 

「ふざけるな!!!」

 

「ッ!?」

 

激しい怒号を浴びせられ、ラメールの手を振り叩いた

 

「そんな事!!あってはならない!!」

 

帝の体が光り輝き始め、ラメールはそれは危険と察知しその場からすぐに離脱しようとするも、それよりも早く光りがラメールを呑み込んだ

 

光りが辺りを包み込むと巨大な爆発が発生し、何もかも全て吹き飛ばした

 

 

 

 

 

「く、うぅ…」

 

水中で浮かぶラメールの姿はボロボロだった。

少しだが気絶していた事に気付いた

 

体を起こして辺りを見渡すと有り得ない光景が広がっていた

 

「そんな…なんて威力なのよ」

 

激しい爆発によって屋敷だけではなく、足場となっていた岩場までもが消し飛んでいた。あるのは海水のみ

 

そしてラメールの正面先には帝が見据えていた

 

「帝…あ」

 

スノーハートクルリングの力を使い切ったのか、スノークリスタル・トロピカルスタイルが解けて元の姿に戻ってしまった

 

「こんな時に…うっ!?」

 

突然の咆哮。ラメールはそのうるささに両耳を塞ぐのだが、それでも頭の芯まで響かせる

 

「ごのッ!!ごのッ!!ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!」

 

大声を出しているのは帝だった。プライドをズタボロにされたあまりからの怒りの咆哮

 

「ローラ!ローラッ!!ロォォォォラァァァァァァアアッッ!!!」

 

「言いたい事があるならハッキリ言いなさいよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨の様に降り注ぐ攻撃の中に、ラメールは飛び込むのであった




次回で決着付けます

ここまでの拝読ありがとうございました!

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