狩人テペスの冒険   作:ヤングフンター

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5

「死ね!」

 すかさず発砲するテペス! 赤熱発光した水銀弾が一直線にカークの眉間に向かう! だがカークは驚異的なまでに棘々したビッグラウンドシールドを動かして防御! 水銀が赤黒の表面に広がる!

 

「ブルシット!」

 テペスは悪態を吐いて前に出る! ピーシャは既に詠唱を開始! 山羊頭に致命的な大火傷を負わせた炎魔法、これが放たれるまでの時間を稼げばいい!

 

「オラァッ!」

 横凪にスイングされる大鉈! 刃の部分に並んだ無数の尖った骨はカークの姿に勝らずとも劣らない棘々さ! 棘々対決だ!

「おっと!」

 再びテペスの攻撃を阻む驚異的なまでに棘々したビッグラウンドシールド! そしてテペスの脇腹へ邪悪なほどに棘々した肉厚ロングソードを突き立てようと剣を構えたカークだったが、左手の短銃の虚無が逆にカークの脇腹を見つめていた!

 

「死ね!」

 発砲! しかし危険を予知したカークはバックステップしながら驚異的なまでに棘々したビッグラウンドシールドを構えて防御! 再び赤黒のキャンバスに銀色が塗布される!

 

「死ね! 死ね! 死ねェッ!」

 連続で振り回される鉈! 一撃でも当たればカークはエクトプラズムミンチと化す! だが驚異的なまでに棘々したビッグラウンドシールドに阻まれる!

「ソラソラソラ!」

 お返しとばかりに邪悪なほどに棘々した肉厚ロングソードを振るう! テペスは盾を持たないため、足捌きや身のこなしでこれを回避! なんたることか、二人の実力は拮抗している!

 

「喰らえ!」

 テペスの銃撃! カークはバックステップしながら驚異的なまでに棘々したビッグラウンドシールドで防御! 距離を取る!

「こんなんはどうだ! エエッ!?」

 テペスは大鉈を鞭鉈に変形させ、今度は先程と逆の方向からスイング! 邪悪なほどに棘々した肉厚ロングソードを持つ方の手、驚異的なまでに棘々したビッグラウンドシールドのない方向からのリーチ延長攻撃!

 

「うおおお!?」

 叫び声と共にカークの上半身が消えた! 鞭鉈が通り過ぎて柄へと刃が戻っていく。カークの上半身は永遠にその下半身とオサラバしたのか? 否! 刮目せよ! カークは上半身を後ろに逸らして地面に手を当てているではないか! ブリッジ回避!

 

「ワッザ!?」

 驚きながらもテペスは渾身の力を込めた縦スイング! 狙いはカークの股間! 直撃すればウニのように真っ二つになるだろう! だがカークはブリッジ姿勢から逆立ちになると、そのまま側転して縦スイングを回避した! 重厚な装備に似合わぬなんたる身のこなしか!

 

「【ナルキネン・ススィ】」

 しかしピーシャの詠唱は完了している! 炎で形作られた狼がテペスの脇を通り抜け、カークへ向けて疾走する!

「ヌゥー!」

 追い縋る炎狼から逃れんとカークは回避を繰り返す! バク転! バク転! 側転! そしてバク転! だが炎狼は絶対にカークを食い殺すと追尾してくる!

 

「このグワッ!?」

 バク転回避しようとしたところへテペスの銃撃インターセプト! 本日初ヒット! 鎧は頑丈なようでカークに負傷を負わせる事は叶わなかったが、炎狼のアシストには充分! カークに向けて猛突進!

 

「っ!」

 爆発! そして炎上! テペスもピーシャも突如襲いかかってきた棘だらけの狂人がハリネズミ詰めウィッカーマンめいて火だるまになることを期待した。しかし!

「ふぅ、危ない、危ない」

 マスタークラス! カークは驚異的なまでに棘々したビッグラウンドシールドで炎を防御していた! 熱が伝わったことにより多少は火傷を負ったであろうが、命を燃やし尽くすほど重篤なダメージには至らなかった。

 

「しぶてぇな!」

 鉈鞭を大鉈に戻したテペスの迫撃!

「おおっと!」

 しかし五回にも及ぶバク転回避で避けられ、大きく距離を離されてしまう。テペスが同様に五回のステップで追いかけたとしても両者の間には2Mほどの空間が空いてしまうだろう。ステップ迫撃は不可能だ。

 

「なるほど、どうやらお二人は相当な実力の持ち主らしい。ならば、私も秘策を使わなくてはならないな!」

 カークは不敵な笑い声を溢して棘々の兜を揺らす。テペスもピーシャも油断なくカークの繰り出してくる次なる攻撃に備えた。

 

「ウオーッ!」

 カークは更にバク転! バク転! バク転! バク転! バク転! 赤黒だがまるで伝説のハリネズミだ! 大きく距離を取って繰り出してるのは何だ? 空気を切り裂く真空斬撃か? はたまた全身の棘を発射するマジックミサイルか? さては危険なグレネード攻撃か? その答えは!?

 

「サラバダー!」「ワッザ!?」「ちょっと! 逃げる気!?」

 まさかの逃走! カークは最初にテペスに罵倒されたように、二人に背を向けて走り出した!

「ハッハハハ! 私の目的はあくまで舌! わざわざ君たちと戦う必要もない! なーに、安心したまえ! 今現在、この階層には他の冒険者たちがいるからねぇ! 君たちは見逃してあげようじゃあないか!」

 ジーザス! なんたるリスクヘッジか! 騎士のような振る舞いをしておいて分が悪いと見るやあっさり逃走とは! 奴に誇りやプライドといったものはないのだろうか!?

 

「逃がすわけねぇだろ!」「張り倒して顔の皮剥いでやるわ!」

 怒り心頭で走り出す二人! これが罠で、闇雲に追いかけるのは愚策だと二人は理解している。だが野放しにして他の冒険者を殺すと宣言している狂人を見逃すことなどできなかった!

 

「追ってくるかね? 勇ましいなぁお二人とも!」

 後ろ走りになり、挑発的なバク転!

「死ね!」

 テペスの銃撃! しかし当たらない!

「ああっ、ブルシット! ルドウイークの長銃さえあれば!」

 苛立つテペス! あの身のこなしでは猿縄も当てることが難しい。長射程の散弾銃があればどれほど楽だったことか!

 

「イラつかないの! ハイ! これ!」

 走りながらピーシャはテペスにポーションを投げ渡す。テペスはそれを受け取って格子の隙間から口の中に流し込んだ。

「何とかして野郎を仕留められねーものか!」

「今は追いかけるしかない! パス・パレードだけは注意してね!」

 パス・パレードは自身を追跡してくる大量のモンスターを他の冒険者に押し付ける邪悪テクニックのことだ。身の危険の回避の他、手を汚さずに敵対冒険者を亡き者にする手段として用いられる。

 

「奴が柱の影に入ったぞ!」

 その直後!

「ギャアアアアア!」「アバーッ!?」

 二つの悲鳴!

「ああ……! ファッキンジーザス!」

 苛立ち上昇! テペスとピーシャが柱の影に入ると、そこには邪悪なほどに棘々した肉厚ロングソードに切り裂かれた男性冒険者二人が大量出血で倒れている! これではもう助からない!

 

「ハッハハハ! これで三つは確定だな!」

 背を向けるカークが高笑いを上げる。だが三つとはどういうことか? 倒れている冒険者は二人だけ。カークがくるりと振り向いた時、その惨状は二人の目に飛び込んできた。おお、ジーザス! 何故未だに復活していないのですか!

 

「……! ……!?」

 カークは女性のパルゥムを抱き上げていた! 格好からして魔法使い。だが彼の鎧で抱きしめられるということは、無数の棘が全身に突き刺さることとなる!

 

「て、テメェ……!」

「おっと、邪魔しないでおくれよ。今小さなレディとの抱擁を楽しんでいる」

 更に力を込めて抱擁! 夥しい量の血液が赤黒の鎧をつたい、地面に血の海を作る! あの小さな身体に流れる血を一滴残らず絞り出すつもりであろうか!

 

「あんただけは、あんただけは絶対に許さないから!」

「怒った顔も可愛らしいレディだ。いやしかし、操を立てておいて他の女性を抱きしめるとは……私も罪な男よ」

 カークは両手を広げる。パルゥムの冒険者はドサリと地面に落ちた。そして苦痛と絶望の表情を張り付け、数回ほど血を吹き出しながら痙攣してこときれた。

 

「後悔する間も与えずに殺してやる」

「勇ましいのは結構だがね、周りを見ることをおススメするよ?」

 カークが芝居掛かって立てた人差し指を回転させると、三人の周囲にモンスターの群が集まってきた。モンスターパーティ! 血の臭いに引き寄せられただけではない。周りには脂滴る肉の塊が散乱している。これはモンスター狩を効率化するためにあえてモンスターを誘き寄せる撒き餌だ。柱の裏手に回ると同時にカークがばらまいたのだろう。

 

「バカが。テメェだって同じ状況だろうが」

「フム、フム。どうかな?」

 カークはゆったりとした足取りでモンスターの群れへと向かっていく。そこに戦闘態勢は一切ない。そして、ジーザス……なんたることか、モンスターたちはカークを迎え撃つどころか目に留めた素振りすら見せない! カークが通ってもその視線はテペスとピーシャに向けられている!

 

「さあ、どうするかね?」

 不敵な笑みをこぼすカーク!

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