狩人テペスの冒険   作:ヤングフンター

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 とうとうお気に入り登録者数1000人。ようやくここまで来れたという気持ちで感極まっております。
 これからも頑張って執筆を続けていきたいと思います。


2

 テペスが外に出て行くと、正門前には門番二人と小さな女性の姿があった。

「テペスさん!」

「よう。無事だったみたいだな」

 女性、クィネレイタはテペスの姿が見えると笑みを浮かべて駆け寄る。緑色のドレスが草原の風のように揺れた。

 

「はい! お陰様でカート様のところに戻れました!」

「みたいだな。俺の方も、まあ上手くいったよ」

「と言うことは、ゴライアスを倒したんですか!?」

 驚いた様子のクィネレイタの言葉に門番二人は「そんな馬鹿な」と、与太話でも聞いたように顔を見合わせて手を広げた。

 

「ちょいと違うんだが……まあ、立ち話もなんだ」

 テペスは街の方へと向かって歩き始めた。

「ちょいと歩くんだが、約束通り茶でも飲もうぜ」

「はい!」

 二人は黄昏の館から去っていった。

 

 ここで残された門番たち。二人は去っていくテペスとクィネレイタの背中を見送りながら、能面めいた表情になる。

「……なあ、あいつ、ピーシャと付き合ってるんじゃなかったのか?」

「だと思っていたんだが……ピーシャの機嫌が悪くなった理由がわかったぜ」

「なあ、ピーシャかあのパルゥムちゃんのどっちか、賭けないか?」

「乗った」

 

 ◆

 

 ルニエル・デュ・ソレイユ。以前テペスとピーシャがデートした際に立ち寄った喫茶店。二人はテラス席に向かい合う形で腰を下ろした。クィネレイタはパルゥムのための高い椅子に腰掛けているので、目線はテペスと同じくらいだ。

 

「改めて、助けていただいてありがとうございます」

「いいって」

 頭を下げるクィネレイタを制するテペス。

「帰ってからカート様に事情を話したら、やはり心を痛められて、真っ赤な涙まで流してしまったんです」

「真っ赤?」

 目を充血させたということだろうか? と、テペスが何気なく口にした。

 

「あ、カート様は少々特別な神様で、心底から傷ついて流す涙が赤色になるんです」

「そうか……悔やむよ」

 もう少し、早くあの場にいればあと何人かは救えたかと思う。無論、カート・ファミリアの悲劇に関してテペスには何の責任もない。

 だが、自分が怪物を倒した頃とは、常に事態が最悪の状態から巻き戻らない場合が多く、また何らかのインシデントによる被害者の救出も、駆けつけた頃には死んでいたといった場合が多い。

 

 テペスは時折り考えることがある。自分は遅れた存在なのではないかと。

 

「……茶を頼もうか」

「……はい」

 お通夜めいた思い空気を打開するため、テペスは注文をする。そして運ばれてきたのは前と同じランチセットだが、テペスは紅茶に砂糖を山盛りにするという以前のような愚行はしない。適量沈め、スプーンで軽くかき回し、香りを楽しみながら飲む。

 

「美味しいですね」

 クィネレイタも笑顔で言う。

「ああ。また来ようと思っていたんだが、タイミングがなくてな。今日これで良かったよ」

「前もお一人で?」

「いや、連れがいた」

 

 クィネレイタが眉を顰める。

「……もしかして、女性の方ですか?」

「ん? ああ。相棒……なんかな。ゴライアスを殺しに行ったのに、何で連れていかなかったんだって、怒られたちまった」

 誤魔化すようにサンドイッチを食む。

 

「……そういえば、さっきはゴライアスとはちょっと違うって仰っていましたね。何があったんですか?」

 クィネレイタが話題を変える。

「ギルドにも報告したんだが、イレギュラーだった。出てきたのはゴライアスじゃなくて、めちゃくちゃでかい魚の化け物だった」

「魚?」

「ああ。忌々しいほど人間に似ていて、だが紛れもない化け物だった。あれ程やばい奴は久々だったな」

 

 テペスは事の顛末をクィネレイタに話した。ただし、怪しげなアサシンと、未だに帰ってこない星の軟体生物の辺りは省いた。

「そんな事が……でも、聞いた事がありません」

「エイナさん……ギルドにも同じこと言われたよ」

 テペスは激怒したエイナを思い出して身震いした。

 

「ま、結果的に倒したからいいんだけどな」

 茶を啜る。

「ランクアップはどうでしたか?」

「それなんだが……独断で、単独で階層主のところに行ったんで、罰として団長達が戻るまで延期にされちまってな」

 

 クィネレイタは呆れた顔になる。てっきり主神と話をつけた上での挑戦だと思っていたからだ。だが独断でなければ単独階層主挑戦など許す神はいないだろうし、そもそも彼がいなかったら自分は今頃死んでいたので強くはいえなかった。

 

「……ロキ様が怒った気持ちは、わかります。あまり、無茶をなさらないでくださいね。貴方の帰りを待っている人が、いるんですから」

 クィネレイタが小指を差し出す。テペスも同じように小指を差し出し、彼女の指に絡めた。

「でも一先ずは、お互いに約束を果たせた事をお祝いしましょ」

 

 クィネレイタは笑顔になる。

 

 ◆

 

 オラリオのどこかにある場所、光の届かぬ回廊があった。しかし、それはダンジョンではない。明らかに人工的な壁、床、柱、巨大な扉で形成された廊下が蟻の巣のように複雑に分岐し、左へ右へ、上へ下へと広がっていた。至る所に設置されたコウモリやシャチホコ、ハニワなどの禍々しいガーゴイル像が異常はないかと、監視眼をギョロリギョロリと動かしている。

 

 そんな回廊の一角にある部屋。部屋の出入り口には「大事だよ」「癒しの空間」「カロウシする前に」と文言が刻まれている。

 ここには豪華な設備が整っていた。最新のエスプレッソマシン、ジュークボックス、体重をかければ体が沈むほど柔らかい高級ソファー、黒檀製の艶やかな長テーブル、その上には氷に沈められた高級シャンパンボトルとグラスがあり、少し離れた所のステージでは、艶かしい肢体のアマゾネス・ストリップダンサーが、宝石のような汗を流しながら激しく踊っていた。

 

 ソファーに腰掛けるのは明らかな高級素材のローブを纏った男神。両脇には全裸のエルフとヒューマンの女性がもたれかかっており、肌を紅潮させ、ダンサーよりも大量の汗を流しながら肩を上下させていた。

 

「戻ったぜ」

 ふと、部屋の出入り口から一人の女性が入ってくる。パーマがかった髪に仮面めいた分厚い化粧をした女性。その立ち振る舞いは明らかに只者ではない。

「おかえり〜。三人の具合はどうだった?」

 男神は軟派な声で尋ねる。

 

「カークは未だに眠りこけてやがる。パプテマスとリュースは思ったより早く起きたが、早々に女の信者を五人ヤり殺したぜ」

「またぁ〜? あの二人が頑張ってくれているのはわかっているけどさぁ、ウチはいつだって人手不足だから、あまり信者の子たちで遊ばないで欲しいんだけどな」

 すると女性は悪魔めいた笑みを浮かべる。

 

「結構なことじゃあねーか。それだけの元気があんだ。またすぐに復帰させられるぜ」

「そう思っておくよ」

 男神はエルフの胸を揉みしだいた。

「でもさ、パプテマス君とリュース君はともかく、カーク君までやっつけたんでしょ? ヤバいよね、その例の子」

 

 危機感を募らせたような口ぶりだが、男神の表情は邪悪な笑みだ。そしてヒューマンの胸を揉みしだく。

「今調べさせている。正体が判明したら、アタシ自ら殺しに行ってやるよ」

 女性はそう言いながら、悍ましく角ばった七枝刀めいた邪悪なカースソードを抜いて一閃振るう。すると、ステージ上のダンサーの首が跳ね飛んだ。身体の方は自分の首が無くなったら事に気づかずに踊り続け、十数秒後に崩れ落ちる。

 

「「いやあああああ!」」

 叫ぶ裸体女性二人は体の疲れなど忘れてソファーから転げ落ちる。

「ヒューッ! 鮮やか!」

「オラリオのカスどもも、いずれはああなる」

 女性は頭上にあるオラリオに、宣戦布告するように高笑いを上げた。

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