次の日は、水戸駅から北上し、いわきら・ら・ミュウというところにやってきた。
この日は3月11日。
そう。あの日から10年。
「ここで、ピアノを弾いてもいいかな……」
「はい!」
美晴さんの合図に合わせて僕が演奏を始める。
その曲は……皆さんならわかるよね……
弾き終わると、美晴さんの目から涙が零れていた。
「マネージャーさん……この曲って……!」
「うん、震災復興応援ソング」
「この曲って……こんなにも悲しい曲だったのですね……」
「美晴さんにまで悲しい思いをさせちゃって……ごめんね……」
「いいんです……あの日、マネージャーさんが、被災地の皆さんが辛い思いを抱えていたことが……少しだけわかった気がします……」
美晴さんは涙ながらにそう話す。
気持ちをわかってくれることは、すごく嬉しいけど……なんだか申し訳ない気持ちになる。
「わかってくれたことはすごく嬉しい……だから……前を向いて……」
「はい……」
美晴さんのことをぎゅっと抱きしめる。
その暖かさは今までで一番だった……
午後はいわきから北上して……
「ここで降りよう」
そう言って降りたのは富岡駅。
「どうしてこの駅なんですか?」
「ここ、富岡駅は海に近いというのもあるし、福島第一原発がここ、福島県富岡町にある。そして、富岡町とその周辺に住む人が強制的に避難させられてしまった場所なんだ」
「そ、そんなことが……」
「だから、僕には到底、彼らの苦しみがわかるはずがない。きっと、僕なんかよりも辛い思いをしているに違いない」
「わたしが知らないことがこんなにたくさん……」
「当時の僕は9歳で、ボランティアされる側の人だった。でもそれが、10年経って、19歳になって、ボランティアする側の人になったし、あの時支えてくれた全ての方へ、恩返しがしたい。そう思ってる」
これは揺るがない事実だし、ずっとこの想いは、今も昔も変わらない。
「マネージャーさん……やっぱり……カッコいいです……」
美晴さんの目には涙があった。
「か、かっこいい!?」
「だって、そんなことを考えてる人、マネージャーさんが初めてです……」
「うん、ありがとう……」
素直に嬉しかった。
別にカッコつけたとかそういうわけではない。
これは、ずっと僕が今のありのままを語っただけで、そこに飾りは何もない。
それがカッコいいって言われるのだから……嬉しいに決まってる。
しかも僕の好きな人に。
そして、タイムリミットがやってきた。
「マネージャーさん、14:46です」
「うん。黙祷」
2人で目を瞑る。
富岡の街が静まり返る。
そこにはサイレン音だけが鳴り響く。
静かに迎えた3653日目は、永遠に語り継がれる。
皆さん、こんにちは。おみです。
この度は「あの日、幸せの花が咲く Op.9」を読んでいただきありがとうございます。
あの日から3653日目の今日、私は1人、福島県富岡町で黙祷しました。
サイレンの音とともに……
皆さんも、災害について考えていただければと思います。
言葉では伝わらないかもしれません。
ですが、もし機会があれば、東北に足を運んでください。
そこで、見えてくるものが、きっとあるはずです。
それでは次話もお楽しみに!