遠征最終日、僕と美晴さんは横川駅の碓氷峠鉄道文化むらに来ていた。
「ここは昔、急勾配を登っていた碓氷峠。当時の勾配では最大の66.7‰を登っていたらしいんだ(1000m走ると、66.7m標高が上がることを言います)」
「これって、どのくらいすごいことなのですか?」
「今の日本で残っている在来線で一番勾配が大きいのが確か30‰くらいだったはずだから、その倍以上だね」
「そ、そんなにすごかったのですね……」
美晴さんも驚くほどの難所だったのだろう。
ここ、碓氷峠鉄道文化むらは鉄道のことを知るためのファーストステップだと個人的には思っている。
だから、今回、美晴さんを連れて行きたかったわけ。
「ここに残っているのは、その昔、走っていた車両たちだよ」
「す、すごい……」
その車両たちはどれも見たことのない車両ばかりだった。
そりゃ驚くのも無理はない。
碓氷峠鉄道文化むらを堪能して、お昼ご飯は……
「お昼はこれにしようか」
と、選んだのは峠の釜めし。
やっぱりここに来たらこれにしないと。
2人で箱を開けて
『いただきます』
「おお!」
「美味しいです!」
峠の釜めしは初めて食べるけど、質素さがあってすごく美味しかった。
なんだか昔に帰った雰囲気があった。
2人でお昼ご飯を食べて、バスで軽井沢へ。
その後しなの鉄道で、この旅最後の場所へ。
僕が最後に選んだ場所は……
「ここは屋代駅。前、ここでピアノを弾いたこと、覚えてる?」
「はいっ!覚えてますよ、うふふ」
美晴さんが覚えてくれていたことが何より嬉しかった。
それに……この旅もラストだしね。
ただ……
「マジか……」
「あら……」
屋代駅のストリートピアノはまさかのこのご時世で閉まっていた。
「どうしましょう……」
僕は「何としてでもこれは絶対にしたい!」そう思っていた。だから、これができなくなったのは正直予想外だった。
必死にサイトで探す。
どこか弾けないか……それを探すために……
そして……
「うん、今からなら間に合う!あそこに行こう!」
美晴さんにしっかりとした声で伝える。
「え?どこに向かうのですか?」
「松本駅」
「あれ?でも長野から帰りの切符取ってましたよね?」
美晴さんは疑問に感じるが……
「そんなことはどうでもいい!行くよ!」
「は、はい……」
美晴さんを引き連れて松本駅へ。
「じゃあ、ここでピアノ弾こう……」
「はい……」
美晴さんのその声は甘く、優しい声だった。
それぞれが思い思いの演奏をする。
そこには、「幸せな未来」と「好き」というこの2つの思いが刻まれていた。
僕が今回演奏した曲の途中で
「美晴さん……ずっと、ずっと……大好きです……」
ということを言った。
音を通じて、思いが通じる。
これは、言葉のやり取り以上に素晴らしく、美しいものであると実感している。
それは、美晴さんも同じだった。
僕の演奏後、美晴さんはすぐに僕に抱きついて……
「これからも、ずっと……よろしくお願いします……」
とつぶやいた。
そして最後に……
「マネージャーさん、連弾しませんか?」
「うん、やろう」
2人で思い出のピアノで連弾をした。
その音は青空へと溶けていく。
その思いも溶けていく。
思いを乗せた音は、いつか幸せの春が訪れることを暗示していた。
皆さん、こんにちは!おみです。
この度は「あの日、幸せの花が咲く Op.11」を読んでいただきありがとうございます。
投稿が遅くなってしまいごめんなさい!!
遠征最終日、横川で鉄道文化むらに行きましたが、本当にいってよかったです。(雨で靴が死にましたけどw)
末端区間ですが、皆さんも是非行ってみてください!
さて連載小説も残すはあと1話となりました!
最後まで楽しんでいただければと思います。
それでは次話もお楽しみに!