モンスターハンター:リライジング~旅する狼ら、狩猟に挑まんとす~ 作:歪んだむ
「えっと、噴水のある広場の──あっ、いました! 遅れてすみませんっ」
「秋津茜……PNは一緒か。まだ時間前だぞ」
犬っぽい、初期設定のオトモの項目にあったオトモガルクとか言うヤツ(初期デザイン)の仮面を装備しているが、頭上のネーム表示と、シャンフロと変わらぬ体格で秋津茜だと分かった。
あれ、そう言えばシャンフロでは……まさか。
「アバター以外から設定して後回しにして、そのまま決定押しちゃって……またリアルと同じ見た目にしちゃいました!!」
「えぇ……」
「ああ、仮面を買うので寄り道を……」
「茜ちゃん、ちょっと皆揃うまでお姉さんとプライバシーの保護についてお話ししよっか?」
カッツォが絶句し、レイさんが察し、鉛筆がおまいう発言をぶっぱなす。
お前のアバター、
「え、お前がソレ言うの???」
おっと本心がまろび出た。
「私は大丈夫なのっ」
「化けの皮が分厚いから?」
「バボフッ」
あ、笑い袋が躓いて噴水にダイブした。
「……や」
「シャンフロ全く見た目同じなんだな、ルスト」
「面倒だった。ロボ無さそうだし、あまり興味ない。ネフホろ?」
速攻で別ゲーに行こうとすんじゃないよ。
それでもこうやって来るあたり律儀な……いやそこの濡れ鼠にしてはデカ過ぎる強面から一緒に、と誘われて仕方なくって感じだな。
「よう、色袋」
「色男みたいに言うのやめてよ……それ笑い袋って意味で言ったでしょ」
ルスト、モルドも合流と。アバターの見た目は変わらんな。
斥候(スカウト)みたいな軽装備と、何か布っぽい材質のローブみたいな装備でビショビショだけど。
さて、これであとは京ティメットだけか……。
「やぁ、お待たs……何でモルド?はビショビショなの?」
おや、噂をすればシャドウ。京ティメットが現れた。
時間は……チッ、ギリギリ間に合ってやがる。何か罰ゲームでも科そうと思ったのに。
「沸点が低すぎて笑って転んでダイブ」
「なるほどね、把握した」
「酷くない!?」
是非もないよね。
「京極ちゃんは狐耳以外の見た目は変わらないんだね」
「ほぼまんまなペンシルゴンがそれ言う? ま、確かに僕もそうだけど」
「初期装備だからモノトーンの簡素な巫女服みたいだな」
「大和撫子っぽいでしょ? 見惚れた?」
「髪もロングヘアーで幕末の姿っぽいし、まぁ確かに。……口を接着剤で固定してればな」
「小声で言ってるようで聞こえる程度の音量は何、喧嘩かい? 素手でもそこそこ戦えるよ?」
お、イアイフィスト流の使い手に素手で挑むと? ゲームの中なら簡単には負けねーぞ?
「黒髪……ロング……え、一緒のゲーム……え、京極ちゃんと? え……?」
……何か寒くない? 気候設定バグって──え、皆は特に何も? 俺と京ティメットだけ?
「えー、全員揃ったので! とりあえずギルドカードの交換しよっか!」
注目しろとでも言うように手を叩きつつ、ペンシルゴンが大きめの声で注目を集める。
ついでに場の空気も変わる。
何だったんだ……?
「ギルドカード、ね」
ギルドカード……通称『ギルカ』。
ハンターズギルドが所属しているハンターに配布する名刺のようなもので、狩猟や活動の履歴が記載される、というものらしい。
このゲームにおいては、経歴的な意味でのステータスや実績の閲覧、フレンド機能も兼ねているそうだ。
「じゃあ……はいレイさん、ギルドカード。そう言えば、シャンフロでも一番最初にフレ登録したよね」
「……初めての……1枚……!」
そんなに拝む程に嬉しかったのかな?
まぁ新しいゲーム、新しい繋がりとかはテンション上がるのも分からなくはないし、醍醐味ですらある。
「やっぱりレイさんは(ゲーマーとして)好感が持てるよ」
さて、他との交換も済ませないとな。
「………………ッ……!」
「あ、サイガ-0さん、次は私と交換しま──どうしたんですか蹲って!? お腹でも痛いんですか!?」
「おーい、カッツォ、ペンシルゴン。ギルカ交換しようぜ」
「「……サンラク(くん)さぁ……」」
んだよ、何でそんな目で俺を見るんだよ?
………
ギルドカード交換会の終了後。
各々、マイハウス(個人用のホームのようなもの)で武器を選択して、街の入口に再集合と言うことになった。
武器は拠点となる街や、出先のテントにあるアイテムボックスを使えば変更可能だが、複数持ち運ぶ、とかは無理らしい。
あと、パーティプレイが3人以上になるとオトモは連れていけないらしい。
ボッタは留守番な。
「わかりましたウサ」
部屋の角のオトモ用スペースに座り込んで道具の整備を始める兎を尻目に、俺もアイテムボックスを漁り始める。
武器は……おお、初期武器は14種、全部揃ってるのか。世界観的にも初心者に優しいなハンターズギルド。
「どれにするかな……」
特徴的なのは……操蟲棍? 跳び回ったり……え、蟲でエキスを……モンスターの体液でドーピング、それ合法?
狩猟笛……これは奏でられる鈍器なのか殴れる楽器なのか? いや一応笛ってあるし……演奏でバフ?
ガンランス……いやこれもどっちだよ。銃剣みたいな感じなの?
「──まぁ、やっぱこれになるか。行ってくる」
「頑張ってくださいウサー」
ざっと目を通したが、コレだろうという1つを"2振り"背負い、マイハウスを後にした。
………
「お、来たねサンラク」
「カッツォ……はハンマーか」
武骨な骨の塊、とでも言えるような鈍器を背負ってたカッツォが入口の門に背中を預けて佇んでいた。
他は……まだいないっぽいな。2番手か。
「スタン取ればボコれるらしいしね。そっちは双剣にしたんだ?」
「なんやかんや使い慣れてるからな」
シャンフロではメイン武器の1つだ。双剣でなく、短剣2刀流や合体できる対刃剣のが多かったけど。
「お待たせしました!」
「早いじゃない2人とも」
「秋津茜は片手剣……え、でっか」
「ペンシルゴン、それって……」
秋津茜はいい。片手に小型の盾、あとは文字通り片手持ち出来るサイズの剣だ。
対してペンシルゴン。左手に大盾、背中越しには巨大な折り畳まれた鉄塊が見えた。
俺はそれに見覚えがあった。具体的にはついさっき見た。
「そ。ガンランスっていう、砲撃できる機械槍、なのかな? 槍のカテゴリだし、いろいろ悪用出来そうだったからね。フフフ」
悪い顔をしておる……背中を見せないようにしておこう。
「お……お待たせしてすみません」
「待たせちゃったかな?」
「……葉が迷ってるから」
「ゴメンってルスト。脇腹にパンチしないで」
声に反応して振り返る。
各々のマイハウスからの道中一緒になったのか、残る4人が一緒にこちらに来るのが見えた。
レイさんは骨で出来た剥き出しの大剣、京極は鞘に収まった太刀、ルストは骨と木材?で出来たアーチェリーで使うような弓、モルドは金属製の……弦は見えるが弓ではないな、大きいしヘヴィボウガンかな?
「みんな見事に装備が分かれたね」
「基本素手だったお前と、魔法職だったモルド以外はなんか装備一緒じゃね? ペンシルゴンと秋津茜は盾増えたけど」
「いやペンシルゴンは槍だけどもうなんか違うでしょ」
「はいはーい、ここまで結構時間たってるし班別けするよー」
「……え、全員一緒ではないんですか?」
「そうだよ0ちゃん。世界観というか、仕様上の制約でね。モンスターハンターっていうシリーズは1パーティが4人までなんだよ」
ペンシルゴン曰く……。
遥か過去に、とある竜人族のハンターが、4人の仲間ともに5人で山に巣食うドラゴン退治に向かった。
ドラゴンと5人のハンター達の戦いは熾烈を極めて、その最中で1人が命を落としてしまう。
そしてその1人は、竜人族ハンターの婚約者で……竜人族ハンターはその狩猟を最後にハンター業を引退。
その死はハンター達に知れ渡り、噂が噂を呼び、5人以上で狩猟に出向くと仲間を失うというジンクスが生まれた。
以降、現在でもこのジンクスは受け継がれており、ギルドでは原則5人以上での狩猟を禁止しているそうだ。
とは言っても、強力過ぎるモンスターの場合は4人パーティ複数、とか他ゲーで言うところのレイド戦みたいにすることもあるので、4人以上が絶対に不可能と言う訳ではないようだ。
メタなこと言うならシステム上の問題だろうけど、世界観とか結構調べてきてんなペンシルゴン。
「と言うわけで!」
「……じゃんけん?」
「そうだけど、先回りして言わないで欲しかったかなールストちゃん。 あと0ちゃん、素人にでも分かるくらい気を高めるのやめよっか?」
「なんて練り上げられた気迫……!?」
「おい京ティメットがバトル漫画みたいなこと言い始めたぞカッツォ」
「格ゲーの設定上は強キャラなやつかもよサンラク」
………
で、結果こうなった。
「頑張りましょうね!」
「秋津茜、ステイ。クエスト受注なしで、フィールド探索に行くだけだぞ。何か狩るかもだけど」
「後ろが怖いんだけど?」
「ペンシルゴン……気にしたらダメだよ」
秋津茜を筆頭に、俺、ペンシルゴン、京極のパーティ。
「…………グーを、出していれば……ッ」
「……どうする?」
「僕に聞かないでよ……」
「触らぬ神のなんとやらだよね……2人とも黙ってよ?」
レイさんを筆頭に、ルスト、モルド、カッツォのパーティ。
それじゃあ、一狩り行こうか!
旅狼の残りメンバーが合流
次回はいよいよフィールド探索
補足
ガンランス本来だと右手に盾、左手に槍ですが、フルダイブVRで持ち手固定は辛いと思ったので、作中では設定で変更可能しています。
他の武器も盾の有無関係なく同様です。