モンスターハンター:リライジング~旅する狼ら、狩猟に挑まんとす~ 作:歪んだむ
街の入口である門を潜ると、そこは広大な草原だった。川が流れ、遠目には森も見える。
「シャンフロシステムを使ってるのなら、このゲームも背景がなくて全部が踏み込める場所なんだろうな……」
現状は徒歩でしか移動手段がないから、その内騎馬みたいなモンスターでも探さないといけないな。
さっき商人らしきNPCとすれ違ったけど、荷車を引いているのは草食恐竜みたいなモンスターだったし、何かしらあるんだろう。
「で、ペンシルゴン、今後の予定は?」
「ある程度の装備・物資が揃うまではこの草原とあの森が主な狩場になるだろうし、マップの把握と採取、武器の試し切り試し撃ちってところかな」
ふむ、順当だな。
初期武器と防具はギルドから支給されてるが、それ以外はクエスト報酬か、時給自足が基本だ。
……自転車操業だなハンター、命張ってるのに。福利厚生は?
「そこの岩影にキノコが生えてました!」
「秋津茜、ステイな」
さっきから姿が見えないと思ったら……何々、マンドラゴラ──キノコなのに?
扱いを間違えたら死ぬとか、寄生した植物を同化するとかフレーバーテキスト不穏すぎるんだが……。
「はーい、折角だしみんなで固まって行こっか秋津茜ちゃん」
「わかりました!」
いいお返事を合図に、俺たちは歩き出した。
隊列を組んでと言うわけでもないが、俺が先頭で……って待てや。
「どうした切り込み隊長、いきなり止まって」
「どうしたの鉄砲玉、火薬が足りない?」
「喧しいわ魚類&文房具。盾持ってるんだしお前か秋津茜が戦闘だろ、さすがに雑魚しか出ないだろうけど」
「か弱い女子を前に押し出すの? サンラクくんの鬼畜! 外道!」
オメーからだけは言われたくねーセリフランキング入りだなオイ。
秋津茜、ああ言ったけどお前はどっかに突っ走りそうだから真ん中な。
「え、女子……?」
「その先を言ったらカッツォくんの女装写真集が企画通っちゃうかもね」
「ごめんなさい」
「ま、サンラクくんを前にしてれば
「そんな吸引力のある生態なんか……なんか……うん、ナンデモナイヨ」
思い当たる節がいくつだろうなぁHAHAHA。
「……一緒に行動してた
「さすがにそれは……え、何で目を逸らすの」
存じ上げませんねぇ。……こっち見んなルスモル。
「あの……」
「ん、どうしたのレイちゃん?」
「わ、私とサンラク、さんが、先頭は……どうでしょうか」
レイさん? 何か考えが……?
「サンラクさんは機動性と手数に優れた双剣で、私は大剣……鈍重ですが一撃に秀で、その大きさを利用して刀身を一応はですが盾にも使えます。2人でなら、その……突発的な状況への対処も容易、かちょ!」
噛んだ。
が、言ってることは的確だ。さすがはレイさん、全員揃ってこのゲームはやり込みほぼ0なのに廃人として片鱗を既に感じるぜ。
「さすがだ……」
「は、はひぇ!? あえいがとごじゃいます!!」
「ほら決まったなら行くよー」
急かすなよペンシルゴン。
………
「フッ!」
草食恐竜のようなモンスターをなます切りにし、納刀。同時にドサッ、と重い音と共に背後で倒れる音がした。
他愛なし。
「と言うか……攻撃的じゃない生物は、こっちかちょっかい出すと逃げようとするのか」
「鈍重な武器だと面倒そうだね。ペンシルゴンのガン、ランス? とかキツいんじゃない?」
「そうかも、採取や探索には不向きだったかな?」
まぁ、最悪テントで切り替えれるし問題ないだろ。
テントの設置からやらなきゃだから、今はまだ街まで帰らないといけないがな。
「死体はポリゴンが爆散するんじゃなくて残る……傷口はモザイクっぽいけど」
「意識して視線を合わせると、名前が出るんですね」
レイ氏に習って草食竜に視線を向け、意識を集中させる。
おお本当に名前が。アプトノス……死体にならないと、システム上は名前が出ないのかな?
そして──
「えいっ」
剥ぎ取り用のナイフを突き立て、ザックザックと……。
「生肉が取れたな」
「マンガ肉になるんだ」
○○の肉、でなく、共通で生肉? 魚類とかいたらどうなるんだコレ。
………
「よっ、と! ……ふぅん、鉄鉱石。これは数が必要な気配がするね」
カツンッ、という音を立てて京ティメットが振り下ろしたツルハシが採取ポイントに突き刺さる。
鉱石素材はなぁ……大体のゲームで大量に要求されるよな、分かるよ。
世紀末円卓だと持ってると知られたら最後、何処からともなくプレイヤーが沸いてくるぞ。
「フルフェイスの下で懐かしそうな顔してるんだろうけど、たぶん的外れだから引っ込めなよサンラクくん」
お前の魂の故郷でもあるんですけどぉー?
「えいっ。……まからいと? が3つ!」
秋津茜、それ多分序盤のレア鉱石だぞ。
俺? 俺はさっきから8割石ころだよクソが!! LUKに、LUKにステ振りがしたい!
………
「……サシミウオ」
「美味しそうな名前だね、生食するのかな? こっちは……チャッカツオ? え、ここ淡水……」
「ゲームでそれは野暮だぞモルド。あ、カッツォ、これお前の親類か?」
「殴っていいやつ?」
とか言いながら拳を振るってくるので、スウェーで回避。見え見えなんだよなぁ。
「うわっちちちちちちち!?」
「魚が、燃えて……っ!?」
モルドの釣った魚、どうも絶命時に発火するらしい。
マジかよ、活け締め必須じゃん……エラのあたりにナイフを──ていっ。
「え、手際」
「慣れすぎてない?」
「……アイテム化した」
親父殿直伝だぞ、エラから差し込んでコツは延髄と動脈を断つ、そして水か海なら海水で血抜きすること。
………
その後、草原から川の側、森の外縁で行動。採取や小型モンスターから素材を回収しつつマッピングを続けた。
余裕だねとイキった京ティメットが崖から滑り落ちて意図せず落下ダメージが無いことが判明し、カッツォがイノシシのようなモンスターにカマを掘られ、変なカエルを踏んだ鉛筆が居眠りを始めて笑ってたら起き抜けに砲撃で池に吹っ飛ばされたり……。
「え、スタミナ上限って時間で削れるの!?」
「さっき恐竜さんから剥ぎ取ったお肉がありますよ!」
「アイテムセットに肉焼きセットが……」
──ふむ。
セットし広げると自動で火が着いた。
何気に超技術では……、と思いつつも、何故かマンガ肉型に成形された生肉を、肉焼きセットにON。
♪~♪~♪~
「え、何だいこの音楽」
「か、身体が勝手に肉を回転させて!?」
「それ自分で回してんじゃなくてオートなんだ」
「笑うんだけど」
「さ、サンラク、く、さん! 焼き目が……っ」
「え、マジかソォイ!!」
──上手に焼けました~♪
「「「「「「誰!?」」」」」」
「……うるさ」
「美味しそうですね!!」
………
「日が暮れてきたな……夜だけ活動するモンスターとかいるか?」
「そういったモンスターや環境生物もいるそうです。街でNPCのハンターが言っていまし、た」
森の中の少し開けた場所で俺たちは焚き火を起こして簡易キャンプ地とし、アイテムの整理をしていた。
「なるほどね」
さすがレイ氏、抜かり無いね。
「そろそろアイテムも上限近いし、このあたりで切り上げよっか?」
そうだな、とペンシルゴンに返事をしようとした──その時だった。
「ん、地鳴り……?」
「みんな、アレ!」
モルドの声に全員が一斉に視線を向ける。
土煙を上げ、一斉にこちらに向けて迫ってくる影、影、影……。
あれは──
「草食竜の、群れ?」
「いや、ランポス……だっけ? アレも混じってる!」
「全員警戒!」
ヘヴィボウガンを構えて双眼鏡代わりにしたモルドが言うのが正しいのなら、これは間違いなく異常事態だ。
ペンシルゴンの号令よりも早く、全員がいつでも武器を取れる状態で構える。
「こっちに走ってきますよ!?」
被捕食者と捕食者が、肩を並べて?
あり得ない。下克上はあるかもしれないが、食うか食われるかの
あり得るとすれば……。
「いや、秋津茜。こっちには来てるが、狙いは俺らじゃない」
「え? あ……避けて、行く?」
俺たちや焚き火すらも無視して、後ろに駆け抜けてい「ぐえぇ!?」……京ティメットがイノシシ──確かブルファンゴ──に轢かれたが、無視。
即死はしてないし立ち上がって来れてるからセーフだセーフ。
……あり得るとすれば、そう、
「共通の、より大きな脅威が……いる」
旅狼の全員が森の奥の闇を睨んだ。
──カロロロロ……!
その時の俺たちは気付かなかったが──
直上の天には赤い彗星が尾を引き、
遠方の夕焼けの朱色は沈む太陽ではなく、
遥か彼方の空では暗雲が渦巻き、
目の前の騒動すら、前触れでしかなかった。
ぶっちゃけ肉焼き歌は入れたかっただけ感ある。
モンハンと言ったら、ね?