もののけ(ヤンデレ)姫   作:トマホーク

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会合

来襲したタタリ神の大イノシンを倒した日の夜。

 

神社の社の中、俺の正面ではヒイ婆が石を転がしてまじないを行い、その傍らには村長衆の面々が沈痛な面持ちで座っていた。

 

「さて、困った事になった……。かの猪ははるか西の国からやって来た。深手の毒に気ふれ体は腐り、走る走るうちに呪いを集めタタリ神になってしまったようだ。アシタカヒコや。皆に右腕の傷を見せておやり」

 

重苦しい空気が辺りに漂う中、ヒイ婆の言う通りに右手に巻いていた包帯を巻き取り皆に傷の様子を見せる。

 

「ッツ」

 

「ヒイ様……ッ!!」

 

痛々しく、また禍々しい痣が刻まれた傷の様子を見た村長衆の面々は目を伏せたり、すがるようにヒイ婆に問い掛けていた。

 

「アシタカヒコや。お前には自分の定めを見定める覚悟はあるかい?」

 

「あぁ、タタリ神を射る時に覚悟は決めた」

 

村長衆の問い掛けには答えずに発せられたヒイ婆の問いに俺は間を置かずに答える。

 

「うん。そのアザはやがて骨まで届きお前を殺すだろう」

 

「ヒイ様!!なんとかなりませぬか!?」

 

「アシタカは乙女らを守り村を守ったのですぞ!!」

 

「ただ死を待つというのは……ッ!!」

 

飄々と言ってのけたヒイ婆の言葉に、あぁやっぱりなと薄々悟っていた事実を俺が受け入れていると、突然の死の宣告に反発するように村長衆が声を荒らげる。

 

「誰にも定めを変えられない。だがただ待つか自ら赴くのかは決められる。見なさい。あの猪の体に食い込んでいた物だよ。骨を砕き腸を引き裂き惨い苦しみを与えたんだ。さもなくばあのような猪がタタリ神などになろうものか」

 

今がいつの時代かは知らないけど、もう火縄銃とかあるのかな?にしてもこの弾丸デカいな……。

 

ヒイ婆が着ていた服の袖口から取り出した鈍い光を放つ鉛玉を見ながら俺はそんな事を考えていた。

 

「西の国で何か不吉な事が起こっているのだよ。その地に赴き曇りの無い眼で物事を見定めるなら、あるいはその呪いを断つ道が見付かるかもしれない」

 

西の国、西の国。この里が東北地方にあるからどこまで行けばいいんだ?

 

まぁ、ヒイ婆が言う事だし座して死を待つよりはワンチャン解呪出来るかもしれない可能性に賭けるか。

 

「ヤマトとの戦に敗れ、この地に潜んでから五百幾余年。今やヤマトの王の力は無い。将軍共の牙も折れたと聞く。だが我が一族の血もまた衰えた。この時に一族の長となるべき若者が西へ旅立つのは定めかもしれぬ」

 

旅立つ決意を俺が固めたのとほぼ同時に村長衆の中でも長老の立場にある長爺の言葉が場を締めくくった。

 

「掟に従い見送らぬ、健やかにあれ」

 

頭の上でお団子に纏めていた髪の毛を小刀で切り落とし遺髪として祭壇に奉り一礼した後、ヒイ婆からの別れの言葉を受けるとヒイ婆にも一礼し俺は神社を後にした。

 




別れのシーンまでまだちょっとあります

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