痣の考察を終え手当てをした後、旅路を再開し多くの人々で賑わう市場を見付けた俺は食糧の補給や分捕り品の転売、情報の収集を行おうとしたのだが、分捕り品の転売で多くの資金を得た事と故郷の旅装束が目立つために移動しても自分の周りに人だかりが出来てしまうので、補給はそこそこに情報の収集は諦め市場を後にしたのであったが。
「いやー礼などとは申さん。礼を申すのは拙僧の方でな――」
さっきから何なんだろうな、この胡散臭いオッサンは。
ついさっき立ち寄った市で分捕り品を転売中に馴れ馴れしく話し掛けてきたかと思えば、口先三寸で転売品の値を釣り上げてくれたのはありがたいが、デカイ声で騒ぎながらやるもんだから余計なモノまで釣り上げやがった。
そう思いながらチラリと後ろを見やれば、良からぬ事を企みながら後をつけてきている3人の男女が確認出来た。
「――寝込みを襲われてもつまらん。走るか?」
あっ、オッサンが逃げた。
視線を前に戻したと同時に高下駄にも関わらず軽快なスピードでオッサンが走って行く。
うーん。何か気勢が削がれたし、俺も逃げとくか。
「行くか、ヤックル。太郎(馬)と次郎(馬)もちゃんとついて来いよ」
何かされる前に先手を打って追跡者を排除しても良かったが、あまりにやり過ぎると指名手配されそうなのとオッサンの見事なまでの遁走に引き摺られ今回は逃げる事にしたのであった。
ふむ。で……何で俺はこのオッサンと一緒に飯を食う事になってんだ?
まぁ、いいか。情報収集の一環と考えれば。
夜。人目を避けて野営の準備を整えた俺とオッサンは夕飯の支度をしていた。
「ほう、イノシシがタタリ神になったか」
「足跡を辿って来たんだが、大河に降りた途端分からなくなってしまってな」
粥が煮えるのを待つ間、旅の理由を聞かれた俺は里に関する情報をあやふやにしながらオッサンに答えていた。
「そりゃあそうだろう。そこらを見なさい。この前来た時にはここにもそれなりの村があったのだが……洪水でな。さぞ沢山死んだろうに」
……道理で家の残骸が転がっているわけだ。
というか、そんな場所で飯を食おうなんて言うなよ。もっといい場所ぐらいあるだろ。
……まぁ、人が来ないという点では一番良いかもしれんが。
「戦、行き倒れ病に飢え。人界は怨みを飲んで死んだ亡者で犇めいとる。タタリと言うなら、この世はタタリそのもの……うん。うまい」
おっ、味噌か。いいな。
オッサンが完成した粥に味噌を加えたのを見て俄然食欲が湧いてくる。
「しかし、人里に降りたのは間違いだった。降りてすぐに面倒事に巻き込まれてしまったしな」
やれやれと首を振っている俺を見てオッサンが苦笑する。
「はははっ、いやしかしな、その面倒事にお主が関わってくれたお陰で拙僧は助かった。ほれ、椀を出しなさい。まずは食わねば。……ほぅ……雅な椀だな」
いい匂いだ。うん、旨い。やっぱり味噌はいいな。
って、オッサン食い過ぎ。
味噌はあんたのだが、米は俺のだぞ。
よそわれた粥を口にしてふとオッサンを見れば既に一杯目を食べきり自分の椀に二杯目をよそっているところであった。
「しかし、そなたを見ていると古い書物に伝わる古の民を思い出す。東の果てに赤シシに跨がり石の鏃を使う勇壮なエミシの一族ありとな」
お互いにガツガツと粥にがっついている最中、オッサンが何気なしに漏らした言葉に思わず反応しそうになるが平静を保ち、粥を口に掻き込み終えてから話を逸らすように自分の胸元をまさぐる。
「っと、そうそう。これに見覚えは?」
このオッサンただ者じゃないな。ならこれも知ってる可能性はあるか。
この時代、教養がある人間が少数派であり学ぶという事すら困難であるはずにも関わらず、歴史の間に埋もれ消え去ったはずのエミシの民の存在を知る事が出来たオッサンに俺は警戒心を強めていた。
「これは?」
「タタリ神と成り果てたイノシシの体から出て来たモノだ」
「ふむ。これは知らぬが……これより更に西へ西へと進むと、山奥のその山奥に人を寄せ付けぬ深い森がある。シシ神の森だ。そこでは獣は皆大きく、太古のままに生きていると聞いた。お主に呪いを掛けたイノシシはそこに住んでいたのではないか?」
「……シシ神の森」
思わぬ情報が手に入ったな。とりあえずそこへ行ってみるか。
……しかし、このオッサン。情報伝達の手段が乏しいこの時代の人間にしてはやけに色々と知ってるんだよな。
エミシの民の事も知ってたし、かなり厄介な人物なのかもしれないな。
警戒はしておくか。ま、もう会う事も無いだろうが。
気が付いたらランキング入っとる……。ジブリパワー恐るべし。
これは書かねばという事で本当ならこの話でストック切れを起こして次の更新が未定でしたが、急遽次の話を執筆。私にこんな力がまだあったのか……。
という訳で明日も更新出来ます。
まあ、たくさん感想頂いてるしこれぐらいはしないと。
ガルパンの二次の役人転生の時もでしたが、作者名見てあっ!?となる人多数でワロタ。
後、トルメキアのヤンデレ姫殿下が気になる方が多数居られる様なので暇みて短編か拙作のどれかを更新するときに後書きにくっ付けておきます。
ちなみになんですが、ジブリシリーズだと他にも2作品ほど案があったりします。
1つ目は紅の豚と藤黄の猿。
原作終了直後ぐらいから始まる物語です。
日本からやって来た主人公──傭兵の水上機乗りとポルコのバトルがあったり、主人公と一緒に来た飛行艇団と空賊のバトルがあったり。
主人公側はもちろん日本機──二式水上戦闘機か零式観測機・九七式飛行艇か二式飛行艇のどれかを使用する感じですね。
完成すればバリバリの空戦メインな物語です。
後は天空の要塞ラピュタですね。
こっちは安定のヤンデレ物でストーリーは基本的に原作通りですが、色々と設定が弄られてます。というか滅茶苦茶。
で、誰が主人公かというと……。
まさかの主人公はムスカ。しかしムスカは田舎で農民やっててシータが軍人(原作のムスカポジ)という壊れっぷり。
立場が逆転してます。
ちなみに本来の主人公であるパズーは性別が逆転──TSして少女になってます。
ムスカとシータの年齢をそのままにするか、年齢まで逆転させるかでちょっと内容が変わってきます。
(ムスカとシータをアカメが斬るのエスデスとタツミのような関係性にするのが一番楽ですが、年齢はそのままにしてTSしたパズーに親方!!空からオッサンが!?っていうセリフを言わせたい気もする)
ストーリー的には原作開始前に主人公のムスカがシータと偶然出会いシータがムスカに一目惚れ。
ヤンデレ属性のあったシータがムスカの事を知りたくて職権乱用してムスカの個人情報を漁る。
そしたらムスカがシータと同じラピュタの王族の末裔だと判明。
これは運命だと燃え上がるシータ。そして原作開始。
平穏に暮らしていたかったのにヤンデレに捕まり逃げた先でもヤンデレに捕まりあれやこれやされるムスカ。
ムスカと結ばれる為に色々画策するが障害や邪魔が発生してイライラするシータ。
そして空から降ってきたオッサンムスカorショタムスカに惚れてムスカの事を助けるTSパズー。
最終的には原作ムスカと同じようにシータがラピュタ(題名が天空の要塞なのでミリタリー成分マシマシの戦力倍増)を使ってムスカと2人だけの世界を作るために世界に宣戦布告するという感じですね。