生徒会の庶務   作:高坂遼

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休憩する生徒会①

「大事なのはメリハリなのよっ!山があって谷があってこその人生なのよっ!」

 

今日もいつもどおり、会長が胸を張りながらどこかの本の受け売りをさも自分の名言のように語る。山も谷もあったもんじゃない会長が何を・・・え、関係ない?そうですか。

 

「そんなわけで、今日は休み!生徒会、休みー!」

 

それだけ言うと、会長は椅子に座ってそのまま机に寝そべった。紅葉先輩が会長に「アカちゃーん」といいながらポッキーを会長の口の近くに持ってくと、会長は寝そべったまま食べ始めた。・・・なんて言うか、動物園の餌遣りを見ているような気分だ。うーん、そうだな・・・ハムスター?

取り敢えずやることも特になかったので、カバンの中から本を取り出し、読み始めることにする。鍵達は各々相手で会話するだろうから、適当に参加していくことにする。

 

「しっかしよー。今更だけど、休みなら集まる必要ねぇんじゃ・・・」

「そうかも・・・」

「だな。こうやって暇して時間潰すより、読書なり運動なり他に何かやってたほうが健康的っていうか・・・」

「深夏に真冬ちゃんっ!なんて事を言ってるんだっ!」

「ひゃうっ!?あ、あの・・・杉崎先輩?」

「いや、なんか変な事言ったか、今?」

「そんな考え方じゃ俺との好感度なんて上がらないぞ!」

「それはお前の事情だろうがっ!」

「いいか、よく聞け!ただでさえ既にヒロインが四人も出てきて混戦になっているこの状況!俺は勿論ハーレムエンドを狙ってはいるが、一人としか付き合えない確率だってある!そんな時において俺とプライベートな時間を過ごさないなんてとんでもない失態だぞ!他のヒロインに一気に持ってかれるぞ!」

「いいよ、別に持ってかれても!むしろ持ってってくれよ、邪魔だから!」

「ツンデレもツンが多過ぎるとファンが離れていくぞ、深夏!個人的にはツンデレの比率は6:4が最高だと信じている!この辺でデレとかないと、ただの似非毒舌キャラになってしまうぞ!特にお前は、少なくともメインっぽい立場ではないんだから、一層奮起しないといけない!」

「だからなんで勝手に杉崎鍵争奪レースに参加させられてるんだよ、あたし!後、あたしは別にツンデレキャラじゃねーから!そもそもお前が思ってるほど、このレースの参加者いねーよ!」

「おま、馬鹿、分かってねーな。俺はハーレム王だぞ、ハーレム王。今のところ、主要な登場人物は俺以外には男性キャラ柊しかいねーんだぞ?柊じゃないなら、俺しかいないじゃないか!これを激戦と呼ばずして、何と呼ぶって言うんだ!」

「お前に男友達が少ないってことが証明されただけだろ!それに、お前よりも柊の方が百倍はマシだ!」

「な、なんだってー!」

「いや、僕の方を睨まれても困るんだけど。それに、元がほぼゼロだったら百倍したって精々二桁に達する程度でしかないだろ」

「誰がゼロだ!」

 

いや、だって、ねぇ・・・鍵だし。まあ、鍵の言うハーレム云々に関する話はどうでもいいが、この生徒会には特にやることがなくても結局勝手に集まってしまう。それはきっと、ここの空気が皆好きだからだろう。くだらないけど悪くはないのだ、ここでの会話は。

 

「杉崎は『俺のハーレム』とかって言ってるけど、ここは生徒会室で私はここの主である生徒会長なんだから、ある意味私のハーレムよねー、ここ」

「勝手に俺のハーレムを奪わないでください」

「杉崎ー。肩揉んでー」

「・・・。・・・あんまり調子に乗ってると胸揉みますよ」

「胸?揉む?・・・・」

「あ、すいません。・・・本当に、すみませんでした」

「謝らないでよ!なんか不憫だよ!私、すごく不憫だよ!」

「不憫です・・・本当に・・・」

「この生徒会の胸ヒエラルキーの最下点ですからね、会長・・・。・・・なんか見ていて哀れに思えてきました・・・」

「胸見ながら言うなー!」

「揉むとか言って、本当にすみませんでした。俺、ダメですね・・・。世の中には揉めるほどない女性だって居るっていうのに・・・差別発言でした。副会長失格です。」

「その言葉は余計に私を傷つけてるよ!後、その発言と副会長云々は全く関係ないっ!」

「安心してください、会長。それはそれで需要がちゃんとあるんですよ?」

「慰めになってないよ!むしろその需要を持つ男子はなんか怖いよっ!」

「俺は・・・うん、いけます。ノープロブレムです。」

「何が!?」

「いいですか、会長。確かに朝○奈さんの様な女性も悪くないです。しかし、『涼○ハル○』シリーズにおいて一番人気が高いのは○門なんです!他にも、『リ○ルバス○ーズ!』では、○毬ちゃんも確かに上位ですが、○ドの方が人気が上なんです!その証拠に『ク○わふたー』っていうファンディスクがあります!ロリ巨乳よりも真性のロリの方が人気が出るんです!」」

「杉崎のロリに対する情熱はどうでもいいよ!あと、真性とか言うなっ!」

「だから会長。今後も安心してロリな会長でいてください」

「意地でも成長したくなったわ!」

 

ふう。会長は相変わらずだ。タダでさえ体力少ないんだしボケに対して全部律儀に返さなくてもいいのに・・・。さっきまでのダラけた感じではなくなり、荒い息を吐いている。それを紅葉先輩がうっとりした目で眺めているのもいつもどおりだ。・・・この生徒会って僕が思っているより百合多い?

 

「そういえば、紅葉先輩。今日は勉強してないんですね」

 

紅葉先輩の方を見てふと気になったことを聞いてみる。こういう風に仕事が無い時は先輩はノートを広げて勉強していることが多い。けど今日は会議の最初から会長を見ていじったり餌付けしていたりしていた。

 

「元々、私の場合は授業だけで事足りてるのよ」

「え?じゃあ、なんでいつも勉強してるんですか?」

「ああ、あれはあれで趣味みたいなものよ。例えば・・・世の中、家で何時間も勉強できる人と出来ない人が居るでしょう?」

「俺はどちらかというと、勉強が苦痛なタイプですね。目的があったんで、去年は勉強してましたけど」

「僕も同意見かな。宿題とか予習とかはさっさと片付けてあとは大体趣味の時間に費やしてます」

「真冬も、あんまり家でお勉強出来ないですね・・・。最低限はしますけど」

「あたしは逆に結構しっかりとやってるぜ。そんなに苦痛でもねーし」

「私は・・・」

「あ、会長はいいです」

「答えがあまりにも明白すぎて皆聞くまでもなく分かってますから」

「杉崎と楠木がイジめるぅぅぅぅ!」

 

会長が泣き出してしまったが、無視する。・・・いや、だって会長だし。本当に答えるまでもないしなぁ・・・。

 

「勉強する人は、キー君みたいな努力家の人間もいるけど、意外と多いのは、勉強という行為そのものが趣味になっているケースなの。私もそれ。だから、家で読書とかゲームとかの趣味があるクッキー君や真冬ちゃんはあまり勉強できなくて、逆に運動が好きでも家では特にすることがないような深夏は、勉強するんでしょう?」

「あー、確かに。あ、でも、今日は・・・」

「ああ、今日のアカちゃんが特に可愛いから、こっちに夢中なだけ」

 

紅葉先輩はそう言いながら、会長のほっぺをムニムニとつまんでいる。鍵も含めてホワーンとした空気が漏れ出してくる中、深夏さんが「でもさぁ」と声をあげた。

 

「偏見なのは百も承知だけど、あたし、勉強できるタイプって不得意なんだよなー、基本。特に理系?」

 

「あ、柊は例外だけど」という深夏さんの付け足しの言葉を聞きながら、僕は「まあ、わからなくもないかな」と苦笑しながら言う。まあ、僕も理系だから言うのもなんだが、理系ってなんか知識を振りかざして妙に物事に対して否定的になるんだよな。幽霊とかの心霊現象もそんなものは科学的じゃない、って感じでバッサリと切っちまうし。

 

「別にこっちはありえるありえないで議論したいわけじゃなくて、楽しく盛り上がりたいだけだっつーのに・・・」

「そうねぇ。私の場合は、酔った親戚のオヤジに聞かされる、政治関連の主張ほどうざいものはないって思ってるわ」

『あー、分かる(分かります)』

 

全員が同意していた。いやまあ、体験した事は無いけど、その場面を想像するだけでも嫌な気分になった。

 

「まあ、政治に無関心な私も悪いとは思うんだけどね。政治に限らずどんなジャンルにおいても、聞き手が望まない主張を延々と相手に聞かせるのは、一種の暴力だと思うのよ」

「真冬も・・・そういうのは苦手です。しゅんって、なっちゃいます」

「だそうだぜ、鍵」

「なんでいきなり俺に振るんだ!?」

「お前だってハーレムなんて皆が望んでない主張を延々と聞かせてるだろ?」

『あー、確かに』

「まさかの満場一致だと!?っていうか、皆揃って酷い!皆俺のハーレムになるために生徒会役員としてここにきてるんじゃないのか!?」

『全然?』

「泣いてやるぅぅぅぅ!」

 

鍵が泣き出したが、皆揃って無視してもとの会話に戻る。

 

「まあ、なんだかんだ言っても、私はこの生徒会、大好きなんだけどね」

 

紅葉先輩がこういった。確かに、この生徒会ではそういったところは緩いかもしれない。まあ、いい塩梅に緩いから別にいいんだけども。

そう思って皆を見ていたら、それぞれイヤな思い出でも浮かんだのか、皆揃って「はぁ」とため息をついていた。真冬ちゃんは特に落ち込んでいたので、気になって声をかけてみた。

 

「どうしたの?真冬ちゃん」

「楠木先輩。・・・えっと、真冬の場合は、その、特に、キャラクター的に聞き役になることが多くて・・・。だから、人に捕まって延々と聞きたくもない話をされることとか、ちょっとした発言を潰されちゃうこともよくあるんですよね・・・」

「あー、まあ、真冬ちゃんは苦手な人多そうだよね」

「はい。・・・特に、ハーレムを目指すあまり暴走する男性とか・・・」

「俺になんか恨みある?」

「地球人で一番強いという設定の割りにあまり活躍しない人とか・・・」

「クリ○ンのことかぁぁぁぁぁ!」

「あと、大量殺人鬼さんとか・・・」

「大概の人は苦手だと思うよ、それ」

「あ、幼女連続誘拐監禁犯とかも苦手です!」

「まるでそれ以外の犯罪者は得意かのようにっ!」

「お前、今も将来も真冬ちゃんから苦手意識もたれてんのな」

「俺の将来が幼女誘拐犯だとでも!?」

「怪盗さんは大好きです!」

「現実に『怪盗』なんて見たことないよ!」

「いたとしても、『ル○ン三世』や『怪盗○ッド』みたいな奴じゃ決してないと思うよ?」

「地球外からくる知的生命体も・・・どちらかと言えば、苦手の部類、かなぁ」

「そこに迷う余地があるの?僕、○Tやレ○リカン○みたいな奴を見たら間違いなく直ぐに逃げると思うんだけど」

「でも、それよりなにより、ハーレムを目標とする人間が、やっぱり一番ですかね」

「あれ!?俺、もしかしてめっちゃ嫌われてる!?」

「そんなことないですよ!杉崎先輩は、杉崎先輩じゃないですか!」

「ああ、俺の16年の人生の中で最も心に染みてこない名言を言われた気がするっ!」

 

やっぱり真冬ちゃんは・・・なんというか、やはり生徒会員だった。この一癖も二癖もある生徒会の、役員だった。

 

「俺の苦手な人は、俺を題材に妄想小説書く人だよ・・・」

「え?そんな事してる人がいるんですか?まったく、けしからんですね。ぷんぷん」

「・・・もういい」

 

鍵の皮肉に対してもそれは自分じゃないみたいにあっさりとスルー。これは天然だからなのか真っ黒だからなのか・・・。

 

「さて、杉崎先輩と中目黒先輩とのラブシーンの続きでも書こうかな・・・」

「君は俺の天敵だぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「ええっ!?」

 

鍵の叫びにも、どうしてそんなことを言われたのか分からないといった表情の真冬ちゃんであった・・・。

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