「さて、今更だけど」
真冬ちゃんが鍵になんであんなことを言われたのか分からないとショックを受けている時、深夏さんが手を叩いて話を切り替えた。
「今日は本当に何もしなくていいのか?会長さん」
「んー・・・真面目に活動はすべきだと思うんだけど・・・。でもでも、ここ最近はちょっと時間外残業っていうか、放課後長時間残る作業多かったし、休んでもバチ当たらないって思うっていうか」
「そうね。生徒会の仕事なんて、殆どボランティアのようなものだから、役員達が体や心を減らしてまですることじゃないわ。必要最低限のことはやってるしね。こうやって、特に問題に取り組まない日があってもいいんじゃないかしら」
「でも、仕事たまってるだろ?あたし、そういうの落ち着かねーっていうか・・・」
まあ、分からなくもないかな。やるべき事は例え面倒事でも先にやっておきたい、って気持ちは僕だってある。まあ、とはいえ・・・
「まあ、気にするな、深夏」
「そうそう。今あるのは大した事ない細々とした物ばかりだしさ、僕達だけでも十分・・・」
「だから、それが一番気になるんだよっ!」
・・・深夏さんに怒鳴られてしまった。生徒会室がシーンと静まり返っている。・・・しまったな、鍵が勝手に雑務をやって、僕がそれを勝手に手伝ってるっていう方式は生徒会では暗黙の了解事項だと思っていたんだけど・・・。深夏さんは真面目だしな・・・。なんだかんだ言ってもやっぱり見過ごせない部分があったんだろうか・・・。
深夏さんがしまった、という表情を見せ、慌てて取り繕う。
「い、いや、えと。お、怒ってる訳じゃねーんだ。むしろ、感謝してるからこその、この、モヤモヤ感というか・・・」
「あー・・・大丈夫だよ、深夏さん。どうせ僕達が好き好んで勝手にやってるだけだし」
「い、いや、それは分かってるんだけどさ・・・」
「・・・ごめんな、深夏」
「いや、鍵が謝ってどうすんだよ!そうじゃなくて・・・」
「そんなに深夏が俺のことを想っていてくれたなんて・・・」
「その言われ方は激しく不本意なんだがっ!」
「鍵、独占はダメだぜ。居残りで雑務やってるお前を手助けしている以上、僕もその中に入るだずだ」
「お前まで何言ってんだ!だから、そういう考え方されるのはかなり意に反してるんだが!」
「甘いな。お前には精々『仕事頑張れ』レベルだろうが、俺にはラブパワーも一緒に送られてくるからな!深夏、俺はそれさえあれば無敵だからなっ!」
「ねえよ!ラブパワーは供給してねえよ!」
「そ、そんな!僕は一度もそんな物受け取った覚えは無いぞ!?」
「受け取るも何も出してねえって!」
「安心しろ、深夏!お前から送られてきたパワーは微塵にも残さず俺の深夏成分に取り込まれてるからな!柊になんざ一ミクロンも渡さん!」
「安心する要素がどこにあるんだよ!勝手に変な成分作んな!」
「たまに性欲の捌け口になってくれれば、俺はそれでいいからっ!」
「なにげにでかい要求してんじゃねえか!」
「大丈夫だ。深夏が肌を重ねるのは、俺一人で十分だから・・・ごほっ!くっ・・・持病が・・・」
「その言葉には全く同情できる余地がねえよ!そんなんで女がオチると思っているのかよっ!」
「真冬ちゃんはオチたみたいだけど?」
「え?」
「うう・・・杉崎先輩・・可哀想ですっ!真冬で良ければ、いくらでも・・・」
「オチてるっ!うちの妹が完全にオチてるっ!」
「まあ、真冬ちゃんって結構思い込みが激しいからな・・・」
「ああ、あたしの教育が間違っていた!」
そう言うと、深夏さんが真冬ちゃんの洗脳解除に取り組み始めた。・・・鍵の顔が非常にあくどいことになってる・・・。
「杉崎・・・。なんか今、凄いあくどい表情になっていたけど・・・」
会長も見てたようだが、鍵は表情を切り替えて会長に振り返る。
「え?そんな事ないですよぉー☆」
「語尾に☆がつくようなキャラでもないでしょう!」
「杉崎☆鍵(キラッ☆)」
「何のために!」
鍵は会長と話し始めてたので、二人の世界に入ってしまった椎名姉妹の方を見る。
「『いいか、真冬・・・真冬を慰めに使ってもいいのは私だけなんだぞ・・・』『お姉ちゃん・・・真冬は・・・』『よし、今から体に分からせてやるからな・・・』『ああっ・・・おねえちゃあん・・・』ってとこか・・・?」
「うーん、それも悪くないかもしれないけど、『慰めに使って』ってとこは『傷つけて』の方が良いかもしれないわね」
「成程、盲点でした。確かにそっちのほうが・・・」
「オイコラ!何勝手に私たちの会話に変なアテレコ入れてんだよ!別にそんな会話してねー!」
いや、だって二人の世界に入ってたし。そんな会話してたってことでいいんじゃ・・・。
もう少しアテレコしようかと思っていたが、紅葉先輩も鍵達の会話の方に回ったので、僕も止めて鍵達の会話に参加する。
「会長、会長」
「・・・なによ、杉崎」
「やらないか?」
「やらないよ!」
「ノリ悪いなぁ。会長に合わせて、ちょっと古めのネタで攻めたのに・・・」
「読者の何割が分かっただろうねぇ!そしてそのネタは、異性間でやったらただのセクハラだと思う!」
「違うだろ、鍵。ノリが悪いんじゃなくてノリに乗れなかったんだろ。お前の来てる服は青くもつなぎでもないし、ボタンをひとつ外す動作もしてないし・・・」
「しまった、忘れてた。ありがとう、柊。それじゃあ、改めて・・・」
「やらなくていいわよ!別にやるべきことやってないから乗らなかった訳じゃないし!」
「ええー。これで駄目となると、もう、会長とのスキンシップ手段は断たれたとしか・・・」
「どんだけ選択肢少ないのよ!ほかの手段はいくらでもあるよ!」
「すみません、セクハラ以外で女の子と接する事出来ないんです。自分、不器用ですから」
「それはもう不器用云々じゃなくて、一種の病気だと思う!あと、最後のは色々な人に失礼よ!」
「という訳で、胸、触っていいですか?」
「駄目だよ!っていうか、どういうわけよ!」
「減るもんじゃあるまいし・・・」
「発言が完全にセクハラ男のソレになってるよ!」
「仕方ない。それじゃ、パンツください、パンツ」
「なんで『譲歩しました』的な空気になってるのよっ!」
「え?駄目なんですか?」
「なにその意外なもの見る目っ!普通駄目だよ!」
「なんてガードが固い乙女なんだ・・・」
「杉崎の基準じゃ、普通の女子はほいほいとパンツ渡すの!?」
「じゃあ、ブラでいいで・・・。・・・あ、すいません」
「わ、私だってブラくらいつけてるよ!急に同情的な視線止めてよ!」
「鍵・・・お前、この会議でもう二度目だぞ。一回で懲りろ・・・」
「すまない・・・。少し、調子に乗ってたようだ・・・」
「この段階で反省されるのは、なんか凄く納得いかないんだけどっ!」
「セクハラは、今後、もうしませんっ!」
「ああ、何この不本意な更生!望んだ結末なのにっ!望んだ結末なのにー!」
会長が頭を抱えて唸っていた。・・・なんというか、本当いじり甲斐のある先輩だ。ここまでいじり易い人間というのもそう多くはないだろう。
会長に休憩の時間を与えている間、椎名姉妹はまだ二人の世界から戻ってこない様なので、今度は鍵と紅葉先輩の話に耳を傾けることにした。