「世の中がつまらないんじゃないの。貴方がつまらない人間になったのよっ!」
いつものように生徒会のみんなが集まるまで本を読んでいようと思っていたところ、 会長がいつものように無い胸を張りながらどこかの本の受け売りを披露した。
しかし、会長にしては珍しくいい言葉だ。何事も初めが一番楽しいというのはあながち間違いではない。
初めて学校に行ったときは、どんなことが起こるのかわくわくした物だ。
初めて他人と遊んだときは、いつもの遊びよりも何十倍も楽しかった物だ。
初めて旅行に行ったときは、いつもと違う未知の世界に興奮した物だ。
おっと、自己紹介が遅れたな。僕の名前は「
「じゃ、童貞もそんなに悪くないってことですか?」
「ぶっ!!」
あ、会長が思いっきり茶を吹いた。うわ、きたな。あいにく僕にはいくら美少女だからと言ってそんなものをありがたく受ける趣味はないので椅子を少し下げて回避する。まあ、会長から一番遠いし被害を受ける心配はないのだが、同時に会長の真正面と言う事もあるので念のため。
改めて紹介しようか。今茶がむせたせいでげほげほと咳をしながら涙目でとんでもない発言をした奴を睨んでいるのは、我らが生徒会長、「
もう片方のとんでも発言野郎は
「俺の扱いひどくね!?」
「はて、何の事だかさっぱりわからん。」
「いや、だ「今の私の言葉からどうしてそんな返しが来るわけ?」って、会長!割り込まないで下さい!」
会長が何とか復活し、僕たちの話に入ってくる。
「そんな事どうでもいいから、さっさと答えなさい!」
「どうでもよくないですよ!それに会長!俺の思考回路はそういう方向に至るように出来ているんですよ!」
「なにを誇らしげに!杉崎はもうちょっと副会長としての自覚をねぇ・・・」
「何言ってるんですか。この生徒会が俺のハーレムだって自覚ならキチンと・・・」
「ごめん。副会長の自覚はいいから、そっちの自覚を捨てることから始めようね。」
いつも通りの会話だ。大体、鍵は会議が始まるまで会長をいじって遊んでいる。その間、僕は本を読み、この二人の漫才をBGM代わりに聞き、時々会話に参加する。
「会長」
「何よ?」
「好きです。付き合ってください。」
「にゃわ!」
相変わらず言動が唐突だ。吹き出したお茶をティッシュで拭いて捨てようとしていた会長がきれいにこける。10.0。え、何の数字かって?会長がどれだけきれいにこけたかをフィギュアスケート風に採点した物だ。
「杉崎はなんでそんな軽薄に告白できるのよ!?」
「本気だからです!」
「嘘だ!」
「『ひ〇らし』ネタは古いですよ会長・・・」
むしろあれだったら惨劇回避出来たんじゃないかな、という睨みをしている。うん、結構かわいい。
「大体杉崎のどこに本気の要素があるのよ・・・生徒会に初めて顔出しした時の台詞、覚えてる?」
「えっと・・・なんでしたっけ?『俺に構わず先に行け!』でしたっけ?」
「そうそう、僕がその前に『柊様華麗に参上!』っていいながら天井から飛び降りてきたんでしたよね。」
「初っ端からどんな状況よ!あと、なんで楠木は態々天井から飛び降りてくる必要があったのよ!」
「なに、気にすることはない。」
「それでなんでも済むわけないでしょ!とにかく違うわよ!」
「あれ、違いましったけ?それじゃあ、『ただの人間には興味ありません。宇宙人、未来人・・・』」
「危険よ杉崎!いろんな意味で。」
「大丈夫です。原作派ですから。」
「何の保証!?あとアニメの出来は神だよ!」
「エン〇レスエ〇トは黒歴史のような気がしますけどね。」
「だから、そういうのはやめなさい!」
「ええと・・・ああ、思い出しました。」
鍵がいったん小休止を入れたのち、
『皆好きです。超好きです。皆付き合って。絶対に幸せにしてみせるから。』
と、あの時に言った言葉を繰り返す。因みに、この時僕は鍵の後ろにいたので、生徒会室に向けられて発せられたこの言葉の対象には入っていない。
「そうよ!あの時点で、この生徒会に貴方のいい加減さは知れ渡ってるのよ!誰でもいいから付き合えって堂々と言う人間に、誰がなびくっていうの!」
「失敬な。誰でもいいわけじゃありません。美少女以外は興味ありません。」
「可愛いなら誰でも良いって事でしょう!」
「一途なんです!美少女に!」
「括りが大きいのよ!」
「希少種ですよ。美少女。」
「そういう問題じゃないでしょう!複数の人間に対して告白している時点で、誠実じゃないのよ!」
「そうですか?優柔不断な人間よりも『俺はハーレムルートを目指す!』と宣言する方がかっこいいし潔いでしょう?」
「杉崎はギャルゲーの主人公とスペックが違うでしょう!」
「確かに。鍵は岡〇というよりも〇原の方が近いような気がするなぁ。」
「ひでぇ!俺、あんなに残念なの!?」
「会長ー、便座カバーってこの学校にありましたっけー?」
「別にいらねぇよ!」
会話しながら鍵は会長がゴミ箱に入れ損ねたティッシュをゴミ箱の中へ入れる。
「・・・・・」
「?どうしました?会長。」
「・・・杉崎ってさ、時々さりげないところで優しいわよね・・・」
「こういうギャップって好感度の上昇が大きいでしょう?」
「狙い!?しまった、私の中での杉崎の好感度がいくぶんか上昇してしまったわ!」
「ツンデレやクーデレって、こういうのがいいから人気高いんでしょうねー。」
「何だ、わかってるじゃないか柊!」
「ところで会長、男子用トイレの使い古した便座カバーまだ見つからないんですか?」
「まだ続いてたのか!?しかも、さっきより悪質なものに!」
こんな風に会長を二人でいじめていると、生徒会室の扉がまた開いた。
「キー君、クッキー君、アカちゃんをいじめないの。」
そういいながら入ってきたのは、この生徒会の書記を担当している会長と同じ三年生の「
因みに、キー君、クッキー君というのは鍵、僕のあだ名だ。
鍵→英語にする→key→キー君。
楠木→くすのき→クッキー君というわけだ。柊という名前はやたらとあだ名としては使いにくいからか、鍵と違って苗字の方が使われている。まあ、鍵と違って僕の名前は英語にしてもあだ名には使えないからな。
「やだなぁ、知弦さん。弄ってたんじゃなくって辱めてただけですよ。」
「余計に悪質じゃない。」
「勿論、同意の上ですよ。」
「嘘だ!」
「まあそれは置いといて、今日は俺のハーレムの集まりがどうも悪いですね。」
「無視された!?」
「ハーレムじゃなくて生徒会ね。まあ、でも仕方ないんじゃないかしら」
「知弦まで!?」
「そうですね。イベントがある訳でも無いですし集まったところでお菓子食べるだけですしね」
「楠木まで・・・。」
「知弦さんも柊も分かって無いですね。基本的に好感度は会わないと上昇しないんですよ?ほら、ギャルゲーって移動した場所でヒロインが決まりますから。」
「当然の知識の様に言われてもね・・・。」
「(´・ω・`) ショボーン」
「要するに、ここに来ないと俺との愛は育めないわけで、彼女たちはここに来るのが当然でしょう?」
「いや、むしろだから来ないんじゃないか?深夏さんと真冬ちゃん。」
「ぐはぁっ!!」
鍵に500ポイントのダメージ。ホントはクリティカル出して一撃で仕留めたかったが運が悪かったか。因みに、深夏さんと真冬ちゃんはまだここにきてない生徒会の役員のことである。
「だ、だがしかし!ここに来ていると言う事は知弦さんは俺との愛を育みに来たと言う事でしょう!?」
「・・・・ええ、そのとおりよ。」
「間が非常に気になるんですけど!なんか言い訳のきかない子供をあやすように言ってるような感じなんですけど!」
「鍵、諦めて今は撤退した方がいいんじゃないか?」
「く・・・だ、だけど!こういうクールなキャラこそ、惚れたときは激しいに違いない!」
「あら、それは正解よ、キー君。私小学校のころに好きな人に『好きです』だけ書いた手紙を1日300通送ったりして最終的に精神崩壊まで追い込んだりしたし・・・あなたはどうかしら。」
三人の体が寒くもないのに震える。やばい、この人は手を出してはいけない人なんじゃないだろうか。鍵がそのうち「nice boat」なことにならないといいのだが・・・。いや、いまでもハーレム目指してるしそのうちそうなるか?なら、頑張れ、鍵。」
「お前はほんとひどいよな!」
「あれ、僕声出してた?」
「ええ、結構はっきりと喋ってたわよ。」
マジか。気を付けなければ・・・。
「で、キー君はどうなのかしら?」
「・・・分かりました。」
「あら、これを聞いてもあなたは私を受け入れてくれるの?今、確かに私の中でのキー君の好感度が「俺は知弦さんとは体の関係を目指します!」・・・さて、勉強しましょうか。」
「あれ、返事はなしですか?そうか、そんなことはもうあたりまえの事実でしたよね。いやー、うっかりしてました。」
『・・・はぁ。』
はあ、ホントこういうところはアホだよなぁ。こういうのさえなければ今頃もっと好感度高いだろうに。
そうこうしているうちに、ふと会長の存在を思い出してそちらの方を向く。すると、紅葉先輩が持ってきたはずのお菓子をうれしそうに食べようとしている会長の姿が。
「会長、太りますよ。」
「うぐ。で、でも栄養分を胸と背に回せば問題ないもん!」
「腹に回った時のリスクがでかいうえに、高3にもなって今更成長するわけないでしょう。」
「だ、大丈夫よ!私は神を凌駕するんだから!」
こんなことで神を凌駕しようとする人間は有史以来初めてではないだろうか。
そう考えていると、今まで問題に集中していた紅葉先輩が声を出す。
「えーと・・・この問題の答えは『メタボリックシンドローム』と・・・。」
「今、深刻な社会問題ですよね。メタボ診断もまだ3割に達してないらしいですし。」
「・・・」
会長が涙目で崩れ落ちている。フォローは任せたぞ、鍵。
「会長、大丈夫ですよ。」
「杉崎・・・」
「もし会長が太ったら、その時は仕事に生きればいいんですから」
「リアルアドバイス!?私、太ったら捨てられるの!?」
「大丈夫です。いざという時は匿名で『頑張ってください』って手紙を出しますから。」
「見捨てる気満々じゃない!!匿名なんでしょ!?手紙なんでしょ!?」
「頑張れ、会長!俺のハーレムに残るために!!」
「・・・私、太ってもいい気がしてきた。」
今日も平和だなぁ。しかし、鍵はほんとひどいことをさらっと言っていくよなぁ。こういうのがなければ、と親友として非常に心配だ。
そうこうしていると、またドアが開いた。
以下主人公の簡単な設定
名前:楠木柊
年齢:16才
学年:碧陽学園2年A組
役職:碧陽学園生徒会庶務
身長:177cm
体重:68kg
見た目:髪は銀髪。本人は銀髪とは言わず、白髪と言っている。
顔は普通より少しいい。でもそこまで目立った顔立ちではない。
誕生日:12月7日
その他:もともとこの地方の人間ではなく、高校に上がる際にこちらに越してきた。
現在は一人暮らしで、家族とは高校に入ってから一度も会ってない。
趣味は読書。ミステリーものをよく読んでいる。本人いわく、「東〇圭吾は神。」とのこと。
真冬や杉崎程ではないがゲームもやっている(ジャンルはRPGやSTG等。)
運動神経はいい方で、深夏のように部活の助っ人として呼ばれることも(ただし有料。)
とある事情により、中学のころはあまり人と接しておらず、よく喧嘩をしていた。(今でも地元ではいろいろとよくない評判がある。)
一年のころに杉崎、深夏と出会っているが、それ以外の役員とは、生徒会発足時に初めて顔合わせした程度。