「知弦さん、最近面白いことありましたか?」
鍵、なんだその話すことなくなって困った時の会話の入りみたいな質問は。
「キー君・・・。なにその、会話に困った時の常套句みたいな質問」
おや、紅葉先輩も同じ事を考えていたようだ。まあ、この状況で考えられることってさして多くないけどな。
「すいません。でも、パッと頭に浮かんだもので」
「まあ、でも、確かにそういうのはあるわね。『今日、いい天気ですね』に代表される、取り敢えずの会話の始点とでも言うべき台詞」
「そうですねー。他には『最近どう?』とか『元気でしたか』とかありますね」
「それ困るのよね。『どうって、何が?』で私は返すけど」
「でも、そう返されても困りますよね。『いや、なんて言うか、総合的に・・・』みたいな」
「まあ、そこから会話が弾むことが無きにしも非ずだけど。最近の日本は、色々とアバウトすぎるのよ。もっと、ピンポイントな会話の始点があるべきだわ」
「具体的には?」
「そうねぇ・・・」
紅葉先輩はしばし考え込む仕草をしたあと、何か閃いたのか、笑顔で口を開いた。
「『どう?完全犯罪に興味とか・・・ある?』なんてどうかしら」
「ピンポイントとかの騒ぎじゃないですよ、それ。怖すぎますよ、どう考えても」
「乗ってきたら、会話が進むこと間違いなし」
「犯罪計画という最低な会話がねぇ!」
「私はよく使うんだけどなぁ・・・。ざっと30位は案があるしね」
「使ったことあるんだ!その会話の顛末が凄く気になりますよ!」
「あとどんな計画なのか非常に気になるんですけど、聞いたらなんか戻れなくなりそうなんで止めておきます」
「・・・あの時はたいへんだったわ・・・」
「紅葉先輩、お願いですから遠い目しないで下さい。なんか信用できなくなります」
「大丈夫大丈夫。私の手は汚れてないから」
「まるで誰かの手は汚したかのようなっ!」
「・・・。・・・ふふ」
「怖えーーーーーーー!」
「やはり最高の会話の始点よね、完全犯罪」
「今の会話のどの部分を取ったら最高って言えるんですか・・・」
「ただの世間話で人生破滅ですよっ!」
「まったく・・・。キー君は突っ込んでばっかりね。仕方ない・・・キー君語のみの方向で会話の始点を考えましょうか」
「是非そうして下さい・・・」
「そうねぇ。それじゃあ、『俺、そろそろ性欲が抑えられなくて、女を襲おうと思うんだけど・・・一緒にどうか?(ニヤリ)』とか」
「いえいえ、先輩。そこは『俺、明日にでもそこらへんの女子高生誘って隠し撮りして売ろうと思ってんだけど・・・一緒にやらないか?(ニヤッ)』の方が鍵らしいと思います」
「そんなに犯罪がしたいのか、アンタ達は!っつうか、俺、そこまで評価低いんですか!」
「お前にとっては最高の話の始点だと思うんだがなぁ・・・」
「そうよねぇ。キー君にピッタリだと思うのだけど・・・」
「あんた達って人はー!」
「キー君にそんな会話を持ちかけられたら・・・私、断る自身がないわ」
「いや、流石に断ってください、それは」
「そもそもなんで知弦さんにそんな会話を持ちかけてるんですかっ!」
「しかも紅葉先輩、『女』を襲う気なんですか」
「・・・ふふ」
ちらりと会長を見て微笑む紅葉先輩。会長が虎から獲物にされた仔鹿のように「びくっ!」身震いしていた。・・・先輩・・・。
「この生徒会は百合ばっかりか!」
「あら、見損なわないでほしいわね、キー君。私は・・・バイよ!」
「そんな誇らしげにカミングアウトしないでください。それ聞いた僕達は今後どう接すればいいのか分からなくなりそうなんですけど」
「人物相関図を書いたら、私からは生徒会のメンバー全員に『LOVE』となっている勢いよ」
「俺以上に節操無いですね!」
「ま、要は刺激的であれば、私はなんでもいいのよ・・・」
「今の僕の目には紅葉先輩が鍵よりも危険人物に見えるんですけども・・・」
「奇遇だな、柊。俺もだ・・・」
「あら、そんなことないわ。私、いつもキー君のオオカミのような視線にゾクゾク・・・いや、ビクビクしているのよ?かよわい女の子なのよ」
「今確実にゾクゾクって言いましたよ!言い直しても無駄なくらい、はっきりと言いましたよ!」
「紅葉先輩を『かよわい女の子』に分類したら、この世の殆どの女性は『かよわい女の子』になりそうですね」
「キー君達、怖ぁい☆」
「☆はもういいですよ!」
「紅葉☆知弦(キラッ☆)」
「どんだけ☆ブームきてんですか、この生徒会」
「キラッ☆は可愛かったけど、もういいですよ、それ!」
・・・うーん、なんて言うか、紅葉先輩と世間話をすると酷く疲れる。僕たち程度だとどうしても一枚上手になってしまうのだ、紅葉先輩が。
会話する相手がいなくなってしまったので、また本に視線を戻す。読み始めてからまだ20P程度しか読んでない・・・。会話に集中しすぎたか?まだ第一の事件すら起こってないぞ
そうして本に集中してると、ふと深夏さんが大声で叫んだ。
「いでよ覚醒真冬!そして世界を滅ぼしてしまえぇー!」
「は?」
「既に目的が入れ替わってるだろ、おい!」
なんか変な感じになってる・・・。気になったので真冬ちゃんを見てみると・・・。
・・・あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!「僕が本を読んでいるわずかな間に、真冬ちゃんがなんか感情のこもってない凄い機械的な目になって鍵を見ていた」な、なにを言って(ry
「敵、認識。攻撃シマス」
「なんか真冬ちゃん凄いキャラ変わってるんだけど!」
「おい深夏!真冬ちゃんに何したんだよ!」
「戦闘能力を特化させるためには・・・仕方ないことだった」
『妹をなんだと思ってるんだてめぇ(思ってるんだよお前)!』
「おお、鍵!柊!なんかカッコイイ台詞だったぞ!マッドサイエンティストに対峙する熱血主人公みたいだ!」
「言ってる場合か、オイ!」
「って、おわぁ!」
深夏さんと口論していると、唐突に僕の目の前を定規が高速で通過していき、そのまま鍵の真横に突き刺さった。壁にありえない音で突き刺さり、っていうか定規って壁に刺さるのか?ともかく、定規の周りの壁の部分にヒビが入っている。そして、鍵の首からは血がツーと流れている。
「誤差、三センチ五ミリ。修正。次弾、装填」
真冬ちゃんはそう言いながら、自分の筆箱からペンを取り出し、ダーツを投げるような仕草で鍵に狙いを定めた・・・って!
『わぁああああ!?』
生徒会室が一瞬で戦場に変化する。会長と紅葉先輩が二人で部屋の隅に避難する。僕は立ち位置的に避難しにくい場所だったので、鍵のところへ移動する。
一方深夏さんは「おおっ!」と目を輝かせて真冬ちゃんを見る。
「真冬、かっけぇ!」
「『かっけぇ!』で済ませてる場合か!」
「色々どうにかしろ、おい!なんだこの展開!」
「あたしの妹だから、潜在能力は高ぇと思っていたが・・・まさかここまでとは・・・。お姉ちゃんは、感動したっ!」
「感動する前に対処しろよ!」
「行けっ、真冬!今こそお前の真の力を解放する時だっ!」
「一撃らしい一撃も加えてないのにもう第二形態かよっ!どんな鬼畜ゲーだよ!」
「了解。戦闘モード、第二形態ヘ、シフトシマス。・・・戦闘力、二百パーセント、アップ」
「もう手に負えない感があるんだがっ!」
鍵と一緒に震えていると、背後では別の戦場が繰り広げられていた。
「大丈夫よ、アカちゃん。貴方へのトドメは・・・私が刺すから!」
「ここにも敵!?わー!きゃー!助けて楠木ー!杉崎ーー!」
「うふふふふ・・・・」
「二人共ぉーーーーーーー!」
背後で会長が助けを求めていたが・・・すみません、今はとてもじゃないけど無理です。
目の前では更にパワーアップした真冬ちゃんが鍵の首に狙いを定めている。
その横では、悪役宜しく深夏さんが高笑いしている。
背後では別の意味でヤバくなっている紅葉先輩と、それに捕われて助けを求めている会長。
こんなの絶対おかしいよ!
「くそっ!こうなったらこれしかねぇ!」
鍵が突然叫ぶ!・・・そうか!その手があったか!
僕もそれに気づき、鍵にアイコンタクトを送る。鍵もそれを見て頷いた。
そう、この話は『休憩する生徒会』・・・オチなんて必要ない!だから・・・!
「うぉおおおお!」
鍵が突っ込んで行き、そして
「鍵!」
僕はそれに応えて叫ぶ!そして・・・
「受け取れぇぇぇ!」
僕は近くにあった何かを投げつける!
鍵はそれを見て・・・
次回予告:ついに反撃を開始した杉崎。しかし、戦闘ロボットと化した椎名真冬の前に、劣勢に立たされる。はたして勝機はあるのか!真冬ちゃんの心を取り戻すことができるのか!
次回「死闘」 「てめぇら人間じゃねぇっ!」 次回へ続く・・・!
※この予告は嘘予告です。次回は何事も無かったかのように別の話に入ります。それでは、皆さん、また次回。