「ふう・・・」
僕は今、アルバイト先の本屋にいた。
あの後、僕と紅葉先輩は一緒に生徒会室に戻ったのだが、会長は別として、それ以外の皆は勝手に手紙を読んだことに対して紅葉先輩に謝罪していた。会長は読んでる場にいなかったし当然と言えば当然か。真儀瑠先生も流石に悪かったと認識していたのか、謝罪していた。まあ、その後開き直ったりしていたのは先生らしいというか・・・。その後、あの手紙のことについて気になってたところ、まあ、要するに何で負の思い出であろう「アカちゃん」というあだ名を親友の会長に付けたのかとか、いくつかを紅葉先輩に質問して、紅葉先輩もそれに応えたりしていた。その答えに僕は結構思うところもあったのだが、会長は別に自分のあだ名のことを対して気にしてなかったのか、特に何も無かった。まあ、僕たちにとって「アカちゃん」は会長だし、今更気にすることでもないだろう。
とまあ、こんなことがあり、今日の生徒会は解散したのだが、僕のポケットには懸案事項がまだ一つ残っていた。それは勿論、あの「手紙」のことだ。
僕宛に届いた手紙。こんなふうに実名で小説書いていればいつか気づくとは思ってたけど、生徒会室宛てに手紙が届くというのはちょっと考えてなかった。電話しようにも電話番号なんて勿論書いてないし、僕に対して何らかのアクションを起こすのは無理だろうから気にすることもないと思っていたが・・・。こんな手段に出るとはな・・・。
「おい、柊君」
「え?」
「え?じゃない。さっきからずっと手が止まっているぞ」
「あ、ああ。悪い、つばさ」
「全く、今日何回目だと思っているんだ」
考え事をしていると、またつばさに注意された。実はさっきから本の整理の手が止まっているとか、レジに客がいるのに対処せずにぼーっとしてるとか、いろいろ注意されていたのだ。仕事中にこれはまずいのだが、ふとした時にまた考え出してしまって、結果何度も手が止まってしまうのだ。
「・・・何かあったのか?」
「・・・」
「話せないような事情ならば、今は別に構わない。ただ、気になったからな」
「・・・手紙が来たんだ」
「手紙?誰からのだい?」
「もう、話すこともないんだろうな、って思ってた・・・大切な人からだ」
「・・・それは、以前に話していた君の?」
「ああ、そうさ。・・・我ながらずいぶんと情けないよ」
僕はつばさと一緒に本の整理を続けながら今日あったことの話をする。生徒会室宛てに届いていた手紙のこと。それが「椿」と「明凛」・・・
「僕は、未だに手紙の内容を全く見ていないんだ」
「それは・・・何故だい?」
「・・・怖いんだよ。僕は・・・過去を振り切ってやり直すって決めたのに・・・自分の道を探して罪の償い方を決めるって決意したのに・・・まだ怖いんだ。過去を振り返ることが・・・過去に拒絶されてしまうことが・・・どうしても怖かった」
「・・・」
「本当、どうしようもないよ。何が変わりたい、だよな。こんなことでここまで動揺していて、何が・・・」
「・・・ボクは、きっとそれでいいんじゃないかと、思っている」
「え?」
「誰だって、過去を見るのは怖いさ。それが、負のものであれば、尚更な。だからこそ、ボク達は前だけを見てがむしゃらに進むんだ。でも、それでも過去を振り返らなければいけない時もある。たとえ怖くても。むしろ、怖くない方が不思議だと思うけどね。それに・・・」
「それに?」
「ボクが思うに、大切なのは「過去を振り返らない」とか「過去を振り切る」とかじゃなくて、その過去をいかに受け入れて、利用するかの問題だと思うけどね」
「・・・」
「だから、怖いと思うのはむしろ当然だろうから、悪いことじゃないとボクは思うけどね」
・・・過去を受け入れて、利用して、前に進むこと、か・・・。僕には、それが出来るのだろうか?いつまでも忘れることの出来ない、僕がどうしようもない人間になってしまった「あの事件」。そして、昔の
「つばさ」
「何だい?」
「その・・・ありがとうな」
「・・・気にするな。君は大切な友人だからな」
「・・・ありがと」
・・・そうだな。やっぱ僕はあの事がまだ怖いんだろう。それは一生変わらないと思う。でも、僕は生きている。なら、いつまでもそこに留まっていないで前に進んで少しでも変わらなきゃいけないよな。この程度で怯えていたんじゃ、話にならない。
僕は前に進みたくて、あの学校に来て、あの生徒会に憧れて、そして入ったんだ。そして、あの生徒会で僕は少しずつ変わっていくって決めたんだ。だから、もう迷うわけにはいかない。今はまだ言わなくても、いつかきっと皆に言うべきだろう。僕の事、僕の決めた道のこと。そして・・・それが終わったら感謝しよう。僕をこうやって導いてくれている彼女達に。そして、親友に。
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その日の夜、僕は自分の部屋で来た手紙を読んだ。内容は・・・まあ、色々と書いてある。まず、僕が一年半以上なんの音沙汰もなく音信不通になっていたことへの文句から始まり、街の様子や自分の周りのこと。その他自分の事なんかも書いてあった。
そして、最後には「小説書いてる合間にでもいいから、返事を書いて欲しい」って事が二人の手紙に書いてあった。
「・・・どうしようかな」
僕は悩んでいた。・・・こういう時って何から書いたら良いものかな。なにせ相手は一年半以上会ってない上、迷惑をかけているという自覚はあるので、下手なことを書くのはなんとなくためらわれる。だからといって必要最低限だけしか書かないというのも考えものだろう。
「・・・まあ、少しずつ書いていけばいいか」
僕はそう思った。今の僕には書きたいことがたくさんある。だから、少しずつ書いて必要のなさそうなものは外せばいいかな。そう思った僕は、最初にこの事を書く事にした。
僕の、こちらで出来た最高の親友たちのことを。