「団結力というものは、時に全ての悪を打破するのよ!」
いつものように会長が偉そうに何かの本の受け売りを語っている。
「おお、その通りだぜ会長さん!正義の絆は、何よりも強い!」
「熱い要素」好きの深夏さんがテンションを上げ、何故かその場でシャドーボクシングを始める。それにしてもこの副会長、ノリノリである。その様子を満足げに見ながら会長は「うむうむ」と頷いた。
なんか早速脱線し始めたこの状況に、副会長である鍵が修正にかかった。いや、まあ、話を脱線させたのはもう一人の副会長なんですけどね。
「それで、今日は・・・確か、夏休み前の全校集会でやる「出し物」の話し合いですよね。毎年恒例の、生徒会役員による寸劇・・・でしたっけ」
「そう!それの話!」
会長はホワイトボードに「出し物について」と書いた。
それを見て紅葉先輩は微妙に憂鬱そうな表情になった。いつもの表情とは全く違うそれに、鍵も気になったのか、紅葉先輩に訪ねた。
「どうしたんですか、知弦さん。俺への恋煩いでもこじらせましたか?」
「キー君・・・。まあ、それでもいいわ。好きよ、キー君。スキスキスキスキ。」
「よかったな、鍵。紅葉先輩にかなり愛されてるぞ」
「わーい!知弦さんがオチた!わーい!・・・・って喜べないですよ!そんな無表情であしらわれても!」
「でしょうね。はぁ」
「それで?実際はどうしたんですか、先輩」
「いえね。例の恒例の出し物よ・・・。私は去年もやったんだけどね。アレは・・・ちょっと、憂鬱なのよ」
「去年?ええと・・・よく覚えてないんですけど、どんなことやってましたっけ?」
鍵が紅葉先輩に尋ねる。かくいう僕も正直覚えてなかった。
その問いに対して、紅葉先輩はため息を吐いて、苦笑する。
「まあ、見る方はそんなもんよね。去年は・・・生徒会のメンバーで『健やかなる学園生活』っていう、寸劇をやったわ。内容は・・・教育ビデオみたいな退屈なものよ。ああいうくっさい台詞を大真面目に言うのは・・・」
「あー・・・つらそうですね、それは」
普段大人キャラの紅葉先輩が、全く心に響かないくっさい台詞を大真面目に言うのは、確かに辛いだろう。まあ、幸いなのは、寸劇の視聴率が深夜番組並みに低いことだろう。
「でも、どうして生徒会による寸劇が毎年恒例なんですか?」
紅葉先輩が疲れきった表情をしていると、真冬ちゃんが質問してきた。
「アイドルのコンサートのようなものさ」
「え?」
「ほら、この生徒会って人気投票で上位に入った美少女達のコミュニティでしょ?だから、アイドルのコンサートみたいにそういう立ち回りをするの、見たいやつが多いんだと思うよ」
「はぁ・・・なるほど」
僕の簡単な説明に、真冬ちゃんは納得したような、そうでないような微妙な表情になる。
それに対し深夏さんが着席しながら補足する
「まあ、それもあるっちゃあるけどな。元は、折角の『明日から夏休み!』っていう時に堅い挨拶ばっかりてのも芸がないって考えた昔の生徒会が、ちょっとしたイベントとしてやってみたのがキッカケらしいぞ。んで、前生徒会がやったことってのは、次の代も大体マネするから・・・」
「いつの間にか伝統になってしまった、と」
「そういうこと。だから別にやらなくても問題はねぇんだが・・・」
深夏さんの言葉に、鍵は「何を言う!」と勢い良く立ち上がった。
「美少女がステージ上で脚光を浴びる折角の機会!やらなくて問題無いわけがない!」
「でも、去年はあんま見てなかったんだろうが、お前・・・」
「去年の今頃は色々余裕が無かったからな!しかし、今年は別!俺のハーレムメンバーがスポットライトを浴びる・・・その機会を逃してなるものか!」
鍵は生徒会メンバーからの冷たい視線を浴びながらもそう全力で主張するが・・・肝心なことを忘れてるようだ。
「・・・鍵、忘れてるかもしれないけど、お前今年は演劇をする方、要するに出る側だぞ?」
「・・・」
「つまり、客側で観察してるとか、そんな余裕絶対ないからな?」
「な・・・なんだってーーーー!?」
鍵は僕の言葉を聞いて、項垂れる・・・。・・・それくらい気づけよ・・・。
「まあ、杉崎は置いといて・・・とにかく、今回の演目について話し合うわよ」
会長が鍵を無視して会議を進行する。鍵も凹んでいても仕方ないと判断したからか、しぶしぶ会議に加わっていた。
「差し当たっては、演目を決めたいのだけど・・・」
「あれ?会長、いつもみたいに『これやるわよ!』って来ないんですか?」
鍵の最もな疑問に対して、会長は「ううん」とまゆを寄せて唸っていた。
「特にやりたいことないっていうか・・・」
「?はっきりしませんね、会長」
「アカちゃんも、私と同様、そもそもあんまり乗り気じゃないのよ。去年、アカちゃんは台本覚えるのに苦労したからね」
「ああ、なるほど」
今ひとつやる気がないのも納得だ。
会長は一つ嘆息すると、気持ちを切り替えるように、全員に呼びかける。
「そういうわけで、なんかやりたいことある人ー。私や知弦からは特に何もないし、こだわりもないから、好きな方向性のこと言ってもいいよー」
「じゃあ、俺のハーレムサクセスストーリー・・・」
「杉崎以外」
「・・・」
・・・もう少しオブラートに包むってことを学んだほうがいいと思うんだよな、アイツ。
早速会議から弾かれた鍵をスルーすると、残りは当然椎名姉妹と僕ということになる。しかし、僕にも大した意見あるわけではないので、取り敢えず椎名姉妹の発言を待つことにした。
すると、真冬ちゃんが「じゃあ」とパァっと顔を輝かせた。
「ボーイズラ・・・」
「深夏、貴女だけが頼りよ」
「・・・」
またしても会議から一瞬で弾かれてしまった。真冬ちゃんは一人でズーンと沈んでいる。・・・なんというか、最近の真冬ちゃんは鍵と同じような立場になっているような気がしてならない・・・。
一方指名された深夏さんは、しばし考え込んだあと、何故かまた立ち上がって胸を張って告げる。
「戦隊モノっていうのは、どうだろう?」
『戦隊モノ?』
「そう!ほら、日曜の朝からテレビでやってるやつ!『○○レンジャー』的な!」
「え・・・と」
深夏さんの意見に、流石に会長が表情を引きつらせていた。いくら意見がないとはいえ、この年になってその演目をするのは抵抗があるのだろう。とはいえ、そのすぐあとにやる『ライダーシリーズ』をやると言われるよりはよほどマシだけど・・・。
そう考えていると、鍵が深夏さんに意見した。
「いや・・・流石に高校生にもなってヒーローショーは・・・」
「そんなこと言ったら、去年までの生徒会の演目だって茶番じゃねぇか!」
「う・・・」
「こういうのは、大袈裟なくらいが丁度いいんだよ!それに、生徒会のこの六人での戦隊モノ・・・確実に生徒の目を引くんじゃねーかな!」
「・・・・」
なんか今回深夏さん、えらく熱く語ってるなぁ・・・。とはいえ、ほかの意見もないし、会長に「楠木には何か意見はないの?」との問いに特に案なんて持ってないから「別に構わないんじゃないですかね・・・」と答えたし、結局、全員同意する形になった。
「よっしゃ!じゃあ、戦隊モノで決まりな!」
『・・・はぁ』
深夏さんがテンションを上げている中、僕達はテンションを深夏さんに吸い取られてるんじゃないかと思うくらいにテンションが下がっていた。・・・まあ、この年になってヒーローショーはやっぱり辛い。
とはいえ、決まってしまった以上はやるしかない。戦隊モノと言っても、どのくらいクオリティーを上げることができるかという方向性で会議を始めることにした。
「それじゃあ、戦隊モノでいくとして。取り敢えず、タイトルを決めましょうか」
「タイトルねぇ・・・」
戦隊モノをやるってことこそ決めたものの、そこまで戦隊モノに詳しいわけではないので、また会議の進行が止まってしまう。まあ、あんまり凝ったものである必要はないと思うけどな・・・。そう考えていたが、深夏さんだけはやはりノリノリで案を出す。
「そんなもん、『生徒会戦隊 ガクエンジャー』でいいだろ」
「おい、勝手に決定するなよ!」
「なんだよ、鍵。なんか文句でもあるのか?」
「文句っていうか・・・。じゃあ一つツッコムが、生徒会と学園だと、学園の方が大きいのだから、『学園戦隊』の方が、なんとなく正しくないか?ほら、『栃木戦隊 スペースレンジャー』みたいな違和感?」
「でも逆にすると『セイトカインジャー』っつう、妙に語呂悪いヒーローだ」
「なら『セイトカイジャー』とかでも僕は良いと思うけど?」
「それだと言葉の響きが炊飯ジャーみてぇな感じで、なんかいやだな・・・」
「じゃあ、そもそも学園とか生徒会とか入れずにいこうじゃないか」
「例えば?」
「そうさなぁ・・・」
鍵はしばし、試行錯誤し、そして、何か名案が思いついたのか、告げた。
「美少女戦隊 ラブレンジャー」
『・・・』
鍵のその言葉に、一同ドン引きしていた。
「杉崎・・・そのセンスの無さは、異常だと思う」
「キー君・・・キミはもうちょっと出来る子だと思ってたのに・・・」
「いくらなんでも酷すぎんだろ、鍵・・・」
「先輩・・・キモいです」
「悪かったよ!ああ、ラブレンジャーは流石に自分でもどうかと思うさ!で、でも、美少女戦隊はいいだろ!」
「よくねぇよ」
鍵の言葉に、深夏さんが半眼でツッコンだ。
「いや、凄くこの集団を的確に表しているじゃないか!」
「お前も柊も入ってんだろう!」
「そこはほら、二人で女装したり!」
「僕とお前が女装して、それ一体誰得なんだよ」
「しかも、それは『萌え』であって『燃え』じゃねえ!戦隊モノに『萌え』を持ち込むなかれ!」
「なんだよー。いいじゃないかよー」
鍵が文句を言いながらも引き下がる。こんなものが通ると本気で思ってるわけじゃあないだろうが、仮に通っても女装なんざする気は全くないので、どっちにしろこの案は自然消滅しただろう。
全員が「やれやれ」と呆れる中、今度は真冬ちゃんがボソボソ呟いた。
「BL戦隊 ヤオ・・・やっぱりいいです」
『・・・』
本人は撤回したんだろうけど、全員何を言おうとしていたのか理解していた。真冬ちゃんは照れ隠しのためか顔を背けているが・・・まあいい。どうせこれも通るわけない案だし。
一方会議の方は、深夏さんが仕切り会議を再開していた。本来仕切るべき会長はもう聞き役に徹しているようだ。
「会長さんや知弦さんは、なんか意見あるか?」
聞かれた二人は顔を見合わせたあと、首を横に振った。そして、紅葉先輩がまとめるように告げる。
「『生徒会戦隊 ガクエンジャー』で構わないんじゃないかしら。そこまで拘るものでも無いでしょうし」
「そうね。私も異議なし」
二人から賛成の意見を受けた深夏さんは満足そうに微笑んだあと、そのまま会議を進める。
「そんじゃあ、次はシナリオでも決めるか?」
「僕はそれでいいと思うよ。とはいえ、寸劇だし簡単なシナリオでいいんじゃないかな?」
「戦隊モノということは、悪者が出てきて、戦って、勝利して、大団円で終わり・・・っていう流れなんでしょうけど・・・」
「そうね。あとは、そこに生徒会ならではの味付けをすれば完成でしょうけど・・・そこが、一番難しいわね」
紅葉先輩の言葉に、全員で一斉に頷く。
「個性のあるアレンジ」っていうのは、言うのは簡単だが、実際にそれをするのは結構難しい。
全員で腕を組んで考えている中、この中で一番シナリオの作成が上手であろう真冬ちゃんが意見を述べる。
「例えば、この場合の悪者っていうのは、生徒会が戦うものですから・・・風紀を乱す生徒とかでしょうか?」
真冬ちゃんの意見に、会長は表情を歪める。
「それが一番単純で分かりやすい構図なのだけれど・・・流石に、不良生徒だって言っても、この学校の特定の生徒を倒すっていう設定は・・・」
「あ・・・それもそうですね。それじゃあ・・・」
真冬ちゃんが次の案を練っていると、鍵が別の案を提案した。
「じゃあ、皆で美少女を襲うっていうのはどうでしょう?」
「杉崎のはなんかもう、ツッコミで修正できるレベルじゃないわよ!」
「それじゃあ、裸で校内を徘徊していた男を、鞭を装備したガクエンジャーがビシバシ叩き続けるっていうのはどうかしら?」
「完全に趣味に走ってるよねぇ、知弦!」
「炎髪灼眼の生徒会役員が、存在の力を食い荒らす化け物を対峙するっていう・・・」
「いや、ここは女性しか動かせない機械を動かした唯一の男性が、生徒会役員と共にどこかの企業と戦うっていうストーリーの方が・・・」
「そのストーリーラインは、何かの許可を取らなきゃいけない気がするわ!」
まあ、ネタに走った僕達にも責任がないとは言わないが、全く話が進まない。
「意外と・・・敵の設定は難しいわね」
「でも会長。逆に考えれば、敵さえ決まれば目的も決まって、ストーリーの大まかな流れも決まるんじゃないでしょうか」
「それはそうね」
「ここはやはり美少女を敵に据えて、壮絶なバトルでどんどん肌を露出していって最終的にはポロリもあるよ、的な展開で・・・」
「杉崎は基本的にシナリオ構想がエロゲ寄りなのよ、なんか!」
「ほら、美少女すぎて風紀を乱す、けしからん猥褻な女の子を懲らしめるんですよ」
「それ以前に、まず杉崎を排除することから始めたいわ!」
「それじゃあ、こんな感じにしますか?簡単にストーリーの流れを考えてみたんですけど」
「まともなのを頼むわよ・・・」
「じゃあ、いきます」
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20XX年、日本は杉崎による帝国『ハーレム国』に支配されていた。国王杉崎が美少女だと判断した少女は本人の意思に関わらず杉崎のハーレムに強制的にかにゅうさせられ、日本は混乱していた。そんな中、杉崎の支配に抵抗する学校があった。碧陽学園である。特にその生徒会は主力として解放軍を率いる存在であった。しかし、巨大な帝国軍の力に押されてしまい、最終的に滅びかける。学園の人たちがもうだめか・・・と思ったその時、五人の戦士たちが現れた。その戦士たちは凄まじい力を誇り、大量にいた帝国の兵士たちを一瞬で壊滅させてしまった。戦いが終わったあと、ある一人の人間がこう聞いた。「貴女たちは何者だ?」と。その問に対して、一人の少女ーーーやや背が足りず、威厳があまりないがーーーがこう答えた。
「通りすがりの戦隊『ガクエンジャー』よ、覚えておきなさい!」
・・・これは、ある少女たちの活躍の物語である。
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「・・・こんなかんじでどうでしょう?」
「却下よ!まず時代背景くらいは今の生徒会に合わせてよ!それに、そんな長い話をたった5分しかない寸劇でやるなんて無理に決まってるじゃない!あと、最後のは完全にアウトよ!」
「えー、我ながらいい案でたと思ったんですがねー」
「どこがだ!そもそも、なんで俺生徒会役員なのにラスボス的な扱いされてんの!?」
「いや、それは、ほら、鍵だし」
「意味がわからん!」
「あたしは鍵が敵っていうのは別に構わねぇと思うけどなぁー。鍵を敵にして残りの5人でボッコボコにするストーリーでいいんじゃねぇか?」
「リンチか!寸劇は生徒会による俺への公的な集団リンチの場なのか!」
僕たちがそんな応酬をしていると、紅葉先輩と真冬ちゃんが二人でさも自分は常識人ですという空気を出しながら語り合っていた。
「これじゃ埒があかないわね・・・」
「まったくです」
「とりあえず、ここは裸の美少年二人が絡み合っているところを、皆で言葉責めにするという設定でいきましょう」
「そうですね。真冬も、このまま決まらないよりは、それでいいと思います」
『ちょっと待てい!』
僕達は慌てて口論を中止して、二人の会話を止める。
・・・結局、いい案は出ずに、最終的にはもう定番でいいだろう、という結論に至った。そのため、「学園に怪人現れる→ガクエンジャー出動→撃破」となった。因みに、怪人の正体は不明である。
「な、なんか妙にすっきりしないヒーローショーでしたね・・・。怪人さん、何者だったんですか・・・」
「気にしたら負けだと思うよ」
真冬ちゃんがメモを取りながら呟いた言葉に僕はそう答える。この生徒会だ。細々としたことを気にしていたらストレスでハゲる。
「さて、次は誰が何役をやるかね」
会長が改めて場を仕切る。さて、僕はどうするかね・・・。