「映画を撮りましょう」
ある日の昼飯の際、いきなり巡さんがこう言い出した。
「「「は・・・?」」」
僕と守、それに中目黒君は当然のように聞き返す。いや、だっていきなり何言い出すんだろう、この人は。映画を撮るって・・・。因みに、今鍵と深夏さんはこの場にいない。深夏さんは体育館でバスケする約束があって昼休みに入るやいなやさっさと体育館に行ってしまったからだが、鍵の方は何か変なテンションになりながらいつの間にかどこかへ行ってしまったのだ。アイツ、大丈夫なんだろうか・・・。午前中結構ヤバめなテンションだったけど・・・。
「えーと・・・姉貴?それはどういう意味だ?」
話を戻すと、守が当然巡さんに聞き返す。まあ、いきなり映画を撮るとか言われてもなぁ・・・。
「そのままの意味よ。私達で映画を一本撮ろうって事よ」
「いや、そういう事を聞いてんじゃなくてだな・・・」
「どうして映画を撮ろうって考えたのか、って聞いてるんだよ、僕達は」
僕は答えになってない巡さんの答えに対して質問を補足する。
巡さんは「よくぞ聞いてくれたわ!」と叫びながら話し始める。・・・何というか、ノリが生徒会のソレに近いなぁ・・・。
「皆知ってると思うけど、私最近ドラマの撮影してるのよ」
「ああ、そういえばそんな話を聞いたことあるような・・・」
「それでね、私は誰がどう見ても完璧な演技をしてるのに、監督ったら、「全然演技がなってない」って指摘してくるのよ!酷いと思わない!?」
「それは監督の方が正しいとボクは思うけど・・・」
中目黒君の言う通りだ。アイドル「星野巡」と言う人物は顔が可愛いだけで、それ以外のモノ・・・例えば歌唱力とか演技力とか・・・が全く皆無なのだ。ドラマに出させてもらってるだけで奇跡なんだから、それ位言われてもいいんじゃないかな・・・。
「だから、私の演技力がどれだけ素晴らしいか監督に見せつけてやるのよ!」
「・・・まあ、目的は分かった。でも、それと姉貴が映画を撮るのと一体なんの関係があるんだよ?別にドラマの現場で監督驚かせればいいだけの話だろ?」
今度は守からの指摘。まあ、それも当然の意見だろう。監督を見返してやりたければ監督が見てるところでやらなきゃ意味ないだろう。だが・・・
「それじゃ駄目なのよ!観察眼のない監督の書いた台本じゃどれだけ素晴らしく演じたって何も変わりはしないもの!」
「そうかなぁ・・・」
「そうなのよ!だから、私達が一から、台本からキャスティングまで全てを私達自身で作って、それを演じて、監督に見せつけないと、監督は自分の非を認めようとはしないわ!」
「・・・そうかなぁ」
大切なことなので二度言いました。いや、だって巡さんは映画を一本撮るのにどれだけ時間かかると思ってるんだろう?映画を撮るためのセットとかは映研あたりからでも借りてくればいいが、それ以外、例えば台本とかキャスティング・・・まあ、後者はどうせ僕達がやるんだろうけど・・・は直ぐにどうにかなる代物ではない。いつも思うんだが、巡さんは、こう、芸能界とかの色々なものを甘く見すぎているような気がしてならない。まあ、悪いわけじゃあないけどさ・・・。
「まあ、どうせ断るって言っても姉貴はやるんだろうけどさ。でも、いつやるんだよ。それに、どこで撮影するつもりだ?」
「場所はこの学校よ。それと、時間は今日の放課後よ!」
「「「はぁ!?」」」
またしても揃う僕達三人の声。今日の放課後って・・・そんな急に言われても困る。僕は生徒会役員で今日の放課後も会議があるだろうし、他のメンバーだって予定があるだろうし。
「いや、そんな急に言われてもムリに決まってんだろ!俺、今日用事あるんだけど!」
「却下!」
「どんだけ暴君なんだだよ!何様のつもりで言ってんの!?」
「昔から言うでしょう?「姉の予定は姉の思うまま、弟の予定も姉の思うまま」って!」
「聞いたことねぇよ!それに・・・」
「楠木、喜樹!アンタ達も予定無いわよね!」
「スルーすんな!」
弟へのあまりにも適当すぎる対応を終えて、今度は僕たちの方に向き直る。
「ボクは・・・今日は予定はないですね」
「僕、今日も多分生徒会あると思うんだけど・・・」
「あ、確かに鍵と楠木はそうよね。でも、普段から大した事してないんだし、一日くらい休んでも大丈夫でしょ!」
「いや、巡さんに決められる事じゃないと思うんだけど・・・」
とはいえ、一日くらい休んでも問題無いのは事実なわけで・・・というか・・・
「その撮影、鍵も出るんだ」
「当然でしょ!主役がいなくて何やるって言うのよ!」
「え、ちょっと待って、主役巡さんじゃないの?」
僕はてっきり主役が巡さんで、それ以外は脇役的な扱いになる映画だと思ってたけど・・・
「だって、この映画はこの高校に出てくる色々な化け物を普通の高校生の主人公が倒していく物語なのよ?私みたいなか弱い女の子が主役っていうのは変でしょ」
「か弱い?姉貴が?馬鹿も休み休み・・・」
そこまで守が言うと、アイツは窓から吹っ飛んでいきそのまま一階へ飛んでいった。その少しあとに巡さんのスカートがひらりと舞わせながら着地する。・・・今、恐ろしいことに巡さんは僕達がその動きを捉えられない程の早さで守の顎にサマーソルトキックを食らわせたのだろう。・・・体がガクガクと震える。
「ね、変でしょう?」
「「はい!勿論!」」
僕と中目黒君は震えながらニッコリと微笑む巡さんに全力で頷く。
僕達はアイコンタクトで話題を早急に変えようということを確認し合う。
「で、でも、なんでSF映画なの?」
「そ、そうだよね。学校が舞台なら、普通の学園モノでいいと思うんだけれど・・・」
「役者が私達五人しかいないからね。あんまり大規模なものは撮れないし。撮影もさっき言ったとおり放課後だから、学園モノとかはやるのは難しいのよね」
「なら頼めばいいじゃないか」
「流石に先生までには頼めないわよ。それに・・・」
「それに?」
「この映画の撮影で杉崎が『巡・・・お前、こんな才能があったのか。見直したよ。』とかって思ってくれるかもしれないでしょう!そうしたらきっと・・・今度こそ・・・!」
「・・・ああ、そう」
相変わらず巡さんの考えは穴が開きまくりの成功したら奇跡なんじゃないかと思えるような考えだった。顔を赤くしながら妄想にトリップしている巡さんに対して、僕と中目黒くんは歪に笑う。
結局、このあと戻ってきた守と、昼休み終わり際に帰ってきた鍵を合わせて五人で、放課後映画撮影を行うことになった。はあ・・・やれやれ・・・
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放課後だ。巡さんが作る自作映画の撮影のために強制召集された僕達は正直やる気があまりない。巡さん自身は勿論やる気満々なのだが、それ以外にもう一人妙にテンション高めで撮影に挑んでいる奴がいた。
「杉崎、貴方が主役なんだから最大限の努力をしないといけないからね!」
「分かってるよ。この俺の手にかかれば、どんな作品でもアカ○ミー賞にノミネートされるくらいの名作にしてやるぜ!」
鍵である。アイツ、今朝から若干変なことになっていたが、現在それがヒートアップしている。僕は隣にいる二人に声をかける。
「なあ、守、中目黒君」
「どうした?」
「鍵のやつ、なんかおかしくないか?」
「そうだね。普段なら巡さんに対してツッコンだり喧嘩になったりしてるはずなのに・・・」
「今日に限ってそんな事ないどころか姉貴と意気投合して映画の撮影にノリノリだもんな。昨日何かあったのか?」
「いや、昨日の会議では特に何も無かったと思うけど・・・」
僕達はそんな話をしていると、巡さんから召集がかかる。
「ほら、アンタ達も準備しないさい!さっさと撮影はじめるわよ!」
「・・・はぁ、仕方ない。さっさと終わらせるか」
「そうですね。ここでじっとしていてもしょうがないし・・・」
「面倒だなぁ、オイ・・・」
そういう訳で、僕達も準備に取り掛かる。
数分後。
「よし、皆準備できたみたいね!」
「おう!いつでも撮影に入れるぜ!」
更にハイテンションになっている二人と対象に、更にテンションが下がっている僕達。というのも、
「・・・なあ、姉貴」
「何よ守」
「何だ俺達のこの格好は!」
そう、僕達は何故か妖怪の格好をさせられて居るのだ。具体的には、僕が悪魔で、中目黒くんがドラキュラで、守が幽霊?だった。なんで守だけ西洋妖怪じゃないんだ?というか、僕と中目黒君のクオリティーと守のソレの差が酷すぎる。僕のはいかにも悪魔的なモノを纏った感じの衣装で、中目黒君のは所謂「伯爵」的な感じの服装なのに、守だけただ白い布を被っているだけだった。
「何って、守達がこの映画で演じる役の衣装よ」
「これは衣装なのか!?俺ただ布被っただけじゃん!小学校の学芸会だってもう少しまともな衣装作ると思うぞ!」
「大丈夫よ。守だから」
「どこが!?」
「はいはい、分かったらさっさと撮影始めるわよ!」
「何一つ納得出来てないんだがっ!」
そうこうしているうちに、映画の撮影が始まってしまった。・・・この際だ。下手に適当にやるよりはなるべくやる気をだしてやったほうが撮り終わって解放されるタイミングも早いだろう。なら、全力でやろうじゃないか。そう思いながら、映画の撮影に取り掛かった。
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・・・退魔師。それは、日本に古来から伝わる魔を払う世の人間には決して知られることのない裏方の人間のことである。
彼らの仕事は決して世の人間には理解されないが、彼らがいなければ人間はとうの昔に滅んでいたであろう存在だったので、彼らはなくてはならない存在なのである。
ここは北の大地にある小さな学校「碧陽学園」。ここは特に魔物が多く出る場所である。
<最初からツッコミどころがある映画っていうのも珍しいよね・・・>
<この学校ってそんな危険な場所だったのかよ・・・>
そのため、この学校には常に一人退魔師がいた。表の顔は碧陽学園生徒会副会長であり、ハーレムを目指す人よりも少し変わった少年だが、その裏の顔は数百年に一度と言われる程の逸材の退魔師であった。
彼の名は杉崎鍵。
彼はいつも「雑務」という名の退魔の仕事に追われていた。そして、それは今日も例外では無かった。
<魔物って、そんなによく出てくる設定なんですね・・・>
放課後、いつものように生徒会の表向きの雑務をこなしている杉崎にある一本の電話がかかる。
『トゥルルル・・・ガチャ』
<ス○ーク!?何で!?>
「はい、こちら杉崎」
『スギサキ、聞こえる?またいつもの場所でいつもの時間に出るそうだから頼むわよ』
<結局巡さんも出るんだ、この映画!何で電話での出演なんだ!>
『今回出るのはルシフェルにバンパイア、ついでに雑霊も出るそうだから残さず退治するのよ』
<俺の扱いなんなんだよ!何か雑魚エネミーレベルの弱さじゃねーか!>
<というか、僕達、同時にこの学校に出てくるんですね・・・凄い妙な組み合わせですよね>
「了解した。直ぐに予定のポイントへ向かう」
<お前も少しはツッコめよ、鍵!凄いカオスな状況なのにお前がツッコまなくてどうすんだよ!>
杉崎は自分のカバンの中から今回の敵に有効な道具を取り出していく。
<杉崎君のカバンの中はどうなってるの!?何でシルバーブレッドとか十字架とかニンニクが当たり前のように入ってるの!?>
<しかもなんか他にも今回の撮影に使わなさそうな小道具一杯入れてんな、アイツ!雑務カバンの中身をどうするつもりなんだよ!>
「よし、こんなとこかね。さて、ミッションスタートだ!」
<お前はどこのリト○バス○ーズだ!>
そうして、深夜の校内へと繰り出す杉崎。周りには既に邪気が漂っている。
<あれ、いつの間に夜になってんだ!?>
数分ほど歩くと、雑霊らしきもの(with守)が杉崎を取り囲み始めた。
「この程度で調子に乗るなよ!」
杉崎はそう言うと、塩をあたりに撒き散らし始める。すると、雑霊たちは一斉に消え始めた。
<俺弱!塩投げられただけで死んだ!>
「ふっ・・・所詮この程度か・・・」
<普段とキャラ違いすぎてんだろ、鍵!>
鍵は雑霊達が再び出てこないように封印の術式を描いたあと、更に奥へと進む。
そして更に進むこと数分。警戒しながら歩いていた杉崎の足元に、突如何かの陣が出てき始めた。
「何っ!?」
『ハーッハッハッハ!かかったな、退魔師!』
『貴様の命もここまでだな!』
そう言いながら杉崎を囲むように出てくるルシフェル・・・要するに、悪魔(僕のことだ)と、バンパイア(中目黒君)が登場する。
「く・・・!コレは、呪いをかける魔法か・・・!」
『その通りだ!普段の力も出せないお前に、我々が負ける理由等ない!』
『さあ、覚悟しろ!』
僕と中目黒君・・・いや、悪魔とバンパイアが同時に杉崎に襲いかかる!絶対絶命かと思われたその時・・・!
『な、何だ!?』
『こ、コレは!』
「はぁ・・・はぁ・・・あらかじめ仕込んでおいて正解だった」
杉崎はそう言いながら自分の制服から何かを取り出す。
『そ、それは!まさか!』
「そうさ。お前らが大嫌いな銀の弾丸と十字架さ!一応魔除けのための力を強くしておいたから、お前らは俺に近づくことすら出来ないぜ!」
<正直、主人公の戦い方じゃないよな、アレ!かなりずるくないか!?>
「さあ、反撃だ!覚悟しろ!」
『ぐうっ・・・!』
杉崎はそう言うと、自身の周りに術式を展開する。すると、そこから鎖のようなモノが出てきて、僕達を縛り始める。(というシーンになるらしい。後でCG頼んでやってもらうんだとか。高々、高校生の自主映画でまさかCG使うとはね・・・。)
「捕らえた!」
『クソッ・・・!そんな・・・バカなっ・・・!』
『ま、まさか・・・ここまでとは・・・!』
「消えろ!」
『『ぐあぁぁぁぁぁぁ!』』
鍵が右手を前に出すと、術式から光が溢れ出す。その光に飲まれた悪魔とバンパイアは、光の奔流が収まった後には影も形もなくなっていた。
「ルシフェルと、バンパイア、ゲットだぜ!」
<ポケ○ンかっ!>
「よし、今日はこれで終わりだな・・・くっ、流石にコレはきついな・・・」
そう言うと、杉崎は自分の手を見る。そこには、先ほどの呪いがまだ残っていた。
「しばらく経てば消えるか・・・。待つしかないな」
と、そこに突如鳴り響く杉崎の電話。
『緊急任務よ、スギサキ!シンガポール上空に『奴』が現れたわ!現地のエージェントと合流して、今度こそ『奴』を討つのよ!』
<シンガポール!?これ、日本限定の話じゃないの!?>
「け、けど今は・・・」
『スギサキ、何してるの!早くして!貴方が居ないと・・・『奴』に地球が滅ぼされてしまうのは時間の問題よ!』
<ボク達よりもずっと危険な敵いたんだ!なんかこの学校でボク達と戦ってたことなんかただの前哨戦的な扱いなんだね!>
「わ、分かった!直ぐに行く!」
杉崎はそう言うと、急いで足元に陣を描いてシンガポールへと飛んでいった・・・。
to be continued
<<<続くの!?>>>
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色々な意味でまさかのシメに、呆然とする僕達に対して、巡さんは「かなりいい出来ね!これならきっと・・・!」と何か興奮してるし、鍵も「終わったな!」と満足そうに何故かしている。・・・なんか、もう、どうでもいいや。他の二人もそう思ったのか、肩を落として「やれやれ」といった表情になっている。
「よし、これで完璧ね!」
「なあ、姉貴・・・。最後のだけどさ、本気で次回作作るつもりか?」
「ん?ああ、勿論作る気なんて無いわよ!」
「じゃあ何で『to be continued』なんですか・・・」
「そうやって煽った方が、客の食いつきいいからよ!」
「監督以外に誰かに見せるつもりでもあるんですか・・・」
俺たちは呆れながら巡さんと会話する。鍵は何か知らないが、今回の撮影で使ったものと、巡さんがもしかしたら使うかもしれないと言って持ってきた小道具を全て雑務カバンに入れている。・・・明日アレを見たらあまりのカオスさに全員引くだろうなぁ・・・。
そうして、今日の撮影は終わった。・・・終わったはずだった。まさか、この『雑務カバン』を巡って明日また事件が起こるとも知らずに・・・。
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「鍵が風邪?」
あのカオス映画の撮影の次の日、僕は中目黒君達からある情報を聞いた。それは、鍵が今日休んでいるという情報だった。
「うん。なんでも、杉崎君、今日学校に四十度の熱で来たんだって」
「何やってんだよアイツ・・・」
「そんで、HRの前に養護教諭から強制帰宅命じられて車で早退させられたんだとよ」
「ああ、そっか。だから昨日なんか調子おかしかったのか」
「そうだね。そういえば、昨日から少し顔赤かったし・・・」
「あの妙なテンションも風邪のせいだって考えれば納得だな」
「姉貴がいなくて助かったな。もしいたら今度は杉崎の看護しに行くとかで巻き込まれかねないし」
「そうだな・・・」
因みに巡さんは今日はドラマの撮影の方に行ってるらしい。あの映画、もう完成したらしくて何かDVDも既にできている。誰にやらせたのかは知らないけど、名も知らぬ編集さん、お疲れさまです。今日はゆっくり休んでてください。
「まあ、放課後杉崎の家に見舞いに行ってやるか」
「そうだね。杉崎君、熱で朦朧としながら学校に来てたらしいし、果物とか買ってから行こうよ」
「ま、仕方ないか」
ということで、僕達は今日の放課後杉崎の家に行くことになった。つまり、今日も生徒会休みだ。・・・まあ、今日は鍵居ないし普通の雑務やる程度だと思うけど、緊急の雑務は無かったはずだし。大丈夫だろ、多分。
しかし、後々知ることになるのだが、今日は行くべきだったと思うことになる。それくらい、今日の生徒会では面倒なことになっていたのだ。
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放課後。僕達は取り敢えずりんごを買って例のDVDを手土産に鍵の家に来た。
僕がインターホンを押す。少し間があってから鍵が出た。
『はい?』
「よう、僕たちだ。熱大丈夫か?」
『ああ・・・ルシフェルにバンパイアに幽霊か・・・』
「何でボク達の事昨日の映画の役名で呼んでるんですか、杉崎君・・・」
『待ってろ・・・今、塩持ってくるから・・・』
「それは俺を退治するためかそれとも帰れっていう遠まわしな言い方なのかどっちなんだ!?どっちにしてもいらねえから!さっさと開けろよ!」
守君がそう言うと、鍵はドアを開けた。顔色はあんまりよくなく、体調は優れてなさそうだった。なんとなくだが、足取りも少しフラフラしているように見える。
「おいおい、大丈夫かよ?」
「ああ・・・時々刻が見える程度で大した事ないさ・・・」
「それは十分大した事あるよね!?直ぐにベットに横になりなよ!」
「そうするよ・・・」
「あ、それと台所少し借りるからな」
「勝手にエロ本探すなよ・・・」
「病人の家に来てまですることじゃねえよ、そんなもん!」
僕達は鍵にそういうと、台所へ移動して買ってきたりんごを剥く。
「えーと・・・他には濡れタオルと水を持ってけばいいか」
「そうだね。・・・ところで、楠木君りんご剥くの上手いね」
「ん?そうか?この程度なら練習すれば誰でも出来るぞ」
「まあ時々テレビとかでも見るよな、りんごの皮を切らずに綺麗に一本の状態で切る人間って。コツとかってあるのか?」
「コツって言われてもなぁ・・・こう『サーッ』と一気に剥くとしか」
「それで出来たら簡単すぎるよ・・・」
こんな会話をしながらりんごを剥き終える僕達。少し多く剥きすぎてしまった感があるので、ある程度を皿に盛って後は食ってしまおう言う事に。
「おーい、鍵!持ってきたぞー・・・って、これ昨日の映画か」
僕達が鍵の部屋に入ると、そこではTVで昨日撮った映画のDVDが再生されようとしていた。と、同時に、鍵の携帯に電話がかかる。
鍵はディスプレイに表示された文字を見ると、ワンコールで電話に出た。
「はい、もしもしっ!げほっ!」
「おいおい、鍵、少しテンション抑えたらどうだ?風邪なんだしさ」
僕はそう言いながら映画を見始める。お、最初のシーンが出てきた。例の夕暮れの生徒会室で鍵が雑務しているシーンだ。
「知弦さんっ!わざわざ電話くれるなんて、感激ですっ!」
どうやら電話の相手は紅葉先輩らしい。鍵の体調を聞こうとして電話したのだろうか?
「うぅ・・・そうなんですけど、無理なんです。女の子から電話がかかってくるっていうそれだけで・・・俺のテンションはMAX!げほっ、げほっ」
・・・相変わらず難儀な奴だなぁ。お、映画が夜のシーンになった。とうとう退魔師「杉崎鍵」の始動だな。
「げほっ、ぐ、がほっ、ごほっ」
「す、杉崎君、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です。駄目ですね・・・最近、深夜まで汗だくで校内を全力疾走する事が多かったんで・・・遂に風邪ひいちゃいましたよ」
「いつそんな事してたんだよ、杉崎?というか、深夜に校内を全力疾走する理由って昨日の撮影以外何があるんだよ・・・」
「あ、ちょっと待って下さい、知弦さん。昨日捕まえたルシフェルが逃げ・・・よっと!あ、お待たせしました。何ですか?」
「とうとう幻覚見え始めた!?」
杉崎が何かやばいものが見え始めた(?)頃、映画の方は最初の幽霊(笑)を退治した杉崎が更に校内を走って探索を行なっているところだ。
「げほっ、ごほっ・・・ちっ・・・こりゃ、まだ『呪い』が残ってたか・・・」
「昨日のアレ、本当に杉崎君を呪い始めましたよ!?」
「え?ああ、はい、風邪ですよ。アハハハハー」
「何に対しての三文芝居だよ、それ!」
鍵の謎行動に困惑する中、どうやら映画の方はクライマックスに達した模様だ。とうとう退魔師杉崎が術を使って僕達扮する妖怪を封じようとしている・・・というか、無駄にクオリティー高いな、このCG。よく昨日の今日でこんなもん作れたもんだ・・・。
「俺が知弦さんに隠し事なんかしてるはずないじゃないですか。さっきから、なんかおかしいですよ、知弦さん。いつもの冷静さがないというか・・・」
「いや、お前がおかしすぎて流石の紅葉先輩も冷静になれてないだけじゃ・・・って、あ、やべ」
僕は杉崎が電話を始めた頃に音量をミュートにしていたのだが、誤ってリモコンに触れてしまい、テレビから音が出始める。
『緊急任務よ、スギサキ!シンガポール上空に『奴』が現れたわ!現地のエージェントと合流して今度こそ『奴』を討・・・』
「ふう・・・まずったな・・・」
僕はテレビの音量を下げた。変なところ流れちまったな。守や中目黒君も「何してるんですか(何やってんだ)」と視線で話しかけてくる。僕は視線で「スマン」と返す。
「あ、知弦さん。俺、ちょっと寝るんで、もう電話切りますねー」
「今この状況でその発言は、なんか見る人見たら誤解しそうな状況だな、オイ」
「でも電話の相手は紅葉先輩らしいですし・・・大丈夫じゃないでしょうか?」
「そうだな。あの冷静な紅葉先輩だし・・・」
「ハハハ。ナニヲイッテルノヤラ」
「演技にさえなってないセリフで何しようとしてんだ、鍵」
「知弦さん、さっきから何を言ってるんです?俺は、ただの、性欲がちょっと強いだけの男子高校生ですよ?大丈夫ですか?」
「むしろお前が大丈夫かよ」
「って、鍵、また・・・」
鍵がベットで姿勢をずらすと、さっきベットの上に置いておいたリモコンに今度は鍵が触れた。そして、またTVから音が出始める。
『スギサキ、何してるの!早くして!貴方が居ないと・・・『奴』に地球が滅ぼされてしまうのは時間の問題よ!』
「っと、ほいっ」
今度は守がリモコンを操作して再び音量をミュートにする。
「なあ、さっきのセリフと今のセリフだけを抜粋したら鍵のやつ、何か凄いエージェントみたいじゃないか?」
「そうですね・・・なんか、ただの高校生とはとても思えないトンデモ超人になっちゃってますよね、杉崎君」
「もはや人間であるかが疑わしくなっちまってるな・・・」
「あ、すいません。知弦さん。ちょっと、急ぎのバイトが入ったんで、そろそろ・・・」
「バイト!?地球が滅ぼされかける位の大事件の解決がバイトレベルなのか!?」
「げほっ、ごほっ・・・。・・・くっ・・・全然力が出ない・・・」
「杉崎君は愛と勇気だけが友達なヒーローか何かですか!?」
「何言ってるんですか、知弦さん。俺の体調が悪いだけで、別に地球とか関係ないですよー」
「まあ、当然だろうな」
「ハハッ、気にしないで下さい。俺は、知弦さんの声が聞けただけで、元気百倍ですから」
「だからどこのパンヒーロだよ」
「はい。じゃあ・・・このケータイ、海外じゃ通じないんで、切りますね」
「お前は今からどこへ行くつもりだ!」
「じゃっ」
そう言うと、鍵は電話を切ってベットに横になった。
「・・・あー、んじゃあ、僕達もそろそろ帰るか」
「杉崎君、また明日」
「明日はしっかり風邪直して学校来いよー」
「あー・・・分かった」
僕たちは鍵にそういうと、鍵の部屋を出た。
「なんて言うか・・・凄い、カオスな電話聞いたなぁ」
「あんな電話一生に一回するかどうかすらわかりませんよね」
「普通ならしないだろ。というか、普通しろって言われてもしない」
明日なんか大変な事になってないといいんだけど・・・。そう思いながら、僕達は別れた。
因みに、次の日。
何やら、一緒に雑務してる僕まで何か勘違いされたのか、生徒会室に入る際、全員に最敬礼されたのは余談である。