生徒会の庶務   作:高坂遼

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働く生徒会①

「事件に大きいも小さいもないのよ!」

 

 会長がいつものように何かの本の受け売りを偉そうに語る。っていうか、コレはテレビドラマのセリフじゃないか?

 

「身長には大きいと小さいがありますけどね」

「後、胸にも同様にありますね」

「知ってるよ!いいよ、いちいち言わなくても!」

 

僕と鍵が会長に言うと、会長はちょっと涙目になりながら返す。

会長は「それは置いといてっ」と続ける。

 

「今日は、普段杉崎と楠木に任せっきりの雑務とか、忙しくて手つかずだった些細な案件を、この私自ら片っ端から解決していってあげようと思うわ!」

「おおー、いい気まぐれの日だー」

 

 深夏さんが感心した風に呟く。まあ、確かに仕事に精を出してくれること自体はいいことだ。本当に片っ端から解決してくれるかは置いといて。

 

「たまには庶民の声にも耳を傾けないと、支持率は保てないからね」

「その『上から目線』はかなり気になるけど、ま、いい心がけね」

「普段は大まかな方針しか決めてないからね、私」

「もうちょっと早く気づいて欲しかった気もします・・・」

 

紅葉先輩も真冬ちゃんも特に反対する気は無いようだ。

 

「そうと決まれば、始めるわよ!とりあえず、皆、どんどん細かい問題を私に報告して。そうしたら、私がずばっと解決するから!」

 

 自信満々に言い放つ会長を見ながら、僕達は目を見合わせる。・・・正直、少々不安はあるものの、特に有害って訳でもないので、まあ折角だからたまにはいいだろうということで、取り敢えず個人個人で知っている問題を相談してみることにする。

まず、真冬ちゃんが発言する。

 

「あの、真冬のいる一年生の生徒のことなんですけど・・・」

「うん、何?どうしたの?誰か密室殺人事件にでも巻き込まれた?」

「いや、そんな金田一さんの孫的な人とか小さくなった名探偵さん的な人はいませんけど。なんか近頃、全体的に雰囲気が殺伐としかけてますというか・・・」

「?どうして」

「多分、グループ分けが確立してきちゃったからかなぁと。こう、そろそろ仲良しさんの組み分けがハッキリとしてきて、その分、対立も表面化してきたと言いますか。あ、別にケンカとかそういうレベルでもなんですけどね。ちょっと、真冬は気になります」

「そうねぇ・・・」

 

 会長が顎に手を当てて考え出す。まあ、この手の問題はどこの学校にでもあるものだろう。三人が集まれば必ず派閥が出来る。それ以上の人間が集まれば更に多くの派閥が出来る。それぞれの関係は基本賛同か反発かのどちらかに分類されるので、どうしても対立構造ができてしまうのだ。

さて、会長はどんな解決案を出してくれるのかな・・・?

会長はたっぷりと考えると、真冬ちゃんに向き直って解決案を提示する。

 

「パス1」

『ええええええええええええ!?』

 

まさかの仕事放棄。全員が呆然とする中、会長は「えへ」と笑う。

 

「パスは三回まで可!」

「いやいやいや、七並べじゃないんですよ!?パスとかあり得ませんよ!」

「じゃあ、却下」

「もっと駄目ですよっ!問題から目を逸らしまくりじゃないですかっ!」

「うぅ・・・いいじゃん、そんな些細な事件とも言えない事件」

「数分前の自分の発言を思い出してください、会長!」

「うー。・・・じゃ、いいよ。ズバッと解決する。・・・えとね。皆、仲良くね」

「それで解決したら誰も苦労しませんよ!」

「でもでも、それ以外無いもん。皆、仲良く。それが一番」

「・・・はぁ」

 

 まあ、真理ではあるが・・・。それでどうにかなるんだったら、今頃戦争や差別なんてこの世から消滅してる。確かに会長が「皆さん!もっと仲良くしてくだしゃいっ!あう、かんじゃった」って一年生の前で発言したら、なんか、こう、違う意味で仲良くなりそうな気もする。ファンクラブ的な何かを作って、そこで同志的な感じで仲良くなりそうな気がする。

 真冬ちゃんは、「じゃあ、今度会長さんから呼びかけてあげてくださいね」と笑って引き下がった。・・・大人だ、真冬ちゃん。そういえば、会長と真冬ちゃんとでは二歳差だったけか・・・。不思議である。

 

「さ、次の問題行くわよー!」

 

 何故かは知らないが、会長は再び張り切っている。・・・まあ、もうこの時点で会長に期待をかけている役員は一人もいないが、ここでやめても会長が駄々をこねるだけだろう。ならば最後まで適当に付き合ってやるべきだろう。

真冬ちゃんに続いて深夏さんが「ええと・・・」と無理やり問題を捻り出す。

 

「部活動なんだけど、どうもこの学校の緩い空気が悪く作用しちまっているのか、うちの運動部、軒並み弱小なんだよ。なにか、やるき出させるいい方法とかねーかな?」

「ああ、それは僕も少し気になってたかな。ここの運動部、どう深夏さんや僕みたいな助っ人に頼ることが多いような気がするし・・・」

「そうねぇ・・・」

 

 会長が再び考え始める。鍵がそれを見て何か考えているようだが、何を想像しているのやら。

それにしても会長の脳内は一体どうなっているんだろうか?一回でいいから見てみたい気もする。

 

「パス2」

「おいおい会長さん、そりゃあないぜ!ちゃんと考えたのかよ!」

「考えたよ!取り敢えず、タヌキさんは爪弾き者なんだよ!」

「なにがっ!?」

「会長の脳内で一体何があったんですか・・・」

「とにかく、パスは止めてくれよ!」

「うぅ・・・そうは言っても、クマさんもキツネさんもウサギさんも食欲に弱いし・・・」

「だから、アンタは一体なんの話をしてるんだっ!」

「ちょっと待ってて。森の長老のフクロウさんに相談してくる!」

「どこ行くんだよ!梟は喋らねえよ!」

「喋るよっ!私の脳内『ど○ぶつの森』なら!」

「なんでそんな悲しい遊びを高校三年生にしてやってるんだよ!現実に戻れよ!」

「私の現実はどうぶつさん達と共にあるんだよ!」

「既に手遅れっぽいとこ悪いんだが、そろそろ部活動の議題に戻ってくれよ!」

「分かったよ!ええと・・・じゃあ、『一生懸命頑張れ』。以上!」

「ああ、なんか予想通りの解答!」

 

 ・・・恐るべし、脳内「どうぶ○の森」。多分喋る梟の名前は「ふー○」なんだろう。まあ、それは置いといて、深夏さんの相談も呆気なく終わってしまう。

 順番的には次は僕か鍵か紅葉先輩なのだが・・・正直言ってあまりやる気がない。紅葉先輩達とアイコンタクト会議をするが、「こうなったら、最後までつきあおう」という無難な結論にたどり着く。まあ、下手なことやるよりはマシか・・・。

そんな訳で、次は紅葉先輩の番だ。

 

「アカちゃん、私からもいいかしら?」

「いいわよ。ドーンと来い!」

 

既にパス2なのにも関わらず何故か自信満々な会長。

そんな会長をみながらくすりと微笑んだあと、問題点を上げる紅葉先輩。

 

「最近、ちょっと落書きが目立つのよ。恋愛のおまじないでちょっとした流行があるみたいでね。内容は、まあ微笑ましいものだし、一過性のものだろうから、あんまり目くじら立てるようなレベルのものでもないのだけれど。気になってるのよね」

「ふむふむ。それは困ったわねぇ」

 

そう言いながら腕を組む会長。・・・何か会長の脳内会議の光景が何となくわかるような気がしてきた。

 

『落書きはいけないクマ。・・・あ、このシャケ美味しいクマ』

『クマ君、ちょっとグロイウサよ。・・・・あ、このニンジン、コクがあるウサ』

『あむあむ。皆と違って、僕はニンゲンの作る油揚げを入手するの、一苦労だコン』

『や、やぁ、皆。ボクも・・・な、仲間に入れて欲しいポン・・・』

『・・・・』

『・・・駄目だよね、ボクなんて・・・。ごめんポン。もう、来ないポン』

『・・・シャケ食うクマ?』

『・・・秘蔵のニンジン、分けてあげるウサ』

『油揚げも、美味しいポンよ』

『み・・・皆!』

 

 ・・・うん、大体こんな感じだろう。タヌキに何があったかは知らないが、どういう理由でそうなったかは別として、仲間に入れてもらえたようだ。余談だが、「クマ」の語尾はP4を思い出す・・・。

こうなると、会長の答えは・・・。

 

「ぐす・・・。良かったね、タヌキさん・・・」

「何言ってるのアカちゃん!?大丈夫!?」

「うん。大丈夫。脳内が幸せ色だよー」

「危ないわよ!何の薬物!?」

「もう、落書きのことなんて、どうでもいいわ」

「それ言っちゃおしまいよ!」

「パス3」

「結局他人のことはどうでもいいのね、アカちゃんは・・・」

 

 紅葉先輩が額に手をやる。・・・と同時に会長から見えないように僕達の方に目を光らせている。どういう意味かと模索していると・・・。

 

(パス3よ、キー君、クッキー君。あとは・・・任せたわ)

(!あ、紅葉先輩、貴女・・・!)

(・・・分かりました、知弦さん。俺達は・・・やってやりますよ)

 

 僕と鍵は同時に紅葉先輩とやりとりを行い、理解する。

 ・・・そう、パス3である。もう、会長にはパスという選択肢は用意されていない。つまり・・・ここから先は問題回避は不可能!

ふっふっふっ・・・なら、やってやろう!会長に僕たちの普段の仕事を精々頑張ってやってもらおうじゃないか・・!

先ほどの脳内会議の結末で幸せ気分に浸っている会長に僕達は言葉を発する。

 

「さて、会長。次は僕と鍵の二人から雑務についての相談をさせてもらいますよ?」

「うん、いいよー。今日の私は無敵だからねっ!」

 

一体どの辺からそんな自身が湧いてくるんだという疑問はさておき、話を進める。

 

「因みに会長」

「ん、なに?」

「もう、パスは使い切りましたからね」

「っ!」

 

会長は現実に引き戻され、青褪めた表情でこちらを見る。・・・ふふふ。

僕達は早速、雑務の中から適当な物を引っ張り出す。

 

「さて、会長・・・覚悟は、出来てますね?」

「俺達が普段二人で取り組んでる雑務を、スパッと見事に一瞬で解決して貰いましょうかねぇ」

「う、うぅ・・・目が既に意地悪だよぅ。・・・優しく、してね?」

「ぐはっ!」

 

 鍵が鼻血を出しているが、それに構っている余裕がない。僕もギリギリなのだ。・・・あ、危なかった。まさかこのタイミングで微妙に目に涙を貯めながらあんなセリフを出してくるとは・・・。カウンターなんて高等な技術、会長は一体どこで学んだんだ・・・!

 真冬ちゃんからの「しっかりしてください、楠木先輩!」の声にハッと我に帰る。・・・く、まさかここまでとは。

僕は真冬ちゃんに「ありがとう」と答えてから、再び会長の方を向く。

 

「じゃあ、行きますよ、会長。・・・大丈夫ですよ。少し力を抜いて、リラックスして下さい」

「楠木、なんか少し違う話ししてない?」

「大丈夫ですよ、会長。辛いのは最初だけですから。直ぐに楽になりますよ」

「杉崎は絶対違うこと話してるよねぇ!」

「それじゃあ、早速。・・・連続で行きますから、覚悟してくださいね」

「任せてよ!どんどん斬るよ!」

 

僕達は今日片付ける予定だった案件のメモを取り出し、次々と読み上げることにした。

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