さて、それじゃあ始めますか。僕達は雑務メモを取り出して次々と読み始めていく。
「『図書館の本の返却が全体的に滞ってます!生徒会、なんとかして!』」
「返却期限を過ぎたら自動的に爆発するようにしよう!」
「『男子がエッチな雑誌持ってくるの、禁止して!』」
「副会長がアレだから、今期はガマン!私もがんばるから!」
「何を言ってるんですか、会長!学校でこっそりとエロ本を見つからないように交換するのは男のロマンなのに!」
「なんかもうその考え方が既にダメなのよ、副会長として!次!」
「『文化祭の予算とか企画諸々、そろそろ決めて欲しいんだけど』」
「うん、分かった!知弦、任せたわ!」
「『気分転換のため、制服のデザイン一新しようよ!』」
「考えとく!クマさんの刺繍つけていい?」
「『男子が掃除当番サボります!』」
「そんな時は深夏を頼って!腕力でどうにかしてくれるから!」
「暴力で解決するのは止めてくださいよ!」
「はい次!」
「無視ですかっ!・・・ええと、『なんか女子の中でBLが流行ってます。男子としては複雑です』」
「真冬ちゃんを訪ねてみて!元凶の正体が掴めると思うよ!」
「元凶とは失礼な!真冬はただ、素晴らしき友愛行動としてBLを布教してるだけです!」
「何で偉そうに言ってるのよ、真冬ちゃんは!そもそもラブまで入ったら友愛じゃないよ!次!」
「『家庭科でお菓子も作りたい!』」
「必ず私に差し入れする事を約束するなら、考えてあげよう!」
「『皆でワイワイテレビとか見たいー。設置して』」
「家でニ○ニコ動画でも見てなさい!」
「『年金はちゃんと貰えるの?』」
「私に相談してないで、日本年金機構へGO!」
「あ、会長社会保険庁無くなった事ちゃんと知ってたんですね・・・『真儀瑠先生にちゃんと授業させてください』」
「無理!」
「『ボクも作家になりたい!生徒会、富士見書房の編集さん紹介して!』」
「ファンタジア大賞に応募よ!詳しくはHPで!」
「『図書館に『半分の月がのぼる空』とかがあったよ。・・・いいの?』」
「いいの!あれは名作だから!」
「『私、編集さんになりたいの!紹介して!』」
「いいけど、オススメしないよ。・・・大変そうだから・・・うん、本当に・・・」
「『ゲームとかお菓子とか漫画とか普通に持ってきてるけど・・・いいの?』」
「ノーコメント!(いちご大福を食べながら)」
「『クラス替え、好きなもの同士で組むことにしない?』」
「そんな事したら、杉崎が可哀想でしょ!」
「どういう意味ですかっ!」
「いいから、次の案件を読みなさいよ!」
「く・・・。『もうちょっと休日増やして』」
「ゆとり教育の失敗はもう繰り返してはいけないわ!」
「『宿題廃止!』」
「うん!やめよう!・・・いたっ!うぅ・・・知弦が怒るから却下」
「『水飲み場の水道の調子悪いよ?』」
「杉崎、楠木、GO!」
「俺達はクラシ○ンじゃねええええ!」
「そうですよ、会長。とりあえず・・・」
「ご褒美にちゅーしてあげるから」
「行ってきます!」
「行くなよ!」
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五分後
「直してきました!」
「・・・直してきました」
「早っ!ク○シアンに就職してきたら?」
「じゃ、早速ちゅーを・・・」
「ちゅー・・・」
「・・・なにしてるんです?」
「ん?杉崎の飲んでたお茶をストローで「ちゅー」してあげてるの」
「間接キスでさえねえ!」
「じゃ、次の案件行こー」
「『・・・会長に、酷い詐欺に嵌められました。by杉崎』」
「大丈夫、杉崎相手だから、これはク○サギ。私は正義!」
「俺シロ○ギじゃねえし!」
「ほらほら、次、次!」
「『学校のパソコン室、休み時間にネット見れるようにして欲しい』」
「ん、分かった。杉崎以外は使っていいよ」
「何で俺だけ!」
「絶対18禁サイト開いてウイルス貰ってきたり、ブラクラ踏んだりするでしょう!」
「そんな!性病ならまだしも!」
「何が「まだしも」なのよ!とにかく、次行きなさい!」
「『同人誌出してもいいですか?許可とか必要なんですか?』」
「え、えっちなのは駄目だからね!」
「『アルバイトってしていいの?』」
「学業に影響しない範囲でね!私に税金を収めるとなおよし!」
「「絶対却下です」」
「ど、どうしたのよいきなり二人して・・・って、そういえば二人共バイトしてたわよね。まあいいわ、次!」
「もう少し気にしてくださいよ・・・『生徒会が出した本で稼いだ印税、生徒皆で分けようよ!』」
「駄目!私が自由に・・・じゃ、な、なくて、えと、イベントに使うから!」
「『2年B組がいつも騒々しいです。同じクラスの生徒会役員に頼んでも対処してくれません。2年A組より』」
「杉崎と深夏が居る上に、他メンバーもアレなクラスだから、素直に諦めて!楠木が対処しようとしないのも納得できるくらいにアレだから!」
「いや、まあ、それもあるんですけど、僕もあっちのクラスで時々騒ぐことあるんで、なんか注意しづらくて・・・『うちの学校って、変な生徒が多くて大変。私、疲れたよぅ』」
「頑張って!貴女みたいなツッコミ要因は希少なんだからっ!」
「『真儀瑠先生の武勇伝は常軌を逸しているのですが・・・あれ、真実?』」
「私も分かんない!でも、どんな事件関わっててもおかしくないと思う!」
「『人は、何かを失わずには、同等の対価を得られないのでしょうか?』」
「頑張れ、鋼の」
「『卒業したらニートになりたい。・・・そう望むのがいけないことなのですか!』」
「大丈夫!私もその進路を希望してるから!」
「相変わらず生徒会長にあるまじき発言ですね・・・『他校の生徒にナンパされていたところを、杉崎先輩が助けてくれました』」
「感謝してるみたいだけど、そのあと、その杉崎にナンパされたでしょう?」
「な、何で分かったんですか!?」
「分かるわよ、そのくらい!はい、次!」
「『椎名深夏・・・ヤツは、化物か!』」
「何を見たの!」
「『椎名真冬・・・ヤツは・・・。・・・どうして、ああなっちゃたんだろうね』」
「人が堕ちていく姿って、悲しいよね」
「『紅葉が、同い年とは思えません。・・・自信失くします』」
「そういう時は私を見ればいいと思うよ!・・・って、何言ってるのよ私!」
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・・・とまあ、こんな感じで最後に会長が盛大に自爆して雑務は終わった。まあ、何一つ解決してないような気もしなくはないが。
会長が「働いたー!」と何故か満足そうに伸びをしているのを尻目に、僕達は話し始める。
「しっかし、お前達いつもこんな分量の雑務を二人でこなしてんのか?」
「まあね。と言っても、大半は大したことのない話だし、そんな苦労でもないよ」
と言っても、要領の悪かった最初の頃は大変だったけどね。
深夏さんに続いて真冬ちゃんが話しかけてくる。
「でも、真冬もここまでとは思ってませんでした。生徒からの声って、沢山あるんですね」
「ああ、今年は特にみたいだよ。生徒会のメンバーが比較的話しやすいからなんだろうけど、そのせいか些細なことまで直ぐに報告してきやがる。今じゃ、俺や柊は便利屋扱いだよ」
「確かに変な声も多かったですけど・・・それでも、さっきの水道の修理とか、いっつも先輩達二人でこなしているんですよね・・・凄いです」
「まあ、こんなの慣れればそうでもないよ。そういえば会長、今日の仕事はこれで終わりですか?」
「ん、私は満足っ!よく働いたわ!流石会長、こんな分量の相談を一気に片付けてしまったわ!」
「・・・まあ、アカちゃんがいいならそれでいいけど」
紅葉先輩が疲れたように嘆息する。・・・まあ、今日の会議はいつものように無駄会議で終わっただけでなく、会長自身が仕事をしたと認識しているという、なんともやりきれない状況なのだ。ため息のひとつも吐きたくなる。
会長が一人椅子に座ってふんぞり返っているのを皆で白い目で見ていると、真冬ちゃんが「ところで」と切り出してくる。
「生徒会の仕事って本来、どこまでやる必要があるんでしょう?」
「というと?」
「いえ、真冬もさっきの雑務を聞いてふと思ったんですけど。それこそ、水道の修理とかって、生徒会のやる範疇じゃないのでは?」
「まあ、それはそうかもね・・・」
会長のハニートラップにものの見事に鍵が引っかかってしまったので行く羽目になったが、本来水道の修理って生徒会の・・・というか、生徒の仕事じゃない気がする。
しかし、深夏さんが「でもよ」と反論する。
「あたしも面倒はイヤだけど、そもそも生徒会って生徒のために動く機関だろ?なら、つきつめると『生徒たちからの声』だったら取り敢えず受け取らなきゃいけねえんじゃないか?まあ、水道修理に関しては本来、ここから更に校務員さんにでも話を持ってくべきだった気がするがな」
深夏さんが鍵を見てそう言う。まあ、この辺、鍵の無駄に万能な能力と、その性格が悪い方向に作用してる例だよな。
そんな光景を見て紅葉先輩がクスクスと笑いながら話を続ける。
「普通なら『橋渡し』くらいの気持ちでいいんじゃないかしら、生徒会って。生徒と職員室、生徒と業者さん、みたいな。勿論、生徒同士での連絡もあるけどね。何かの決断に関しても、本来なら生徒達の意思を反映させるわけだし。そういう意味においては・・・」
と、ここで紅葉先輩は話を一旦切って会長の方を見る。会長は非常にキラキラした表情で《桜野くりむの十の野望~~その十三》とか書いていた。・・・全員で嘆息する。
「今の生徒会は・・・今更だけど、全力で道を踏み外してるわね」
「と言っても、知弦さん、この状況が嫌いではないんでしょう?」
「あら、鋭いわね、キー君。ええ、私好きよ、道を踏み外すの」
「将来に激しく不安を抱かせる発言ですね」
「あら、私の知る『最高に道を外している人間』の一人が何を言うの」
「俺はもう手遅れかっ!」
「大丈夫。アカちゃんも真冬ちゃんも同じ位置だし、クッキー君もそう遠くない位置にいるわ」
「真冬まで!」
「僕も入ってましたか!」
三人で猛抗議をする中、深夏さんは一人「ふふん」と胸を張っている。
「流石知弦さん、よく分かってんな!この生徒会におけるあたしの常識人ぶりは群を抜いてるぜ!」
「あ、いえ。深夏は「殿堂入り」だから・・・」
「殿堂入り!?」
「このご時世、熱血熱血叫んで暴走する少女がマトモとでも?」
「そういう言い方すんなよ!いいじゃねえか、誰にも迷惑かけてねーんだから!」
「可哀想に・・・この子、まだ自分のことをマトモだと・・・うっ」
「泣きマネとかいいから!とにかく、あたしは常識人だ!な、真冬!」
「えっ?」
突然深夏さんから振られた真冬ちゃんは、素で呟いた後、深夏さんからふっと視線をそらし、ぎこちない表情で告げる。
「う、うん!お、お姉ちゃんは、真冬の、最高のお姉ちゃんだよ!」
「なにその持ち上げ方!不自然すぎるわ!」
喚く深夏さんに対して、鍵が肩に手を置く。そして、首を横に振った。
「いやいやいや!何だその言い訳のない子供に対して言い聞かせるそうな仕草とこの空気は!あたしは絶対この生徒会じゃ一番常識人だよ!」
未だに騒ぐ深夏さんに対して、僕はできる限り優しい表情で深夏さんに向かって言う。
「うん・・・そうだね。深夏さんは・・・とっても、普通だよ。それで・・・いいよな、皆?」
『ええ』「ああ」
紅葉先輩、真冬ちゃん、鍵が揃って微笑みながら頷く。
「納得いかねええええ!」
僕達はそのまま、叫んでいる深夏さんを温かい表情で見守った。