生徒会の庶務   作:高坂遼

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働く生徒会③

 

 さて。会長が野望構想を、僕達は深夏さんをイジリ倒している間に、結構な時間になったようなので、今日の生徒会は会長の号令と共に解散する事になった。

僕達はいつも通り、会長たちが帰るのを生徒会室で待とうと思っていたのだったが・・・。

 

「ほら、何してるのよ杉崎、楠木。帰るよ?」

「え?あ、いや、会長。大好きな俺と一緒に帰りたいという乙女心は分かりますが、すいません。いつもの雑務が・・・」

「ないでしょ」

「え?」

「だから、雑務。私が華麗にズバッと解決したじゃない!」

「・・・あー・・・」

 

 まずい。会長、本当にあれで全部だと思ってたのか。僕達は紅葉先輩、椎名姉妹、鍵とアイコンタクト会議を急遽開催する。

 

(どうしましょう、紅葉先輩。会長、全部解決したと思ってるみたいですよ)

(そ、そうね・・・。今日のところはキー君達、一緒に帰る?)

(や、正直それはまずいです)

(さっきは、早めに対応を要する雑務は予め抜いてあったんで、そっちを解決せずに俺達が帰宅するのはちょっと問題が・・・)

(お前達、どこまでお人好しなんだよ・・・)

(そうは言ってもな・・・あの会長にそういった雑務を提示するのは色々とまずいし・・・)

(そ、それはそうかもですね。それじゃあ先輩達は真冬達と一緒には帰れないのですか?)

(ああ。だから、いつも通り四人で帰って貰いたいんだが・・・)

 

 そこでアイコンタクト会議を一旦止め、会長の方を見る僕達。会長はキョトンとした様子で僕達を見ている。

 

「どうしたの、二人共。早く準備しなよ。帰るよー」

「えーと・・・そのー・・・」

(どうしましょう、先輩)

(と、取り敢えず、玄関まででも一緒に帰るフリをしましょう!そこで、何か理由つけて別れれば、なんとかなるんじゃないかしら)

(わ、分かりました)

「早くしなよー、杉崎ー、楠木ー」

「は、はい!」

 

 僕達はカバンを持って椅子から立ち上がり、生徒会室を出る。思えばこうやって全員揃って生徒会室を出るのは久しぶりだ。

 

「うーん、仕事を全部片付けての帰宅って、気分いいねー!ね、杉崎!」

「え、ええ」

 

 話を振られた鍵は汗を浮かべながら答える。

 ・・・なんだこの罪悪感は!っていうか会長メッチャクチャ笑顔だよ!達成感バリバリだよ!本当は何一つ達成してないっていうのに!

僕と鍵以外の人たちも同様の気分らしく、額から汗を流し、顔をそらしていた。

会長は上機嫌に話を続ける。

 

「杉崎達が毎回手間取る雑務を一瞬で片付ける私!まさに会長の器よね!」

「・・・そうですねー」

「この辺が、会長と副会長+庶務との、越えられない力の差よね」

「まあ、ある意味天と地程の力の差がありましたけど」

「あんなのに手間取るようじゃ、杉崎も楠木もまだまだよねー」

「そ、そうですね精進します」

 

・・・だんだん腹が立ってきたぞ。ここは一回会長に教育的指導を・・・

 

「杉崎も楠木もホント、全然ダメだね。だから、これからも会長たる私が傍でしっかりサポートしてちゃあんと、導いてあげるから。感謝しなさい!」

「・・・」

 

 ・・・本当に反則だよなぁ、この人は。鍵は勿論、僕も、他の皆もちょっと赤面していた。そのあまりにも無邪気な好意に。

会長は更に続ける。

 

「杉崎も楠木も、もっとバンバン決断しなきゃ駄目だよ。私みたいに」

「皆が会長みたいに判断してたら、この国間違いなく終わると思います」

「『俺について来い!』精神だよ、二人共」

「じゃあ、会長。『俺について来い!』」

「やだ」

「うわああん!」

 

煽られた上にフラれた鍵。酷い、酷すぎるよ会長。

 

「そうじゃなくて、杉崎達が、私についてくればいいんだよ!」

「・・・。・・・!」

「って、なに赤面してるのよ杉崎!変な意味じゃないからね!会長としての、副会長への発言だからね!」

「分かりました!一生ついていきます!」

「一生じゃなくていいよ!」

 

会長とそんなやりとりをしている鍵のわき腹を肘でつつく深夏さん。

 

「(なに夫婦漫才してんだよ!)」

「(まあまあ、嫉妬するな、深夏よ!)」

「(・・・お前、分かってんのか?このあと、僕達生徒会室に戻って雑務しなきゃいけないから、適当なところで会長と別れようって話だっただろうが)」

「(!そ、そうだった!すっかり忘れてた!)」

 

・・・忘れんなよ。

鍵はコホンと咳払いをすると、仕切り直す。

 

「あー、会長」

「なに、杉崎」

「ええと・・・あの、ええと、そう!忘れ物しましたんで、先帰って下さい!」

「忘れ物?生徒会室に?それくらいだったら、待ってるよ。すぐだし」

「あ、いえ、あの。じゃあ生徒会室じゃなくて・・・ロンドンに」

「遠っ!っていうか、それ、今すぐ取りに行く必要あるの!?」

「えと・・・。・・・ないかも、です」

「一体なんなのよ!」

 

 忘れ物作戦、失敗。っていうか、何でロンドンなんだ・・・。

 一旦引き下がる鍵。その鍵に対して、真冬ちゃんが何やら小声で話かけ、アイデアを伝授している。受け取った鍵は再び会長に話しかける。

 

「会長、会長」

「なによ」

「ちょっとパ○プロやりたいんで、先帰ってもらっていいですか?」

「それ、今やらなきゃいけないの!?」

「はい!今やらないと発作が・・・」

「どんだけゲーム廃人なのよ!却下だよ!ほら、帰るわよ!」

「あぅー」

 

 ゲーム作戦、失敗。何でこれが通ると思ったんだよ、鍵。

 真冬ちゃんが「おかしいなぁ」と首を傾げている。・・・うん、真冬ちゃん相手だったらこれ通ったかも。

真冬ちゃんを見ていると、今度は紅葉先輩が鍵に声をかけている。・・・微妙に不安なのは僕だけだろうか?

 

「ふう・・・夏ですね」

「今、それを感じる要素あった?」

「夏といえば、恋の季節」

「いや、だからそれを感じ取れる何かがあったの?話の繋がりが全く分からないんだけど」

「恋といえば・・・鞭に蝋燭ですよね!」

「違うわよ!恋の認識が歪んでるよ!」

「という訳で、今からちょっと買い物に行ってきますんで、残念ですけど、ここで・・・」

「待てい!絶対に行かせないわよ、その買い物!」

「えー」

 

 買い物作戦、失敗。というか、普通に「買い物しにいく」とだけ言えばよかったんじゃないだろうか?前半部分は明らかに要らなかったんじゃ・・・。紅葉先輩は「仮面とアミタイツの方がよかったかしら・・・」と意味の分からない悔やみ方をしていた。

 しかし、そろそろマズイ。玄関にもうすぐ着いてしまうし、これ以上一緒に居たら雑務をする時間が無くなってしまう。

僕は鍵に目配せをし、がむしゃらに攻める!

 

「会長!俺、ムラムラしてるんで、先に帰って下さい!じゃ!」

「行かせるかっ!そんな危険人物、放せる訳ないでしょう!」

「あ、思い出した!僕、死んでたんでした!だから、ここからは出られない・・・」

「何で急に地縛霊であることをカミングアウト!?絶対ないでしょ!」

「そうだ、俺今から世界の中心に愛を叫びに行くんで・・・」

「杉崎はそんな純愛人間じゃ無いでしょう!」

「くそっ、こんなところであんな奴に出会うなんて・・・!会長、ここは僕に任せて早く!」

「一体誰と対峙してるのよ楠木は!」

「会長、俺・・・。会長の本当の・・・弟じゃないんだ」

「え?」

「会長・・・さよなら!」

「って、意味わかんないよ!最初から弟じゃないし!」

「これは・・・閉鎖空間!?会長、僕今からちょっと用事が・・・」

「どこの超能力者よ!絶対違うでしょ!」

「はっ、この妖気は・・・父さん、急がないと!『うむ、行くぞ、○太郎』」

「なに髪の毛ワックスでピンと立たせてるのよ!そして、裏声バレバレ!」

「あ、ありのままに今起こったことを話すぜ!『会長の方へ歩いたと思ったらいつの間にか元の位置に戻っていた』ぼ、僕自身何を言ってるのか・・・」

「楠木は別にスタンド使いじゃないでしょう!ここにはDI○様も居ないよ!」

「ピロリロリン!く、ヤツか!」

「杉崎も別にニュータイプじゃないでしょう!何に反応したのよ!」

 

 くそ・・・まずい。全然、先に帰ってくれる気配が無い。出来る限りの手は尽くしたのに・・・!

椎名姉妹にも紅葉先輩にも焦りの表情が見える。

焦るな・・・こういう時は素数を数えれば・・・いや、数えてる間になんか案を考えたほうが早いだろ!なんかテンションおかしくなってないか、僕!?

僕達が諦めかけてたその時。

 

「あ、そうだ!今日、六時からテレ東で新アニメだった!」

 

 会長は突然そう叫んだかと思うと、「じゃあねー、皆!」と僕達に手を振ってそのまま走り去ってしまった。

 

『・・・・・・・・・』

 

・・・と、いう訳で。

 

「・・・えーと、それじゃあ」

「お疲れー」

「うぃーっす」

「はーい」

「また明日ー」

 

 実にあっさりと、僕達は解散したのであった。

・・・。やばい、今の掛け合いも含めて、雑務へと取り掛かる気力がごっそりと奪われた。

僕と鍵は二人で一つの不文律を作り出す。

 

『もう、今後会長には仕事をより一層させない!』

 

そう決意した僕たちであった。

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