生徒会の庶務   作:高坂遼

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差し伸べる生徒会④

 

 あれから。

 鍵と香澄さんの婚約宣言(?) に対して当然ながら椎名姉妹は猛反発。鍵は一瞬にして生徒会室から放り出され、その後一人で戻ってきて椎名姉妹にボッコボコにされていた。会長と紅葉先輩も若干冷ややかな目でそれを見ていた。僕?止めたほうがいいと少しは思ったけど面倒だったから会長たちと一緒に見てたけど?・・・それにしても、流石深夏さんの妹と言うべきか、全くと言っていいほど鍵に容赦なかった。あれで姉より圧倒的に弱いんだから驚きである。まあ、姉の方は何か○ター○ラチナも泣いて逃げるほどの超ラッシュ繰り出してたし、実はもう人間辞めてるんじゃないだろうか。

 そんなこんなでしばらく時間が経った後、下校時刻になり、今日は特に急ぎの雑務も無かったので、皆で下校することになった。

で、今は下校途中に女性陣の後ろで鍵と会話しているところだ。

 

「痛ってー・・・まだズキズキする」

「まあ、お前が悪いだろ、アレは」

「本気で言った訳じゃ無いのに・・・」

「それでも、特に深夏さんにあんなこと言ったらああなると予想つかないかなあ、普通。まあ、誰も本気にはしてないだろうけどよ」

「・・・それにしても、母親っていうのはやっぱり大切だよな」

「・・・」

「あのあとの香澄さん、凄い上機嫌でさ。その背中を見て思ったんだよ。やっぱ、母親って子供の事で一喜一憂する大切な存在なんだなぁ、って」

 

・・・母親、か。

 

「・・・なあ、鍵」

「うん?どうした?」

「お前は・・・母親のこと、大切にしてるか?」

「何だよ急に」

「いや、会話の流れで何となくな」

「そうだな・・・まあ、考える間でも無いけど。勿論、大切にしてるさ」

「・・・じゃあさ、母親に負担をかけるようなことはお前はしないようにしてるか?」

「?よく分からないが・・・まあ、なるべく自分のことは自分でやるようにしてるし・・・それでなくたってあんま負担はかけたくないって思ってるからな」

「・・・だよ、な。普通・・・そうであるべきだよな・・・子供って」

 

 そう、それが普通だ。僕達はまだ子供だし、どこかで母親に迷惑をかけることはあるかもしれない。それでも、やっぱ母親に負担をかけるようなことは普通はしないだろう。・・・でも、僕は。

 

「なあ、なんかあったのか?柊」

「え?」

「お前、さっきからちょっと変だぞ」

「普段のお前以上にか?それは困ったな・・・」

「どういう意味だそれ!?」

 

 どうも何も・・・そのままの意味だが。

 まあそれはいいとして。鍵が「よくねぇぇえええ!」とか叫んでいるけどそれはいいとして。というか心の声を読むな。

 自分は顔に出しているつもりはなかったのだが、どうやら出てしまっていたらしい。・・・情けないなぁ・・・。

 やっぱり・・・「僕」という人間はどうしようもないな、と思う。自分を変えたいと願ったハズなのに。少しでも輝いて見えていた生徒会の皆のような人間になりたいと誓ったハズなのに。いつまでもいつまでも進むどころか前を見ることすら出来ずにもがきながら彷徨っている自分は・・・情けないことこの上なかった。

 

「にゃっ!?」

「わっ・・・」

 

 そんな事を考えながら歩いていたのが悪かったのか、目の前を歩いている会長に後ろからぶつかってしまった。どうやら信号待ちをしていたようだ。気付かなかった・・・。

 

「あうー・・・いきなり何よ、楠木・・・」

「す、すみません会長。ちょっとボーッとしてて・・・」

 

僕は会長に素直に謝る。会長の方は僕のことを何故かじっと見ている。

 

「あの、会長。何か・・・」

「・・・ねえ、楠木」

「は、はい」

 

 会長が僕の方をじっと見ながら話しかけてくる。他のメンバーも会長と僕の話が気になったのか足を止めて僕達の会話に耳を傾けていた。

 

「もしかして・・・楠木は家族と仲悪いの?」

「・・・へ?」

 

 会長は何故か突然そんな事を聞いてきた。その問いに、僕は気の抜けたアホみたいな声を出してしまった。

僕は体制を立て直すと、会長に尋ねた。

 

「あの・・・どうしてそんな事を?」

「何となくだけど・・・楠木、学校で面談の話をしてから元気無い様に見えたから」

「・・・そう、みえましたか?」

「うん」

 

 ちょっと僕は驚いていた。そういった素振りは見せないようにしてたつもりだったんだが・・・他の皆を見ても会長の発言に特に驚いている様子の人間は居ないし・・・。取り敢えず僕に芝居のスキルが無い事が判明した。俳優とかは目指さないようにしよう。

と、こんなこと考えてる場合じゃないね。僕は会長に質問の答えを言う事にする。

 

「・・・別に、家族と仲が悪いとかそういう訳じゃないです」

「そうなの?」

「というか、そもそも僕には家族が居ないですから」

 

 僕は苦笑しながら呼吸をするように自然に話す。しかし、他の皆はそうはいかなかったのか、僕の言葉に驚いた表情になっている。

少しの空白の後、真冬ちゃんが聞いてきた。

 

「え、えと・・・先輩は・・・そ、その・・・孤児・・・なんですか?」

「ああ、いや、違うよ。両親もいたし妹だっているしね」

「『いた』・・・ですか?」

「うん。『いた』。父さんも母さんも昔に亡くなってる」

「・・・そうなんですか」

 

僕の言葉に周りの空気が少し重くなったように感じる。・・・鍵とかだったらどうにか出来るんだろうな。僕にはどうにもできないけれど。

僕は話を進める。

 

「父さんは僕が小さい頃に病気で死んだらしい。だから、僕も父さんの事は正直よく覚えてないんだ。」

「・・・」

「母さんは・・・」

 

 目の前の道路をトラックが通りすぎていく。そのトラックが原因で少し風が強く周りに吹く。そして、場に少しの間を作った。その風が止み、目の前の信号が青に変わろうとしているところを見ながら僕は・・・今まで一度も言わなかった過去を・・・言った。

 

「母さんは・・・僕が・・・殺したんだ。僕の所為で・・・死んだんだ」

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