AM8:00
僕はいつも通りの時間に教室に着く。HRまではまだ結構時間があるが、いつも僕は早めに着き、その前の日に借りた本を読んでいるのが日課だ。僕はいつもの席に着き、本を開いて小説を-----
「やあ、おはよう、柊君」
「・・・・」
「おや、朝からテンションが低いね。そんな時は、この紙にサインすれば・・・」
「お断りします」
「何故だ!?ボクからのアプローチを拒否するというのか!?」
「ああ、いらん」
「うう・・・これだけ何度も求めているというのに。ボクとの事は所詮遊びだったというのかっ!」
「おい、こら。その言い方だとなんか僕悪者みたいじゃないか」
「だがしかし!ボクの君へのアプローチ方法はまだまだたくさんあるぞ!だから・・・」
「どうやられても断るから。いい加減にしろこのストーカーが」
「その言われ方は非常に不愉快だ!おかげで、ボクはしばらく変な目で見られたんだぞ!」
「いや、だって最近は減ったけどいつも僕が一人の時ばっかり狙って話しかけてたじゃないか」
「そ・・・それは・・・。た、たまたまだ!」
「たまたまが何度も何度も続いてたまるか。いい加減に認めろ、つばさ」
僕はクラスメイトの方を向く。僕に話しかけているのは
「だ、だから・・・。って、違う!今はこんなことを話そうとしてるんじゃない!いい加減にサッカー部に入りたまえ!」
「だから、断るって言ってるだろ?僕は面倒事は好きじゃないんだ」
「でも、サッカー部の助っ人に来たことはあるじゃないか」
「あれは、お金貰ってたから。僕は有料で助っ人やってるだけで、どこかの部活に所属してタダ働きする気はないの」
「・・・本当にもったいない。君程の力があったら、大体の部活ですぐにレギュラーになれても問題ないというのに」
「いいんだよ。僕は何をしたいってまだ決めてるわけじゃないから」
「・・・まだ、答えは出ないのかい?」
「・・・ああ」
「ふむ・・・なら、今回は仕方ない。おとなしく下がることにしよう。だがしかし、そう遠くないうちに入ってもらうぞ」
「ご苦労なこって」
「苦労だと思うのなら入りたまえ。ほら、ここに名前を書いてくれれば・・・」
「お断りします」
はあ、相変わらずながらこのやり取りもあきた。僕は小説を読むことに意識を戻そうとしたが・・・
「お前ら、さっさと席着きやがれー」
・・・いつの間にか担任が来ていたようだ。おかげで本読み損ねた・・・。・・・ついてねぇ・・・。
PM0:32
昼飯の時間だ。僕はいつも隣の教室へ行って杉崎やスペース兄弟なんかと一緒に昼飯を食っている。なので、いつも通り僕は隣の教室へ行く。・・・そういえば、今日、隣のクラスに転校生が来てるとか言ってたっけ・・・。興味なかったから見に行かなかったけど、どんな奴なのかな。確か担任は男だって言ってたような・・・。
「おーい、鍵。来たぞー」
教室の扉をあけながら、僕は鍵やスペース兄弟のいる方へ向かう・・・鍵の近くにいるあの小さい女顔の奴が転校生か?やったら鍵のそばにいるような・・・。
「柊!いいところに来た、助けろ!」
「コーラ500mlPET」
「せめて300の缶にしてくれ!」
「んで、なにをどう助けろと?」
「俺から中目黒を離してくれ!」
「なんで!?僕には杉崎君しかいないのに!」
「やめろ!そういう発言をするんじゃない!唯でさえ色々とアレなのに!」
「・・・中目黒?」
確か真冬ちゃんの書いたBL小説にそんなやつがいたような・・・僕はそのそばにいるスペース姉弟の弟で残念超能力者の宇宙守に話しかける。
「なあスペース守、アイツは誰だ?」
「その呼び方は止めろ!」
「じゃあ、スペース」
「守って言えよ!」
「うるさいな。怒鳴ってばっかじゃ良い事ないぞ?」
「誰のせいだ!」
「んで?アイツ誰だ?」
「無視かよ!・・・あいつは転校生だ」
「それは見ればわかる。名前は?」
「中目黒善樹だよ。」
「ふーん・・・」
「いや、いつまでも守と喋ってないで俺を救助しろ!SOS!」
「はいはい。・・・という訳で初めましてだ、中目黒君。僕は楠木柊。好きな風に呼んでくれ」
「あ、うん。初めまして。一応自己紹介しておくと、中目黒善樹と言います。よろしくお願いします、楠木君」
「んじゃ、あとは好きにしてくれ」
「てめぇ柊!何一つ解決してねぇじゃねぇか!」
「いや、誰がどうしようと個人の自由だろ。せっかくだから中目黒君もハーレムの一員に入れてやれ」
「嫌だよ!なんで俺が自分のハーレムにわざわざ男を入れなきゃならねーんだよ!」
「そういうなよ。ほら、巡さんだって入りたそうにしてたぞ?」
「ちょっ、なに言いだすのよ楠木!そ、そんな訳無いじゃない!」
顔を真っ赤にして否定してるのは、スペース姉弟の姉で、アイドルの宇宙巡だ。アイドルとして活躍しているときは星野巡と名乗っている。まあ、アイツらの名字、結構厨二っぽいからな・・・。本名で活動したら色々と死にたくなるほど恥ずかしいことになりそうだし。あと、本人は隠しているつもりだろうが、鍵の事を好きなようだ。まあ、あんな出来事があったからな・・・。因みにそのことに気付いてないのは鍵位だろう。ハーレムとか言ってるくせになんでこういうのに疎いんだろうか・・・。
「そうか、巡、お前・・・」
「だ、だから違うって・・・」
「俺のハーレムにあえて入り込んで内側から壊滅させようっていう魂胆なのか!肉を切り骨どころか体ごと断ち切ろうだなんて・・・なんて恐ろしいことを思いつくんだ!」
「どうして杉崎の中の私はそういう事しかやらないの!?もう結構末期ね!」
「いいぜ、てめぇがその程度の事でなんでも思い通りに出来るって思ってるならまずは・・・」
「それ以上はアウトだからやめなさい、杉崎!」
鍵は荒ぶる鷹のポーズをとりながらレーベルが違う某幻想殺しのセリフに酷似した言葉をぎりぎりの所まで言っていた。・・・これってセーフなのか?もしかしたらギリギリアウトなんじゃないか?鍵と巡さんがそのまま口論を始めてしまったので、僕は深夏さんの方を向く。
「あれま、また失敗しちまったか」
「相変わらずこういうところで黒いよな、お前・・・」
「いやいや、深夏さんほどでも」
「別にあたしはそんな事やってねぇよ!なんかさらっと同類として巻き込もうとしやがって!」
「ああ、言い忘れてた。今日僕生徒会行かないから。会長さんに伝えておいて」
「またバイトか?」
「うん、そうだよ。最近は助っ人の依頼が入らないせいでちょっと金がきつくてね・・・」
「有料でやるからだろ」
「無料でやる深夏さんがむしろ特殊だと僕は思うけどね」
「そうか?あたしからしてみればタダで人助けをするのは当たり前のことだと思うんだけどな」
「・・・」
僕からしてみれば部活の助っ人はただの何でも屋と同類だと思っていたんだけど、深夏さんはそう思っていなかったらしい。金を採るかとらないかの違いはその辺の意識の違いなのかな・・・。
「取り敢えず、そろそろ飯食おうぜ」
「そうだな、守。お前の昼飯はなんだ?リンゴの皮とかじゃがいもの皮とかなすの皮とかか?」
「なんで皮ばっかなんだよ!普通の飯だよ!」
「いや、守と言えば家では残飯を食って処理する係だからな」
「なんでだよ!今までそんな事一回もなかったから!」
「何を言ってるのよ守。アンタの普段のご飯は基本残飯に少し手を加えただけの物じゃない」
「姉貴まで何言ってるの!?家族からそんな悲しい扱いされてたまるかっ!」
「いや、お前超能力者だしそういうのを食っても体に何も影響でないんだからいいんじゃないか?」
「そんな訳ねぇだろ、杉崎!俺の超能力にそんな力ねぇから!」
「ならそのうちそんな力に目覚めるんじゃないか?ほら、例えばポ〇ムディとか」
「み、深夏・・・お前まで・・・」
「というかなんでペル〇ナ?」
「ほら、守。いつまでも落ち込んでないでさっさと飯食おうぜ」
「救いの手を差し伸べてるように見えるけど、初っ端はお前だったからな、楠木!」
なんだかんだで結局僕らは昼飯を食い始める。・・・僕らがこうやって昼飯を食い始めてからだいぶたつが、なんかまだ違和感があるんだよな・・・。中学の頃や高校に入ってから少しの間は一人で食べることが当たり前だったからな。・・・朝の会話を思い出す。「答え」・・・か・・・。こうやって皆と一緒にいればいつか出るのだろうか。僕の『罪』に対する贖罪の仕方が・・・。
PM3:27
「よ、待たせたなつばさ」
僕は昇降口で時計を見ながら待っていたつばさに声をかける。すると、声の主が僕だと気付いたのか、つばさは僕の方を見る。
「遅い。女子を待たせるのは男として失格だぞ」
「仕方ないだろう。図書館に本を返しに行ってたんだから。それにス・・・」
「それ以上何か言ったら君の胸元に穴をあけるぞ」
「ナンデモアリマセン」
「そうか。なら、早く本屋に向かうとしよう」
「・・・そうだな」
なんか理不尽だ・・・
「それにしても、生徒会というものは何度も私用で休んでいいものなのか?」
「むしろ毎日休んでても成り立ちそうだな」
「・・・それは大丈夫なのか」
「大丈夫じゃない、大問題だ」
「ならば何故そのままになってるんだ。君がもっとしっかりするように言えばいいじゃないか」
「庶務にそんな権限無いだろ。それに、去年みたいにガチガチな感じよりも今年みたいに多少ゆるい方が生徒としても楽だし」
「まあ、それは間違いないだろう。しかし、ゆる過ぎるのも問題ではないか?」
「確かにな。でも、やる時はやる人たちだからこんなもんでいいと思うよ」
「・・・君が言うのだから事実なんだろう。それにボクもこの校風は悪くないと思っている」
「ならなんでこんなこと聞いたんだよ」
「決まっている。一生徒として生徒会が真面目に活動しているか気になっただけだ」
「ふーん」
まあ、例のラジオでも真面目に仕事しろとか言われたしな。・・・明日あたりにでも少し真面目な会議をしようかね。そのための議題があればいいんだけど・・・
「と、ところでなんだが」
「ん?なんだ」
「今日の夕方は暇か?」
「なんで?」
「いや、暇ならば久しぶりに父さんを交えて夕食を一緒に食べようか、と思ってな」
「いいの?」
「し、仕方なくだ。最近金欠気味なのだろう?栄養失調になられても困るからな」
「栄養失調になる程金に困ってるわけじゃないけど・・・まあ、それならご厚意にあずかろうかな」
「そ、そうか・・・よかった・・・」
「?なんか言ったか?」
「な、なんでも無い。」
「そうか」
それからつばさと15分程話を続けると、目的のバイト先である本屋に着いた。つばさと共に正面の入り口から入り、カウンターにいる店主に話しかける
「父さん、ただいま」
「おう、つばさ。それに小僧も一緒か」
「いつもそうでしょ。それじゃ、さっさと支度するんで店主さん」
店主さんこと、
「あ、そうだ。店主さん、夕飯のお誘いありがとうございます」
「ん?ああ。気にするな。昨日つばさが久々にお前と飯が食べたいと言っていたからな、誘えって言ったんだ」
「な、なにを言っているんだ父さん!昨日夕飯に誘おうと決めたのは父さんだったではないか!」
「・・・ああ、そうだったな」
「なにをニヤニヤしているんだ!父さんも痴呆になったのか!?」
「俺はまだそんな年じゃねえよ。ほら、さっさと荷物置いて来い」
「え、いや、僕色々と気になることがあるんですけど・・・」
「気にするな!」
「いや、でも・・・」
「い い か ら 気 に す る な!」
「・・・はい」
つばさが何故自分から僕を誘おうとしてたのかとか気になったのだが、なにやら精神上よろしくない波動(殺気的な何か)を放っていたので、質問することをやめる。・・・まあ、サッカー部にしつこく誘おうとしていること以外ではつばさは基本良い奴だから、今回もそんな感じの事なんだと思う・・・多分。殺気的な何かは気にしないことにした。
ところで、この古本屋は学校からそんなに離れていないからなのか、学生の利用も結構多い。大概の人は参考書や図書館にある本で面白いと思った本を買いに来る。・・・まあたまに鍵みたいな思考の人間がエロ本を買いに来たりするが(鍵曰く『コンビニだと買えないし普通の本屋だと高い』かららしい)。店主さんは別に気にしてないらしく、僕も見つかって気まずい思いをするのは本人なので構わないが、つばさはこういったのに免疫が無く、そういう本を買っている同級生を見たら、僕か店主さんが止めないと顔を赤くして如何に自分の行為が愚かであるを説教する。鍵も何回かやられている(鍵は『美少女の赤面は見る価値が十分にあるのでモーマンタイ』らしい。・・・僕は何も言わん)。一回面白がって鍵が説教されている所を止めなかったら6時間近く止まらなかったけ・・・(流石にその時は一週間ほど鍵が某マモレナカッタさんの『揃わなくても泣かないし・・・』状態になっていた。一週間で立ち直っていたが)。そのため、今日もウチの学校の制服着てる奴がちらほらいる。・・・まあ、ウチの学校の制服着てないのに知ってるやつが一人いるが。
「こんばんは。栗花落さん」
「あれ、楠木君。こんばんは。今日もバイトですか?」
とりあえず、その制服着てない知り合いに声をかける。あの赤髪は色々な意味で目立つ。バイクは見てないが多分そこら辺の駐車場にでも止めてきたんだろう。ぐれてるくせに変なところで律儀だ。
その少女は栗花落杏子(つゆりあんず)さんという名前だ。初めて会った時は公道を定速で走っている暴走族という何とも言えないシュールな光景だった。後で聞いたところ、昔病気でベット暮らしだったらしく、『退院したら外を走り回りたい』という願望があり、奇跡的に快復してから結成したそうだ。走るの意味が明らかにおかしいと思うのはおそらくこの話を聞いたら全員がそう思うだろう。
「ええ、最近はバイトの回数増やしてるんですよ。お金足らないし」
「大変ですね」
「栗花落さんが退院した後の貴女の両親よりはマシかと。それよりも、今日は何を探してるんですか?」
「えーとですね、今日は最近新刊が出たマンガを探しに来たんですよ。ここで買ったほうが安いですし」
「最近出た本なんでしょう。流石に無いんじゃないですかね」
「人によっては最新刊買って読んだ後すぐに売る人もいますから」
「まあ、そういう人もいるかな。マンガだったらあっちですよ」
「ありがとうございます。それでは」
そういうと栗花落さんはその漫画があるであろう方へ行った。まあ、栗花落さんがバイトしているとかは聞いたこと無い(流石にしてないわけではないと思うけど・・・)し、小遣いが高いとかも聞いたことないので少しでも安い方がいいんだろう。
「・・・仲が良いのだな、相変わらず」
「ん?そうかな。まあ、共通の友人の話とかもあるし」
「・・・そうか」
?なんだ、つばさの奴。なんか不機嫌な感じになりやがって。その後、探していた本が見つかってテンションが高くなっていた栗花落さんとまた話をしていたら、またつばさが不機嫌になっていた。・・・本当になんなんだ、あいつ。
PM10:16
つばさや店主さんに夕飯を世話になった後、家に帰って明日の準備をする。夕飯の最中、店主さんが悪ノリしてつばさに所謂『あーん』してやれとか言ってたらつばさからプロレスラーもびっくりなボディブローを叩きこまれていた。その時つばさの顔が真っ赤だったが流石に恥ずかしいだろう。僕も流石にそれは・・・。
明日の昼飯用の弁当の仕込みをしながらふと自分の握っている包丁を見る。・・・いつみてもあの赤い光景は忘れることが出来ない。包丁を握るたびに嫌な感覚を一瞬だけだが思い出す。トラウマにならなかった事が唯一の幸いか・・・。もしトラウマになっていたら、今頃僕はあの説得なんか理解できずにもっと悲惨な人生を送っていただろう。とはいえ、あの光景を思い出さないわけでは無い。人間の脳は不思議なもので、楽しかった事なんかすぐに忘れてしまうのに、嫌な思い出はいつまでも覚えている。だからなのか、僕は楽しかった頃の家族の事をほとんど思い出せないでいる。あれだけ僕の事を気遣ってくれてた家族の楽しい思い出を・・・
「・・・やめよう」
これ以上思い返してもブルーになっていくだけだ。僕はしっかり前を向いて自分の償いの道を探すと決めたのだ。ブルーな気持ちを引きずることはそれに反する行為だ。いつか償い方を見つけて、家族に謝って、それから・・・やることはいっぱいある。足元を気にして生きていたらそれが遅れるだけだ。
「・・・ん?焦げ臭い・・・ってしまった!」
考え事をしていたら卵が焦げ始めている!黒い卵焼きなんてあまりにも不味そうなものを昼飯として食いたくないし・・・仕方ない、もう一度作り直そう・・・。
・・・これ、明日鍵か守あたりにでも「海苔卵焼き」とか適当なこと言って食べさせようかな・・・