生徒会の庶務   作:高坂遼

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振り返る生徒会①

「過去に囚われてばかりじゃ駄目!未来を見据えて歩くべきよ!」

 

 会長がいつものようにどっかの本に書かれていそうな名言を言い放つ。その後、何故か会長は鍵を見てから、深夏さん、僕、真冬ちゃん、紅葉先輩を順番になんか意味わからない視線を送り出した。・・・いや、そんなに見られても分からないもんは分からないんで。

 生徒会役員を一通り見た後、なにを思ったのか会長は大きな声で宣言した。

 

「第一回、チキチキ、親睦を深めよう会ー!」

「・・・はい?」

 

 ドンドンパフパフー、と会長は自分の口で盛り上がりそうなSEを言って実際に盛り上がっている。どうでもいいけど、チキチキってどういう意味なんだろ?よく使うけど語源知らないや。某千葉にあるのに東京と詐称している遊園地の曲の一つが元のネタだって聞いたことあるような気がするけど、その言葉自体の意味は聞いたこと無いなぁ・・・。

 閑話休題。話を戻そう。会長のいきなりの宣言により、僕達は完全に置いてかれている。深夏さんなんか口をあけてぽかんとしている。

 

「ほら、深夏!ムードメーカーなんだから一緒に盛り上げて!」

「え、えと・・・いぇー」

「真冬ちゃんも」

「え、ええ?ええと・・・ぱちぱちぱち」

 

 真冬ちゃんも深夏さんもよく意味が分かって無いままとりあえず命令に従っていた。彼女たちと会長以外の生徒会役員はアイコンタクト会議を行い、その結果「いつも通り見守ろう」という結論に落ち着いたので、会長の次の言葉を待つ。すると、 会長はペンのキャップを開けて、ホワイトボードにいつものように議題を書きだす。

 

「・・・親睦会?」

「今日は親睦会をやろうと思うわ!」

「ええと、今更やるんですか?」

「ふと思ったんだけど、この生徒会のメンバーってお互いの事ほとんど知らないのよね」

「え、そうですかね?杉崎:ハーレム王(笑)とか十分知ってると思いますけど」

「おいコラ柊!なんだ(笑)って!俺は立派なハーレムの主だぞ!」

「確かに杉崎にはそれしかないから、ほかに言いようがないかもしれないけれど!」

「そんな訳無いでしょう!いくら俺でもハーレム王以外に俺を表せる言葉がありますよ!例えば『生徒会役員女子生徒全員の彼氏』とか『学園一の二枚目』とか『ニ物を与えられた男子』とか・・・」

「自分の事過大評価しすぎだろ!最初のは明らかに嘘だし!」

「そ、そんな!そんなはずは!後は濡れ場へ突入するだけだっていうのにまさかの選択肢ミスか!?」

「そんな訳ねーだろ!お前と濡れ場とか考えただけでも寒気がするぞ!そもそもお前の場合最初からフラグが無いんだよ!」

「そんな・・・そんな馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「なんか一昔前のRPGのラスボスみたいな言い方だな・・・」

「そこ!いつまでも脱線してないの!とにかく!私たちはただ相手の事を表面でしか分かって無いの。でも、それだけじゃ駄目なのよ!私たちは生徒会!学校を背負って立つ精鋭集団!選ばれ戦士達!つまり戦友!」

「人気投票で選ばれた精鋭集団ですか。なんかえらく頼りなさそうですね。そもそも、僕達はなにと戦ってるんですか」

「社会の軋轢とか大人たちの作ったルールとよ!」

「うわー、随分熱血っぽい戦いしてたんですね、俺たち」

 

 確かに深夏さんとかすごい熱血だし、あながち間違いないのかも知れないが、そんな熱い集団だったのか、ここって。初耳だ。

 

「そうよ!だからこそ、そんな背中を預け合う戦友同士が、お互いを深く知らないっていうのは大問題なのよ!今こそ親睦会を!」

「・・・で?会長は何が知りたいんですか・・・いや、まてよ・・・そうか!謎はすべて解けた!」

「?何が分かったの杉崎?」

「会長、この企画、俺も大賛成です!」

「あ、うん。賛成してくれるのは嬉しいんだけど・・・ええと?」

「会長!つまり・・・つまり『スリーサイズは?』とか『好きな男性の好みは?』とか訊ねればいいんですね!なんていい企画だ!」

「違うわよ!なんでそうなるのよ!」

「スリーサイズは図ったこと無いので知りません。そもそも僕は女性の方が好きなので、好きな男性の好みなんかありません」

「しかもなんで楠木が答えるのよ!」

「『最初のデートはどこがいい?』とか『告白は待つ方?したい方?』とかですよね!」

「親睦会というより、単なるフィーリングカップルじゃない!しかも二対四!釣り合い悪すぎるわよ!」

「最初のデートは・・・そうですね、定番なところで近くのアミューズメントパークとかですかね?告白は、男だったら自分からするべきだと思います」

「だからなんで楠木が答えてるのよ!」

「ほら、僕も生徒会役員の一員ですし」

「明らかに今言う台詞じゃないわよ、それ!」

「っていうか、お前は質問する側だろうが!なんで女子側になってるんだよ、お前!」

「えー・・・会長達に聞きたいこと?そうだな・・・」

「考えなくていいから!」

 

 なんとなくボケて質問に答えていたが、やっぱり違ったようだ。じゃあ、どんなことを言えばいいんだろう・・・

 

「つまりね、杉崎の言ってるような事じゃなくて・・・。私としてはお互いの・・・そう、過去とかをね、語り合ったらいいんじゃないかって・・・・・」

 

 その言葉を聞いたとき、僕らに流れる空気が変わった。紅葉先輩は目を伏せているし、椎名姉妹は表情を消している。鍵も会長から視線を逸らす。かくいう僕も視線を会長から天井へずらしていた。

会長も自分の失言に気付いたのか、明らかに動揺しながら、取り繕い始めた。

 

「あ、いや、そ、そんなに深いことを話そうとかじゃなくてね、ええと・・・」

 

 ・・・会長の姿がひどく痛ましい。フォローすべきだとは分かっていたが、すぐに口が回る程僕は簡単な思考回路を持っていなかった。

なんとなくそんな感じはあったが、僕らには『立ち入られたくない過去』があったらしい。もちろん、そんなものは人間に二つや三つあってもなんらおかしくない。・・・ただ、僕らのソレは思ったより深い刺し傷だったようだ。

 きっと会長もわざとそんな事言ったのではないのだろう。親睦会っていうのも、本当にみんなことを色々と知ろうとして考えた事だろうし。昔の事をさらけ出そうとして考えた事では絶対無い。

 天井から視線を生徒会室へ戻す。・・・鍵が会長に笑みを向けている。だが、それは明らかにぎこちない笑みだ。会長も同じように笑みを返すが・・・そんなことで簡単に変わる空気じゃなかった。どうにかしなければならない、とは分かっているが・・・感情が追い付かない。

 ・・・さっきも考えたが、会長はあくまでみんなが仲良くなれるように親睦会を考えたはずだ。その結果がこれじゃ・・・あんまりだ。

(・・・どうしよう)

 僕は考える。どうにかして時間を稼いでみんなの心が落ち着けばいいんだけれど・・・いい案が思いつかない。庶務としてはいい案を出さなくては・・・

そう考えていた時だった。

 

ガタン!

 

 椅子が動く音が静寂に包まれていた生徒会室に響く。・・・鍵?何をするつもりだ・・・?

そして、鍵はこの空気を壊そうと息を吸い込み・・・

 

「ぶっちゃけ俺には、美少女の義理の妹と、これまた美少女の幼馴染がいたりしますっ!そう・・・以前の二股疑惑の時の二人なんスけどね。あはは・・・」

 

こう発言した。・・・確かに空気は変わったが・・・方向が微妙だ・・・。

 

-----------------------------------次回へ続く-------------------------------------

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