あれから一夜開けた夜明け、2隻は明石及び間宮から補給や修理を受けていた。
「こちら、海上安全整備局平賀2等監察官、そしてその上司さんの宗谷真霜1等監察官」
同時刻、晴風甲板では岬が平賀と真霜の紹介を行っていた。紹介が終わるとましろがすごい勢いで頭を下げる。
「もっ申し訳ございませんでした!」
そんないつもと変わらない妹を見て真霜は安堵の表情を浮かべて、
「相変わらず変わらないわねぇ‥ましろ」
「えっえっと‥真霜姉‥いや‥宗谷監督官‥」
「姉さんでいいわよ。こんなときまでガチガチじゃ落ち着けないでしょう」
ましろをリラックスさせている真霜に変わり、平賀が春香に話をかける。
「あなたが大淀艦長の赤宮春香さんね?」
「はい、」
「小野瀬さんの容態は?」
「今は大丈夫です。とりあえず、買い出しの物品を千景さんと運んでもらってます。」
大淀の倉庫室では小野瀬と千景が買い出してきたトイレットペーパーをしまっていた。
「なんかごめんね‥?つきあってくれて‥」
「別にいいわよ、私もやらかした一人だし、せっかくなら一緒に謹慎処分受けたほうがいいでしょ?」
「ありがとう‥」
艦上では、2隻の修理と平行して、一部武装の換装を行っていた。
「おぉ‥!」
艦橋メンバーは新しくなった大淀の武装を目を輝かせつつ、眺めていた。
「15.5cm3連装砲よりも、火力、射程が格段に上がった20.3cm連装砲‥!!くぅ!最高だぜ!」
特に上里は火力が高くなったことにめっちゃ喜んでいるのであった。それを苦笑いで見つつ柚乃が付け足す。
「副武装の変更はありませんが、艦橋全部の旧機銃台
に127ミリ速射砲が装備されたみたいです。」
「もう、戦闘にならないとはいえこれは心強いね」
そうしていると明石艦長である杉本がやってくる。
「大淀の‥乗員だね」
「あっはい、そうです」
気づいて焔や艦橋メンバーが杉本のところへ駆け寄っていく。来たのを確認してからポケットからUSBメモリを取り出す。
「これ‥修理箇所と武装変更の詳細が書かれているから‥」
「ありがとうございます(受け取り)」
USBメモリを受け取っている柚乃を見つつ焔がふと思い出したのかキョロキョロする
「あれ、うちのもちは?」
「あぁ‥、それならあっちでうちの猫とくつろいでるよ」
そう言って杉本が指を指した先に、明石で飼っている猫と一緒に寛いでるもちの姿が‥
その頃、晴風甲板では岬や春香、ましろが平賀や福内から事情聴取を簡単に受けていた。
「なるほどね。遅刻をしたら突如としてさるしまから攻撃を受けたと‥‥」
「はい‥‥」
「やはり原因は掴めないか‥」
「古庄さんが意識を取り戻したらしいし、とりあえず真霜さんの報告も待ったほうがいいわね」
「あの‥、私達は‥どうなるんでしょうか‥」
心配な表情を浮かべつつ、二人に疑問をぶつける岬
「もっもしかして‥捕まるとか‥」
「それはないから安心して、確かに上が早とちりしかけたけど十分な確証がないのに生徒を危険には晒せないわ。それに、宗谷校長直々の指示であなた達に来たのよ」
「えっ‥お母‥宗谷校長が」
「えっ!?しろちゃんのお母さん校長なの!?」
岬が驚いて確かめ、それに頷くましろ。だが春香は少し不安そうに聞く。
「ですが‥校長の権限でも完全撤回は‥」
「だから俺が来たんだよ」
春香の声を遮るように声がして、一同はその方角へ視線を向ける。そこにはホワイトドルフィンの護衛艦から降りてくる一人の男性が
「俺が直接聞けば、上の奴らも必然的に聞かざる負えなくなる。それなら問題はないはずだ」
「え‥その声」
どうやら春香には聞き覚えがある声のようでハッとした顔になる。
「よっ、久しぶりだな春香。元気にしてたか?」
「父さん!」
馴染みの信三の顔をみた春香は笑顔満点で飛びだし抱きつく。
「っとと、相変わらず元気だなぁ」
「えへへ〜♪だって数ヶ月ぶりだもん〜」
やれやれとしつつも抱きついた春香の頭を撫でる信三、撫でられると表情が緩んでいる。
「えっえっと‥その方は‥」
追いつけてないましろは、困りつつも春香に質問する。
「あっ、自己紹介してなかったね。私の父でホワイトドルフィン所属の‥」
「赤宮信三だ。ホワイトドルフィン第1戦隊指揮官及び護衛艦むらさめの艦長もしている。」
「そういえば、父さんどうしてここにいるの?
確か、アメリカ海軍との合同演習でハワイにいるはずじゃ‥」
「本来ならそうなんだが‥、実は相次いで生徒の教育艦が相次いで失踪または、行方不明になってるんだ。」
「行方不明‥!?」
信三の言葉を聞いたましろの表情がハッとなる。その横では岬が心配な表情になっている。
「父さんが戻ってきたのは、もちろん春香のことが心配というのもあるが‥上から行方不明の艦艇の捜索要請が来てな‥」
「あっあの!武蔵は‥モカちゃんは無事なんですか!?」
食いつくように岬が信三に問い詰めている。それを見たましろや春香に制止されてつつ、横にいた平賀が代わりに話す。
「武蔵も例外ではなく‥、行方がわからなくなってるの‥」
「そんな‥‥」
平賀の言葉に返す言葉がなく、開いた口が塞がらないほどのショックを受けていたのであった‥。