伊吹澪のお兄さん。   作:凪姫

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第13話

「おい坂上、テストの成績開示はいつだ?」

 

坂上先生がホームルームの開始を告げた瞬間、龍園はそんな風に質問した。

今日は学年全体で中間テストの結果を発表する日。龍園はクラスに退学者がいるかどうかではなく、平均点を元にした各クラスの学力レベルを知りたいのだろう。

 

「それについてはこれから発表しますが……龍園くん、口調に気をつけてください」

 

そう言って軽くため息をつきながら、手に持っていた白い大きな紙を黒板に張り出す。

紙にはクラス全員の点数が張り出され、小テストと同様高得点順に上から名前が並んでいた。

クラスメイトが自分の成績を確認して一喜一憂してる中で、俺も成績を確認し───目的が達成されていることを確認し、安堵していた。

 

「各教科の平均点は80点以上。全体の平均点は86,4点でした。これは4クラスの中で2番目の成績ですよ。皆さんよく頑張りましたね」

 

その後の説明で、成績の良い順にBクラス、Cクラス、Dクラス、Aクラスであると告げられた。

……Aクラスに頭の悪い人が固まってるとは思えないし……そうなるとDクラスに頭のいい人が固まっていたか、あるいは俺と同じように誰かが過去問を手に入れたかのどちらかだろう。

 

「この調子で期末テストも頑張ってくださいね。それではホームルームを終わりにします」

 

そう言って坂上先生が出ていくと同時に、俺のもとにメールが届く。内容は分かりきっているし後で確認すれば良いか。

俺の方も澪たちから睨まれているので、ちゃんと釈明しておかなきゃならないしな。

 

 

 

 

 

「兄さん。あの成績はどういうこと」

 

放課後、俺の部屋にて。帰ってきてすぐに澪から疑問を突きつけられる。

周りにはいつものメンバーとなった椎名、高橋、富岡、宮崎。元々、高橋から「成績が発表されてから打ち上げやろうぜ!」という誘いがあったためこうして集まっているだけなのだが、澪が質問したおかげで全員の意識が俺に集中した。

……正直大人数の前では言いたくはないが、何人か賢いメンバーもいるし誤魔化すのも無駄だろうなぁ。

 

「答えろ、兄さん。()()()()()()()5()0()()()()()()()()

「俺たちもそれは気になってるんだよ。湊、教えてくれないか?」

「うーん……まぁ、いいか。理由はこれだよ」

 

そう言って俺は携帯の画面を見せる。

そこに表示されているのは俺が所持しているプライベートポイントの画面。澪や高橋たちも見慣れている画面だが、ある一点について問い質してくる。

 

「……待ってください、プライベートポイントの数値がおかしくないですか?」

「あぁ。1()5()0()()()()()()になっている?」

 

椎名と富岡が指摘した通り、俺の現在の所持ポイントは約150万ポイント。正確に言えば152万6420ポイントだが……それ自体は関係ないか。

問題なのはどうしてそんなにポイントを貯め込んでいるのかだろう。

 

「そうなってる理由も話すさ。……長くなるけど良いか?」

 

その言葉に対し全員が頷く。やはりこのポイント量は気になるのだろう。

俺も見せた以上、大人しく白状する方が問題も少ないだろうしな。

と言っても全部話しているとそれこそ長くなってしまう。要点だけを掻い摘んで説明すると共に、その時の事を回想することにした。

 

 

 

そもそもこれらの行動を振り返るには5月1日───定期試験について最初に知らされた日まで遡る。

龍園がCクラスの王になると宣言した後、俺は職員室の坂上先生の下へと向かった。

……それまでにまた少しあったけど、それはどうでもいいか。

 

「珍しいですね、伊吹くんが相談とは……」

「えぇ。今日の説明以外にも聞きたい事とかが色々あったものですから」

「そうですか……分かりました。では応接室の方に移って話を聞きましょうか」

 

そうして応接室へと案内され席に着くと同時に、俺は早速本題を切り出すことにした。

 

「お時間を取らせるわけにもいきませんから早速本題に入りますね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……ふむ。教師としては得点を売るなど言語道断なのですが……」

 

質問した矢先、少し困った表情をして否定する。

……が、坂上先生の目だけは困惑ではなく歓喜を浮かべている辺り、表面上でしか否定する気はないと分かるのだが。

それを把握しつつ、こちらの質問を続けていく。

 

「先生は4月に『学校内においてプライベートポイントで買えないものはない』と仰っていましたよね。であればテストの点数も購入できますよね?」

 

……点数を購入できるという情報は鬼龍院先輩からの報酬の一部なのだが、それらの裏事情は伏せておく。

 

「……えぇ、その通りです。テストの点数は購入出来ますよ」

「そうですか。値段を聞いても?」

「ええと、確か……1点につき5万ポイントから10万ポイントですね。……しかし、伊吹くんの実力であれば購入する必要はないのでは?」

 

答えてもらった後に先生から疑問をぶつけられる。

 

「将来の為ですよ。ほら、先生が仰っていた2000万ポイントの権利です。……ちなみにですけど、2000万ポイントを貯めて使える権利は他にもあるんですか?」

「そうですね、赤点を取るなどで退学が決定した後、それを取り消す権利でしょうか。2000万ポイントで買える権利はそのくらいです。……まぁ得点を購入した方が安上がりですけど」

 

苦笑する先生に愛想笑いを返しながら、先生が話していた内容を反芻する。

俺が気になったのは「赤点を取るなどで退学が決定した後」の部分。この言い方ではまるで───。

それよりも退学を取り消す権利か。気になっている部分を頭の隅に置きつつ、頭をフル回転させて考えをまとめる。

 

「あはは……。それじゃあ最後に1つだけ、質問良いですか?」

「構いませんよ。何でしょうか」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……はい?」

 

坂上先生が唖然とした顔をする。

……突拍子もない質問をしているのは理解しているが、俺はそれに構わず話を続ける。

 

「そのままの意味ですよ。俺がこの先の中間テストで得た点数のうち何点かを買い取って欲しいんですよ」

「はぁ……。そんな事出来る訳ないでしょう。第一ポイントの支給なんて権限は私には───」

「水泳の授業で1位を取った生徒にポイントを支給するボーナスがあったんですよ。その時に思ったのですが、先生方にはポイントを自由に支給できる権限みたいなものがあるんじゃないかと踏んでます」

「いや、しかし───」

「ですので不可能ではないと思ってますよ。それでどうでしょう?」

 

先生に対して間髪入れずに話を広げていく。

……こういった議論で大切なのは主導権を握り続けることだ、と中学の同級生が言ってたのを意識しつつ、こちらが話すことをやめない。

こちらの要望を話し終えると、坂上先生は観念したのか諦めたように呟いた。

 

「……えぇ、認めます。我々教員にはある程度ポイントを融通する権限が与えられています」

「やはりそうですか。……では、一生徒と教師の間でポイントに換金することも可能ですね?」

「それは───」

「まぁ、俺と先生の賭けという形でいいんです。俺がAクラスに上がるためのパーツとして使えるか、試してみる気はありませんか?」

 

そう言うと先生は無表情でこちらを見続ける。

先生の事情は分からないが、他の先生を見る限り先生方もAクラスを狙うメリットがあるんだろうと思う。俺の説得材料はどれだけ有能であるかを示す以外にないからな。乗ってくれると良いが……。

こちらも何も言わずに黙っていると、おもむろに先生が口を開いた。

 

「……いいでしょう。伊吹くんの提案に乗ってあげましょう」

「ありがとうございます」

「ですが生徒との賭けではなく、教員として正式な形にさせてもらいます。……そして前例がない以上、一度理事長に確認を取ります。認められなければこの話はなし。仮に認められてもいくつか条件がつくと思ってください」

 

前例がないとは思っていなかった。こればかりは意見が通ってくれることを祈るしかないか。

 

「確認を取るにあたって、1点につき何ポイントで換金するかですが───」

 

 

 

 

 

「───それが認められて合計125万ポイント分、得点から換金してもらったってわけ」

 

その数日後、メールにて認められたという旨のメールと条件を伝えられた。5科目満点の場合のみ各科目50点分換金。レートは1点5000ポイントで今回の試験限り。……そして満点以外には換金せずに退学処分。そういった内容が伝えられたが、こうして無事に換金してもらえたというわけだ。

それによってポイントは月々の支給額(10万+5万1000)と賭け試合での賞金(約40万ポイント)、諸々のボーナスに今回の125万ポイント稼いだことになる。

……もちろん食費やパソコン代などでポイントが消費されたから、もうちょっと少ないけど。それでも学年で1,2を争うほど稼いでると思っている。

 

「……なるほどな。それでそんなにポイントを持っているのか」

「お話は理解したのですが……龍園くんに隠れてそんな事をしていても大丈夫なのですか?」

 

感心した様子の富岡と、当然の疑問を投げかける椎名。

 

「それは───」

「いや、別に知らなくても良いんじゃね?」

 

仕方ないと思って答えようとした矢先、高橋がそれを止めた。

 

「俺らにも隠してたってことはあまり公にしたくなかったってことだろ?だったら湊が言うまで触れない方がいいんじゃねぇか?」

 

……まさしくそれを言おうと思っていたのだが、高橋がそこに気付くとは思っていなかった。

本当に何でこいつはCクラスに所属しているんだろうか。

宮崎、富岡、椎名の3人も言われて納得したのかそれ以上踏み込むことはなかった。

 

「……すまない、そうしてくれると助かる。ありがとう」

「いいっていいって。んじゃいい加減打ち上げ始めようぜ!」

 

そう言って高橋たちは打ち上げの準備を始める。……まだ出会って1ヶ月程だが、良い友人に恵まれたな。

いつかちゃんと話そうと心に決めながら、俺も準備に参加するのだった。




1巻の内容が無事に完結しました。
これまでの湊くんの行動を友人たちに公開する話でした。本筋自体は当初からあったのですが、オチだけが決まらずにぐだぐだ書いていたらもう6月。相変わらず筆が進まない……!(スマブラをやりながら)
次回は閑話ですが2巻以降ものんびり書きます。見ていただけると幸いです。更新ペースは保証できませんけど……(殴)

評価を付けてくださった方々、ありがとうございます!久しぶりに更新したときに確認して元気が出ました。元気なまま2巻まで突入出来るよう頑張りますね。
ではまた次回に。
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